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オトナのお仕事

国内生産にこだわる理由

第3章 国内生産にこだわる理由

これだけ衣装のバリエーションがあると作り続けるのに大変な労力とコストがかかることだろう。ひとつの衣装の型をデザインし、サンプルが上がってくるまでで、だいたいどのくらいの手間がかかるものなのか尋ねてみた。「『クレイジーナース』と『サキュバス』はともに、サンプルまで社内で作っていて、最終的な縫製というか製作のみ外注しているんです。なので低コストで失敗も少なく、思い通りに仕立てられています。うちはパタンナーもデザイナーも同じなので、そこの技術さえあれば流れ的に一番スムーズにいくんです」

ただデザイナーとしての仕事以外の作業が多く大変な分、悪影響を及ぼしていることも少なくないんだとか。「やっぱり新作を出すスパンが長くなってしまいますよね。その分、型数も減っちゃうし。それは今後考えなきゃいけない課題ですね」

では一着にかかるコストはいくらくらいなのか。どうやらここにも、今後の課題が含まれているようだ。「正直、衣装によってピンキリです。うちの場合は国内生産が多いものですから、コストがすごくかかってしまっているんです。今も中国など、海外で生産はしているのですが、なかなかいい生地がなかったり、あとお互いの意思の疎通が難しかったりで…。やっぱり衣装のクオリティのことを考えると苦労が多いですね。他のお店から聞いた話なんですが、デザインが勝手に省略とかされちゃったり、生地が違っていたりして、いろいろと難しいみたいなんですよ」

ちなみに中国で生産した場合、コストはどうなるのか?「上手く作れば半額以下になります。生地やデザインにこだわってしまうとキリがないんですが、こだわらなければそれくらいでできちゃいますね」今後も海外生産は続けるが、クオリティ的に納得できる工場となるべく契約していきたいとのこと。

物を創ることを生業としている人間ならば、誰もが一度は経験する自らの作品に対する妥協点と金銭勘定。平山さんはどう乗り越えているのだろう。お話を聞く限りではクリエイターとしての気質が幾分勝っているように感じた。「もちろん、生地屋さんに大量購入するからその分安くしてもらったり、工場の方々に相談させてもらったりして、あらゆる形でコスト削減はしています。まあ確かにボタンを一個抜くとか、リボンを省くっていうこともできなくはないんですよ。でもデザインに影響するのは我慢できないんですよね(笑)」

国内生産にこだわる理由01
国内生産にこだわる理由02