一覧に戻る

オトナのお仕事

ゼロから始めたコスチューム作り

第1章 ゼロから始めたコスチューム

やはりアキバである。

以前紹介した企業の中でもこの近辺に事務所を構えるところが多かった。ちなみに我々は本企画の取材を申し込む際は事前に数社リストアップをするわけだが、そんな時でも必ずこのエリアの住所がヒットする。オトナのお仕事とアキバ。う~ん、この関係っていったい…。

そんな疑問を抱きつつ、アキバからほど近い下町のビルに到着。階段を上っていくと事務所らしき一角が。んっ!? この場所で間違ってないよねえ? 心配になるくらい部屋の周辺は静か。思い切って声をかけてみると、数秒後に中から女性が出てきた。「あっ、どうもこんにちは。お待ちしておりました」黒のニットに黒のベロアスカートというモー電ィーな出で立ち、さらに猫のように鋭く大きな瞳が印象的だ。

中へ足を踏み入れると男性数人が左隅で一列になって無言でカタカタとPCに向かっている。そりゃあ静かだわなあ、うん。さらに部屋の一角に衣装がラックに展示されていたり、ショーケース内にアクセサリーや小物類が陳列されている

いざ奥へ通されて取材開始。対応してくれたのは先ほどのモー電ィーでキャッツなガール、平山さん。ちなみに彼女は電ザイナーさん。そりゃモードなわけですよね、ええ。

コスプレは正直、個性豊かな若者たちのカルチャーであるという認識があったので、われわれ取材班には縁遠い世界であると思っていたが、これが全くの勘違い。「コスプレイベントはもちろん、今の若い人たちは、ハロウィンやクリスマスなど、行事ごとにコスプレするのはもう当たり前なんですよー」と平山さん。ええ~っ!? そうなんですか!?

ここには『クレイジーナース』と『サキュバス』という二つのブランドがあり、ともにアジアンドラッグという会社の中のブランドで、『クレイジーナース』は約五年前、『サキュバス』は去年からスタートしたんだとか。しかし何がきっかけでコスプレ衣装の販売を始めたのだろう。「もともとアジアンドラッグが、風俗店へローションなどの卸しをしていて。そのときに風俗店さんの方から変わったコスチュームが欲しいという要望があったみたいなんです。衣装がありきたりなものばかりだったみたいで、どうせならもっと個性的なものがいいっていうお店の声を聞いて。じゃあうちで作ってみようか、って感じで始めたのが最初ですね」

当時はナースやセーラー服などあるにはあったが、コスプレ業者自体が少なかったため、どこに行っても同じものしかなかったのだという。そんな感じだから、もちろんデザイナーやパターンナーといった服飾のプロは少なく、最初は大変だったことだろう。その辺に水を向けると平山さんは苦笑いで答えてくれた。「ええ、初めは試行錯誤の連続で結構大変だったみたいです。特に最初にコスチュームの部署ができてからも、生産にいくまではなかなか大変で、うまくやりとりできる生地屋さんや工場を探すこと一つをとっても苦労したみたいです」

ゼロから始めたコスチューム作り01
ゼロから始めたコスチューム作り02