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オトナのお仕事

他社作品も販売しよう -- それが転機だった

第1章 他社作品も販売しよう -- それが転機だった

住所を聞けば、誰もがトレンディドラマのような華やかなオフィスライフを夢想するであろう都内屈指のオシャレスポット。そこの高層ビルの一角に、DMMはオフィスを構える。「いらっしゃいませ」と出迎えるのはモデルと見まがう3人の受付嬢。

応接室の高級ソファに座らされた取材班は終始無言。もうのっけから、いつもと調子が違っていた。落ち着かない状態で待つこと数分。広報担当のTさんは颯爽と現われた。細身のスーツがよく似合う、メトロセクシャルな居ずまいは、オシャレなオフィスの雰囲気とも違和感なくマッチ。

DMMの魅力は、何といっても扱っているアダルトビデオ(DVD、画像配信)の商品点数。この拡大路線はいつから始まったのだろう。DMMを設立初期から知るTさんは、落ちついた口調で語ってくれた。

「現在のDMMの基礎が作られたのは、'02年の夏頃ですね。それまではインディーズの作品を細々と映像配信していました。サイトへのアクセス数が徐々に増えてきたので、従来までのようにインディーズの旧作だけを扱うのではなく、もっとたくさんのメーカーさんに参入して頂こうという話が自然に出てきました。最初はビデ倫系のメーカーさんや、インディーズ以外のメーカーさんに声をかけさせて頂いていたと思います」

簡単に「参入してもらう」と口にするTさんだが、苦労も多かったに違いない。当時は今ほどインターネットが普及していない。ライバルメーカーとも言える他社のサイトで、自社作品を販売(有料画像配信)するなんて、相手のメーカーからしたらDMMに「取り込まれる」という印象を持っても無理はない。

Tさんは当時を振り返るように笑顔で語ってくれた。「確かに最初は難しかったですね(笑)。私たちがもともとインディーズ作品を扱っていたサイトだったこともあって、特にビデ倫系のメーカーさんなどは、良い印象ではなかったでしょう。でもビデ倫系のメジャーメーカーさんが協力してくれるようになった頃から、徐々に他のメーカーさんにも受け入れられるようになっていきました」

具体的な説得方法などについて尋ねてみたが、これは意外にも皆無だという。「もう、ただひたすらお願いするしかないですよね。インディーズvs.ビデ倫という図式みたいなものは確かにありましたけど、逆にネットでの販売だったがゆえに、いわゆる“業界のしがらみ”的なものは少なかったように思います。だから、ホント、お願いします、の一言です(笑)。これは今でも変わりませんよ」

他社作品も販売しよう -- それが転機だった01
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