「あっ、あっ、ああン……あああン、アアアア~ンッ!!」午前10時。開店と同時にあえぎ声である。m's秋葉原店はアダルトグッズ&コスプレ衣装の専門店。アダルトグッズをポップ&ファッショナブルに販売するという全く新しい戦略で、開店からわずか5年にして業界トップに昇り詰めた革命的ショップだ。「最も込み合うのが平日の夕方5時~7時ですね。もうギュウギュウになって、ちょうど中央線のラッシュと同じ状況です」。佐々木店長が涼し気な表情でさらりと語ってくれた。女性客も多く、その比率は7対3にまでなるらしい。
地下1階と地上1階がDVD、2階がオナホール、3階がバイブやローター、4階がランジェリー、5階がコスプレ、6階が中古ビデオという商品構成。「オナホールやバイブって、箱に入ってて見れないじゃないですか。ウチは全て手にとって動きなどを自分で確認してから購入できます。そういうお試しができることが、売り上げにつながっていますし、お客さんも楽しんでくれています」。どれどれ、試しに目の前のバイブのスイッチを入れてみたが、これがまた凄い。回転や上下運動、イボイボだのビラビラだのって、もう大変! 度胆を抜かれた我々は、あえぎ声とバイブのモーター音からなる、パワフルな店内を後にした。
そして中田義実社長。残念ながら(?)、佐々木店長と同様、これまたかなりのイケメンときた。今だから打ち明けるが正直、取材という大儀名分のもとアラ探しでもしてやるという心積りであった。そしてフィギュアに囲まれた応接室で待つこと数分、入ってきたのはどこからどう見ても好青年……ん、あれぇ?「初めまして、どうもこんにちは。今日はよろしくお願い致します」背中をうやうやしく折り曲げ、ひとりひとり丁寧にあいさつをするこの青年こそ、社長の中田氏であった。エェ~ッ、この人が!? そう、完全に拍子抜けである。「もともと大学時代に風俗関係の仕事をしていて、そのときにアダルトグッズと関わったことがきっかけでした。今でこそウチで390円のローターが、当時は1,500円(笑)。調べていくうちに原価がかなり安いことがわかったんです」
小さなマーケットだが、適正価格にもっていけば儲かるのではと思い、中田社長は5年前に上野にアメ横店をオープンさせた。だが当時は“大人のおもちゃ”の時代で、そこは暗闇と謎のベールに包まれた社会的危険地帯。古いしきたりや横のつながり……e.t.c.。実際に足を踏みいれて中田社長が見たものは、それはもう凄かったんだとか。「ヒドかったですね。これでよく業界が成り立つなあと。原価の5~6倍は当たり前でしたし。あと当時のアダルトグッズ業界って、流通がしっかりしていなかったんです。例えば商品一つをとってもバーコ-ドが付いていなかったりしましたからね。またシロウト同然の僕みたいな人間が業界に参入して、しかも価格破壊までしたわけですから。最初は嫌がらせとかも多かったですね」