劇団主宰、小説家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ…。多方面でその才能をいかんなく発揮している本谷有希子。彼女の作品に描かれているキャラクターたちの“切実さ”は、愛情とも憎しみともとれる、実に人間くさい愛おしいもの。そんな彼女が幼いころからもっている心の鏡に映し出された“愛情”とは、現実と自我と妄想と葛藤からなるこれまた笑っちゃうくらい人間くさいものだった。
プロフィール 本谷有希子
1979年生まれ。石川県出身。00年9月「劇団、本谷有希子」を旗揚げ。主宰として作・演出を手掛ける。小説『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は第18回三島由紀夫賞にノミネートされた。現在は雑誌『週刊プレイボーイ』『ダ・ヴィンチ』などでコラム連載をしながら小説を執筆。またニッポン放送「オールナイトニッポン」の金曜パーソナリティも務めている。
フランス書院文庫っておもしろそうですね(笑)。タイトルの付け方がゲームっぽいっていうか。いかにしてそのキャラを前面に押し出すかみたいなものが伝わってきますね。この中では『若妻と誘拐犯 密室の43日間』(夏月燐著 '05年刊)とか惹かれますね。女教師とか看護師とかほかの職業的なものと比べてタイトルからドラマ性が垣間見られるので気になります。
AVや漫画など視覚的にエロを感じるものがあるにもかかわらず、あえて文章でエロを表現するということは何だろうか、と思いますね。だから文章でエロを感じたいと思っている読者の方とかも、どんな人なのか気になります。
私が読んでて気になる性描写は、桐野夏生さんかな。女の人によって書かれたエンターテインメント性のあるものというか。うまい文章でごまかされてるけど、よく読むと中にはレディ-スコミックみたいな内容もあったりして。でもそれも文学として、小説としてちゃんと成立してるから。私もエロ描写に挑戦してみたいんですが、どうも恥ずかしくて思いきれません。あとは岩井志摩子さんは、ここまでエロのこと考えててすごいなと、本当にエロが好きなんだなと感服しますね。
私が性というものを少なからず意識したのは、幼稚園の時に一方的にエロいことをされていたときかな。あれはかなりエロかったですね。幼稚園のときってお昼寝の時間があるじゃないですか。布団を並べて寝るんですが、そのときにいつも同じ男のコが必ず私の横をキープするんです。そして寝たふりをして体をまさぐってくるんです。そうか、今思うとこれって完全に犯罪でしたね(笑)。ええ、痴漢でした(笑)。だって服の中にまで手を入れられていましたからね。「なんだろうこれは」「どうしたらいいんだろう?」って思いながら何もできなかった。その男のコのことは気にはなっていましたけど、別に好きっていうわけではなかったんです。イヤならイヤって先生や誰かに言えばいいんだけれど、言えなかった。その男のコに触らせていることに、私の中で肉体的というより精神的な快感がきっとあったんでしょうね。わりと秘密なことをやっていて、それを楽しんでいるなっていうのを幼稚園の子供ながら感じていたんだと思います。