それまでのAVの概念を根底から覆す、奇想天外な企画や発想を駆使し、あっという間に日本のAV業界の頂点に君臨したキング・オブ・AV、高橋がなり。業界の酸いも甘いも知り尽くした、世界一AVを愛する“変態のカリスマ”のエロ概念とは? 自身の考えを大きな声で理論的、かつ客観的に語るその姿は、まさに往年の“虎”を彷彿とさせた。
その点、恋愛と違ってビジネスは常に客を追いかけ回しますよね。それはAVも全く同じだったんですよ。お客さんはどの方向へ逃げていくんだ、と。それを先回りして網をかけてやるとひっかかった(儲かった)みたいなことの繰り返しです(笑)。どんなエサをぶら下げると食らい付いてくるのか、考えるのは楽しかったですね。女のコと同じで、逆に追っかけると向こうは逃げるものなんですよ。
しかもAVの趣向っていうのは、ホントに千差万別で奥が深いんですよ。さらに言うと、その中でのトレンドみたいなものは絶えず動いているんです。だからその先に網をしかけておかなきゃならず、流れがきてから網を張っても遅いんですよ。もうね、分裂もすれば固まりもします。おまけに、1,000人集まったら、1,000人違うことを言うんですから。例えば僕が当てた全裸シリーズなんかは、全裸になった時にヘアのアップを見せろっていう人と、引きがいいっていう人と、真っ二つに分かれるんですよ。「俺が頭の中でズームインするんだから勝手にするな」という視聴者と、「なんでここでズームインしないんだ」っていう視聴者がいるわけで(笑)
それに比べて女性を捕まえるということは実に安易なことであって、ゾクゾク感が全然ないんですよね。さらに僕自身が完全なるオナニー派なもので、それが影響しているのかどうかっていうのはわからないんですが、商売って、いかに他人の気持ちを知って他人の理論で動くかということだと僕は思うんです。だからこれを日常的に続けているとですね、プライベートのセックスも、サービスになっちゃうんですよ。「この女の人はどうすれば喜んでくれるだろうか」っていう。だから苦痛なんです(笑)。
あと僕にとってAVの仕事にやりがいを感じたのは、世の中に蔓延するエロ観の“ズレ”を矯正することですね。エロっていうものに対して、世の中が適格な評価をしていないんですよ。だからと言って、AV反対の意見の人に対してとやかく言うつもりは全くなくて、良い部分と悪い部分があるわけですから、むしろ否定的な考えもあっていいと思います。でも全否定っていうのはして欲しくないんです。AVで飯を食ってる人間として、良い部分は適格に評価してもらいたいんですよ。
AVに関われたことで性に対する倫理観もいっそう増しましたし、この業界にはすごく感謝しています。だから僕は今後、AV業界に何か起きたら貢献したいと思っていますしね。農業王になるっていうのが当面の目標なんですが、農業をやりながらAVの必要性をNHKで語りたいですね。過去、唯一NHKだけは出演交渉を僕にくれなかったんです(笑)。かなりお堅い所なのでAVで落ちないなら農業から攻めていこうっていう作戦です。それで農業王になった俺のことを紹介するなら、AVの経歴も紹介しないと出ないからっていうつもりです(笑)。