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クラスで2番目に可愛いボーイッシュ幼馴染を、二泊三日の修学旅行で寝取って種付けセックス漬けにする話 6

第6話 いけない幼馴染を焦らした(二日目 土・夜)

 

 頭上からアヤの切ない悲鳴が降ってくる。静かな浴室にチュプ、チュプ……という淫靡な水音が響く。俺は露出したアヤの下半身に手を差し入れ、指での愛撫を続けていた。
「ひっく……うぅっ、あっ、やっ……ぁっ、んうぅっ」
 アヤは黒いパーカーの袖で口を押さえながら、涙を流している。もう片方の手は、執拗に秘部をいじる俺の腕を力なく押さえていた。
 抵抗することも、拒絶することも、もうしない。ただただ、時間が過ぎるのを待つという感じだ。
 お湯を吸ったパーカーや髪の先から水滴がポタポタと落ち、下半身に流れてくる。しかし降り注ぐ水流はもうないので、アヤの秘所から分泌される液体だけを、より感じることができた。止めどなくあふれる愛液の粘り気を、指の間で確かめる。

 さっき絶頂させて、気づいたことがある。
 アヤの体は、とても敏感だ。もともと感じやすい体質なのだろう。だからこそ、時田に触られたりすると過敏に体が反応し、思わず拒絶してしまうのだ。
 数多あるアヤの長所が、また一つ増えた。もちろん、誰にでも感じてしまうなんてことはないだろうし、誰にも――時田にも、そんなアヤの姿を見せるつもりはない。
「ぁっ……んっ、んっ、あぁっ……ふっ、ぐぅっ……あっ、あんんっ……」
 また性感が高まってきたのか、アヤの悲鳴に淫らなものが混じりだした。
 アヤの感情が流れ込んでくる。

 ――ぼーやんに触られる場所が、あつい。
 頭がクラクラする。
 口から、勝手に変な声が出る。
 出したことのない声。
 もうイヤだ、こんなことされたくない。
 逃げたいのに、逃げられない。
 イヤなのに、体がジンジンして、逃げられない。
 私の体じゃ、ないみたい。
 ぼーやん、どうして……?

 そんなアヤの困惑が、俺の興奮をさらに昂らせる。
「感じてるアヤ、すごく可愛い……」
 嬉しさのあまり、つい口走ってしまった。今の俺は、まるで恋する乙女のような顔をしているだろう。喜色を浮かべ「人生で一番興奮してます」という顔をしているに違いない。
 気色悪いだろうか。しかし、神様の直感からのアラートはなかった。
「んっ、やっ……」
 アヤはパーカーの袖で顔全体を隠した。恥ずかしさが伝わってくる。その顔が見たくて、俺はアヤの腕を掴んでどかした。
 潤んだ瞳と目が合う。どこかトロンとしていて、妖艶な感じがした。
「そのまま俺の目見てて……目を、閉じないで」
「なんで……なんで、よぉ……」
 困惑と恥辱が混ざり合った顔だ。アヤの言葉は、俺に向けられたものじゃない。なんでこんなに体が反応してしまうのか、自問自答している感じだ。
 あと少しの愛撫で、アヤをまたイかせられる。

 ――だめだ。

 神様の直感が、そう告げた。
 俺は欲求を抑え込み、アヤの膣からゆっくり指を離す。
「はぁ、はぁ」というアヤの吐息が響く。俺もいつの間にか、荒く呼吸をしていた。

「くしゅっ」

 アヤが、可愛いくしゃみをした。
 しまった。
 夏だし、シャワーで温めたからと油断していた。それにアヤは基礎体温が高くて、暑がりだから。
 でもそうだった、アヤは緊張すると途端に冷えて、お腹を壊したりする子だった。めったに緊張する様子を見せない子だから、忘れていた。
 俺はアヤの両腋に手を差し入れると、ひょいと持ち上げて浴槽から出した。濡れたパーカーが冷たい。
 俺も浴槽から出ると浴室の扉を開け、洗面所の棚からバスタオルを取る。
「アヤ、体拭いたほうがいい。風邪ひいちゃうから」
「え……?」とつぶやくアヤに、バスタオルを差し出す。しかし間の抜けた顔のまま、固まっていた。俺はアヤの目の前でしゃがむと、バスタオルで下半身の水滴を拭き取る。
「んっ、ちょっとっ……」
 膝、太ももの順番でテキパキ拭いていく。股下にバスタオルをあてがい、お尻をくるみながら下腹部の水分を取る。
「あっ、んんっ……」
 黒いパーカーの内側も濡れているのに気づき、お腹も拭く。バスタオルをパーカーの中に差し入れていくと、アヤの胸も冷えていた。さっき廊下でブラジャーをめくり上げたせいで乳房が露出している。そのふくらみに沿ってタオルで撫でていくと、アヤが俺の腕を掴んだ。
「やめてっ、ぼーやん」
 アヤは俺の手からバスタオルを取ると、恥ずかしそうに下を向いた。
「自分で、拭けるから」
「……そうか。じゃあ俺、戻るから」
 俺は浴室にアヤを残し、廊下に出る。ふと玄関戸棚の下に、アヤのスマホが落ちているのを見つけた。さっき浴室に引っ張ったときに落ちたのだろう。
 俺はスマホを拾い上げると、戸棚の上に置いた。
 ドアの外に出て、ホテルの廊下を歩く。びしょびしょに濡れたTシャツとハーフパンツ姿で、自分の部屋に向かう。
 途中、ランドリーコーナーに寄ってみる。一台しかない乾燥機に、「故障中」という紙が貼られていた。
 部屋に干しても、明日までに乾くか分からないな。
 そんなことを思いながら、俺は不自然なほどに人の姿のない廊下を歩いた。

 ◇

 夕方。
 皆で食堂に集合しての夕食だ。
 班ごとで長テーブルに座り、学年全員が到着してから「いただきます」をする。他校の生徒も来ているらしく、学校ごとにエリアで区切られていた。
 俺は席に座りながら、アヤの班が座るだろうテーブルを見る。まだ誰も到着していないようだ。
 食堂の入り口に、ひときわ華やかな集団が見えた。アヤたちの班だ。
 アヤは、ホテルの浴衣を着ていた。
 よくある白地に薄い格子柄の浴衣と、茶羽織という格好だ。普通はゆったりとしたシルエットなのだが、アヤが着ると胸部のふくらみが目立つ。すっぴんでも整った顔と相まって、食堂中――特に男子の視線を一気に集めている。
 見れば、周りの女子も数人浴衣を着ていた。周りの視線に目もくれず、アヤは自分の席につく。
 友達らと話す様子は、いたって普通だ。ついさっきまで、執拗に愛撫を受けていたようには見えない。
「いただきます」
 皆がそろったので、うちの校も食事を開始する。
 ふと俺の背後から、数人の男たちの声が聞こえてきた。
「――なあ、あの子やばくね? あの浴衣の子」
「あそこの茶髪の子だろ? すっげーおっぱい……てか可愛くね」
「どこから来たんかなぁ、後で声かけてみる?」
 横目でチラリと後ろを見れば、ヤンキー……というほど物騒ではないが、ピアスの穴やカラフルな髪の毛が特徴的な男子たちが、アヤのほうを眺めていた。男子校の陽キャグループといった感じだ。
「いやあの可愛さだったら、普通に彼氏いるくね?」
 確かに、あの浴衣姿は反則だ。普段のボーイッシュな格好や雰囲気からの落差がすさまじい。彼氏の時田もアヤに見とれているようだ。さっきから箸が進んでいない。
「……さすがに修学旅行でナンパはねーべ」
 その言葉を最後に、陽キャグループの関心は別のテーマに移っていった。俺も冷えた肉じゃがに箸をつける。
 
「南鳥お前、なんで浴衣着てるんだ?」
 引率の江藤先生が大声を上げた。アヤの後ろに立ち、上から浴衣姿を眺めている。みんなも気になっていたのだろう。食堂の喧騒が一気に静まる。
「服、全部濡れちゃいまして……」
 アヤは自然な様子で振り返ると、立っている江藤先生を見上げた。テヘヘ……と恥ずかしがる感じで。周りの女子たちは、げんなりした表情で江藤先生を見つめていた。
 おそらく、いつも何かにつけてアヤに声をかけているのだろう。他にも浴衣を着ている女子がいるのに、アヤだけに話しかけるあたりに下心を感じる。
「ああ、お前盛大に川に飛び込んでたもんな」
 江藤先生が大声で笑う。
「わざとダイブしたわけじゃないですよ~!」
「まったく、ちゃんと替えまで用意しとけよ!」
 なぜか江藤先生は、叱り口調でアヤと話している。
 アヤに関して敏感になっている今なら分かる。江藤先生は、こういう態度でしかアヤと親しく話せないのだ。それは明確な下心の裏返しで。威圧してマウントを取ることで、アヤを支配下に置きたいという欲求を感じる。
 それに対して、アヤはいたって平然と、感じよく応対している。江藤先生の下心の滲んだアプローチにも、アヤは気づかない……フリをしている。
 アヤは、内心ではかなり江藤先生を怖がっている。恐怖というより、嫌悪感のほうが強いだろう。それでも部活の人間関係を壊したくない、周りの雰囲気を悪くしたくないから、天然で無邪気なフリをしているのだ。
 そういう心情が手に取るように分かる。
「替え、ちゃんと用意したのに、それも濡れちゃいまして……」
「ほんとお前はぬけてんな!」
 そう言って、江藤先生はやっとアヤの背後から去っていった。
 アヤの替えの服をシャワーで濡らした犯人は俺だ。
 ランドリールームの乾燥機は壊れていたから、この短時間では乾かなかったのだろう。明日は学校指定の制服で移動する日なので、後は寝間着しか着るものがない。
 しかしアヤが昨日着ていた寝間着――紺色の半袖パーカーと黒いシャカシャカジャージは、汗とか俺の唾液とか、多分だがアヤの愛液にまみれてしまい、もう着たくないのだろう。
 俺はさらに冷えてしまった肉じゃがに、ようやく箸をつける。
 アヤは、楽しそうに他の女子と話し始めた。
 上機嫌そうな表情。たまに垣間見せる、少年のような不敵な笑顔。いつもの明るいアヤだ。……ほんのり顔が火照っている以外は。
 
 アヤは今、性感がかなり高まった状態だ。
 
 無理もない。
 アヤは、俺によって初めて絶頂を味わい、さらにもう一度……というところでお預けを食らったような状態なのだ。
「お預け状態」なんて本人は否定するだろうが、少なくともアヤの体は期待した快感が得られずに欲求不満が高まっている。
 おまけに俺の言動は、昨日からアヤを翻弄させまくっていた。次から次に押し寄せる衝撃の展開に、アヤは今も平常心を取り戻せていない。つまり、ドキドキしっぱなしということだ。
 なんてことは、今の俺だから分かることだが。

 ――ダメだ。焦らせ。

 浴室でアヤに二度目の絶頂を味わわせようとしたとき、直感がそう叫んだ。
 焦らして焦らして、その先に、アヤを手に入れるゴールがある。
 そういう確信があった。

 ◇

 夜。
 俺はホテルの裏手にある駐車場にいた。十メートルほど先では、アヤと時田が向かい合って立っていた。
 俺はその様子を、車の陰からそっとうかがう。
 別にアヤや時田の後をつけたわけではない。待ち合わせの時間も場所も知らない。ただ直感に従い、たまたまこの場所に来たら、二人と出くわしたのだ。
 駐車場の街灯の下に、緊張した二人の横顔が浮かぶ。
 最初にアクションを起こしたのは時田だった。
「アヤ、あー……ごめん、なんつーか俺、焦ってたっつーか、あー……」
「うん、ちゃんと聞くよ」
 アヤは、時田の目をじっと見つめて微笑む。体のほうは今も収まらない昂りに戸惑っているようだが、表面上は落ち着いて見える。
「あのさ、俺、ちょっとさ、暴走したっつーか、アヤの嫌がること、しちゃったじゃん?」
「……うん、ビックリした」
「だよな~! ほんとゴメン、ほんっと、ゴメン!」
「ああうん、もう……大丈夫だから」
 時田に言われて、「ああそんなこともあった」という顔をしたのが分かった。昨日から俺にさんざん過激なことをされまくったせいで、時田に押し倒されそうになったことなどすっかり忘れてしまっていたのだろう。
「アヤ~! ありがとう~!」
 時田がアヤに一歩近づく。
「……おおヨシヨシ、なんつって」
 アヤが、時田の頭を撫でた。まるで犬を愛でるような、冗談めかした仕草だ。しかし、どこかぎこちない。
「いつものアヤだ~」
 感極まってという感じで、時田がアヤにハグをした。
「ぁっ……」
 アヤが、悩ましげな声を漏らす。
 あまりの色っぽい声に時田の表情が変わる。アヤの目をじっと見つめ、ゆっくり顔を近づけていく。
 そんな時田に対し、アヤは、無表情で目を閉じた。
「――っ」
 唇がそっと触れるだけの、軽いキス。情欲をなんとか理性で制御したのか、時田がゆっくり唇を離した。しかし時田の股間はガチガチに勃起している。
 抱き合っているアヤも、もちろんそれを感じていた。
 その硬さから逃げるように、アヤがそっと腰を引く。
 時田も、しばし遅れて体を離す。
「アヤ、俺……アヤのこと大事にするから」
「うん、ありがとう」
 なんとなく、もう一度キスをしたそうな時田にアヤが切り出した。
「部屋のみんなが心配するから、そろそろ戻ろ?」

 ◇

 二人はホテルの入り口で二言三言言葉を交わすと、先に時田が中に入っていった。
 少しして、アヤも中に入る。先生に出くわしたときに、カップルで抜け出したなんてことがバレるとマズいからだろう。
 俺は、少し距離を置いてアヤの後ろ姿を追った。
 アヤは部屋に向かう階段を上らず、一階にある自販機コーナーに寄るようだ。すでに消灯時間を過ぎているので、廊下は常夜灯の明かりしかない。
 明るい自販機の前で、アヤはぼーっと立っていた。飲み物を選んでいるという風ではない。
 アヤは時田に対する自分の感情に、戸惑っていた。

 ――時田に会えば、この変なドキドキが収まると思ったのに。
 時田への思いで、忘れてしまうだろうと。
 でも、実際に会って、焦ってる時田を見て……。
 なんだか、モヤモヤした。
 こんなに落ち着きのない人だったっけ。
 こんなに……胸とか唇とか、見てくる人だったっけ。
 下心が見え見えの言葉を、かけてくる人だったっけ。
 ううん、でも……久しぶりのハグやキスは、すごく優しかった。
 大事にするって、言ってくれた。
 ――本当に?
 モヤモヤする。
 どうしちゃったんだろう、私。
 これまで時田と、どんな風に接してたっけ。
 いつも、どんな風に過ごしてたんだっけ。
 なんだか、気持ちがまとまらない。
 いまだに体がアツくて、お腹の奥がジンジンして。
 こみ上げてくるものが、ツラくて。
 ……ぼーやんは、感じてるって言ってた。
 今も、私は感じている?
 最低だ。
 やっぱり私……ダメダメなんだ。

 ……そんなアヤの中で渦巻く思いが、ダイレクトに伝わってくる。
 性感が高まっているからなのか、ゴールが近いせいなのか。今までよりも、はっきりとアヤの心情が読み取れた。
 小学校のときのように、妙なところで自分に自信がないアヤまで顔をのぞかせている。数多あるアヤの短所の一つ。治ったと思ってたんだが。
 アヤは自販機を眺めながら、「ふぅ……」とため息をついた。

「あれ、キミ浴衣の子じゃん!」
「え……?」
 唐突に男の声がして、アヤが振り向く。
 そこには、ピアスの穴やカラフルな髪の毛が特徴的な男子が三人、ニヤニヤしながら立っていた。どうやら酔っ払っているようで、顔が赤い。
 助けるか。

 ――助けるな。

 神様の直感が、俺の足を止めた。
 どうやら、ここで助けるのは最適解ではないらしい。俺は、廊下の陰から様子をうかがう。
「もう消灯時間だけど、キミも抜け出してきたの?」
「なに、ジュース? 俺らが奢ってあげようか?」
 無遠慮に距離を詰めてくる男たちに、アヤはいつもの愛想笑いをする。それは酔った彼らの興奮を高める効果しかなかったらしい。ひときわ大柄な男が、アヤへさらに近づいた。
「つーかさ、浴衣めっちゃ可愛いね……どこの子? これから俺らの部屋来ない?」
「おいおい、お前、さすがにふざけすぎ」
「あぁ? んだよ、チビってんじゃねーよ! せっかくこんな子捕まえたんだからよ、連れ込まなきゃ男じゃねーだろ」
 大柄な男はだいぶ酔っ払っているようだ。仲間の二人に悪態をつき、それを二人がたしなめている。
 不穏な空気に、アヤの顔も引きつっていた。
 さすがに助けるか。

 ――助けるな。

 またしても、神様の直感に止められる。一歩踏み出すのを、こらえる。
 するとアヤが、できるだけ男たちを刺激しないように言葉を発した。
「すみません、私頼まれてジュース買いに来てて……みんなが待ってるから戻りますね」
 男たちの間をすり抜けようとしたアヤの前に、大柄な男が立ちふさがる。
「いやいや、ジュース買ってないじゃん」
「ああ~……あの……財布、忘れちゃって」
「奢るよ」
 大柄の男が低い声で言った。アヤの顔や体を、まるで獲物を見る肉食獣のような目で見ている。
「すいません、大丈夫です……」
 アヤが再び男たちの間をすり抜けようとする。すると大柄な男の手が伸びて、アヤの肩を掴んだ。
「やっ……」
「うおおっ!」
 大柄な男が、歓声を上げた。他の二人の男も、アヤを凝視している。
 男に掴まれた拍子でアヤの浴衣がずれ、白い肩が露出していた。胸元もはだけてしまい、豊満な谷間がわずかに見えている。
「え……まさかノーブラ?」
「マジ? マジでノーブラなん!?」
 二人の男が、一気に興奮しだした。もっと見ようと、アヤに近寄る。
「いや、はは……」
 アヤは引きつった笑みを浮かべたまま、急いで胸元を隠す。
 しかし大柄な男の手が、アヤの肩から離れない。
「……もう、行きます」
「ちょっと待てって」
 大柄な男が、アヤのもう片方の肩にも手をかけた。

 助ける。
 ――助けるな。

 いや、もう我慢の限界だ。
 俺が廊下から飛び出そうとしたとき――。
「お前ら、どこのクラスだ!」
 江藤先生の大声が廊下に響いた。どうやら見回り中だったらしい。
 江藤先生はアヤと男たちを交互に睨んだ後、低い声で言った。
「お前らうちの生徒になんの用だ? そっちの先生に知らせんぞ!」
 大柄な男よりさらにガタイのいい江藤先生に凄まれ、さすがに彼らの酔いも覚めたようだ。男たちは「すみませーん」だの、「戻りますんでー」だのとごまかしながら、あるいは無言で江藤先生を睨みつけながら去っていった。
 自販機コーナーで、江藤先生が今度はアヤに叱りだした。
「南鳥お前こんな時間に何してんだ、消灯時間過ぎてるぞ! 深夜に出歩くなんて不良娘か?」
「すみません。あの、ジュース買いたいなと、思って……もう戻ります」
「その前にちょっと教員部屋に来い」
 江藤先生はアヤを連れ廊下を歩き出した。教員たちの泊まる部屋は一階にある。ちょうど廊下の突き当たりの部屋に、二人は入っていった。
 俺も急いで廊下を走り、部屋の前に立つ。教員部屋は和室タイプの部屋で、引き戸がほんの少し開いていた。俺はそこから中をうかがう。
 廊下の奥のふすまが開いていて、そこにアヤの後ろ姿が見えた。江藤先生はアヤのすぐそばに立っているようだ。
「あの、他の先生は……」
「ああ、この部屋は俺一人なんだ。悪いがそこのふすまを閉めてくれ」
 江藤先生が、さりげない風を装って指示をした。しかしアヤは動かない。江藤先生がぶっきらぼうな感じで声をかける。
「お前、本当に今ノーブラなのか?」
 俺は、耳を疑った。多分、アヤもそうだ。およそ教師がかけていい言葉じゃない。
 江藤先生は呆れたような口調で続けた。
「お前、そんな顔してけっこう遊んでるんだなぁ……俺見たんだぞ、昨日の夜、お前ぼーやんの部屋に行ったろ」
 かなり、マズい。
 昨夜の訪問がバレていることがじゃない。
 江藤先生の声に、アヤへの下心を隠す素振りが見えないことがだ。
 アヤの心情が伝わってくる。

 助けて。
 助けて。
 助けて。

 俺は、思わず引き戸に手をかける。

 ――助けるな。

 神様の直感が、またも俺の手を止めようとしてくる。
 俺は、初めて神様に逆らった。

 

(第六話 完)