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今月の放言

活字じゃなきゃダメなんだ 岡田斗司夫

直筆短冊

元祖オタクである岡田斗司夫の功績は大きい。従来サブカルチャー領域の個別分野のマニアでしかなかったオタクを膨大な情報集積回路を持つトータルな文化として認識させた。そんな元祖オタクが、セックスを語ると…。

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プロフィール 岡田斗司夫

1958年生まれ。大阪府出身。アニメゲーム会社ガイナックスを設立、多くのアニメ映画、コンピューターゲームを手がける。その後、東京大学オタク文化論のゼミ講師を務め、現在は『株式会社オタキング』代表取締役。新しい文化の担い手として活躍中。

第2章 コレクターは棚を磨く

高校から20歳ぐらいまで僕のオナニーって凄かったですよ。だって、36時間ノンストップオナニーですから。イったチンチンを握ったまま寝て、起きてまたもう一度みたいな。その時、彼女もいたんですよ。セックスもちゃんとしてたのに、エロへの情熱は強かった。

最近やっと言えるようになったんですけど、セックスとオナニーって別の楽しみですよ。映画とビデオの関係に例えてみると、映画ってたまに映画館で見ると楽しいじゃないですか? ビデオはとても手軽に観ることができますよね。だから僕にとってセックスは映画、オナニーはビデオなんです。最近なんか、セックスはオナニーのネタじゃないかって所までいっちゃってる。僕は本当のオナニストかもしれないですね。

オナニーのオカズは活字です。実際の自分の体験でさえも一度活字化して頭の中に入れてしまう。エロい体験を活字化する。そうすることでそのネタは長持ちするようになるんです。体験って時間と共に薄れるんですよ。だから僕は一回活字化したり、本当に文章にするんです。体験を一度抽象化していき、忘れた頃にそれを読むと、「おっ、凄え!」って蘇ってくるんです。究極のオナニーだと思うけど、でもやっぱりバカですよね。

エロ小説で好きなパターンは、自分がエッチだという事を自覚しない女の人がそれをどんどん思い知らされていくようなやつ。SMとか女の人に身体的に苦痛を与えたりするのはどうしても好きになれない。かといって受け身が好きなわけじゃない。女の人を責めて、喜ばせたいっていうパターンが好きなんです。

コレクターってまず集めたいっていう欲求が強いので、自然と僕のエロ本コレクションもそういう作品が増えていく。とにかく棚一杯に集めるんですが、これはまだコレクターとしては初期段階。本当のコレクターは、一回処分していらないものを捨てるんですよ。『棚を磨く』っていう言葉を使うんですが、磨いた棚っていうのは個性がでるわけですよ。その点、僕のエロ本はかなり磨かれていますよ。「エロ本を4回捨てた」ってさっき言ったけど、棚を磨いた故の行動だったんです。

今は短編集かオムニバス的なものを買うことが多いですね。前は凄い好きな作家がいたんだけど、ちょっと変わってきて…。一人の作家が好きだと全作品揃えたいと思うんですね。でも、ちょっとテイストが違うのが出てきちゃうと辛い。逆に昔は使えなかった作家が今は使えるっていうこともたまにあります。どれが当たって、どれがハズレるか、その確率は100%じゃないので、短編集みたいなのがいいんです。5~6本もあれば、どれかは当たるだろうと思って。

活字じゃなきゃダメなんだ 岡田斗司夫03
活字じゃなきゃダメなんだ 岡田斗司夫04