マスクをつけた未亡人【蜜にご用心】 3
しごかれている分身を見るとすぐに射精してしまいそうで、良平はきつく目をつぶるしかなかった。
(もっと触っていてほしいのに、すぐにイッてしまいそうだ!)
並んでパソコンを操作していた数分前が、遠い過去のように流れ去る。由加里の亡き夫や、富田の両親、そして花奈の顔が脳裏に浮かぶ。
(皆、ごめんなさい、俺が……由加里さんの手を汚しています)
うっとりするほどの極上の時間を、一秒でも長く味わっていたかった。
「もう、お、俺……イッちゃいそうです……」
勃起した下半身を見られた時、彼女に軽蔑されるのではと不安だった。しかし由加里はその男根に指を這わせ、心地よいリズムで手を上下に動かしている。
「誰にでもこういうことするわけじゃないの。良平君だから……なのよ」
由加里は少しだけ手に力を込めると、根元からキュッと搾り上げた。
「……俺だから?」
愛の告白にも似た彼女の一言に、一瞬耳を疑った。射精欲がグッと高まる。
(由加里さんが俺のことを好きかもって、勘違いしてしまいそう……っ!)
青年の心の奥にしまった初恋の気持ちが、再び花開こうとしていた。
「またお隣さん同士になったんだもの。私になら、色々甘えてもいいのよ」
(えっ、もっと過激なおねだりをしてもいいってこと……?)
美しい隣人の言葉を深読みした良平は、手淫を超える行為に期待を寄せてしまう。頭を垂れた由加里がさらに前に屈んだ。乳搾りをするように、高ぶりを根元からキュッキュと搾り上げる。
(わあ、谷間が! ナマのおっぱいが、見えてるっ!)
姿勢を崩したせいで、リラックス着の奥に深い谷間が現れた。先ほど画面越しに見ていた白いデコルテ部分が、鈍い照明によって輝いている。グレーのナイトブラの縁に豊乳がぽってりと乗っかっていた。
(このおっぱい、触ってもいいってこと……なんですか?)
意味ありげなセリフと、豊かな谷間による視覚情報のダブルパンチ。理性を手放した一瞬の隙に、良平の限界点が訪れようとしていた。
「も、もう、出ちゃう……ハァッ、あぁ……」
泣きベソに似た声が震えている。早く射精してしまいたいのに、一秒でも長くこの時間を堪能したい。二つの欲望の狭間で剛直はその硬さを極める。
「いいわよ、いっぱい出して。私が受け止めてあげるからね」
良平を見上げて微笑みかけると、彼女は優しい視線を股間に落とした。
(その眼差しを汚すことを、許してください……っ)
両手で包みこんで、手コキの速度を上げていく。皮膚が擦れる音に加えてチュプチュプという粘った音が重なる。太い熱源から広がっていく温度は、下半身全体を覆っている。ヒリヒリと焼けつくようだ。
「そんないやらしい触り方をされたら、もう我慢できないです……っ!」
大量の血液が海綿体に流れこんで、頂点まで肥大し終わっていた。由加里が手を動かすたび、絶頂への入り口が確実に近づいてくる。
「ほら、頑張って。良平君。フゥ……ッ」
パンパンに腫れている亀頭部に向かって、彼女が吐息を吹きかける。その瞬間に、天井はあっけなく突破された。
「ああ、由加里さん、それ、だめ、あぁあ……っ!」
脊髄に強い快楽電流が奔ると、強直は一度大きく震えて、白濁液を噴出した。ビュビュッと音を立てて勢いよくマグマを吐き出す。
「きゃっ!」
想像以上のスピードで飛び出した精液は、彼女の手の平を飛び越える。彼女の両腕、胸、太腿に至るまで、精液が広範囲にまき散らされていった。
(……どうしよう。俺、由加里さんに向かって射精してしまった)
長く続いた射精が止まった後、良平はどうしても動けずにいた。未亡人の顔はマスクに隠されたままだ。手の平に溜まった精液を、じっと見つめている。
「あの、すみません、俺……あの」
よく見ると、精液が由加里の全身に付着している。勢い余った白い一滴は彼女の右頬に着弾していた。
「ごめんなさい、俺のがいっぱい、ついちゃっています。すみません!」
慌てふためいた良平は、急いでティッシュを取り出す。
「い、いいのよ、大丈夫。あの、大丈夫だから……」
由加里は自らの手で白濁液をぬぐった。大きく上下するバストや太腿の付け根についた精液まで、丁寧にすくっていく。彼女がぎこちなく身体を動かすたび、熟れた乳房に自然と視線が吸い寄せられた。
「良平君のここも、綺麗にしないと……よね」
由加里は力を失った男根も同じように清めていく。ティッシュを手に取り、汚れをポンポンとふき取った。
(由加里さん、怒らないのか? むしろ、もっと触ってくれてるじゃないか)
射精したばかりの男根は特別に敏感だ。由加里の手元の動きにあわせて柔らかい幹がピクリと反応する。
「そんなところまでふかなくても、……ンッ、汚いです」
もっと触れてほしいという気持ちを隠して、遠慮がちに由加里を見やる。
「良平君は汚くなんかないわ。あなたが子供の時から見ていたのよ。……いつの間にか、こんなに立派になったのね」
まるで実の姉のような口ぶりだった。幹に付着したティッシュのかけらを、彼女が指でつまみ上げる。由加里が時間をかけて整えた男性器は、丁寧すぎるお掃除愛撫で再び力を取り戻そうとしていた。
「さ、綺麗になったわね。これでおしまい」
手元のティッシュを集めてゴミ箱に入れる。振り向いた由加里は先ほどよりも深く屈み、マスクをずらして亀頭部にチュッと口づけた。
「えっ……、えぇえっ!」
思ってもみなかった行為に驚き、間抜けな声が出てしまう。
(なんて大胆な……! 一瞬、フェラチオされるのかと思っちゃった)
悶々とした良平をおいて、由加里はマスクで表情を隠してしまった。
「あの、ごめんなさい……色々と汚してしまって、その、あの……」
「いいのよ、良平君。私こそパソコンの設定をしてくれて本当に助かったわ」
由加里が普段のトーンで会話を返してくる。良平は剥き出しになっていた下半身に気付き、大急ぎでズボンを引き上げた。また熱さを持ち始めている男根を、力ずくでパンツの中に押しこむ。
(パソコンの話に戻っちゃった。さっきのこと、なかったことみたいに……)
どうやら未亡人は先ほどの行為について話をするつもりはないらしい。それくらいのことは良平にも理解できた。
居間にある大きな柱時計が時を告げる。ボーン、ボーンという重低音が、二人の間に流れこんできた。
「こ、こんな遅い時間まで……すみませんでした。おっ、俺、帰ります」
気まずい空気を打ち消すように、良平は謝罪の言葉を繰り返しながら、由加里のもとを立ち去った。
自宅の玄関に戻っても、電気のスイッチを探し当てる余裕などない。
「……夢じゃないよな? 由加里さんが俺のチ×ポを触ってくれた」
勃起を握って優しく絶頂まで導いてくれた彼女の姿が、脳裏にこびりついている。下半身に再び血液が集まり始めていた。
「さっき由加里さんに出してもらったのに……」
その名を口にすると、もう我慢できなかった。電気をつけてもいない真っ暗な玄関で、乱暴にズボンとトランクスを脱ぎ去る。股間の中心で熱を持った塊が、頭部を持ち上げ始めていた。
良平が右手で包んでみる。一度射精したそこは少しくすぐったい。何度もしているオナニーなのに、なぜか手が震えてしまう。
(我慢できない、もうここでシゴいてしまおう)
靴を脱いで室内に移動することがまだるっこしかった。どうせ誰に見られるわけでもない。暗い玄関で照明もつけず、良平は手を前後に動かし始めた。
「ハァッ、すごい、もうカチカチになってる」
先ほどの由加里の姿を脳内でリフレインさせた。麗しい未亡人が睫毛を震わせて良平の下半身に視線を落とす。そしてその細い指先を男根に絡ませ、シコシコと健気に手先を動かしていた。
「なんであんなこと……ハァ、してくれたんですか?」
問いかけてみるも、彼女の表情はマスクの奥に隠れて見えない。戸惑っているのか、微笑んでいるのか。隠された口元からは読み取ることができなかった。
彼女がしてくれたように指を絡ませて根元からギュッと搾り上げてみる。我慢汁が一滴弾けて、玄関床に落ちた。冷えた空間でそこだけが熱を持っていた。
「誰にでもするわけじゃない。俺だから、だって。もっと甘えてもいいよって、確かに言ってくれた……よな」
彼女の意味深なメッセージは、若人に夢を見せる。甘い囁きを再生するたびに男性器は尖りを増す。皮膚の上に張りついた血管が、今日はやけに太く感じた。先ほどまで由加里が触れていた箇所を、入念に擦った。彼女の手の平の感触を皮膚の奥まで記憶させておきたかった。
(由加里さんは俺とセックスしてもいい……ってことですか?)
お隣さんだから、困ったことがあったら言ってくださいね。日常で聞けば、社交辞令と受け取っただろう。しかし手淫の最中に、蕩ける声で呟かれた彼女の言葉は、妄想をかき立てるのには十分だった。
「あなたにもっと甘えたいですっ! もっと、もっと……」
あの時、時計が鳴らなかったら。もう少し勇気を出していたら。
(由加里さんとセックスできた? そんなこと、ありえるのか)
もしもの可能性を想像してみた。あの場で由加里を優しく抱きしめ、唇を重ねる。そうして彼女のリラックス着を一枚ずつ剥がしていくのだ。ディスプレイに大きく映った、白いデコルテと乳房が脳裏に焼きついていた。
「お願いです、由加里さんのおっぱいを触らせてください……」
彼女のずっしりとした乳房に、指を沈ませてみたい。弾力のありそうな豊満なバストを、無我夢中でしゃぶり、揉みしだき、欲望のままに弄ってみたい。
(ああ、画面越しじゃなくて、この目で見たい!)
シュッシュという皮膚をこする音が、暗い闇の中に吸いこまれていく。ぽってりと膨らんだ切っ先だけが暗い中で鈍く光っている。
彼女からしてきた亀頭部への口づけが頭から離れなかった。いくらパソコンの設定をしたからと言って、そんなことまでしてくれるわけない。
「フェラ、してください。俺のをしゃぶって……っ」
脳内の由加里が頷き、マスクを引きずり上げた。良平の男根に唇をかぶせる。
想像の中だけでなら、いくらでも彼女をエロティックに動かすことができた。
「俺のを、アッ、奥まで飲みこんでくださいっ!」
自分の両掌で男根全体を包んだ。左右の手を同時に動かす。想像の中で、彼女は舌を動かして屹立をしゃぶっていた。凹んだ頬や緩んだ口元は、全てマスクの下に隠れている。
「由加里さんっ、アアッ、気持ちいいです! ペロペロして……っ」
彼女の肉体を思うだけでいくらでもオナニーし続けられる気がした。両手の中で、屹立は頂点を目指して硬く盛り上がる。熱く滾る分身をギュウと握りしめ、由加里に向かって声をかけた。心臓が早鐘を打つ。
「出しますよ……っ! 受け止めてください!」
太い幹を思い切り擦り上げた。手汗とカウパー汁が、手の平の中でじわりと混じっている。ジュッジュッという鈍い摩擦音が響いた。
「出る! 出ます! イキます! ああっ……っ」
暗闇の中に浮かぶ由加里が、コクリと頷く。その端整な顔立ちに向かって良平は二度目のパッションをぶちまけた。
「くううっ……たまらないですっ! ああっ……!」
淫らな欲望が弾け、白濁した男液が尿道を駆け上がり、暗い空中を舞う。受け取る人のいない液体は、数十センチ先の床に次々と着地した。冷えた玄関床を見下ろすと、言いようのない寂しさが青年の心に広がった。
「ハァ、由加里さん、ハァ……ああ、ごめんなさい……」
射精を終えて我に返ると、そこには暗い玄関と冷たい廊下が横たわっているだけだった。精子特有の生臭い匂いが闇の中で際立つ。
(由加里さんに手コキしてもらった時の、あの温かさが忘れられない……)
そっと目を閉じる。想像の中だけでも彼女に抱きしめられていたかった。
(次回更新は9月28日です)