ダッチワイフの現状を知るなら生みの親に聞くのが一番。ってことで社長である土屋さんにご登場願い、創作のきっかけから尋ねた。その厳格な風貌とは裏腹に(?)、笑顔の絶えない優しい雰囲気がとても印象的だ。なぜラブドール・ビジネスを? という質問に「この商売を通じて多くのドールユーザーと知り合い、ドールに対する期待や要望を聞いていくうちに自然とここまできちゃった(笑)」
ちなみにオリエント工業のドールを障害者が購入する際は割引特典がつく。このことに触れると、社長の笑顔がスッと真顔になった。「お客さんの中には足などに障害をもった方もいたんです。そういう人にとってダッチワイフは遊びじゃないんだと。だからこそ真剣に取り組まなきゃっていう気持ちになりましたね」
そして'77年に待望の第1号「微笑(ほほえみ)」が誕生する。この当時、2店所有していたアダルトショップを1店処分することで約1,000万円の制作費を捻出した。まさに捨て身の作品だった。「当時のドールは全身空気式というのが主流でしたが、うちは顔や胸、腰部分にソフビやウレタンを入れて弾力性を加えて、よりリアルな感触に近づけたんです。でも空気漏れだけは防げなかったですねえ」
だがそこは土屋社長、'82年に発売した「面影(おもかげ)」では空気を一切使わないドールの制作に成功。社長は当時の様子を懐かしそうに振り返る。「これは手間がかかりました。まず型を起こして、そこへラテックスを塗り込んで乾燥させ、首部分から発泡ウレタンを入れる、そしてウレタンとラバーの間にラテックスを塗り込む作業があって……と、とにかく大変だったんです。ですから値段も上げざるを得なかった。今みたいにお客さんからガンガン問い合わせがあれば値上げせずにすんだのに(笑)」
その後オリエント工業には目が回るような忙しい日々が訪れる。ボディ側面のラインを消すことに成功した'92年の「影華(えいか)」、また'97年に生まれた、頭部の取り付けが共通化された「彩華」「優華」「美華」の「華」三姉妹シリーズ、さらには接続パーツ部分に改良を加えた「キャンディガール ラテックス」シリーズなど、とにかく'90年代はヒット商品を連発した。
「さっき話したような障害者の方や高齢者の方とかは今もそうだけど、当時から元気な人が多かったですからね。風俗行くのはイヤだけど性欲はあるっていう。今なんかは'70歳代でもバリバリ現役ですからね(笑)」そして社長はこうも続けた。「生身の女性を囲ったり、トラブルを起こすよりはよほど健全ですよ。とにかく男はデリケートですから、自分のしたいときにするというか、従順なものに惹かれるんでしょうね。中には再婚はしたいけど、相手の女性の体をどうしても不潔に感じちゃうので……という人もいる。本当に色々ですよ」