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古風でいやらしい三人の未亡人 2

2 濡れ指

 

 ボーン、ボーン、ボーン……。

 居間にかかっている古時計が時刻を知らせる音が、康隆の耳にまで響いた。

 時計の鐘は十二回を数えた。

(ついに、十二時に……)

 ゴクリと唾を呑み込む音が自分の耳にまで届いた。

 実和子と交わした食卓での会話から数時間が経っている。

 康隆は自分の部屋から一歩も出ることができなかった。

 五年前のあの夜のことは、記憶のなかで何度も反芻していた。

(実和子さん、忘れるわけがないよ……あの夜を……)

 当時、悲しみの極地にいた康隆ではあったが、喪服越しではあるものの、実和子の胸乳のふくよかな感触は、強烈に記憶に残っている。

 母の胸に抱かれた記憶のない康隆は、あのとき、義母の背中に手を伸ばし抱き合った際、女性の身体はこんなにも細くて華奢なのかと驚愕したものだ。

 そして同時に、折れそうな肩に比して、康隆のすべてを包みこむような大きな胸のふくらみに、衝撃が走った。

 悲しみのどん底にいた康隆を救った、乳房の感触だった。

 これまで女性と経験がなかったのも、あのときの体験がいつまでも心に残っていたからかもしれない。

 実際、実和子をおかずに使ってオナニーするときは、喪服姿が多かった。

(でも、浴室に来てって、いったいどういうことだろう)

 夕食時に放たれた実和子の誘いの本当の意味を、ずっと康隆は思案していた。

(お背中をお流ししますっ……っていうことなんだろうか)

 今日、父の墓参りをしたのをねぎらう意味なんだろうか、とまずは考えた。

(でも……それだったら、あんなに真剣な顔で、言うことじゃないと思うんだけどな)

 あの夜のことを、ふたたび思いだし、はあーっと、深く鋭い溜め息をもらした。

(やっぱり、あれしかないよな)

 正解に、康隆はうすうす気づいていた。

 ただ、導き出された答えが、康隆にとって信じられないものであったために、現実を直視するのがこわかったのだ。

 あの夜に発せられた言葉と、今日の実和子の表情をもう一度、頭に想い浮かべる。

 康隆にとって実和子は、初めて異性を意識した人だった。初恋のようなものだったのかもしれない。

(実和子さん、僕の思いに、気づいているんだろうな)

 バレていないと思っていた実和子をおかずにしてのオナニーだったが、そんな劣情はお見通しだったということだ。

(そうじゃなければ、こんな誘惑、しないはずだよ)

 脱衣所まで来ると、浴室に人の気配がするのがわかった。

 磨りガラスで誰が入っているかはわからないが、この家には、義母と康隆のふたりしかいない。

(ほ、本当に、ぼ、僕は……)

 あまりに突飛すぎる現実を、脳内のなかでも言葉に置き換えることに戸惑ってしまうほどだった。

(実和子さんと、セックスするんだ……)

 想像するだけで、胸が高鳴る。

 夕ご飯を終え、部屋にいるときからずっと、股間はギンギンで痛いほどだった。

 その肉茎が、さらにゆっくりと、ひとまわりふくらんでいくのがわかった。

「康隆さん、そこにいるの? ぜんぶ脱いで、どうぞいらっしゃい」

(み、実和子さんの声だっ)

 パジャマと下着を脱ぎ去り、最高潮に勃起しているペニスを、両手のひらでどうにか押さえこんだ。

 実和子の声に導かれ、康隆は浴室のドアを開けた。

 

 

「や、康隆さん、お待ちしていましたわ」

 日本舞踊の宗家だけあって、浴室は普通の家よりも大きい。

 大理石の床に奥には檜で設えた浴槽。見慣れた風景の浴室に、キャミソール姿の実和子がいた。

 まるで玄関で康隆を迎えてくれるのと同じように、三つ指をそろえて正座をしていた。

(み、実和子さん、なんて格好をしているんだ)

 実和子は黒髪をアップにまとめ、キャミソールは風呂の湿気で柔肌にピタリとまとわりつき、ボディラインがあらわになっている。

(おっぱいの先に……ああ、あれは、実和子さんの乳首)

 薄布が大きな乳房の先にピタリと密着しているせいで、乳丘はもちろん、ピンと尖っている乳頭までの形を明らかにしている。 

「来てくれないと思っていたわ」

「そ、そんな……や、約束ですから」

 実和子は正座をしているため、康隆は見下ろすような形になっている。

(あああ、実和子さんが僕の足元でひざまずいているから……胸の谷間がふ、深すぎるよ)

 深々とした胸の谷間が丸見えで、思わず視線が吸い寄せられていく。

「康隆さん……成人、おめでとうございます」

「あ、あ、ありがとうございます」

 日付が変わり、康隆は自分が成人の仲間入りを果たしたことを忘れていた。

 実和子とこれからなにをするのかということに想いを巡らせ、それどころじゃなかったというのが本音だった。

「康隆さんが、あの日の夜のことをおぼえてくださっていて、本当に、うれしかったです」

「忘れるわけないですっ……だって、僕、あのときのことをずっと胸に……って実和子さん!」

 実和子の目尻に、涙が浮かんでいた。

 空元気の笑みを美貌に浮かべ、かすれるような声で、懸命に実和子が語りだす。

「私も、ですよ。嫁いできたばかりで、急に家元が亡くなって、ひとりになってしまって……でも、私には、康隆さんがいることが、ずっと心の支えに……」

(ああ、僕だけじゃなくて、実和子さんも、苦しかったんだ)

 自分のことばかりを考えていた康隆は、実和子がこれほど悩んでいたことまで気がまわらなかった。

(若くして家元となった自分を、実和子さんは、陰ひなたなくサポートしてくれた……そんなに苦しい胸のうちで……)

「すいませんでした。そして、本当にありがとうございましたっ」

 涙を手の甲でぬぐいながら、実和子は笑みを康隆に見せた。

「でも反省しています……あの夜のことは……」

「えっ、それって……」

「抱きしめて、そして、キスするなんて、やりすぎだったかな、って」

「キス」という言葉に、康隆の心臓が早鐘を打ちはじめた。

 額にちょこんと触れた唇の感触を、いまだに康隆はおぼえている。

 浴室だということもあり、美肌の実和子はもともと化粧が薄い。いまもほとんど口紅はしていないだろうが、果実のようなぽってりとした唇は薄紅色に艶めいている。

 額にキスをしてくれたのが五年前、実和子が三十三歳のときだ。

 そのときとくらべても美貌はまったく衰えておらず、むしろ熟成されてより濃厚になったフェロモンがかもしだされていた。

 そのとき、実和子の唇が動いた。

「ずっと……私のことを思ってくださっていたんですよね?」

 直球の質問に、康隆はたじろぐ。

 ひるみそうになる心に勇をふるい、実和子の瞳を見つめた。

「はい、ずっと、実和子さんのことが……好きでした」

 実和子の目蓋が、ぎゅっと閉ざされた。

 しばらく瞑目する実和子。

 次に目が開いたとき、実和子の目は決意の輝きに満ちていた。

「いま、私が伝えたいのは、成人おめでとうという祝福の想いと、いままでありがとうという、感謝の気持ちです」

 かしこまった口調の実和子に、康隆は戸惑う。

「わ、私が、康隆さんを、大人にしてさしあげます」

「み、実和子さんっ……」

 真剣なまなざしで語る実和子が、少し動揺しているような気がした。

 瞳を潤ませ、頬を赤らめて、そう言葉を告げる実和子は、とても綺麗だった。

「でも、堅くならないでくださいね、私だって、すごく緊張してるんだから……はっ、康隆さんっ」

 実和子の視線が、康隆の股間のあたりでとまった。

「すごく立派なんですね。康隆さんのオチン×ン。隠しているつもりだろうけど、手のひらから……」

 いきり勃った肉棒の先端、ピンクの亀頭がはみ出していた。

(み、実和子さん、オチン×ンなんてエッチな言葉を……)

 見られていることを自覚して康隆は股間を隠そうと、その場にしゃがみ込み、実和子に背を向けてしまう。

「は、恥ずかしくて……女性に、こんな姿を見られるなんて初めてで……」

「彼女がいないっておっしゃっていたけど、やっぱり女の人とも、未経験なんですの?」

 実和子に背を向けたまま、康隆はコクンとうなずいた。

「僕、あのときからずっと実和子さんのことを……」

「私のことを?……」

「ずっと好きでした。初恋です……」

 背中越しに、ハッと息を呑む実和子の気配がした。

「康隆さん、お待たせしましたわね」

 実和子の声には、感慨深げな響きが秘められていた。

(僕もずっと、実和子さんを待っていたんです)

 背後で、ぴちゃぴちゃという音がしたかと思うと、ぴちゃんと音が鳴り、なにかが床に落ちた。

(実和子さん、キャミソールを脱いでいるんだ……)

 次の瞬間、むぎゅっと、背中にやわらかいふくらみが押し当てられるのがわかった。

(こ、これって、実和子さんのおっぱい……)

 康隆の肩越しに実和子の顔が近づいてくる。

 両脇に腕を通して回り込み、いきり勃ったペニスに後ろから手を這わされた。

 実和子の指が、節くれ立った肉棒に絡みついているのが見えた。

(ああっ、実和子さんの綺麗な指が、ぼ、僕のオチン×ンにっ……)

「こ、こっちを見ないでください。私だって恥ずかしいのよ……まずは、お手々で一回出してあげますわね」

 実和子の声とともにこぼれる吐息が、康隆の鼓膜をじんじんと刺激する。

「く、くううっ、気持ちいい」

(ああっ、この感触は……自分の指と違って、実和子さんの指、細くてっ、ああっ、繊細だっ)

 細い指がシコシコとリズミカルに上下し、硬直をしごいている。

 肉肌の熱さのせいで、ひんやりとした指の感触が、いつも自分でしているときとは異なった刺激をあたえていた。これは、夢じゃないのだ。

「ん、んふっ、オチン×ン、こんなに、大きくなっているのね、すごいわ」

 ゴシゴシと音が鳴るほどに扱きあげ、時折り先端から噴きだしている先走り汁を絡めつつ、茎肌に指を滑らせていく。

「ああっ、だめっ、き、気持ちよすぎます……」

「こんな感じでいいの?」

「すごく、すごくいいです、そのまま……あっ」

 実和子のもう片方の手が伸びてきて、康隆の陰嚢に触れた。

「ここも、もみもみしてあげる、気持ちいいでしょ?」

「あっ、袋もいっしょに刺激するなんて、ああっだめっ、み、実和子さん、出ちゃいそうですっ」

 実和子の綺麗な指が、陰嚢を這っていく。

 手のひらの上に陰嚢を乗せ、指であやすようにそっと握りしめる。

 皺の一本一本を伸ばすように、指腹で刺激を注ぎこまれる。

(ああっ、くすぐったいけど、き、気持ちいいっ)

「ふふっ、女の子みたいな声を出すのね。もう少し、我慢して」

 左手で陰嚢を揉みこみながら、右手のスピードをあげていく。人差し指と親指でつくったリングで、まずは裏筋を、そして重点的にカリ首をこすりたてていく。

「ああっ、いい、イキそう、僕、イッちゃう」

「いいのよ、出して。康隆さんがミルク、噴きだしているところ見せて」

 耳元で吐息混じりの淫語を注ぎこまれ、康隆の我慢は限界に達した。

「もう、もう、だめです、実和子さん、イク、いっちゃううう!」

 輸精管に白濁がものすごい速度で流れ込む。同時に、亀頭から大量の白濁が発射される。

 康隆のふとももの筋肉がひきつり、ピンと爪先が伸びあがってしまう。

 ドクンドクンという脈打ちと同時に、精液が宙に舞いあがった。

「ああ、精液がとまらないよっ。あっ、あっ、どんどん出るっ」

 しぼりつくすように実和子の手しごきはやまない。経験したことがないくらいの勢いで、ビュッピュッと第二弾が発射される。

(ああっ、まだ出るっ……ああっ、とまらないっ)

 あまりの射精ぶりに、白濁は肩越しにいる実和子の顔にまで降りかかった。

「顔にかかっちゃったわ、康隆さん」

「み、実和子さん、ごめんなさい。き、気持ちよすぎて……」

 あわてて振り返った康隆の目に飛び込んできたのは、頬から肩にかけて白い粘液がかかった実和子の姿だった。

 白濁液をそっと指でぬぐうと、実和子はうれしそうに微笑んだ。

「すごく元気なのね……私、うれしいです」

(お酒を飲んでもいないのに、ぼうっと惚けたようになっている。こんなに色っぽい実和子さんの顔、初めてだ。すごくエッチだよ)

「でも……」

 そう実和子は口にしつつも、精液まみれの美指を康隆の茎肌から離さない。

「まだ、オチン×ンは満足していないみたいですわよ」

 一度放たれたのにもかかわらず、康隆のペニスの硬度は失われていなかった。

 

 

(次回更新は8月24日です)