ネオン街。そこではあらゆる男女が酒に、そして雰囲気に酔いつつ、腹の中で丁々発止のかけひきを繰り広げる、さまざまな欲望が渦巻く戦場である。倉科遼は、そんな男女の“化かし合い”をつぶさに見続けている、まさに“夜の帝王”である。彼のその目に、男女は、そして夜の蝶たちは、果たしてどのようにうつっているのだろうか。
当時はとにかく色々な場所に行きましたよ。北はすすきのから南は中州まで。あと場末のスナックやフィリピンパブ的なところでしょう。もちろん銀座、六本木、それから女子大生がいるようなところとか……。もう何でもアリみたいな感じです。もちろん、夜の街には今でも繰り出してますよ。接待したりされたりって感じで、なんだかんだで週3回は出ますね。いつも3軒くらいはハシゴしますから。やっぱりね、どれだけ通い詰めようと、夜の世界っていうのは魅力的なものですよ。
ドキドキしながら遊んでいたとは言いましたが、最初の“火遊び”というのはちゃんと憶えています。年上の銀座のママでしたね。それも並木通り沿いの大きなお店の方です。初めて会ったとき、彼女は言っていました。「酒の飲み分けやマナーがしっかりしてて、座る場所すら替えられる男が一流の男なのよ」って。僕はそれが自然にできていたそうです。えらく驚かれましてね。「銀座で20年生きてきたけど、あなたみたいな若者でそこまでできた人はいないわ」って。で、今度お食事でもどうですかって誘われました。まあ、自分で言うのもなんですが、要は銀座のママにホレられたっていう感じですね(笑)。
麻布十番で食事をして、その場で愛の告白をされました。で、その後、彼女のマンションに行ったんです。そしてこれは今でも思い出すんですが、トイレを借りようとバスルームへ行ったら、洗濯物が干してあって、そこにパンティ1枚だけぶら下がってたんです。このシーンはマンガでも描きましたが、いまだに強烈に残っているんですよね。銀座のクラブのママですから、結構ゴージャスな部屋ですよ。なのにバスルームにパンティ1枚って……。悲哀というか何というか。そのときに「これだ、この感じだ!」って思ったんですよ。それで「ひらけた」っていうか、夜の世界を描くのはアリだな、と。僕にとっては人生を変えた女性ですよね。
そうして遊びを重ねていくうちに段々、余裕といいますか、スケベ心も芽生えてくるわけですが、それで、手当たり次第に食うかっていったらそうでもないですよ。私は常々「愛のないセックスはしない」って言ってます。どんなにキレイな女でも愛情がなければやることはないし、逆にキレイじゃなくてもその女性から何らかの愛おしさみたいなものを感じれば、交わることだってあります。