セックスレス――これは夫婦がお互いにしっかりと向き合い、改善策を講じないと熟年離婚になりかねない重大な問題である。そのためには、夫婦のお互いの普段からの心がけが大事であると、池下育子先生は語る。だが最近のセックスレス事情は、それだけでは解決できないほど複雑なのだという。高齢出産や更年期事情などをふまえ、現代の夫婦が、そして女性が抱える問題について伺った。
プロフィール 池下育子
'92年に池下レディースクリニック銀座を開業。会社や人間関係などのストレスで悩む女性たちの相談に本音でアドバイス。女性の心身のトラブル全般について積極的に取り組んでいる。詳細はhttp://ikeshitaikuko.com/まで。
最近は、処女と童貞の結婚ってすごく多いんです。こういう未完成婚の場合は、お互いに今まで一度も性経験がないわけです。男性側もやり方がわからない、どこに挿入していいのかわからないし、女性側も恐怖心が強くてダメっていう。ただ、そういう夫婦関係でも女性の場合は、40歳近くなって「赤ちゃんが欲しい」って思っちゃうんです。セックスを知りたいとか、気持ちよくなりたいとかそういうことじゃなくて、どうしても「赤ちゃんが欲しい」っていう思いが強くなって。でも赤ちゃんを作るっていうことは、セックスをしなくちゃいけないっていう現実が立ちはだかります。赤ちゃんは欲しい、でもセックスはできないっていう風に悩む人はホントに多いんですよ。
もちろん、ご主人にはっきり「あなたは童貞ですか?」って聞いてるわけじゃないですけど、奥さんに聞くと、過去に遊んだ経験もなければ恋愛経験もない、また経験としては一人、二人はあったけれど、挿入までには至らなかったっていう人とかが結構いるんです。で、「結婚すればどうにかなるだろう」って思ってて、お互いに歩み寄らないものだから、5~10年経っても結局何もないっていう未完成婚、このケースはものすごく多いんです。
こういう女性にカウンセリングするのに、一人につき一時間くらいはかけますし、処女膜切開をする人もいます。もう触ろうとするだけで「ギャ~ッ!」みたいな。大騒ぎですよ。指一本も入らない。それだけ女性が嫌がるし怖がるわけですから、いくらご主人といえどもあきらめちゃうんですね。ただ、(セックスが)できないことっていうこと自体は、夫婦にとってはどうってことはないんだけど、やっぱり子供が欲しいっていう思いがあるから、重い腰を上げてここまでやってくるわけです。中には、人口受精でもいいから子供を作りたいという人もいます。でもそんなとき、私は「いい? セックスっていうのは、汚いものでも怖いものでも何でもないんだから。できないよりもできた方が、あなたの人生観も違ってくると思うよ。さらに子供ができたらもっと素晴らしいじゃない」っていうことをよくいうんです。
さっき女性の性に関わる悩み事が細分化しているって言ったのは、そういうことなんです。だから一言でセックスレスっていっても複雑で、問題はそれぞれ違ってくるわけですよね。