テレビではその豊富な知識と経験を武器に、舌鋒鋭く迫る姿が印象的である。そんな氏は、小学生時代にSM雑誌を通して淫靡な世界に触れて以来、自他ともに認める官能好きであり、さらに'90年代中期頃までであれば、ほぼ全作品読破しているというフランス書院文庫フリークでもあるという。今回はテレクラや援交ブームを期に得た独自の体験談なども踏まえ、持ち前の官能論を語っていただいた。
プロフィール 宮台真司
社会学者。宮城県出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在は首都大学東京准教授の顔をもつ一方で、テレビや新聞など様々なマスメディアを通じ、評論家としても活動している。著書は『日本の難点』(幻冬舎新書)、『<世界>はそもそもデタラメである』(ダヴィンチブックス)、『14歳からの社会学 これからの社会を生きる君に』(世界文化社)など多数。
MIYADAI.com.Blog
http://miyadai.com/恋愛もセックスもせず、アニメやマンガのキャラに熱をあげる男女が増えてるけど、「レベルが低い」と思います。さっき言ったように、現実の女との間に関係性を作れなくなった男は、どうしても「関係性から記号へ」ってなります。それが、AVの「単体モノから企画モノへ」の流れや、ギャルゲーが凌辱ゲームなど即物的エロに傾く流れを導きました。女も同じですね。典型がケータイ小説で、レイプがあっても妊娠があっても家族暴力があっても、何があっても大好きな彼氏が「気持ちはわかる」といって抱きしめてくれりゃOKみたいな(笑)。
「男の凌辱ゲーム化」と「女のケータイ小説化」は表裏一体です。そういうものにどっぷり浸かる連中ほど、実際の相手との間でエロチックな関係性をつむげないのは、僕の取材経験からもハッキリしてます。好みを横においても、僕はダメだと思う。記号に興奮する連中は、相手が入れ替え可能になるんで、絆を作りにくくなるからです。それじゃ家族も作れないし、安心して子供も作れないよ。僕が関係性のエロに耽溺できる人間だからこそ、家族や子供にこんなに深い愛情を注げるんです。
女は、今のところ、男以上に関係性や物語を求めます。男が大好きなフェチを好む女はあまりいません。その意味では、男よりも女の方が、今の性愛に対する不全感があると思います。昔よりもいろんなプレイをする女のコが増えたけど、なぜやるのかって尋ねると、男が喜ぶからって答えるコが多い。でも自分がやりたいことを存分にやっているコは少ない。だから彼女たち自身は満足していないことが多い。若い男は、自己本位はほどほどにして、女が何を望んでいるのかを聞き出して相手に近づかないと、僕みたいな中年男にとられてしまいますよ。
今後も、“オーラ“が消えた「絵モノ中心」「フェチ中心」の状況がしばらく続くでしょう。つまり、より低コストで性的欲求を満たすことで自足する男が増え続け、その分、不全感を持つ女たちが増えます。誰かが、もしくは何かが、応えきゃいけない。残念なことにメディアが応えていません。女向けのエロメディアやエロサービスの中に、女たちに拡がる不全感に応えるものが少なすぎる。そろそろ、男が女を満足させられない理由を、徹底的に考えるべき時期に来ているんじゃないかな。
突き詰めれば、結局のところ親の責任かもしれません。親が子供に勉強を押し付けるのもいいけど、パートナーとの間の絆が得られなかったり、ろくに性的満足の授受ができなかったりすれば、幸せになれないんだということを、ちゃんと教えるべきです。特に、不全感を抱えた女は、女に理解と満足を与えられないような「ヘタレ息子」を育てちゃダメ。問題が再生産されて、後続世代の女が不幸になります。
(文:オオサワ系、写真:大村聡志)