「まあ、嫌ががらせと同じくらい反響もありましたけどね」と苦笑いで語る中田社長。従来まではびこっていた、悪しき業界のシステムを根底から覆す大型改革。それだけに中田社長に期待する声も多かった。「特に業者さんは、最初こそ何か怪しいものを見るような感じでしたけど、注文の数から今までにないくらいの規模のお店だっていうことがわかると、心を開いてくれました」。そしてその“声”は秋葉原に出店をすると、いっそう加熱する。「テレビや雑誌の取材の影響から、ものすごい反響になりましたね。店もそうですが、アキバそのものの影響力というものを凄く感じました
ここで誰もが抱くであろう疑問。なぜ秋葉原に店を構えたのかということ。この秘密は中田社長自身の生い立ちにあるのだが、満面の笑みで答えてくれた。「昔からアキバが大好きで、毎日通っていたんですよ」
……失礼を承知でいわせてもらおう。つまり一般的なオタクのイメージとかけ離れたスマートなルックスでありながら、中田社長は正真正銘、バリバリのオタクなのだ。最初は耳を疑ったが、大好きなガンダムやフィギュアの話をする際の表情を垣間見たら、誰もが納得せざるをえなかった。
さらに中田社長は続けた。「駅前のいい場所なのに、ずっと物件が空いていたんですよ。通いながら家賃を聞いていくうちに、かなり下がっていったんです。それがアキバに進出した理由の一つ。あともう一つは、アキバがこれからオタクだけでなく、一般の人も来るようになって、新宿っぽくなるんじゃないかなあって思ったんです」。さすが、オタクならではの嗅覚である。
従来までのアダルトグッズの市場はマニア層のみ。でも中田社長は出店前からターゲットはマニア路線でなく、あくまで一般の人と考えていた。アメ横店での経験から、アキバでの客の反応は、ある程度、予想はできていた。そしてアメ横にはない、アキバならではの特色がm'sの人気を決定づけた。「アキバに出すことで、男性用オナニーグッズに力を入れたかったんです。さらにアキバといえばコミックじゃないですか。ウチのオリジナルのオナホールなどは、同人誌やアニメで有名な方にパッケージデザインをしていただいて、お客さんの注目をよりいっそう集めようと考えたんです。アキバにしかない流れみたいなものを確立したかったんですよ」