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今月の放言

あの夏、ブラの紐が見えていたら… 阿藤快

直筆短冊

ある時はヤクザの親分、またある時は旅番組のリポーターと、その表情を変幻自在に操る“怪優”阿藤快。今回は自身の淡い体験談を踏まえ、性に関する独自の概念を語ってもらった。銀幕からもブラウン管からも決して伝わらない、まさに素の告白。彼の目には懐かしき昭和の思い出が広がっていた。

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プロフィール 阿藤快

1946年生まれ。神奈川県出身。1972年映画『無宿人御子神の丈吉・牙は引き裂いた』で銀幕デビュー。以来『殺人遊戯』や『影武者』など数多くの映画に出演。その人情味溢れるキャラクターはお茶の間でも大人気。2001年11月14日に阿藤海から阿藤快に改名 。

第3章 同伴喫茶にあの子を誘った

当時、性に関する情報は皆無でした。グラビアの雑誌もなかったし。憶えているのは「完全なる結婚」ぐらいかな。知らない? 医学書よりもう少し柔らかく性について書いてあるやつ。

だから、俺らの時代は違うんだよね。こういう時代もあったんだっていう。そういう世代の人が若い子と事件になるっていうのはなんとなくわかるわなぁ。堅い仕事とかについてたら抑圧されてた世界が一気に弾けちゃうのかもしれない。一気に性の氾濫みたいなのが起きちゃったから、それについていけなくなっちゃったんだろうな。

そういうことを考えると、俺らは“かわいそうな世代”ですよ。性に対する自由がなかった。徐々に加速してきたのはロマンポルノとかが出てきてからで、あったのは同伴喫茶ぐらい。俺らの頃はラブホテルもまだあまりなく、しかも高かった。もうね、修行増みたいな暮らしですよ。そういう時代が日本にあったんだよね。ほんと、そういう意味ではある意味、一番不幸な時代。

俺が大学生だったのは1970年頃。当時は新宿の西口で安保の話とかを熱く話してたのに、たった30年で一気にこうなっちゃったんですよね。それと同時に同伴喫茶がなくなってね。同伴喫茶は階段も室内も暗くなってるんですよ、陰靡な感じでね。キャバクラのボックス席みたいなのがあって、そこでカップルはセックスまではしないけどいちゃつけるんだよね。もちろん、俺も行ったことありますよ。誘うのにすごい緊張したけど、相手も期が熟すみたいな感じで了解してくれた。でも、まだその時は肉体関係なんてない。セックスの前に行くところなんです。だから同伴喫茶に行くのはある程度段階を踏んでるから、相手もすんなりとOKしてくれたんだろうな。それよりもやっぱり手をつなぐほうがドキドキでしたよ。当時は付き合って3ヶ月で手をつないで…とかそういう時代。結婚するまで貞操を守るっていうのがまだありましたからね。

俺の青春はそんな時代だったけど、今は会ってすぐにセックスするっていうのもありだと思うんだな。でも、そこから先に進むのが難しいよね。俺らは少しずつ段階を踏んでいってたから、到達するまでに時間がかかって、その間にいろいろ考えることもできた。でも、今は違うでしょ。今の子たちは一気に目標地点までいっちゃうわけで、「その先どう進めてくの?」って思う。だから、若い子達は悩みが多いんじゃないのかなぁと思うよ。快楽と自分の心の問題がついていけないから、バランスをとるのがとても難しいんじゃないかなぁ。

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