マスクをつけた未亡人【蜜にご用心】 2
第一章 リモート会議設定のお礼
翌日、良平は早速実家からのテレワークを開始させた。
「由加里さんが隣に住んでるってだけで、ウキウキしちゃうなぁ」
単調な仕事も、今日はやたら進みが良い。彼女の後ろ姿を思い浮かべる。華やかなワンピースをめくりあげてその下のボディに触れられたら、どれだけ幸せなことだろう。ふと気付けば、下半身に微熱が集まりかけていた。
「いやいや、仕事中だぞ!」
大きく頭を振って煩悩を吹き飛ばす。無我夢中で仕事に没頭しているといつの間にやらとっぷりと日が暮れていた。パソコンをシャットダウンした直後に、自宅の固定電話が鳴り響く。急いで受話器を上げる。
「あ、良平君? 富田です。えっと……突然ごめんなさいね」
少し困った様子の由加里の声が、耳元に響いた。電話の向こうで受話器を握る彼女を想像すると、良平の胸が温かな熱を帯びる。
「いえっ、全然大丈夫ですよ! どうかしましたか?」
「あのね、良平君はテレワークの会議ってどうやるのか、わかるかしら?」
由加里は明日自宅からリモート会議を行うことになったが、設定がわからず困り果てているらしい。
「わかりますよ。試しに、俺とリモートで会議をやってみますか?」
「いいの? すごく助かるわ。誰にも頼れなくて途方に暮れてるのよ」
昔からしっかり者として知られていた由加里が、自分にだけ弱い部分を見せてくれているようで嬉しい。日々テレワークに馴染みがある良平にとってこの程度の問題は簡単だった。通話をスマホに切り替えて指示を出し始める。
「デスクトップにカメラのアイコンはありますか?」
「えっと……これね、あったわ。ここをクリックすればいいのね」
電話越しに良平の指示を仰ぎながら、由加里がパソコンの設定を進めていく。悪戦苦闘すること約十分、無事に作業が完了した。
「これで大丈夫だと思います。スタートボタンをクリックしてください」
「わかったわ、ここね」
数秒のタイムラグの後、良平の目の前のモニターに由加里の姿が投影された。
「映ったわ! すごい、すごい! 良平君、ありがとう」
(……あっ。由加里さん、マスクをつけてないぞ! スッピンかな?)
モニターには素顔の由加里が映っている。目鼻立ちのきりっとした美しい顔に花が咲いたような笑みを浮かべていた。
(昔と変わらないくらい……いや、今の方が綺麗だ……)
上品な面持ちとアーモンド形の大きな瞳は昔から全く変わっていなかった。まるで聖母マリアを思い出すような慈愛に満ちた眼差しも、当時のままだ。
(女性で社長業をしながら、妹の花奈の世話もして。それなのに、やつれたり老けたりするどころか、昔よりももっと魅力的になってる……)
夫亡き後に一人で粉骨砕身した時間で得た強さが、彼女の美貌に磨きをかけていた。三十七歳の成熟した心の美しさと、二十代にも思える若々しい見た目。その危ういギャップは、モニター越しでも妖艶な麗しさを滲ませていた。
しっとりとした白い肌が画面越しに光って見えた。おそらく風呂上がりなのだろう。再会時に目元を彩っていたアイメイクがなかった。飾り気のない完成された美しさが、メイクを施していないからこそ、むしろ際立っていた。
(素顔を見れてラッキーだ。いつもマスクをしているのが、もったいないよ)
直接対面している時は相手の顔をじろじろ見ることはできないが、今ならば許される。ディスプレイをじっと見つめても、相手には気付かれないからだ。
「さすが、パソコンに詳しいのね。良平君に頼んでよかったわ」
由加里が満面の笑みで手を振った。ヴィーナスのように美しい笑顔に、今日一日の労働で蓄積した疲労が癒されていく。
「よかったです、無事に設定できましたね!」
「……もしもし? 良平君、今、喋ってる? ……声が聞こえないわ」
良平の声が向こうに届いていないようだ。おそらくパソコンのスピーカー設定が原因だろう。良平は再びスマホを手に取った。
「由加里さんの方のスピーカーがオフになってます。探してもらえますか?」
快諾した由加里はその場で腰を上げてパソコンに近づき、後ろを覗きこんだ。
(う、うわっ……! 画面にグッと近づいて……色々と見えちゃってるよ)
自分がカメラにどう映っているのか、彼女は想像もしていないようだ。口紅をつけていないピンク色のふっくらした唇や、鎖骨の凹凸が、良平の目の前にドアップで投影される。日常であればありえないほどの至近距離の光景だった。
「ゆ、由加里さん、もうちょっと奥……ですかね」
小さな下心が現れた良平は、あえて意味のない指示を出してみた。
「ありがとう、こっちかしら?」
良平の指示を疑うことなく、由加里はさらに身体を乗り出す。
(やばい、谷間が見えそう!)
モニターの前で由加里が屈むと、ニットの奥に真っ白な谷間が見えた。薄いグレーのブラジャーの肩紐がちらちらと見え隠れしている。今すぐにでも顔を埋めたくなるようなボリューミーな乳房が、画面いっぱいに広がった。
画面を食いこむように見ていると、下半身がむずむずと反応しだした。しかしその疼きを制止することもできず、ただただ画面に視線を奪われる。
(ヤバイ、勃起しそうだ。でも……おっぱいを見るなっていう方が無理だよ)
由加里はそんな目線で見られているとは全く思っていないようで、画面の向こう側でひたすらにスピーカーを探していた。
「よいしょ……、こっちかしら?」
リラックス着から零れたHカップがたわわに揺れる。彼女の小さな声がスピーカーを通じて良平の耳元をくすぐった。
「うーん、ごめんなさい。私では、見つけられなかったわ……」
由加里が申し訳なさそうな表情で画面の前に戻ってきた。無理な体勢でいたせいか、顔が少しだけ赤い。画面越しに彼女の匂いが漂ってくる気がした。
「は、はい……あ、あの、ごめんなさい……」
「ん? なんで良平君が謝るの」
良平の口から反射的に謝罪の言葉が飛び出した。眼福の時を過ごすことはできたものの、結局問題は解決していない。
「俺が今からそっちに行っても大丈夫ですか? 直接見てみます」
「いいの? 本当に助かるわ。ありがとう!」
良平はすぐに隣家に向かった。着用したマスクが外気の寒さを少しだけ和らげる。すぐに由加里が出迎えてくれた。画面越しではない、生の彼女だった。
「ごめんね、良平君!」
画面いっぱいの巨乳を思い出してしまう。視線が変に泳いだ。
「いえ、俺こそちゃんと設定できずに……すみません」
複雑な気持ちを抱きながら、良平は久方ぶりに富田の家の空気を吸いこんだ。
「こんな時間に呼びつけちゃって、本当にごめんなさいね」
由加里は謝罪を繰り返しながら、不織布マスクを着用した。美しい素顔の半分が白いマスクの向こう側に隠される。
「大丈夫ですよ、俺に任せてください」
良平は早速パソコンをチェックし、早々に設定を完了させた。
「よし、これでオーケーです。問題ないですよ」
「ありがとう、良平君。本当に何から何まで……」
ほっとした由加里は安堵の表情で胸を撫でおろした。先ほど画面越しに見ていた豊乳が、息をつくたびに目の前でふるふると揺れている。
(ナマおっぱいだ……なんて柔らかそうなんだ)
思わずごくりと生唾を飲んだ。
「こ、こんなことでよければ、いつでも頼ってください」
「本当にありがとう。良平君がいると、心強いわ」
由加里の毛先は少し潤っていて、動くたびにシャンプーの香りが漂った。
(ああ、この匂い。昔から変わらない、優しい香りだ……)
にこにこと会話を続ける彼女の声が、心地よく耳に響いてくる。良平がうっとりとした気分に浸っていると、知らぬ間に股間が盛り上がりを見せていた。
(まずい! 由加里さんの隣に座っていると、どうしても意識しちゃうよ!)
良平はゴソゴソと体勢を変えながら、下半身の緊張状態を隠そうと努めた。麗しく微笑む未亡人に、いやらしい想像をしていることを悟られたくない。
「お礼にお茶でも飲んでいく? それともビールの方がいいかしら」
ふいに顔を覗きこまれて驚いた良平は、慌てて上半身をのけ反らせる。崩れたバランスを戻すために後ろ手で上半身を支えると、その不自然な動きで股間の膨らみが暴かれてしまった。
「あっ……」
二人は息を詰まらせると、同時に顔を真っ赤に染めた。
「えっと……私のせいで疲れちゃったのかしら? 本当に、ごめんなさい」
「いえ、由加里さんのせいじゃなくて、僕が、由加里さんで、その……」
画面越しの彼女の豊乳が頭から離れない。慌てた青年は言い訳をすることもできず、ただ狼狽えた。彼女は驚きで固まっていたが、おずおずと口を開く。
「このままだと辛いでしょう。もし、嫌じゃなければ、だけど……」
由加里は股間に細い指先を伸ばす。ピンと張ったテントの上を指腹で擦ると、それだけでヒリリとした柔らかい衝撃が良平を貫いた。
「あぅっ! そんなところを……っ」
驚きと吐息が混じる。由加里の顔色を窺おうとするが、マスクの奥にある真意まで見通すことができない。
「良平君は、えっと、嫌じゃないかしら……?」
由加里は指先の動きを少しずつ広げる。硬い屹立を遠慮がちに、手の平で覆った。彼女の温かさが服越しに伝わってくる。
「嫌なわけないです、とっても……気持ちいいです!」
「よかった。……じゃ、じゃあ」
麗しい未亡人はその言葉に応じるように、尖りの先端をそっとなぞった。パンツの中ではすでに我慢汁が噴き出している。
(信じられない。まさかこんなことが、現実にあるなんて)
幼少期からずっと想い続けてきた相手が、自分の化身を優しくさすっている。驚きよりもその愉悦に意識が支配されていく。
「直接触っても……いいかしら?」
首を大きく縦に振って答える。由加里が細指でチャックを下ろした。濃厚な雄のフェロモンが、グッと匂いを放った。
久方ぶりに見る男性器に、未亡人は目を見開いて息を呑む。
「まあっ、なんて大きい……」
夫を亡くして七年、それから男性の裸を見ていなかった。自分自身が女性として見られることを忘れていたのだ。
(私、何しているの。こんな痴女みたいなことを……)
由加里の心を巨大な困惑が支配していた。しかしその戸惑いを無視するかのように指先は男根に向かって勝手に伸びてしまう。
「まさか俺のチ×ポを触ってもらえるなんて……」
太幹に指を一本ずつ絡めた。由加里の腹の奥底でにわかに熱が灯る。焦らすように、恐る恐る指を重ねていく。冷たい指先が熱い塊を少しずつ覆う。
(こんなおばさんで、興奮してくれたってこと……よね?)
彼が勃起している姿を見てしまい、もちろん最初は驚いた。由加里のことを性的に意識してくれていたのだろう。
(良平君をずっと弟みたいに思ってたわ。でもオチン×ンは……全く違う)
先ほどと同じ力加減で、亀頭をすっすっと撫でてやる。良平の身体が先ほどよりも大きく反応した。
「くぅうっ! き、気持ちいいです……っ!」
マスクを着用していても、彼の表情が透けて見えるようだった。耳まで真っ赤に染めて、裏返った声で返事をするその様はどこか可愛らしい。
(オチン×ンに触れてあげたい。こんな気持ちになるのは……良平君だから?)
手の平で剛直を優しく包みこみ、カリ首や裏スジをさすった。彼はこれ以上ない程に顔を上気させている。尿道口からは透明な汁が溢れていた。
「とっても熱いわ。お汁が出てきちゃってる」
手先から熱が伝染するように、三十七歳の熟れたボディが体温を上げていく。自分がどれほどに破廉恥な行動を起こしているのか理解している。それでも良平のために、という気持ちが彼女の手を突き動かしていた。
「とっても太くて、硬い。こんなの、見たことがないわ……」
両手を筒状にし、根元から亀頭に向かって上下させる。我慢汁が数滴零れて、指先に絡みついて来た。ねっとりとした温度が手の平を犯す。
「アアッ、由加里さん、それ、その、気持ちよすぎます」
青年は困惑しながらも太腿を大きく広げ、その身を任せていた。白い指に絡まった精液をふき取らず、あえて亀頭部に塗りこんでみる。クチュ、プチュ、という小さな水音が響く。
(濃い匂いが立ち上ってくる……! 久しぶりの、男の人の匂いだわ)
いつしかパソコンはスリープモードに入っていた。黒いディスプレイに、二人の姿が薄く反射している。
栗の花に似た射精の気配が匂い立つ。臭気にあてられて頭がくらくらした。脳の一番奥底の部分を鷲掴みにされるようだ。由加里の目がうっとりと潤む。
(男の人に触るのなんて久しぶりだわ。……あなた、ごめんなさい)
青年への背徳感や、亡き夫への申し訳なさがこみあげる。それでも手を動かすスピードは止められない。手が震えて不規則に力が入ってしまう。
「ひ、アッ、そんなに速くしたらだめなんです……っ」
「あっ、ごめんね、痛かった?」
由加里はスピードを緩めると、改めて屹立全体を愛しむようにさする。幹を這う太い血管がいきり勃っていた。
「ごめんね、痛くしてしまって。たっぷりゆっくり、優しくしましょう」
まるで幼子に話しかけるように、赤く腫れた先頭の丸みを撫でる。もう片方の手を下に伸ばして睾丸を包みこみ、ふにふにと揉んだ。二人のマスクの中で、熱い吐息が渦巻く。
「あっ、ああっ……いいっ……!」
とめどなく溢れる先走り液をすくって、鈴口をふき取るように何度もこする。その刺激でまた次の体液が垂れると、再び指先で拾った。
(本当はいけないことだってわかっているの。でも、止められない……)
男根が黒い硬さを増すたび、己の行為を咎める理性が頭をもたげる。しかし同時に、本能が手先の動きを急かすのだった。
「由加里さんの触り方、めっちゃエロくて……! あァッ!」
大小の血管が浮き出た赤黒い男性器は、自身の我慢汁を身に纏って鈍く光っている。今すぐ放出したいと言わんばかりに、屹立が手の中で震えていた。
(次回更新は9月21日です)