イラストレーター、デザイナー、フォトグラファ-。クリエイターとしてさまざまな顔をもつ常盤響。芸術的才能の固まりのような氏が抱く恋愛観や性に対するポリシーは、外見だけみれば先天的なものと後天的なものが入り混じった、ごくごく普通なもの。だが根本的に違うのは、思春期にむくむくと成長した自意識と大人への憧れ。それらはどちらも常人には太刀打ちできない、高い壁と深い闇へと変貌を遂げた。
(フランス書院文庫を前にして)実はこういった本はあまり読んだことがないんです。官能小説にすごく詳しい友人がいて、いつも借りようと思いながら読まずにきてしまっていて。過去に出演されていた小西さんもおっしゃっていましたが、僕も空港や駅などで気にはなっているんです。でもなかなか手に取ることができなくて。まず量が多過ぎてどれをチョイスしていいのか迷っちゃいますよね。あと自分の中で「これだ!」というものがあったとして、その本を僕が読んでいる姿や買っているところをマニアというかその道の詳しい人が見た時に「ああ、あの作品ね」的な、なんか底の浅い部分を見透かされている気がして恐いというのもありまして…(笑)。だから『熟女授業 叔母と未亡人と淫妻』(柏木薫著 '05刊)や『三人の禁姉 女教師と看護婦と女子大生』(高竜也著 '05刊)などジャンルは色々ありますが、どれも僕にとっては未知なのですべて読んでみたいのが正直なところですね。
ただ中学生くらいの頃、こういったジャンルとは違うんですが、海外のエロ文学みたいなものは結構読みました。当時はビジュアルが手に入るような時代じゃなかったので。小学校くらいのときに雑誌『月刊プレイボーイ』が創刊されましたが、アイドルの水着とかにはまったく興味がなくて。僕は当時から海外の音楽や映画が好きだったので“大人”のイメージはつねに外人、もちろん“性”に対するイメージも漠然と外人でしたし。
日本人に対してはピンとこなかったですね。なんか貧相にみえてしまうというか。「なんで同級生にプレイメイトやボンドガールみたいな娘はいないのかなあ」と思っていました。あとは映画『時計じかけのオレンジ』やアレン・ジョーンズのマネキンの作品であったりとか、そういうフェティッシュなものの方がやらしいっていう。だからきっとロックが好きっていうのと同じで憧れですよね。僕の中でセックスっていうのは性のはけ口というより“大人”っていうイメージ。女性のことが好きというよりもセックスするような大人になりたいっていう。だから最初にマスターベーションをしたときは、あまり女性に興味があったわけでないというか。
例えばロックのコンサート会場で女の人が裸になって踊っているそんな状況が「やばいなあ」って。最初にドキドキしたのはジム・モリソンが大衆の前でマスターベーションをして捕まったっていう話を知って、「そんなことを人前でしちゃうんだあ…」ってドキドキしていたんです。だからもう、異性に対してドキドキしていたのかそういう行為に対してなのかは、自分の中でもうごちゃちゃですよね。それで射精をするわけではないけど、当時は「外国の大人たちはすごいことになってるんだなあ」っていうことに対して興奮していました。