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今月の放言

女体こそがデザインの基本 トミタ・ジュン

直筆短冊

時計やメガネ、シャープペンシルなど数多くのヒット商品を世に送り出してきた、日本が誇る世界的建築家であり、プロダクトデザイナーである。そんな想像力の塊といっても過言ではない彼がもっているエロ観とは、いったいどんなものなのだろう。クリエイターという視点を意識しつつ、独自の世界観を披露してもらった。

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プロフィール トミタ・ジュン

1967年生まれ。一級建築士/東京電機大学講師。ニューヨーク大学アート学部スタジオアート学科卒。東京電機大学建築学科卒。グリーン建築で著名なエミリオ・アンバースに師事。'96年ペットボトル「アクアブロック」でIDアニュアルデザインレビューのグランプリ受賞。その後も通産省グッドデザイン賞、中小企業庁長官特別賞、大阪グッドデザイン賞などを受賞。現在はプロダクトデザインや建築、グラフィックなど幅広い分野で活躍している。

第3章 誰もが美しいと思うものは…

ここ数年の間、日本で一番売れたんじゃないかっていうシャープペンシルを以前デザインしたんですが、それがセクシーなフォルムなんですよ。これがまた完全に女性のボディラインなんですよね。僕が曲線をデザインするときは完全に女性のラインになっていますね。ちなみにそのシャープペンシルは、女性がレオタードや水着といったフィットしたものを着ているっていうイメージでデザインしました。やっぱり女性的な曲線美を美しいと感じるのは、みんな一緒なんでしょうね。

あとデザイン的に椅子などは結構エロいものが見られますよ。個人的には機能としてセックスをしやすくする椅子ですとか、ソファチェアみたいなものとか考えたら面白いと思いますよね。椅子を使うと体位も広がるだろうし。

ラブホテルのデザインとかも面白いですね。普通に考えられるパターンとしてテーブルと椅子、ベッドがあってっていうゾーンがはっきりした空間だと思うんですが、僕がやるとすれば、動物園のシロクマがいるような空間ですかね。山があったりプールがあったり昼寝するスペースがあったりっていう。すべてに繋がるわけだけど、それがシームレスになっているんですね。色んな動きができる方がいいですね。あと樹木があってバケツやモップ、何でもいいんですが意外な物が置いてあって、それらをどう使うか考えさせるっていう。

もうひとつのデザインとしては岩場、枯山水の石庭の中でっていうやつですかね(笑)。なんか猫の砂とかが敷いてあって。猫の砂だからこぼしたらちゃんと固まるし(笑)。あとハイジの家なんかもいいと思うんですよ。ログハウスの屋根裏部屋とか、藁まみれになってやるっていう。これはみんな燃えるでしょう(笑)。乗馬のムチとか置いてね。

まあこれらはちょっと行き過ぎかもしれませんが、想像力っていうのは激しくていいと思うんですよ。また、セックスをするっていう行為自体はみんな同じなわけですからね。楽しむためにそこ以外で演出をするっていうか。そういう想像力って凄く大事なことですからね。

一般の建築物では渋谷のスペイン坂付近にある北川原 温さんの「シネマライズ」っていう映画館の作りはなんかエロいかなあって思いますね。ただ私の建築感ではあまりセクシーじゃない方がいいんです。対比の世界でいうと四角い世界の中にアールのものがあると美しく見えるんです。だから建築は男性で、その中に女性がいるっていう感じですかね。

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