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新しい性のカタチ

愛だけじゃ勃たない キム・ミョンガン

性に対して飽くなき探求を続ける、キム・ミョンガン。性を独学で習得した彼は大学で講師をする傍ら、[せい]という相談所で奥様の悩みを解決する救世主だ。今回は幅広い知識と体験によって社会と性について語ってくれた。

愛だけじゃ勃たない

プロフィール キム・ミョンガン

'50年兵庫県生まれ。性人類学者、現代性教育・性科学者。和光大学講師。主な著書に『もっとたのしいセックス』『恋愛の基礎』など多数。自ら主催する性に関する教育・指導・相談所[せい]でアドバイスを行っている。 公式URL : http://www.office-sei.com/

第2章 性の求道

若い頃、「快感とはなんだ?」って死ぬほど考えた時期がありましたねー。頭が爆発しそうになるほど。そんでマルキ・ド・サドの「快感とは薄められた苦痛」っていう言葉でふっと生き返ったんです。もともと快感っていうのはなくて、その根元は苦痛なんです。脳内に快感物質というのはなくて、エンドルフィンとかそういうのは全部、苦痛物質。快感学者はいませんけど、苦痛、つまり毒の学者ならいくらでもいますから。

医学部の先生が薬を探すときはまず毒を探すんですよ。毒は全部薬になります。ニンニク、たばこ、モルヒネ、ぜーんぶ毒。これらを大量に摂取すると死に至りますが、例えばウイスキー1本を5分で飲んだら死んじゃいそうですけど、ちびちび飲めば快感になるんです。だから、快感というのは基本的に存在しないし、人体にも快感を感じるセンサーっていうのはないんです。苦痛を自分なりにどう薄めるかが快感につながっていくんです。

ということで、『濡壺』(青木信光著 'こんな性に関する疑問を解決するため、いろいろ実験じみたことをやりました。いちばん試したのは20代の頃ですね。

セックスを気持ちよく感じる人とそうでない人を見分けるにはどうしたらいいのかと思って、人相や手相を勉強したし、粗器を名器に変えるにはどうしたらいいのかと思ってマッサージとか整体もたくさんやりましたね。

だから、私にとって当時のセックスは知識を実践する場だったんです。質問責めにしたりしたのでエロっていう雰囲気はなかったですね。「あなたはホントに楽しみたいの?わたしはキムさんの実験材料なんじゃないの?」って何回も言われましたよ。「どうしてこの乳首は感じるのか?」「こことあそこを触るとどうして気持ちいいのか?」というようにとにかく快感とは何かを探していた。

あと若い頃って早漏との戦いでしょ。私は17歳から20代の半ばまでパンツを穿かなかった。いつも風通しをよくして、毎日、亀頭を塩で揉んで、外を走って体を鍛えていましたね。いつお呼びがかかってもいいように、いかにペニスを元気よく勃たせて早漏を克服するかにかけてました。体に悪いものや精力を邪魔するものは一切食べなかったですよ。

愛だけじゃ勃たない03
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