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今月の放言

女のコを撮るのは僕の宿命 藤代冥砂

直筆短冊

女性を撮らせたら右に出るものはいない、と言わしめる希代の写真家である。被写体も気づかないうちに、その心を裸にし、瞬時に魅力を切り取る才能は、まさに百戦錬磨。果たしてこの、単なる女性好きでは済まされない、プレイボーイも真っ青な女心掌握術は、いかにして培われたのか。いやそれとも、神様から授かった才能だったのか……。

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プロフィール 藤代冥砂

千葉県出身。'95年から2年間、世界一周の旅に出る。'03年、第34回講談社出版文化賞写真賞受賞。雑誌グラビアから写真集、広告に至るまでボーダレスに活躍している日本を代表する写真家。現在、新潮社の人気写真集、『月刊』シリーズの100号記念『月刊100アニバーサリー』が絶賛発売中。

第4章 女の目の奥で揺らぐ”エロスの炎”

相手に関係なく、撮影の間は自分が快適であろうとしますね。自分が気持ちよく仕事すれば、自然と良い雰囲気を作れると思うんです。女性を撮っているときは自然に声をかけちゃいますね。『きれい』とか『かわいい』って。心の中ではそんなに思ってなくて、いわゆる“仕事として”大げさに『きれい』とか『かわいい』を連発する人と違って、僕の場合、リアルにそう思ってるんですよね。

だから普段、撮影しているときは、だいたいこのモデルの人としたいって思って撮ってますね。スイッチがオンになってます。撮影をしていると、女性の目の奥に揺らいでいる“エロスの炎”みたいなものを感じるときがあるんです。おしとやかな人でも、逆に遊んでそうな人でも、それはあるんです。逆に、大女優さんとか、いわゆるすごい美人にも関わらず、その炎を全く感じない人もいます。まあ、それはそれでしたいとは思ってますけどね(笑)。

これだけ女性を撮っていたら、そろそろ飽きてもいいんじゃないかって自分でも思うんですが、まだ飽きないですね。この間、新潮社の『月刊シリーズ』の100号記念で100人の女のコを撮ったんです。撮影時間は1人30分。自分の事務所で撮ったんですが、最初の15分は私服姿になって事務所の外で撮って、後の15分は事務所の中で水着の撮影。それを1日10時間ぶっつづけで20人、5日間かけて撮りきったんです。もう終わったときは『至った……』っていう感じですよね、放心状態っていうか(笑)。

そのとき『自分はなんて素晴らしい仕事を今しているんだろう』と、つくづく感じました。だってかわいいコが次々に僕のところに押し寄せてきて、しかも水着になったりしてくれる。これはもうね、『僕にとってこのカメラマンという仕事は、何かしらの運命とかがあって、神様が自分にやらせていることなんだからありがたく頑張ろう』と、そう思いました(笑)。もう完全に悟りの境地ですよ。ただ、その100人撮りを飽きずにできたとき、『俺、この仕事を死ぬまでできるかもなぁ』って思いましたね。中には40度の熱を出し、栄養ドリンクを飲みながらやった日とかもあったんですけど、もうとにかく楽しくて仕方なかったですから。

(文・オオサワ系)

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