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新しい性のカタチ

愛だけじゃ勃たない キム・ミョンガン

性に対して飽くなき探求を続ける、キム・ミョンガン。性を独学で習得した彼は大学で講師をする傍ら、[せい]という相談所で奥様の悩みを解決する救世主だ。今回は幅広い知識と体験によって社会と性について語ってくれた。

愛だけじゃ勃たない

プロフィール キム・ミョンガン

'50年兵庫県生まれ。性人類学者、現代性教育・性科学者。和光大学講師。主な著書に『もっとたのしいセックス』『恋愛の基礎』など多数。自ら主催する性に関する教育・指導・相談所[せい]でアドバイスを行っている。 公式URL : http://www.office-sei.com/

第1章 素材の美しさが重要

日本は宗教がない代わりにあらゆるタブーを作り、シチュエーションを変えて想像力をかき立ててきたじゃないですか。フランス書院文庫を見てると、日本には文字とシチュエーションだけでこんなにスケベな気持ちにさせてくれるものがあるんだよって世界に誇りたいですね。

人間は想像することで人体に変化が起こりうる生物なんです。一つの文字から興奮できることは人間にとってすごい文化ですよ。

ということで、『濡壺』(青木信光著 '02刊)。このタイトル、好きだなー。アソコを表現する言葉で秘肉とか淫肉とかあるじゃないですか。いい言葉ですよねー。逆に私は、ペニスっていう言葉が大嫌いでね。ああいう医学用語の言葉を使うべきじゃないですね。陰茎とかその人の宗教観、人生観が反映されるようなおちんちんの呼び方をしてほしいものです。

私の今までの経験で一番色っぽかったのはある看護婦さんです。たしか30代半ばぐらいだったかな。彼女たちは命の現場にいますから、平日なんかニコリともしないですよ。「今週は心臓手術を3回やった」なんてね。酒を飲んだって酔わないし、セックスしたって燃えない。なぜかというと次の日の手術が頭にあるから。

でも、次の日が休みとなると表情が全然違いますね。コップ一杯で「もう好きなようにして~」ってかんじですからね(笑)。燃え方も全然違いますよ。もし、フランス書院さんに『金曜日の看護婦』っていう本があったら絶対買いますね。

若い頃は色気優先でしたけど、今はもう一回だけのセックスは嫌。ヤルなら継続してヤってみたい。この人を変えてみたい、教えてみたいと思う人じゃないと。見た目だけだったらナイスバディの子なんてゴロゴロいるもの。セックスだけだったらつまんないよ。あと巨乳はダメですね。なぜなら、私の家系は全員巨乳だったから(笑)。もう、いやー。

今の私にとって女の人は素材の美しさが重要。これがなければもう料理しようとは思わない。完成した素敵な女の子は興味ない。私が手を出さなくたって他の男がどんどん手を出してるはずだしね。自分の素材に気づいてない無垢な女の子を育てたいっていう教育者、というかはオヤジ的な気持ちの方が強いですよね。いわばプロ野球のスカウトマンと一緒ですよ。地方をまわって「こいつ、3年後にはいいピッチャーになるぞ」って。

愛だけじゃ勃たない01
愛だけじゃ勃たない02