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おいしい転職 女社長&年下の上司&元部下 4

(なにやってんのなにやってんのなにやってんの私ぃ!)
 この状況に驚いているのは、絵里自身も一緒だった。財布を取りに会社に戻ったあのとき、誠が絵里を瞳と勘違いしたことをきっかけに、次々と想定外の事態になっていく。
(二人にヤキモチ焼いた勢いで告白したところまではいいっ。キスも、許容範囲っ。瞳さんの寝室に勝手に入ったのは、ぎりぎりでセーフっ。イラッとして誠さん脱がせたのはぎりぎりアウト! そして、これは完全にアウトぉ!)
 ストッキングも脱いだ今の絵里に残されたのは、ブラとショーツのみ。さすがにこれ以上は脱げない、はずだった。
(あ、あれ? 誠さん、見てる? あんなに身を乗り出して、私のこと、見てる……っ)
 誠の性格上、せいぜい横目でちらちらと見る程度と思っていた。だが、誠はぐっと前のめりになってこちらを見つめている。これは絵里にとって、嬉しい誤算だった。自分の身体が誠にとってそれだけ魅力的な証拠だからだ。
(瞳さんとは比べものにならないはずなのに、誠さん、ちゃんと私を女として見てくれてる。欲望の対象として見て、ううん、視姦してるんだ……!)
 前屈みになって隠しているが、男根が雄々しく反り返っているのははっきりと確認できた。
「へえ。さっきまでとはずいぶんと大きさ、違うじゃない。エッチ。スケベ」
「こ、これはその……すみませんっ」
「ほら、隠さない隠さない。あと、ちゃんと背筋を伸ばして」
 歳上の部下の反応に自信を得た絵里は、すっ、と長い脚を前に出し、つま先で誠の顎を持ちあげる。考えるよりも先に勝手に、自然に身体が動いていた。
(うわ、わわっ、私、凄いことしてるっ)
 ぞくぞくとした興奮を覚えつつ、背筋を伸ばした誠の股間に改めて視線を向ける。そこに生えた剛直を見た刹那、三十歳の女体の深部に熱が生じた。
(あっ、今、お腹の奥がきゅうぅんってなった。あそこがじゅんってなったっ)
 もしかしたらショーツの底に染みができたかもしれない。そんな心配をしなければならないほどの、妖しい興奮だった。
「まあ、反応してくれてよかったかな。もし無反応だったら私、本気で怒る……いえ、泣いてたところだから」
「え? 泣く?」
「当然でしょ? 言ったよね、私、あなたが好きだと。好きな男の前でこんな格好になってうんともすんともなかったら、泣いて当然では?」
「あ」
 またも好きと言われた誠が、照れたように視線を泳がせる。満更でもなさそうなのが、絵里にさらに勇気を与えてくれた。
「まあ、ちゃんと反応したので、今回は特別に許してあげる。寛大な上司に感謝なさい。……さて」
 絵里は誠の顎を持ちあげていた脚を下ろすと、今度はその場に両膝をついた。そして、軽く前屈みになる。胸の谷間をアピールするのが狙いだ。
「私、あなたも好きだけど、それ以上に瞳様を尊敬してるの。大好きなの」
「はい、主任が先輩を慕ってるのは知ってます」
「慕ってるなんて言葉じゃ生温いわよ。私、あの人になら抱かれてもいいって本気で思ってるくらいなんだから」
「そ、そこまでですか」
「ええ、そこまでよ。そういうわけなので、瞳さんとエッチしたあなたが羨ましくて妬ましくてたまらないわけ、私」
 絵里は畳の上をずりずりと前に進み、律儀に正坐を続ける誠に近づく。互いの膝が接するほどの距離で前のめりになれば当然、顔は近づく。
「さっき誠さんとしたキスは、つまり、瞳さんとの間接キスよ。私にとってはあくまでも瞳さんがトップで、あなたはだいぶ離れた二番手。思いあがらないように」
「は、はい」
 鼻がぶつかるほどの至近距離のため、誠は顔を離そうとする。が、正坐中のため、それほど上体は反らせない。
「謙虚なのはいいことよ。さて、ならばこのあと、私があなたになにを要求するかはわかるわよね?」
「?……先輩との仲を取り持つ……?」
「なるほど、悪くない提案ね。でも、はずれ。なんのために間接キスの話をしたと思ってるの?」
 絵里は外連味たっぷりに肩をすくめ、やれやれと首を横に振る。過剰な演技は、照れ隠しの裏返しである。もっとも、露出した肌が真っ赤では、大したカムフラージュにはなってないのだが。
「部下のくせに上司である私より先に社長と深い仲になった誠さんには、それ相応の賠償責任があるの。間接キスだけでは不十分よ」
「……つまり?」
「あなたを介した、瞳さんとの間接セックスを要求するわ」

(もしかして主任、瞳先輩と同類? 憧れすぎて、妙なところまで似ちゃった感じなのかも……)
 福利厚生と間接セックス。この強引さは、どこか同じ匂いがした。
(正直、俺にしたら嘘みたいに美味しい話だ。好きって言われたのもめちゃくちゃ嬉しい。こんな据え膳、逃したくないとは思う。先輩と付き合ってたなら当然拒むところなんだけど……)
 現在の誠と瞳の関係は、客観的に見ればセフレに限りなく近い。誠の主観では恋人に近い関係だと思っているし思いたいのだが、瞳に水を向けても、
『んー、結婚で懲りたしね。当分は今のままでよくない?』
 こんな感じではぐらかされ続けていたのだ。
(そのことを抜きにしても、さすがに今、この場所でってのはリスクが高すぎる。それに、勢いだけで突っ走ったらこの人、絶対に後悔するだろうし)
 下着姿の絵里は想像以上に美しく、艶めかしく、魅力的だった。先程から勃ちっぱなしの肉棒が、なによりの証拠だ。だが、それでも誠は醜い欲望をぐっと堪えた。そっと絵里の肩を押して、優しく引き離した……つもり、だった。
「うあっ!?」
「ひゃあぁっ!?」
 ずっと正坐をしていたせいで、足が痺れていた。想像以上の痺れにバランスを崩した誠は意図せず、絵里を押し倒す格好になる。
「す、すみませんっ。今すぐにどきますので!」
「誠さんは見た目どおりにケダモノだったと。瞳さんもこんなふうに襲ったの? 最低。野獣。犯罪者」
 なぜか、誠の背中に絵里の手が回された。起きあがろうとするとさらに腕に力が込められ、互いの胸が密着する。
(おおっ、胸が、乳がっ)
 ブラに包まれた柔らかな膨らみの感触にイチモツが跳ね、絵里の秘所をショーツ越しに擦る。
「きゃんっ」
「わ、わざとじゃないですっ」
 絵里の意外と可愛い声に内心どきどきしつつ、首を横に振って故意ではないとアピールする。
「上司を半裸に剥いて押し倒してペニスを擦りつけてわざとじゃないとか、誰が信用するわけ?」
 じろり、と絵里が睨んでくる。が、その目元はほんのりと赤らみ、やたらと悩ましい。しかも腰を持ちあげ、今度は自分から誠に股間に押し当ててきた。顔に当たる息も熱い。
(この人、もう、完全にその気になってるっ。セリフと行動がまったく合ってない! でも、そこが可愛い……!)
 なるほど、これがツンデレと呼ばれるやつか、と納得した瞬間、意地を張るのが一気にバカらしくなった。瞳には恋人関係を否定されてるのだし、ここまでの据え膳を拒むのも絵里に失礼だろうと、自分に言い訳をする。
「ふむ。どうせ信用されないなら、我慢するだけ無駄ですね」
「っ!」
 こちらがその気になったと察したか、絵里が息を呑む。一瞬、ぴくんと肢体が震えたが、逃げる気配はない。
「まずはもう一度、先輩との間接キスをしましょうか」
 それを了承と受け取った誠は絵里に唇を重ね、舌を伸ばす。絵里はすぐに目を閉じ、唇を開き、誠の舌を受け入れてくれた。
(さっきは驚いてるうちに終わったけど……主任の唇、ぷるぷるしてる。それに、舌もぬるぬるとよく動く)
 どうしても瞳と比較してしまう後ろめたさの中、さらに舌を深くねじこみ、歳下の上司の口内を舐め回す。
「んふ、ふっ、んん……ちゅ……むちゅ……ぴちゃ……ン……んふン」
 頬に当たる熱い鼻息と甘い唾液に煽られた誠はディープキスをしたまま、ブラジャーを外しにかかる。絵里は自分から軽く背中を持ちあげ、ホックを外しやすくしてくれた。瞳と同じく三段ホックなのは、それだけカップが大きい証だ。
「んんっ! んっ……んっ、ふっ、ふーっ、んんんん……!」
 ブラを上にずらし、まずは片手で、そしてすぐに両手で絵里の乳房をまさぐる。さすがに瞳に比べれば控え目だが、充分に豊かなサイズの膨らみだった。
(思ってたより大きいぞ。先輩のみたいに指が沈む感覚は少ないけど、ぷるぷるしてて、ずっと揉んでいたくなるおっぱいだ)
 キスを続けているため、目視はできない。その分、触感に意識が集中し、絵里のバストへの妄想が広がる。
(乳首、勃ってきたな)
 膨らんできた先端突起を、軽く指先でつまんでみた。
「んうんんンッ!」
(うおっ、身体が跳ねた!? 乳首、敏感なのか)
 ならばと、今度は優しく、乳輪をなぞるように撫でていく。
「ふっ、んっ、んふん……んんん……」
 そして、絵里が焦れったそうに女体をくねらせた瞬間、再び勃起乳首をつまむ。
「はあああぁっ! ダメ……アアァッ!」
 左右の尖りをつままれた絵里が大きく仰け反った。キスが中断され、二人の口のあいだに唾液による淫らな橋が架かる。
(相当に敏感な体質なのか? それとも、乳首が弱いだけ?)
 鋭い反応に、責めていた誠は驚く。もちろん、男としては嬉しい誤算だ。このまま乳首をいじり続けたらどうなるかも気になったが、他のところの感度にも興味と欲望が湧く。
「主任、ちょっと失礼します。畳の上じゃ背中、痛いでしょ?」
 誠はいったん身体を起こすと、絵里を優しく抱き起こす。なにをしようとしているのか察した絵里が、気恥ずかしそうに誠の首に抱きつく。身体をぴったりとくっつけてくれたおかげで、案外楽に絵里を持ちあげることができた。
「ねえ、妙に慣れてない? 社長のこともこんなふうに抱っこしてる?」
 あらかじめ敷いてあった布団に寝かされながら、疑いの視線を向けられた。
「まさか。昔、親がぎっくり越しやったときの経験があるだけですよ」
 瞳と自分のどちらにヤキモチを焼いているのだろうか、などと考えつつ、ショーツを絵里の足から抜く。若干、恥ずかしそうに腰をひねりはしたものの、軽く尻を浮かせ、ブラのとき同様に今度も協力してくれた。
(おおぉ、これが主任の……!)
 一糸纏わぬ美女の裸身を、改めて見下ろす。女の盛りに入らんとする三十歳の肉体に、ペニスが跳ねる。
「あ、あんまり見られると、さすがに恥ずかしいんだけどっ」
 そう言って絵里は顔を横に背けるが、両手は身体の横に置いたままで、胸の膨らみや股間の繁みを隠す素振りはない。ちらちらとこちらに向けられる視線には羞恥だけでなく、期待も感じられた。
「こんな見事な身体を前にして、見ないわけがないです。綺麗だ。美しい。ずっと眺めていたくなります」
 急速に高まる欲望のせいで思考能力が鈍っていた誠は、とにかく正直に、感じたこと、思ったことをそのまま口に出した。だが、結果的にはこれが正解だった。
「と、咄嗟にそんなお世辞が出てくるところが、いかにも東京の男って感じっ」
 憎まれ口とは裏腹に、絵里の表情に嫌悪は感じない。もぞもぞと肢体が揺れているのは、嬉しさの表れにも思えた。
「そんな余裕、ありませんよ。本当にいっぱいいっぱいなんですって、俺」
 誠は絵里の膝を割ると、股間に顔を埋め、秘裂に舌を這わせた。
「なっ、ちょっ、い、いきなり!? 待って、私、シャワーもなにも浴びてないのよ!? あああぁっ!!」
「俺は大丈夫ですから、気にしないでください」
「気にするのは私っ! やだやだ、バカ、あっ、んっ……ンンンンッ!」
 まずは軽く舐めてみた。蒸し暑い季節のせいか濃密な女の匂いがしたが、もちろん、男にとっては好ましいパフュームでしかない。
(意外と、もさもさなんだな。先輩みたいに毎回きっちり処理されてるマン毛もエロいが、こういうナチュラルな生えっぷりも同じくらいエロい……!)
 広範囲に生えた縮れ毛を鼻先に感じながら、クレヴァスを舐め回す。汗でも涎でもない液体を分泌してくる窪みを舌先でほじると同時に、フード越しにクリトリスを転がす。
「んうんんっ……ダメ……はっ、あっ、はっ、はっ……あはああぁっ!」
 どんどん溢れる愛液を舐め取り、陰核を保護していた包皮を剥き、舌だけでなく指でも膣口をまさぐる。なにしろ初めてなので誠も探り探りのクンニリングスだったが、絵里はなにをしても敏感に反応してくれた。
(ずいぶんと感度がいいな)
 自分の愛撫に感じてくれて喜ばない男はいない。誠はさらに深く顔を股間に埋め、より激しい口唇奉仕を繰り出して上司を責め立てた。
「イヤっ、イヤっ! ああっ、ダメ、んあっ、はっ、んううぅうゥン!」
 ぱんぱんに膨れた肉芽は優しく舐め、急速にほぐれてきた狭穴には指を徐々に奥へと進めていく。次々と湧いてくる愛蜜と卑猥に蠢く膣襞を根拠に、誠は舌、唇、指を駆使して絵里に快楽を送りこむ。
(先輩とは感じる場所も締めつけも、匂いも味も違う)
 三十六歳の女社長と三十歳の主任。二人の極上美女の違いを文字どおりに味わうという至福に、愛撫にも力が入る。
「あっ、あっ、誠、さんっ、誠さん……ダメ……もう、ホントにぃ……!」
 綺麗に敷かれたシーツが大きく波打つほどに、絵里の女体がくねる。愛液は濁り始め、喘ぎ声にも余裕がなくなる。
「ああっ、無理、もぉ無理ぃ……イッ……イク……イヤーっ!!」
 腰をぐんっと浮かせ、誠の指を強烈に締めつけながら、絵里は悲鳴じみた嬌声とともに最初のオルガスムスを迎えた。

(嘘……イッた……イッちゃった……私、こんなにあっさり……)
 下半身を甘く包むアクメの余波に、絵里は困惑していた。
「すみません、いきなり激しすぎました」
 ようやく股間から顔を上げた誠が、心配そうにこちらを見る。こんなときでもちゃんとこちらの様子を気にかけてくれるところが嬉しく、絵里は僅かに悩んだのち、正直に話すことにした。
「違うから。こんなに早くその……達した経験がなかったので、びっくりしただけよ」
「えっ? 嘘ですよね?」
 今度は誠が目を丸くして驚く。
「こんなときに嘘ついてどうするのよ。ホントよ。私、あんまり感度がよくないらしくって」
 別れた恋人の「人形を抱いてるみたいだ」というセリフが甦り、せっかくの絶頂の余韻が冷めていく。
「いやいや、それはあり得ませんって。俺、さっきからめちゃくちゃ感度がいいなって思ってたんですよ、主任のこと」
 そう言って誠は、そっと絵里のバストを両手で包み、優しく揉み始めた。手のひらで乳首が転がされるたびに、身体中に快感が広がっていく。
「ああっ!」
「ほら、敏感でしょ?」
「そ、それはあなたがうまいだけじゃないの? 女遊びしまくって」
「この際だからぶっちゃけますが、歳のわりには大して経験ないですよ、俺。二十代後半からずっと恋人いなかったし……」
 どうやらあまり話したく内容だったようで、誠はぶっきらぼうに言う。
「となると、瞳さん相手に練習した成果?」
「先輩とはまだ数えるほどしかしてません」
「つまり、それだけ私と誠さんの身体の相性がいいってこと?」
「逆に、主任と前の男の相性が悪かっただけって可能性もありますね」
「ああ、なるほど」
 誠の言葉が、すっ、と腑に落ちた。ただし納得できた理由は相性云々ではない。
(そう言えばあいつ、私には散々させたくせに、自分はほとんどしてくれなかったっけ。してくれても、おざなりだったし)
 自分はもしかしたら不感症なのではないか。密かに、けれどずっと抱えていた悩みが融解し、代わりに、誠への想いが増す。
「なんにせよ、私たち、仕事以外でもいいパートナーになれそうじゃない? もちろん、私の一番は瞳様で不動だけど」
「わかってます。これはあくまでも先輩との間接セックス、なんですよね?」
 こうして会話をしてるあいだも、ずっと絵里のバストを揉み続けていた誠が立ちあがる。胸に寂しさを覚えた絵里の前に戻ってきた誠の手にあったのは、コンドームだった。
「ええ、もちろん。でも……こっちは、直接でかまわないけどね」
 絵里はにっこりと営業スマイルを浮かべると、誠から避妊具を取りあげる。
「えっ。いや、それはまずいでしょ、さすがに」
「顔はそうは言ってないけど? にやけてるじゃないの。スケベ」
 そしてゴムを部屋の隅に放り投げ、誠の手を己の胸へと引き戻す。
「だいたいあんなものを使ったら、誠さんのオチン×ンについた瞳様の残り香、味わえないじゃない。なんのための間接セックスか、思い出しなさいよね。……んっ……んふ……はああぁ……!」
 再開された乳揉みによる甘い愉悦に、裸身がぶるり、と震える。
(やっぱり相性もいいんじゃないかな、私たち。おっぱい触られただけでこんなに気持ちよくなったの、初めてだもん)
 覚悟を決めたか、あるいは単に欲望に屈しただけか、誠がゆっくりと絵里を押し倒してきた。絵里も無言で脚を開き、誠を迎える。
「挿れますよ、主任」
「ダメ」
「え?」
 肉杭を膣にあてがおうとしていた誠が、びっくりしたように顔を上げる。
「ふふっ、そんな悲しそうな顔しないで。ここまできて、今さら挿れちゃダメなんて言わないわ。……名前で呼びなさいよ。……ううん、呼んでください。あと、敬語もやめてください、誠さん」
「……わかった。行くよ、絵里」
「……! はい、犯してください、誠さん……あっ……はああぁっ!」
 名前を呼ばれただけで胸が高鳴る。硬い切っ先が濡れ穴をこじ開け、自分の中に入ってくるのがたまらなく嬉しい。
(来た……ああっ、おっきい……熱ぅい……がちがち……ぃ!)
 何年ぶりかもすぐには思い出せないくらい久しぶりの男根は、記憶の中よりも逞しく、猛々しく、雄々しかった。
「くっ、うぅっ、まこ、と、さん……アア……来て……もっと奥……私の中、いっぱい、突いて……ぇ」
 舌と指で愛され、ほぐされ、一度はアクメを極めたとはいえ、やはりブランクのせいか、膣道はすぐにはペニスを受け入れきれなかった。
「つらくないか? 痛かったり苦しかったら我慢しないで言うんだぞ?」
 だが、誠は挿入を焦らなかった。絵里の反応を確認しながら慎重に腰を進め、狭くなっていた蜜壺を少しずつ貫いてくる。
「大丈夫、です……あっ……ふっ……うぅ……はうぅっ」
 痛みはないものの、身体が勝手に強張ってしまう。セックスにあまりいい思い出がないがゆえの、無意識の防衛反応だった。
(誠さんが相手なら、平気なのに。ううん、この人になら、少しくらい乱暴にされたり、痛くされてもいいのに……っ)
 自分の肉体に焦れったさを感じていたそのとき、誠が両手を握ってきた。互いに指を絡め合う恋人繋ぎに胸をきゅんとさせた直後、今度は万歳をするように両腕が頭上に引きあげられる。
「えっ? 誠、さん? なにを……はひぃいぃっ!?」
 耳たぶを唇で挟まれ、そのまま耳孔に舌先がねじこまれた。軽くキスをされた経験くらいはあるものの、耳の穴を舐められたのは、これが初めてだった。
「きみは全身敏感だから、ここもって思ったんだ」
「ひんっ! やあっ、耳、舐めながら喋らないでぇ……ひうぅッ」
 顔をよじって逃げたが、今度は反対側の耳を舐められた。くすぐったさと同時に奇妙な快感が生じ、全身がぞわぞわとする。
「ちなみに瞳先輩も耳、弱いぞ」
(そ、そうなの? 瞳さんもこんなふうに、誠さんに耳舐められて、気持ちよくなってるの……!?)
 憧れの人と同じと告げられた刹那、耳に意識をとられ、警戒が緩まった膣が一気に穿たれた。
「はうン!? アッ、アッ、アーッ!!」
 剛直が媚洞を貫き、先端が最奥のリングにこつん、と触れたのがわかった。痛みなどはなく、純然たる法悦だけが女体を駆け巡る。
「ず、ずるい、です……ああっ、凄っ……全部、入ってる……誠さんと私、完全に繋がってますぅ……!」
 過去の恋人とも経験のない生の挿入は、想像を遥かに超える衝撃と快感があった。粘膜と粘膜が触れ合うだけでこれだけの快楽があるのならば、動かれたらどうなるのかと、恐怖すら覚える。
「ああ、根元まで全部だ。俺たちは今、一つになってるぞ、絵里」
「ン……ちゅ……むちゅ……ちゅく……」
 どちらからともなく唇を重ね、舌を絡め合うと同時に、ピストンが始まった。決して乱暴ではない、むしろ優しい動きだったが、それでも絵里はキスを続けられなくなってしまう。予想以上の愉悦に、身体が大きく仰け反ったせいだ。
「あうぅっ! んっ、んっ、んんんん……ッ!」
 身体の一番深い場所を小突かれるたびに、鋭く、けれど甘い波が駆け巡る。触れた肌から伝わる体温と、全身に感じる重みが嬉しい。自分の中に他人が入っている事実に、女の本能が妖しく燃え盛る。
(こういうの、久しぶり……ううん、初めてぇ……ああっ、オチン×ンでオマ×コ擦られるのって、ホントはこんなにイイものだったんだ……ぁ)
 オナニーでは絶頂できるのに、本番では軽くイクことしかできない。それは自分に非があるのだと、絵里はずっと思い悩んできた。だからこそ、今夜は生まれて初めて、セックスでアクメに至れるかもしれないという期待が膨らむ。
「んうんっ、ううっ、はうっ、あふうぅ! 奥に、当たってぇ……あーっ!」
 たまにする自慰のときは、ほとんどがクリトリスと陰唇しかいじらない。膣内に指を挿れても、せいぜいが浅い箇所を軽くまさぐる程度だ。それに対し、誠は深々と突き挿したペニスで蜜壺の深くを擦り、抉り、突いてくる。
(凄い、凄い、セックス、凄すぎぃっ! 私、ホントはこんなに感じちゃうんだ、オマ×コ、こんなにエッチだったんだぁ……!)
 誠の抽送はまだまだ軽めだ。にもかかわらず、過去に経験した中で最も気持ちのよかった性交をすでに上回る愉悦があった。
「苦しくないか? 大丈夫か?」
「はい、はいぃ、全然、痛く、ない、苦しく、ないです……ああっ、初めて、セックスで気持ちよくなったの、これが初めてぇっ」
 普段と違い、素直に、正直に言葉が出た。三十歳にして目覚めた甘美な悦びに、自然と繋いだ指に力が入る。
「初めて? え?」
「いつも、あんまり気持ちよくなかったの、でも、今は違うんです、すっごく気持ちイイ……あっ、あっ、どうしよう、イイ、イイんです、たまんないんですよぉ!」
「そうだったのか。でも、俺はまだ本気を出してないからなっ」
 絵里の赤裸々な告白に牡のプライドを満たされたのか、誠がピストンのギアを一つ上げてきた。知らぬ間に大量に溢れた愛液が、誠が動くたびに淫猥な音を立てる。
「はあああぁっ! あっ、凄っ、そこ、そこ、たまんないんですってばぁ! ひっ、うひっ、やっ、やらっ、あっ、あっ、ああぁーっ!」
 三十歳にして初めて経験する快感の連続に、思考が急速に溶けていく。
(どうしようどうしよう、気持ちイイ気持ちイイ気持ちよすぎぃ! ああっ、誠さんのオチン×ン、逞しいよぉ、オマ×コごんごんされると、たまんないよぉ……!)
 快楽に蕩けたその姿に、日頃の凛々しさはどこにも残っていない。
「くっ、すまん、一度抜かせてくれ。もう出そうで……うおっ!?」
 蜜洞から勃起を引き抜こうとする誠の腰に、絵里は咄嗟に両脚を巻きつけた。
「ダメ、ダメです、あとちょっとでイケそうなんですっ! ヤリ逃げは許しません! ああっ、ほら、動いて、動いてくださいよぉ!」
「いや、だから俺もイキそうなんだってば!」
「だったら、一緒にイケばいいだけでしょう!? 私たちはパートナーなんですからぁ! ああっ、ねえ、ねえん、誠さぁん、動いてぇ……!」
 目の前に迫ったオルガスムスが欲しくてたまらない絵里は、無意識に媚びた声でピストンの続行をせがむ。
「こ、この……そんな可愛い顔とエロい声でおねだりとか、卑怯すぎるっ」
 女上司の淫らすぎるリクエストに応え、誠が抽送を再開した。腹を据えたのか、ここまでで一番激しく、力強い腰使いで絵里の膣道を貫いてくる。だが、誠の責めはこれだけではなかった。
「はっ!? えっ、ちょっ、なにを……どこに顔を……ヒイィッ!!」
 誠はラストスパートを仕掛けつつ、なぜか絵里の腋窩に顔面を突っこんできたのだ。大量の汗をかいた柔らかな窪みに顔を近づけられるだけでも恥ずかしいのに、誠は舌までを這わせてきた。
(嘘、舐めてる!? なんで!? どうして!? イヤ、イヤ、そこは今、汗、いっぱいかいてるし、処理だって甘いのにぃ!)
 こんなことになるなど夢にも思っていなかった絵里は、忙しさを理由に体毛の処理をサボっていた。薄着の季節なので最低限のケアはしているものの、超至近距離で見られ、嗅がれ、舐められる状況などは想定していない。
「いい匂いだ。ちょっとざらざらしてるのが、特にイイ」
「ひっ!? やだやだ、やめてくださいっ! ホントにダメ、ダメええぇっ!!」
 好いた男に手入れの甘い腋を責められる羞恥に、絵里は目に涙を滲ませながら女体をよじった。が、がっちりと繋がれた両手はびくともしない。
(中に出すのは許しますけど、そこは、腋はダメですっ。あなたがそういう趣味を持っててもかまいませんが、今日はやめてください! 次はちゃんとお手入れしておきますからぁ!)
 そんな文句をぶつけてやりたいが、絵里にはもはや、声を出す余裕すらなかった。腋責めで滾ったのか、誠が一気にラストスパートに入ったせいだ。
「ふひっ、ひっ、ひあああぁっ! やああぁっ、イク、イク、イッひゃいますってばぁ! 待って、あっ、あっ、腋やだ、舐められながらイクの、やらぁ!」
 熱い舌で鋭敏な腋を舐め回されるたびに、猛烈な羞恥に襲われる。と同時に、不思議な興奮が湧きあがることに絵里は気づいた。
(なんで……恥ずかしくてたまらないのに、誠さんに腋をいじめられると、ぞくぞくしちゃう……イヤ、これじゃ私までヘンタイみたいなのにぃ……!)
 快楽と混乱に、思考が霧散する。最後に残ったのは、ただただ純然たる肉欲のみだった。
「あっ、あっ、あああっ、イキ、ます……ダメ、ホントにイク、イック……!」
「出すぞ……オオオ……ッ!」
 未知の法悦が膣道と子宮で弾けたと思った直後、誠も爆発した。すっかり蕩かされた女肉に、白濁マグマが無慈悲に浴びせかけられる。
(来た……これが、これが誠さんの……っ)
 ゴム越しでない牡の熱に、アクメ中の媚粘膜が蠢く。初めて精液を知った子宮が随喜に震え、新たなオルガスムスが全身を包む。
「ひっ、んひっ、凄ぉ……あああぁ、気持ち、イイ……なに、これぇ……ひっ、ひっ、ひいぃ……!!」
 これまでセックスとは比べものにならない、深く、鋭く、甘い絶頂に、絵里は涙を流し、女体をよじり、嬌声を上げる。
「イッた、のに、イッてる、のにぃ……やだ、あっ、また来る……イッちゃう……あっ、あっ、イク……またイキます……アーッ、アーッ、アァーッ……!!」
 子宮と腋を嬲られながらのエクスタシーに、絵里は幾度も幾度も裸身を震わせ、女の幸せを極めるのだった。

(さて、どうしたものか。万が一のときは責任取るのは当然として……まずは直近の問題への対応だな)
 大量の精子を吐き出したおかげで理性が戻った誠は、改めて現状を確認する。
(社長の寝室で、主任と二人きり。生で中出しした直後。汗だく汁だくで抱き合ったまま。結合したまま。先輩はいつ帰ってきてもおかしくない。……完全に詰んでるだろ、これ)
 今が絶望的な状況であると理解した誠だったが、それでもまだ、かろうじて希望は残っていた。しかしその唯一の希望がまさに今、潰えたことを誠は知る。僅かに開けられた襖の向こうに、女社長を見てしまったのだ。
「……!」
「? どうかしましたか? ああ、まだ満足してないんですね。私はかまいませんよ。絶倫の部下に付き合うのも、上司の役目ですし。ふふ、まるでケダモノですね、誠さんは。ちゅっ」
 襖一枚隔てた場所に瞳がいる事実を知らない絵里は艶めかしい笑みを浮かべると、誠の頬に唇を押し当ててくる。
「ま、待ってください、主任」
「やーだ。待ちません。あと、主任じゃなくて絵里ですよ、え・り。二人きりのときは敬語もやめてって言いました。もう忘れたんですかぁ?」
 ほんの一時間前であれば想像だにできなかった甘えっぷりを披露してくる絵里とは対照的に、誠の表情は強張る一方だ。
(まずいまずいまずい、どうするどうするどうする!?)
 己の保身はどうでもよかった。いかにこの最悪の状況で絵里を守るかだけを、誠は全力で考える。だが、なにかを思いつくよりも先に襖が大きく開かれ、スーツ姿の瞳が寝室に踏みこんできた。
「あら、絵里ちゃんは私と間接セックスがしたいんじゃなかったの? すっかり、誠くんと仲良しになっちゃって。私としたら、ちょっと寂しいわね」
「ひ、瞳さ……あの……これは……」
「お、俺が、主任をその、脅して、力尽くで無理矢理っ」
 パニックになりかけた絵里のセリフを遮るように、誠が叫ぶ。
「うふふ、誠くんのその言い訳、前にも聞いた気がするわね。でも、私のときもそうだったけど、きみ、ホントに嘘が下手。まあ、そういうところも可愛くて好きよ?」
「嘘じゃないですっ」
「いいのいいの、私、別に怒ってないし。嘘じゃないわよ? もしも怒ってたら、最初から最後まで部屋の外で覗いてたりしないもの」
 誠たちがいる布団の横に座った瞳が、ひらひらと手を振りながら言う。
「っ!? み、み、見てた……瞳様に全部、見られてた……!?」
 この発言に、絵里がさらに追いこまれる。どうしていいかわからないのだろう、誠にしがみついたまま、がたがたと震え始めていた。
「だってあなたたち、あんまりラブラブだったんだもの。若い二人の邪魔をしたら悪いなって」
(読めない……先輩はいったい、なにを考えてるんだ……?)
 少しでも安心させるため絵里を抱き締めつつ、誠は瞳を観察し、その真意を探る。本人が言っているとおり、立腹している気配はない。むしろ、喜んでいるように誠には感じられた。
「って先輩、なんで脱ぎ始めてるんです!?」
 なぜか突然スーツを脱ぎ始めた瞳に、今度は誠までがパニックに陥る。
「私だけ服を着てるのは不公平でしょ? それに、今日は元々、きみにこの身体で福利厚生する予定だったのだし」
 あっと言う間に下着だけになった瞳のこの言葉に、絵里が反応を示した。
「特別な福利厚生……ホントだったんですね……」
 絵里は誠の肩越しに、恐る恐るといった感じで瞳に尋ねる。
「あら、誠くんに聞いてた? ええ、そうよ。絵里ちゃんにもそのうち話すつもりだったんだけど、後回しにしちゃってごめんなさい」
「いえ、いえ、全然気にしてませんのでっ」
 興奮で、絵里の声は上擦っていた。
(おお、めちゃくちゃ見てる。瞬きすらしてない。さすが先輩の信者……!)
 この異様な状況下にもかかわらず、絵里は憧れの女社長の半裸身を凝視していた。そして瞳もこのまなざしに気づいたのか、絵里に己の下着姿を向けつつ、秘密の福利厚生について、改めて説明をする。
「……とまあ、こんな感じ。納得してもらえた?」
「はい。だいたいのところは。あと、誠さんの説明が相当に嘘まみれだったこともわかりました。まあ、予想はしてましたけど」
 誠と離れ、裸身に掛け布団を巻きつけた絵里がちょこんと座ったまま頷く。ちなみに誠は布団ではなく、自主的に畳の上で正坐をしていた。タオルケットで股間は隠せているだけ、ましかもしれない。
「もちろん、絵里ちゃんにもなにかしら福利厚生をしてあげるつもりだったの。でもほら、誠くんと違ってあなたは女の子だし、私みたいな年増がサービスしても、ありがた迷惑でしょ? どうすればいいか、悩んでたのよ」
 そう言って瞳は腕を組み、顎に指を当てる。実にわかりやすい、なにかを考えているポーズだが、本気で悩んでいないことを、誠はすぐに見破った。
(あ。読めた。この人、俺と同じ福利厚生を絵里にもするつもりだ……!)
 考えるふりをしたのは、巨大な乳房を腕で持ちあげ、谷間をアピールするためだろう。そしてこの狙いは、見事に成功していた。身を乗り出して瞳のバストを見つめる絵里の鼻息は、相当に荒い。だが、自ら瞳に福利厚生して欲しいとは言い出せないらしく、助けを求めるようにこちらにも視線を送ってくる。
「ね、誠くんも一緒に考えてよ。私が絵里ちゃんにしてあげられること、なにかない?」
 絵里だけでなく、瞳も誠に目を向けてきた。
(うわ、この人、とっくに結論出してるくせに、それを俺に言わせるつもりだ。面倒な商談を俺に担当させるときによくやられた手だぞ、これ……!)
 しかし、今の誠に他に選べる道はない。そもそもこの美しい上司に逆らえたことなど、一度もなかったのだ。
「大丈夫ですよ、社長の福利厚生なら、きっと満足してくれます。……ですよね、主任?」
「ええ、ええ、もちろん! もし瞳様さえよろしければ、是非、私にも誠さんと同じことをしてください!」
 誠の助け船に、絵里は即座に、全力で飛び乗ってきた。
(よし、これであとは先輩に主任を任せて、お邪魔虫の俺はとっとと消えれば……え?)
 ようやくこのいたたまれない空間から脱出できると喜んだそのとき、誠の左右の腕が同時に引っ張られた。
「なに、こそこそ逃げようとしてるんです? 上司を無理矢理慰み者にした責任、ちゃんと果たしてください、誠さん」
 左腕を掴んだ歳下の上司が、甘く睨んでくる。
「今日の分の福利厚生、まだ、きみにしてあげてないんだけど?」
 右腕を掴んでいた女社長が、にやにやと笑う。
「いや、でも」
「台風の中、大切な社員を危険な目に遭わせるわけにはいかないもの。今日はここに泊まりなさい。これは社長命令よ。いいわね?」

(面白いことになってきたわね)
 下着も脱いで全裸になった瞳は、現在の状況を心から楽しんでいた。
(最初はあんなに誠くんにキツく当たってた絵里ちゃんが、まさか、こんなふうになるなんて、嬉しい誤算だわ)
「え。な、なんですか瞳さん。そんなにじろじろ見られると恥ずかしいです」
 布団に仰向けになった絵里が、頬を染めて羞じらう。
「あら。絵里ちゃんだってさっきから私のこと、ずっと見てたじゃないの。おあいこよ。さ、手をどけて。女同士なんだし、去年、慰安旅行で一緒に温泉にだって入った仲でしょ?」
 妖しく微笑みながら絵里の傍らに横たわった瞳は、胸と股間を隠していた手をどかし、改めて部下の裸身を観察する。
「あ、あのときはタオルで隠してたじゃないですか」
「だけど絵里ちゃん、ちらちらと私の裸、見てたでしょ」
「えっ……!」
 どうやら気づかれてないと思ってたらしく、絵里が目を泳がす。
「別に責めてるわけじゃないの。自分より若くて綺麗な女の子に見つめられるの、正直、ちょっと嬉しかったし」
 瞳のこの言葉に、絵里がほっとした顔で息を吐く。その動作に合わせて豊かなバストがぷるぷると揺れる。
「間近で見ると、ホントに綺麗なおっぱいよね。横になっても崩れないし、乳首の色もピンクで可愛いわ」
「あ、ありがとうございます。でも、瞳様のほうがおっきいし、素敵だと思いますっ。私が男だったら、絶対に自分のより瞳様のおっぱいを選びますっ」
「うーん、大きいだけよ、これ? 昔に比べたらトップの位置は下がってるし、柔らかくなっちゃったし」
 瞳は自分の胸乳をたぷたぷと揺らし、隣にある絵里の膨らみと見比べる。自虐でも謙遜でもなく、ただ淡々と事実を述べただけなのだが、なぜか絵里が強い口調で反論してきた。
「そんなことありません! 瞳様の胸のほうがいいです! 男はおっきくて柔らかいのが好きなはずですし! ですよね、誠さん!?」
 自分一人の意見では弱いと判断したか、絵里は第三者に意見という名の同意を誠に求めた。ここまでずっと己の存在を隠すように息を潜めていた誠が、びくん、と肩を震わせる。
「そ、そういう難しい問題に俺を巻きこまないでくれませんか……っ」
 瞳と絵里が横たわる布団から少し離れた場所で正坐をしていた誠が、心底困った表情になる。
(そりゃ、誠くんの立場だったら困っちゃうか。どっちのおっぱいがいいって答えても、私か絵里ちゃんに優劣つけることになるわけだし)
 しかし、そんな誠の苦境を理解した上で、瞳は敢えてなにも言わなかった。このまま放っておいたら面白くなりそうだと考えたためだ。
「なに、部外者みたいな顔してんです。こんな事態になったそもそもの原因はご自分だってわかってます?」
「うっ」
「それに私と瞳様、どっちのおっぱいも揉んだのはこの世に誠さんしかいないんですよ? あなたが決めてくれないと困ります」
「どっちも最高だったから、俺には決められないって」
「うーわ、出た。それ、考え得る最悪の答えですよ」
(ふふ、絵里ちゃん、いつもの調子が出てきたかな? あ、違うか、これ、照れ隠しだ。散々恥ずかしいところを誠くんだけでなく、私にも見られちゃった恥ずかしさを必死に誤魔化してるやつね)
 可愛い部下たちのやりとりをもう少し見ていたくもあったが、瞳はここでようやく助け船を出すことにした。二人の淫らな行為を散々覗き見した影響で、女体が疼いていたせいだ。
「だったら、こうすればいいわね」
「ひゃああぁ!? 瞳様、な、なにを!?」
「見てのとおり、絵里ちゃんのおっぱいを揉んでるだけ。……ふむふむ、これは極上ね。大きさや形だけでなく、揉み心地も最高級。まさに、当社が扱ってる工芸品並の高品質……!」
 冗談めかして言っているが、すべて本心だ。他の女性の乳房をここまでしっかり揉んだのは初めてだが、自分のものとは明らかに異なるのが新鮮だった。
(あ。これイイ。ビーズクッションとかと同じで、ずっと揉み揉みしていたくなるやつ……!)
 瞳は身体を起こすと、両手で絵里のバストを揉む。形や肌触り、柔らかさ、弾力を確かめるだけでなく、どこをどう愛撫すれば感じるかも探る。
「えっ、あっ、あっ、瞳様? ちょっ、あっ、待って、待ってください……ああっ、そんなふうに触られたら、私、私……んんんっ」
 突然の本気の乳揉みに戸惑いはしたものの、絵里は瞳を拒まなかった。羞じらい、身悶えつつも、どこか期待に満ちた目で瞳を見上げてくる。それはつい先程、誠に注がれていたのと同種のまなざしだった。
(そっか。絵里ちゃん、ホントに私をそういうふうに見ていてくれたんだ)
 絵里から向けられる好意が、ただの敬意だけでないことは薄々察していた。ただ、それが直接的な肉欲に至るまでなのかは読めなかったが、たった今、その疑問が解けた。
「うふふふ、こんなふうに触られたら、どうなっちゃうの? 気持ちよくなっちゃう? さっき、誠くんにされてたときみたいに?」
 先程、誠と濃厚な行為を交わしていたように、恐らく、絵里はレズビアンではない。つまり、絵里が性的な感情を向ける女は瞳だけなのだ。
(私もノーマルのつもりだったけど、うん、絵里ちゃんなら文句なし。可愛いし綺麗だし、男の趣味も同じって点が特にイイ。様付けはさすがに照れるけどね)
 されるがままとなった絵里の美乳を揉みしだきつつ、誠に声をかける。
「きみ、なにをぼーっとしてるの? 私の福利厚生、いらないわけ?」
「えっ」
「どうして驚くの? きみと絵里ちゃんがしてたのは会社とは無関係でしょ? 私は雇用主として、大切な社員の福利厚生を頑張る義務があるんだから。それとも、若くて可愛い絵里ちゃんのあとじゃ、年増なんて抱けない?」
 こう言えば絶対に断らないと承知した上で、誠を誘う。そしてさらにダメ押しとして絵里に覆い被さり、誠に向けてヒップを振る。瞳は全裸のため、当然、尻のみならず、剥き出しの女陰も誠には丸見えのはずだ。
「ねえ、わかるでしょ、私がとっくに準備万端って。きみたちのエッチを散々見せつけられたせいでこんなに濡れちゃったの。責任、取りなさいな」
 社長の義務という建前を自らあっさりと覆し、部下にストレートに行為をねだる。半分は演技だが、残りの半分は完全に本音だった。三十八歳の美熟女の昂ぶりを示すかのように、ひくつく花弁から溢れた体液が太腿を伝い落ちていく。
「あの……瞳様、私にも、その……福利厚生、してくれるんですよね?」
 瞳の下にいた絵里が、不安げに聞いてきた。
「ええ、もちろんよ。ただ、女の子相手にした経験はないんで、あんまり期待はしないでね?」
「大丈夫です、私も女同士は初めてですから!」
 瞳の返答に、絵里は一転、目を輝かせる。
(ころころ表情が変わって可愛いのよね、この子)
 考えるよりも先に、身体が動いていた。胸への愛撫をいったん中止し、絵里の頬を両手で挟み、顔を寄せる。なにをされるのかすぐに悟った絵里が目を瞑ると同時に、唇を重ねる。
(あは、キス、しちゃったわ。女同士も悪くないかもね。……あん)
 まずは軽いキスのつもりだったが絵里が舌を伸ばしてきたため、瞳はすぐに唇を緩め、従業員の粘膜を口内に招き入れる。絵里も同性とのキスは初めてのはずだが、そこにはまったく躊躇がなかった。
「ん、ん、んん……瞳、ひゃま……んむ……くちゅ、ちゅ、むちゅン」
(うわ、わわ、すっごい舌使い……やだ、こんなキスされたら、私もその気になっちゃう……っ)
 どちらからともなく互いの手を握り、胸を押しつけ合い、舌を絡め、唾液の交換までする。男とのディープキスとはまた異なる妖しい興奮に勝手に尻が浮きあがり、左右に揺れ出す。
(ああ、イイ……絵里ちゃんのおっぱい、柔らかいのに、先っちょはこんなに硬く尖っちゃってる……乳首が擦れると、たまんない……ッ)
 初めてのレズプレイに興奮しつつも、瞳は誠の存在を忘れたわけではない。絵里との濃厚なキスをしながら、目で誠を呼ぶ。
(ねえ、誠くん、まだ? 見てるだけでいいの? 今なら私と絵里ちゃんを一緒に抱けるのよ?)