五反田団。今や屈指の人気を誇る、超売れっ子劇団である。その主宰者こそが本日のゲスト、前田司郎。劇団主宰以外にも小説家としての顔も持つ。もちろん、こちらもおもしろい。そんな、おもしろ細胞の塊のような氏の性愛観を今回垣間みることができた。経験に裏打ちされたブレのない意見はもちろん、言葉を紡ぎ出す際の独特の言い回しにも注目してほしい。
(フランス書院文庫を前にして)熟女モノの作品が、こんなにあるとは思いませんでしたね。僕が読んでいた中学とか高校の頃って、熟女モノはこれほどはなかったと思うんですよね。もっとマイノリティだったっていうか、熟女好きって公言すると逆にちょっとひかれるっていうか(笑)。今はみんな気軽にカミングアウトできそうですよね。気になるのは、この帯コピーに「最高の母子相姦」と書かれている『初夜 Last Night 美母と高校生』(鬼頭龍一・著'08年5月刊)ですね。まあ、母子相姦に最高も最低もあるのかっていう気はしますが(笑)。基本的に最低ですよね、母子相姦(笑)。
女性を性の対象として見だしたのはすごく早かったと思います。小学校の低学年の頃には、すでにセックスっていう言葉も知っていたし、それがどういうものかっていうのも、恐らく中学に入る前から知っていたと思います。エロ本も昔はゆるかったので、コンビニで立ち読みとかもできたんですよね。友だちとコンビニに入って、『投稿写真』とか、ああいうエロ雑誌系から入って、そこから徐々に……という感じでした。
官能小説をこれまで読んだ経験ですか? ええ、一時期、フランス書院文庫を読んでいましたよ。中学だか高校だか忘れたんですが、そのくらいの多感な時期です。当時、エロビデオ屋に行くと――ああ、僕は学生だったんですが、顔が老けてたので全然ノーマークで入ってました――今ほど作品のバリエーションもなく、ジャンルも限られてるんですよ。最初に女優さんがインタビューを受けて、ベッドインしてっていうパターンばかり。
で、AVに飽きちゃったのと同時期だったかどうかは微妙なんですが、僕は薬師丸ひろ子が出てた『里見八犬伝』っていう映画を観て、すごく好きになったんです。その作品が小説でも存在するって知ったんですよね。それで読んだら、これがめちゃめちゃエロかったんですよ! そのときに「(AVもいいけど)小説のエロさっていうのも、おもしろいなあ」と。それが官能小説的なるものとの出会いでした。
最初はホント、純粋にどんなものなんだろうっていう興味本位でした。(フランス書院文庫を見て)この表誌デザインは、何かAVのパッケージよりも色々と隠されているぶん、インパクトがありました。この“隠されている”っていうことが、エロではとても大事ですよね。初めて観た裏ビデオがアメリカのやつだったんですが、それがもう、変なシンセサイザーで作ったような音楽がBGMで延々と流れて、その前でセックスするって身もフタもないやつ。「こいつらバカじゃねえか」って思いましたからね(笑)。日本はアメリカと違って「隠す文化」があるぶん、ちょっと淫靡な雰囲気があって、そこがいいですよね。
基本的に子供って、エロとかそういうものからは遠ざけられて育つじゃないですか。大人から禁止されることで、塀の向こう側には、ものすごい世界が広がっているんじゃないかっていう興味が湧く。でも今はボタン一つでいくらでも自由に見えちゃうぶん、ワンダーランドがなくなってしまっているのかも。そう考えると、今の子供たちはかわいそうですよね。それと、最近はネットなどの影響から、日本も露出方向にはなってきているのが、ちょっと心配です。