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新しい性のカタチ

セックスレスの深い闇 池下育子

直筆短冊

セックスレス――これは夫婦がお互いにしっかりと向き合い、改善策を講じないと熟年離婚になりかねない重大な問題である。そのためには、夫婦のお互いの普段からの心がけが大事であると、池下育子先生は語る。だが最近のセックスレス事情は、それだけでは解決できないほど複雑なのだという。高齢出産や更年期事情などをふまえ、現代の夫婦が、そして女性が抱える問題について伺った。

セックスレスの深い闇

プロフィール 池下育子

'92年に池下レディースクリニック銀座を開業。会社や人間関係などのストレスで悩む女性たちの相談に本音でアドバイス。女性の心身のトラブル全般について積極的に取り組んでいる。詳細はhttp://ikeshitaikuko.com/まで。

第3章 セックスレスは夫婦二人の問題

子供も巣立って子育ても一段落し、母性も弱まった40~50代くらいの女性というのは、“女性としてもうひと花咲かせたい”、“オンナとして男から誘われたい、抱かれたい”って強く思うものなんですよ。そんな中で、一番身近な男性というのが旦那さんなわけですけど、もうセックスレス歴20年、どちらからともなく「今さら」的な空気が出てしまいって、とてもじゃないけど向き合えないわけです。だから、40代くらいから家庭外、いわゆる婚外性交をしている女性が増えていて、しかもそういうことに対しての抵抗感があまりなくなってきている。「主人とは嫌だけど、セックスはしたい」というわけです。

そういった意味では更年期以降の女性にとっては、女友達が大事になってくるんです。なぜなら、自分を誉めてくれる唯一の存在だから。あるいはそんな女友達と、オシャレをして外に出ることも重要になってきますね。そうすると男友達とか、その友達の友達とか、あまり関係のない人から「お若いですね」「素敵ですね」って、声をかけられるから。女性にとって、特に男性からの“リップサービス”って、とても嬉しいんですよ。だから、これからはそういう“遊び”時間を作っていきたいっていう女性が増えていますよね。40代の場合は、まだまだやり直しができるし、40代前半の女性なら子供のことだって可能性がないわけじゃないので、そういう意味ではセックスを自分のウエイトの中では大きくとらえてらっしゃいますね。

実際、50代はなかなか少ないですが、40代半ば以降では最近は増えてきましたよ。自分一人の体ならそれほどクオリティは高まらなくてもいいけど、パートナーができると、彼氏にも満足させてあげたいとか、痛くなく気持ち良く彼を受け入れたいっていうので、ホルモン療法などにチャレンジされる女性もいますね。そういう前向きな女性を見ると、すごく嬉しいですね。

でも、彼女たちも、家庭を壊そうと思うくらい他の男性にハマっていくかっていうと、そうじゃない。これは実際にあった話なんですが。42~43歳の女性で、妊娠はこれが最期のチャンスかもっていう女性が、セックスレスのご主人とでなく、ボーイフレンドとの子供ができたっていうこともありました。彼女には「これが本当にラストチャンスよ」って言っても、ご主人以外は生むわけにはいかないって言うんです。ご主人とはセックスはなくても一緒にいたい、ボーイフレンドはあくまでセックスパートナーっていう。そんなんだからもう正直、よくわからないですね(笑)。昔の言葉で、“家庭にセックスは持ち込まない”っていうのがあったけど、今の時代こそ、それにピッタリあてはまっているのかなって思いますね。

でもね、セックスレスは夫婦二人の責任なんだから、もうちょっと年をとったら一緒に鏡を見ましょうよ、と言いたいですね。子供たちも巣立って、夫婦二人きりになるんだから。でも、それを女性から言い出すっていうことはなかなかできない。だから、奥さんが口紅を変えたりとか、いつもと違ってオシャレをしたときには、ご主人がひとこと「キレイだね」とか「いつもと違うね」って言葉をかけてくれれば、気持ちが高まっていけるんじゃないかなっていうのは、女性たちはよく言いますよね。

男性たちに言いたいのは、まず女性を褒めることですよね。言葉とリップサービス、あとは抱きしめること。いちばん日本人が苦手なことですけど、それに尽きます。何でもいいから、毎日相手を褒めてあげてください。キスとかセックスじゃなくていいんです。毎日、認めてあげることですね。裸のおつき合いっていうけど、やっぱり五感を使ってぬくもりを感じながら、二人で会話を交わしたり、触れ合うことがすごく大事なんです。

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