勃起していたクリトリスが萎えたから女性の快楽も萎えた、腟の締まりが強いのは愛されている証拠、女性は激しいピストン運動が大好き、挿入が一番感じる……どれもウソ。世の男性のほとんどが、このような間違った認識をしている。現代性社会にはびこる悪しき迷信から幸せのセックスまで、医師・北村邦夫に熱く語っていただいた。
プロフィール 北村邦夫
自治医科大学医学部卒業。'88年より社団法人・日本家族計画協会クリニック所長で、現在は日本家族計画協会常任理事。また厚生科学審議会臨時委員。『ピル』(集英社新書)、『ティーンズ・ボディーブック』(扶桑社)、『幸せのSEX 男の誤解 女の誤算』(小学館)など、著書多数。
最近はスローセックスという言葉をよく見かけますが、この源流となっているのが「ポリネシアン・セックス」と呼ばれるものです。ポリネシアンとは南国の島の一つで、そんな非常にゆったりとした時の流れの中で性の営みをするというものです。具体的には、性器の結合をせず、3日3晩、男女は触れ合いを続ける。さらに挿入しても30分間は動かない、勃起力が落ちたときだけ、多少腰を動かす程度でね。そもそも射精するということに対するこだわりをもたないんです。現代人のあわただしさを考えたら、そんなことやってられないと思うかもしれませんけどね。この営みのやり方が、ポリネシアン・セックスとして知られているものです。
江戸時代の学者、貝原益軒の言葉に「接して漏らさず」という言葉があります。これはつまり、精液というのはそもそも命の源であり、それは骨髄液に相当するものであると。骨髄液というのは脳を保護する液体であるわけで、すなわち射精をすることは、男性が死に一歩一歩近づいているということなんだと。性交には、こういう考え方が根強くあるわけなんです。この「接して漏らさず」に相通ずるような考えが、ポリネシアンセックスにもあります。江戸時代と南国で共通する思想があるというのは、すごく興味深いと思いますね。
こう話した後、今日みたいに、僕のところに取材にくる、君たちのような若い連中にすすめるわけですよ。「君もちょっと試しにやってみてくれよ」と(笑)。若い男たちは、いかに速く、そして強く突き続けることが男の甲斐性であり、女性をイカせることが男性の使命であるかのような錯覚に陥ってしまうんですが、「”動かないセックス”とはこれほどすごいことなのか」ということを、僕に会った連中は気づくわけです。
ただ長時間、勃起力を維持するというのは、大変だと思うんです。そこで僕はED治療薬&ピル&コンドーム、二つの薬剤とコンドームを上手に使用することでのポリネシアン・セックスの実現を提唱しています。ピルを使用するのは、妊娠をする危険性があるカップルにとっては何とか対処しなきゃいけないから。性感染症の問題があるならコンドームは必須であることは言うまでもありません。ED治療薬によって相応な勃起力をもった男性が、妊娠という問題、さらには性感染症という問題からも解放され、動かない状況を保ち続ける。それがED治療薬の上手な使用によっては可能になるんです。.5~10.5センチ、横幅2~3センチから5.75~6.25センチにまで膨れる。よく“ゆるい”と言いますが、そのゆるさこそ、二人の関係は極めてフィットした関係であるということなんです。“マイ・ペニス・イズ・ロスト(僕のペニスはどこへ行っちゃったの!?)”っていう状態になる。これを知る男は、ことのほか少ない。