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オトナのお仕事

所変われば、好みも変わる?

第4章 所変われば、好みも変わる?

その起源はエジプト、イギリス、さらにはイタリアともいわれているコンドームだが、日本が誇る不二ラテックスのコンドームの評判は海外でも一様に高い。特に中国では凄まじいのだとか。実際に現地で声を聞いてきた副工場長は、何度も頷きながら力強く語る。「もともとはピルを使う女性が多いのですが、最近はコンドームの需要も高くなっているんです。中国国内にもメーカーは存在しますが、品質では不二ラテックスのものとは比較にならないくらい低い。日本製のコンドームが求められているんです」

一般シロウト的には、ここで中国で市場を開けばいいなどと短絡的に考えがち。だがそこには、物価という高く大きな壁が立ちはだかる。「中国の薬局に行って買い物をしたときに聞いたのですが、不二ラテックスのコンドームは品質は抜群に高いけど、同じくらい価格も高い。もちろん買う人もいるけれど、それはほんの一握りの富裕層の人間くらいだと」さらに海外取り引きをする際の問題点として、認可の問題があげられる。ドイツならドイツ、オーストラリアならオーストラリアと、各国ごとにISO規格以外に要求項目が増え、そのハードルが年々高くなっているので過酷な試験を何度も繰り返さなければならない。工場長は「今年からロシアとの取り引きがあるのですが、認可に時間を要するので不安ですよ」と、今からこぼしていた。

超うすコンドームのリンクルを筆頭に、海外でも薄いものが望まれているわけだが、そんな中、変わった要望もあるのだとか。「『極アツ』っていう名柄があるんです。厚さ的には0.1ミリで、通常のコンドームを2枚重ねたくらいのものなんですが、これがまたオーストラリア、ヨーロッパなどでは人気が高いんです」厚ければ厚い分だけ規格も簡単にクリアできる分、何の苦労もないコンドームの製造。「普通の性行為のみであればこういった厚いものは必要ないんでしょうけど、ゲイカルチャーが浸透しているような国では需要があるんでしょうね。まあ同じコンドームでも、その国ごとに色々と使い道もあるんでしょう……。ちなみに弊社と取り引きのある国で、最も大きなサイズのコンドームを使用しているのはオーストラリアですね(笑)」と、何ともいわくありげな裏話を語ってくれた工場長。また前述の通り、厳しいテストや審査基準をクリアしているからには、破れるなどといった事故はまずありえない。にも関わらず『穴があいていた』『行為の最中に破れた』といった声、いわゆるクレーマ-も存在する。極限の薄さに挑み絶対にあり得ないことではないだけに、こういったヤカラは昔から後を断たない。

最後に実地に趣いた経験から世界各国のコンドームのあり方を知った上で、現代の日本に警鐘を鳴らした。「アメリカなど諸外国ではエイズの話題になると、教会の偉い人から大学の先生に至るまで、みんなでコンドームをつけようって訴えかけますが、日本はなぜかそれができず政府レベルで弱いんです。これからは個人個人がエイズを含む感染症に対して、もっと意識を高くもつ必要がありますね」

(文:オオサワ系) Web版、終わり

所変われば、好みも変わる?01
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