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オトナのお仕事

そしてドールは人間に近づく

第3章 そしてドールは人間に近づく

'90年代後半になるとドールのクオリティはもちろん、客層に至るまで大きな変化が訪れる。そう、世の中にインターネットが普及し始めたのだ。これによりオリエント工業は、多くのドーラーから注目を集めるようになり、売り上げも飛躍的な伸びを見せた。思い出を語る間、ここでも社長の笑顔は絶えない。「当時は『プチ』シリーズが全盛ですね。あれは'99年だったかなあ。身長やサイズを従来のモデルから大幅に縮小したり、あと顔の表情も“セクシーなお姉さん”から“可愛い妹”にチェンジしたんです。もう爆発的に売れましたよ(笑)」

そしてネットの普及と同じくらい、少なからず現在のオリエント工業に影響を与えたのが造型師を代えたことによる、表情のモデルチェンジだ。ただこれに関しては特に理由はないようで、単に古いマネキン顔よりは今っぽいモダンな顔の方がいいと思ったから、と社長。だが、これがより新たなファンを掴んだこともまた事実。「もちろん、大部分の方はダッチワイフとしても使いますよ。ただそれとは別に、そのあまりのカワイらしいたたずまいから、見て楽しんだり、癒しを求めるなど、純粋に“フィギュア”としてのファンも現われてくれて。まあ不況だなんだっていう暗い時代性もあったのかもしれないけど、そういったものが求められる状況だったんでしょうねえ」前述の心の安らぎ効果である。

さらに21世紀に突入しても勢いは止まらない。初めてシリコンで仕上げた、超豪華版ドールであるキャンディーガール「ジュエル」を発表した。限りなく人間に近い肌の質感や美しさは、生身の人間と間違えるほどリアル。このドールの乳房を揉む動画を見て欲しい。その素晴らしい触感が伝わるはずだ。値段もソフビ製の15万円から60万円と一気に4倍上がった。社長が苦笑い交じりに口をついた。「もうちょっと安く提供したいのはやまやまなんですが、作るのにホント手間がかかっちゃって。これが精一杯だったんですよ」

シリコン製のド-ルを一体制作するのにどれだけのコストがかかり、またどれだけの儲けが出るのだろう。誰もが気になるところに触れてみたが「うちは従業員も多いですし、一体を作るための時間やコストに割り振ることができないんです。なにせ工場、材料費、ショールームなど色々ありますから。あとネットが普及しているとはいえ、雑誌や新聞などの広告だけで月に200~300万はかかっていますし。ただこれだけはいえますが、僕が昔アダルトショップでやっていた頃のように、原価の5~10倍なんてことはありません(笑)」

他社作品も販売しよう -- そしてドールは人間に近づく01
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