ネオン街。そこではあらゆる男女が酒に、そして雰囲気に酔いつつ、腹の中で丁々発止のかけひきを繰り広げる、さまざまな欲望が渦巻く戦場である。倉科遼は、そんな男女の“化かし合い”をつぶさに見続けている、まさに“夜の帝王”である。彼のその目に、男女は、そして夜の蝶たちは、果たしてどのようにうつっているのだろうか。
(フランス書院文庫を前に)青年誌などを描いていたときは、仕事でこういう官能系の本を読んでましたね。これをオカズにするほど若くはなかったですが(笑)。色々インスパイアさせてもらいました。タイトルはちょっと忘れましたけど人妻、熟女、近親相姦ものとか。あとそうだ、タイトルをよく拾わせていただきましたよ。しかし、ここにある『人妻飼育ホテル』(星野ぴあす・著'08年10月刊)っていうタイトルもすごいですね。引きの強いタイトルっていうんですかね。あと昔から、フランス書院文庫はカバーのデザインがキレイですよね。
若い頃は”日活”女優の芦川いづみさんとかは大好きでしたね。『新東宝』っていう、ロマンポルノの前身みたいな映画会社があったんですよ。白川和子や片桐夕子とか、当時はそういう官能系のセクシーな女性に惹かれましたね。僕らの世代が性に目覚める原体験っていうのは、おそらくこの辺だと思いますね。
僕は今でこそ“夜の帝王”なんて呼ばれてますけど、もともと全然そんなんじゃないんですよ。中学時代につき合ってた女性と結婚して、初体験もその人なんです。童貞で結婚なんて珍しいでしょ? もちろん、それ以降もホント品行方正、妻一筋。自分で『人生一穴主義』って言ってたくらいですから(笑)。
それがなぜ変わったかというと、漫画家として行き詰まってしまったんですよ。よく編集さんからは「オマエは遊ばないからダメ。こんなんじゃすぐに行き詰まっちゃうよ」って言われてました。で、30代半ばくらいになったら、本当にそういう状況になってしまったんです。次に書くネタがないわけですよ、何も。その頃になってわかったのが、ただ単に何かを見たり聞いたりして書くんじゃなくて、自分で実際に体験しなきゃっていうことですよね。
遊び始めた最初の頃なんかは、楽しくなかったですね。ただもう嫁にバレないか心配で、ハラハラしちゃって(笑)。あとやっぱり浮気するっていうのは「裏切り行為」じゃないですか。そういう部分ではやっぱりイヤでしたね。でもその頃、単身赴任していたこともあって、時間は自由に使えたんですよ。それで徐々に慣れていって生活が180度変わっていくんです。