それまでのAVの概念を根底から覆す、奇想天外な企画や発想を駆使し、あっという間に日本のAV業界の頂点に君臨したキング・オブ・AV、高橋がなり。業界の酸いも甘いも知り尽くした、世界一AVを愛する“変態のカリスマ”のエロ概念とは? 自身の考えを大きな声で理論的、かつ客観的に語るその姿は、まさに往年の“虎”を彷彿とさせた。
(フランス書院文庫を前にして)7~8年前に、紙芝居のAVドラマを作ったことがあるんですよ。よく原作を実写にした瞬間、『このキャストだと、なんかしっくりこないなあ』ってことがあるじゃないですか。でもそれが絵による表現だと、頭の中でより理想に近い女性像を作り上げることができるんですよ。要は、紙芝居的にその絵を見せていって――もちろんその時に実写も入るんですが――顔だけは入れないっていうやり方です。当時、その絵を描いてもらった方が、フランス書院文庫さんで装丁のイラストを描いていらっしゃる方でしたね。おかげさまで、この紙芝居は大儲けさせてもらいました(笑)。
フランス書院っていうと、僕の中ではもう官能系の代名詞ですよね。僕はもともとホワイトカラー用のAVを作るってずっと言い続けてきた人間ですから、エロ+αな作品じゃないと意味がないんです。レベルの高いAVを作ろうという時には、脚本や原作っていうのがすごく重要になってくるんです。そういう意味で、フランス書院さんの本っていうのは、AVにとって重要な+αの部分がしっかりとしていらっしゃるので、ずっと凄いなあって思っていました。
僕はとにかくイントロのないセックス、いわゆるセックスの映像だけを見せる、抜くだけのAVっていうのが大嫌いなんですよ。ちなみにこういうAVを、個人的には“ブルーカラー用のAV”って呼んでますけど(笑)。もうね、極端な話「セックスなんていらないからイントロだけみせろ!」っていう感じですよ、ホント。そこまで僕は変態なんです(笑)。それで、SODの社員たちによく言ってたんです。「おまえらのAVを見てると、牛の乳を揉んでいるのを見るのと変わらないんだよなあ」って。僕から言わせれば、この女がどういうことを考えていて、どんな性格で、どんな生い立ちでっていうこともわからないのに、いきなりセックスしているところを見せて、なんで興奮するんだと。逆に、イントロがいいと、その後のセックスがよりいいものになっていくんですよ。
自分のことを変態っていいましたが、これはAVで飯を食っていた人間にとっては最大の褒め言葉なんです。ちなみに僕の変態エピソードとしては、学生時代に好きな女のコに交際を求められたんだけど、それを断って、家でそのコを想像しながらオナニーをしたっていう(笑)。これを言うと、僕の周りの変態で名を馳せている屈指の変態監督たちをして、僕のことを「だれが一番変態かって、高橋さんしかいないでしょ(笑)」っていわしめてますから。まさに“キング・オブ・変態”ですね。