戻る

クラスで2番目に可愛いボーイッシュ幼馴染を、二泊三日の修学旅行で寝取って種付けセックス漬けにする話 1

第1話 幼馴染を寝取る力を手に入れた(一日目 金・昼)

 

 観光バスの車窓から、ぼーっと外を眺める。
 うだるような暑さで、歴史的な街並みが熱気で揺らめいて見えた。
 今日は、高校の修学旅行の初日。
 クラスメイトたちは、バスガイドさんの案内をすっかり無視して、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。どうせ恋バナか、恋バナに近い話で盛り上がっているのだろう。恋愛とは縁遠い俺には、関係のない話だ。
 ふと、隣の空席に誰かが座った。
「やっほー、ぼーやん何してんの?」
「アヤか。あー……外、見てた」
「外?」
 俺の視界に、茶髪のショートヘアがずいっと現れた。こっちの席に身を乗り出して、窓の外を見ている。白い半袖ブラウスがまぶしい。
「何もないじゃん」
 そう言ってアヤがこちらを向く。
「うっ……」
 至近距離で真っ正面から見るアヤの可愛さに、変な声が出てしまう。
 
 南鳥アヤ。
 茶髪のショートヘアが特徴的な、同じクラスの女子。そして、俺の小学校時代からの幼馴染だ。
 アヤはボーイッシュな外見通り、明るくサッパリした性格で男子からも女子からも人気がある。そのくせ、顔が整っている。
 比較的童顔だし、今はすっぴんなので「愛嬌のある可愛さ」にとどまっているが、化粧をしたら一気に「美人」に様変わりしてしまうだろう。
「ちょっとぼーやん、『うっ』て何よ、『うっ』て……」
 アヤが、馴れ馴れしく俺の肩をポテっと叩く。むっとした表情も、これまた可愛らしい。
 この誰にでも人懐っこい感じが、アヤの数多ある魅力の一つだ。
 まあ、ここまでスキンシップが多いのは、男では幼馴染の俺ともう一人くらいなのだが。
「あ、いやごめん……うわっと」
「わきゃっ」
 観光バスが急ブレーキで止まり、その拍子でアヤが俺にもたれかかってきた。
 どうやら観光名物の鹿が、道路に出てきてしまったらしい。運転手さんがそう説明している。
「アヤ、大丈夫?」
「うーん、ぼーやんゴメンね」
 アヤが俺から体を離す。信じられないほど柔らかい感触が、俺から離れていく。ブラウスの襟元はボタンが一つ外されていて、そこから服の中が見えそうだ。
 俺は、慌てて視線を逸らす。
 いつかクラスの男子が、「Dか……いやEはあるぞ」と囁き合っていたバスト。
 アヤの数多ある魅力の一つだ。
「そろそろ席戻ったら? 時田も心配するんじゃない?」
「あー……今日は、一緒に座ってないんだ」
 アヤは、どこか気まずそうな顔をする。
「へぇ、そうなんだ」
 恋愛に疎い俺に、その表情の意味は分からない。だから、なんでもない返事をすることしかできない。
「うん……。じゃーね、ぼーやん」
 なんとなく物悲しい顔をして、アヤは自分の席に戻っていった。クラスの男子たちが、そんなアヤの後ろ姿を視線で追う。
 アヤは、昔からクラスで二番目に可愛い女の子だ。
 中学に上がり、男女の関係がよそよそしくなる年頃になっても、アヤは男子とも分け隔てなく接していた。
 彼女は、男子女子構わず自分の考えたあだ名をつけて呼ぶ。一歩間違えばイタい奴なのだが、そこにまったくいやらしさや計算を感じないため、逆に好まれるという稀有な存在だ。
 ちなみに、俺の「ぼーやん」というあだ名も、アヤに「いつもぼーっとしてるから」という理由で名付けられた。
 そこに後から、「身長高くてぬぼーっとしてるから」「お坊さんみたいに悟って見えるから」といった属性まで追加されて、今ではクラス中が俺をぼーやんと呼んでいる。
 とまあそんなワケで、誰彼構わずフレンドリーに接するアヤに、クラスのほとんどのヤツが惹かれていた。じゃあなんで、そんな彼女がクラスで二番目なのかというと……。
「よ、ぼーやん……今さ、アヤと何話してたん?」
 隣の空席に、スポーツ刈りの陽気そうな男が座った。
 アヤの彼氏の、時田だ。アヤが唯一あだ名で呼ばない男。
「別に……何してんのって聞かれただけだよ」
「んで、ぼーやんはなんて答えたん?」
「外、見てたって」
「ぶはっ、お前……相変わらずぼーやんだよなぁ、うくく……」
 まったく何が面白いのか、時田は馬鹿にするように笑っている。
「アヤのとこに座んないの?」
「あー……ちっとな、ぼーやんだから話すけど、ここんとこさ、ちょっと俺らうまくいってないんだ」
「へぇー……」
「いや、もっと興味持ってくれよっ!」
 時田は、笑いながらツッコミを入れてきた。悪く言えば軽くて、よく言えば裏表のないさっぱりとした性格。アヤにはお似合いの彼氏だ。
 中学に上がってしばらくして、同じクラスだった時田はアヤに告白した。
 振られても振られても何度もトライし、三回目でようやくアヤは首を縦に振った。
 このとき、アヤは幼馴染の俺にあれこれ相談してきたけど、恋愛に疎い俺は適当な返事しかしてやれなかった。
 アヤと時田は喧嘩をしたり仲直りしたりを繰り返し、今も仲睦まじく付き合い続けている。中学では名物カップルとして有名になり、一緒の高校に入ってからも名物カップルとして名を馳せている。
 これが、アヤがクラスで二番目に可愛いと言われる理由だ。
 彼氏がいるアヤを、みんなおおっぴらに好きだとは言えない。だから「確かにアヤは可愛いけど俺は別の子のほうが好みだな~」という予防線を張るのだ。
 でも、俺にとっては。
 小学校のときからずっと、クラスで一番可愛い女の子だった。

 ◇

 観光名所だという大仏様の前で、俺は一人ぼーっとしていた。本当は班行動なのだが、どうにも一人になりたくて、こっそり抜けてきたのだ。
「はぁ……」
 なんなのかよく分からない感情が、ため息となって出ていく。さっきから思い起こすのは、バスの中での、アヤの柔らかい感触と甘い匂い。
「いかんいかん」
 俺は両頬をパシンとはたいて、煩悩を退散させる。別に実家はお寺ではないのだが、ぼーやんぼーやんと呼ばれ続けたおかげで、なんとなくお坊さんのようなメンタリティになりつつある。

「ぼーやん?」
 耳をくすぐる猫のような声。振り返ると、アヤが立っていた。なんとなく所在なさげに、こちらを見つめている。
「アヤ……も、一人なの?」
「ああ、うん……ちょっとねー」
 根は真面目なアヤが、班行動を抜け出すなんて珍しい。
「どうした? なんかあったの?」
「あの、さ……ぼーやん、ちょっと相談乗って、くれるかな?」

 俺とアヤは、大仏様の裏手にある、人影の少ない場所にいた。二人して、ベンチに並んで腰掛ける。
「で、どうした? 時田となんかあった?」
「え、よく分かったね……」
 事前に時田から「うまくいっていない」と聞いていたからこそ、出てきた質問だ。普段の鈍感な俺なら、絶対に気づいていなかっただろう。現にアヤも俺が気づくとは思ってなかったのか、目を見開いて驚いている。
 やがて、その長い睫毛がそっと伏せられた。
「あのね……最近、時田が……なんていうか、強引なんだ」
「強引とは?」
「あー……なんていうか、え、エッチなこと、求めてくるといいますか……」
「…………」
 俺は沈黙してしまった。なんでか分からないが、脳みそが上手く働かない。感情がまとまらず、頭がクラクラする。
 アヤは俺の沈黙に妙な安心感を覚えたのか、「ぼーやんだから話すんだけどさ」と言って、赤裸々なカップル事情を話し始めた。
 曰く、中学時代は恥ずかしくて、デートでもアヤは手をつなぐのが精いっぱいだったらしい。うん、これはアヤから聞いたことがある。
 曰く、高校に入ってからは、時田のお願いに根負けして、軽いキスと軽いハグはするようになったらしい。これは、初めて聞いた。
 曰く、最近は、ハグをしていると強く抱きしめてきて、キスをするともっと激しいキスを催促してくるらしい。

 …………。

 情報量が多すぎて、過激すぎて、俺の脳みそはパンク寸前だ。しかも、なぜか胸のあたりがギリギリと痛む。どうしてか、無性に腹が立つ。
「……アヤはその、イヤ……なのか?」
 辛うじて、そう聞けた。
 
「わかんない……時田のことはもちろん嫌いじゃないんだけど、そういうことしてくる時田はちょっと、こわい」
「そうなんだ」
 アヤは、意外にもウブな性格をしている。
 男とも平気でフレンドリーに接するが、いざ恋愛対象として見られたり、女として扱われたりすると、途端に茹でダコのようになってしまうのだ。
 最初に時田に告白されたときも、顔を真っ赤にして両手を振ってアワアワした挙げ句、その場から逃走した。
 二度目に告白されたときなんて、「む、むり、むりむり、むりむりむり」と壊れたラジオのようになっていた。
 だから、三度目のときに、何も言わずにコクリと頷いたのを見て、俺は心底目を疑ったものだ。
 俺が「そうなんだ」以外の言葉を紡げない様子を見てか、アヤは急に謝りだした。
「ごめんっ! ぼーやん、いきなりこんな話されても困るよね」
「え、いや、うん……」
「うん、ごめんごめん、でもなんかぼーやんに話したらスッキリしてきたよー、ありがとね!」
 絶対そんなことないだろうに、アヤは笑ってそう言った。
 遠慮なく人の懐に入ってくるように見えて、実は人の心に敏感で気にしい。
 これは、俺だけが知っているアヤの魅力の一つだ。
 俺がまたも黙ってしまったので、アヤは焦った様子で話を変えてきた。
「と、ところでさ、ぼーやんはその、気になる人とかいないの?」
 気になる人? アヤを抜いて気になる人は……特にいないな。
「いや、俺そういうの、よく分かんないんだよね……ていうか、俺が人と付き合うとか、想像できないっていうか――」
「もったいない!」
「はぇっ?」
 アヤが急に大きな声を出すものだから、俺もびっくりしてしまった。そんな俺に構わず、アヤがずいっと距離を詰めてくる。大きな二重の目が俺をじっと見つめた。
「もったいないよ、ぼーやん!」
「えっと、何が?」
 困惑する俺に、アヤが拳を握って断言した。
「ぼーやんは、もっとガツガツしたら絶対モテる!」
 モテ……る? 俺が?
 お坊さんとか、女子と二人きりになっても絶対に変なことにならなそうだから「アンパイマン」とか言われてる、俺が?
「みんな、ぼーやんのよさを分かってないだけ!」
 アヤは、なぜか目に涙を浮かべていた。
 俺のよさ……を、アヤは分かってるってことか?
 なぜかそのとき、俺の心臓がドクンと跳ねた。徐々に、喜びに似た感情が体を満たしていく。俺は何かにすがるように、アヤに返事をした。
「そう、なのかな」
 俺は自分でも頬が紅潮していくのを感じていた。
 なんだこれ。なんでこんなに嬉しいんだ、俺。
「そうだよ、だから私、ぼーやんに好きな人できたら、めちゃくちゃサポートするし!」
 ガーンと、頭をハンマーで打たれたのかと思った。
 浮かれた気持ちが吹き飛び、一気に奈落の底に落とされたような感覚に襲われる。
 その後、アヤとは一言、二言会話をした気がする。「班に戻るね」と去っていく後ろ姿を見送った気がする。
 気づけば、俺は大仏様を見上げながら、ぼーっとしていた。
 俺は、悟った。
 自分の気持ちに気づくのが、遅かったことに。
 アヤを好きな気持ちに、ずっとフタをしていたことに。
 気づいてしまえば、俺は昔からびっくりするほどアヤに惚れていたことに。
 そして、今さらそれに気づいても、完全に手遅れだということに。
 それなのに。
 俺は今、アヤに恋い焦がれていた。アヤが欲しくて欲しくて、欲しくて欲しくてたまらない。
 俺は、一心不乱に大仏様に祈った。
「もうどうなってもいいから、俺にアヤをください……!」

『――叶えます』

 誰かの声が聞こえた気がして、目を開ける。気づけば漆黒の闇が広がっていた。
 そして、また誰かの声が響く。

『――叶えました』

 パッと視界が戻る。目の前には、温厚そうな大仏様が座っている。
 幻覚、幻聴?
 いや、違う。
 今のは多分、神様的な何かの声だ。なぜか、そうだという確信がある。
 神様は「叶えた」と言った。
 でも別に、世界は何も変わってない。アヤが急に俺に惚れた、なんてこともない。それもなぜか分かる。
 
 ただただ、俺が変わった。
 なんというか、活力のようなものが止めどなくあふれてくる。
 どんなことでも、今の俺ならできる気がする。
 どんなことをしても、誰も俺の邪魔をすることができない。
 
 絶対に、アヤを手に入れることができる。
 そんな確信がみなぎっていた。