年上の隣人妻 2
悶々とした日々が過ぎ、ようやく次の水曜日が来た。徹は少し緊張した面持ちで、いつものように五時前に綾子の家のベルを鳴らした。
「……こんばんは、お待ちしてましたわ、さあどうぞ」
ドアを開けた瞬間、愛らしい小ぶりのひまわりが咲いたように視界が明るくなった。綾子は笑みを湛え、胸もとにリボンの飾りがついている淡いイエローの半袖ニット、下には白いタイトスカートを穿き、すっきりとした華やいだ雰囲気に包まれていた。
「失礼します」
「すみませんね、学校、お忙しいんでしょうに」
「いえ……大学生なんて暇ですから」
「うふふ」
生真面目な徹の対応に小さく笑うと、綾子はしゃがんで徹の靴を揃えた。
「あ、すみません」
上から見下ろすと、イエローのニットの胸もとに深い谷間がのぞいている。決して胸の開きが大きいデザインではないのだが、ふっくらとしたバストはいやおうなく薄手のニット素材を伸ばしてしまい、なかで白い饅頭が押し合って波打つのがわかる。
「どうぞ」
耳に髪をかけながら立ちあがって微笑みかける顔は、わずかに上気して頰がほんのり桃色に染まっている。
徹の横をすり抜け、前に立って歩く綾子のヒップがゆさゆさと左右に揺れる。薄い布の下で桃の割れ目を境に、両隣りの臀部がぶつかり合うように揉まれている。目を凝らせば、白い生地の下にうっすらと細い線が見える。
臀部の下、太腿の上に位置する線はパンティのラインだろう。その下にふっくらとした盛りあがりが布を押しかえしている。窮屈なパンティに押しこめられて、下弦の部分の肉ははみだしてしまっている。
廊下を少し行って左手の部屋に入ると、すでに広樹が机についていた。
「それじゃ、お願いしますわね」
「はい……やあ、こんばんは……ようし、じゃ、はじめよっか」
気持ちの揺れを気取られぬよう、やや大きな声を出した。
綾子がドアを閉めて出ていこうとした時、微笑みかけた眼差しを徹のほうに向けた。軽い会釈に長い睫毛が優雅になびき上目遣いが憂いを含んで、徹は思わずぺこりと頭をさげた。
神秘的な微笑がいつまでも脳裏から離れない。目の前で参考書を開く音を聞きながら、徹は足を組んで座り、暗い窓の外を見た。
空に懸かる月のように、綾子の尻も重たげにたわみ、ぷるんと揺れる。わしづかみにすると指の形のまま窪みができ、押し開いた桃の割れ目に鼻を突っこむと、日がな一日中パンティに閉じこめられていた酸っぱい女の匂いでむせかえる……。
まもなく六時だった。
「失礼しますね、よろしいかしら……そろそろご休憩になさってください」
ノックの音とともに、綾子がお盆にカップとケーキを載せて部屋に入ってきた。
「あ、すみません、いつも」
「いいえ、どうですか? 先生。うちの子、ちゃんとわかってますかしら」
細い指先でカップを机に移しながら、綾子が尋ねる。
上体をかがめて置く綾子の背後から椅子に座ったまま眺めると、美尻はいっそう盛りあがり、目の前に突きだされている。白いタイトスカートはなかのランジェリーまで透けて見えそうで、至近距離にいる徹は相槌をうちながらも懸命に目を凝らした。
尻の丸い張りの下に、内腿の付け根から斜め上に走るパンティの線がある。どんな下着を穿いているのだろう、街で見かけるような若い女の穿く、レースがちゃらちゃらついたものではなさそうだ。しっとりとした人妻の奥ゆかしさを湛えた湿り気のあるパンティ……その下には静かな熱気で蒸れた淡い茂みが隠されている……徹は生返事を繰りかえしていた。
(ああ、なんて丸くて大きな尻……腹の上に乗られたらあそこが折れそうなくらい迫力があるんだろうな……)
自然とジーパンの下が膨らんでくるのを禁じえない。硬くごわつく布に隠されているので、ぱっと見にはばれないが、股間に体中の血が集まってくるのがわかる。焦れば焦るほど興奮は高まり、いっそう布を押しあげる。
「あの、すみませんけど、ちょっと用事で外に出ます。十五分ほどで帰ってまいりますので」
申しわけなさそうに瞳をくるりとさせて訴える。至近距離で見る瞳は濡れ、頼りなげに見つめている。
「はい、わかりました。あの、どうぞご心配なく」
笑顔を残して去っていった後ろ姿を思い描いていると、かすかにドアの閉まる音がした。
目の前のロールケーキの中心をほじくりだしてみる。小さな穴のまわりに白い粘りのあるクリームがべっとりとつき、それを掬っては舐めてみる。
狭い穴のなかに指や肉茎を突っこむと、女の口がきゅうと締めつけてくる、と聞いた。その時、穴のなかはぬるりとした汁でまみれ、指や茎を出し入れするたびぐちゅぐちゅと音をたてて、膣口に泡が吹くほどになるらしい。まだ女性経験のない徹は、ロールケーキの穴をヴァギナに見立てて夢想した。
(綾子さんのなかに挿れたら、どんなにまとわりついてくるんだろう……)
母性を感じさせる熟れた肉林にまみれてみたかった。早く漏らしてしまっても、可愛いわね、と嬉々として呑み干してくれる年上の女性……徹は勝手に妄想を走らせて、綾子を理想の女神に仕立てあげていた。
(僕が漏らしても、きっと恥ずかしそうに微笑んでくれるんだ。そしてもう一回ね、ってあの指でオチン×ンを持ちあげてくれて……)
早くも一回精を放ってしまった自分を想定し、綾子にあれやこれやとかしずかせてみる。白い指が恐る恐る幹を持つと、卑しい海綿体は充血してパンパンに膨れあがる。それを頰を染めて見つめる綾子の笑み。若い男の暴走を受けとめようと、高鳴る胸は深呼吸で盛りあがり……徹はどこまでもつづく絵巻に終止符を打つように、フォークを置いた。
「ちょっと、片づけてくるよ」
広樹に声をかけると、皿の上にカップを載せ廊下を歩く。突き当たりがリビング、その少し手前がキッチンだ。綾子のいない間に家のなかを歩きまわるのは気が引けるが、こんな時しかチャンスはない。
皿を流しに置いた時、廊下を挟んで向かいにわずかな隙間が視界に入り、洗面所につづく扉の隙間から、籐のかごに無造作に積み重ねられた洗濯物の山が見えた。
まだ洗われていない洗濯物の山の一番上に、女性用のパンティがはらりと置かれてある。
(こ、これ……綾子さんの?)
息子ひとりの三人家族だから、女物といえば綾子自身のものでしかない。偶然にも目に飛びこんできた三角形の薄布に、思わず息をとめて見入る。
淡い生成りの綿生地に透かし模様がいくつも飛んでいる。浅い足ぐりは小さなコットンレースで縁取られ、臍の下にくるゴムのあたりには白いリボンがついている。過激なデザインでもなく、かといって熟年女性を想起させる大きな布でもなく、ほどよい上品さが伝わってくる。
(可愛らしい……でもこんなんじゃあのお尻、はみだしちゃうんじゃないか?)
洗濯物の山の下のほうには、ブラジャーのストラップかと思われる白い紐が顔を出している。お揃いのランジェリーかと胸をときめかせたが、こちらまでは手を伸ばして見ることは憚られた。
徹は二十センチばかりの隙間に張りつくように眺めると、扉を開けることなく恐る恐る手を伸ばした。
(綾子さんの生パンティ!……盗りたい、でも……)
ためらいながらも、指先はすでに生成りの足ぐりをつまみあげている。そのまま持ちあげると、軽い布は紙のようにふわりと手のなかにおさまった。
徹が両手を左右の足ぐりの輪のなかに入れて布を伸ばすと、逆三角形が現われた。まさにここに綾子の秘部が密着していたと思うと、身震いがした。よく見ると股座のところに十円玉ほどの染みがついている。
「はあっ……」
思わず溜め息をもらしてしまう。徹は狂った犬のように鼻の穴をひろげて顔面全体を布にこすりつけ、深呼吸した。余計に醸成されたのか、鼻腔を突き抜けるような酸味のきつい牝の匂いが満ちて、思わずむせた。
咳を聞かれないよう部屋を気にしながら、なおも匂いを嗅ぐ。くらくらと眩暈がして、肌触りの柔らかい布はまるで綾子の乳房に顔を挟まれているようだった。
染みのありかを確かめようと布を裏返して内側に触れると、そこだけねっちゃりと汚れが指先にくっつく。布目には微量の黄ばんだおりもののようなものが付着している。
(う……これって、あそこから出てきたお汁やおしっこがこびりついたのかな……)
股の布をひろげると、匂いを逃すまいと勢いよく吸いこんだ。表から嗅ぐよりもっと強烈なすえた匂いがして、股間は限界なほどに屹立した。
(す、酸っぱい匂い……ああ、べちゃってしてる)
鼻の頭にわずかに触れた黄ばみは、まだ時間がたっていないのか、ねっとりとしていた。ゆうべのものか、今朝方のシャワー時に脱いだものかわからないが、生々しい芳香と感触に腰が自然と前後に動いてしまう。
「う、はあっ!……」
パンティを顔に押しつけ、片方の手をポケットに突っこみ、ジーパンの下の剛棒を擦る。オナニーならいやというほどやってきたが、生パンティを手にすることで快感は何十倍もの現実味を持って襲ってくる。
分厚いジーンズ地が幸いして、すぐに昇天することはなさそうだった。ただ、いきり勃った竿は行き場をなくして、切なく天を向いたままだ。
ガチャッ。
玄関先で鍵の開く音がした。
「あっ……」
徹はあわててパンティをジーンズの右ポケットに押しこんだ。
そのまま涼しい顔で玄関のほうを向くと、後ろ手にドアを閉める綾子に明るい声で話しかけた。
「おかえりなさい。あのう、お皿さげようと思って。キッチンでよかったですよね?ごちそうさまです」
「あら、ごめんなさい、よろしかったですのに、ありがとうございます。今日のはお口に合いまして?」
綾子が電気をつけながら尋ねる。その顔は明るくつくろっても、留守中に勝手に室内を歩きまわられたことへの戸惑いを隠せないでいる。
徹は内心焦ったが、風呂場だけは覗いてはいない、と自身に言い聞かせて平静を装い、廊下を進んで綾子の前に歩み寄った。
低めのヒールのパンプスは足首に絡みつくストラップがデザインされ、引き締まった足首をきゅっと締めつけるので、華奢さをひときわ強調する。ダンスシューズのように黒エナメルが電球に反射して光沢を放つ。
前かがみになって右手でストラップをはずすちょっとした仕草に、黄色いニットの下の胸が重たそうに揺れている。
「はあ、ええ、はい」
徹は会話を切りあげると滑りこむように部屋に戻った。家のなかをうろついたことを追及されず、安堵の胸を撫でおろす。わずか十五分のことが一時間にも思えた。
大切な右手のなかの布を握りしめ、左手で参考書を開ける。問題を解く広樹に隠れるようにして時折り右手を出しては、指についた匂いを嗅ぐ。
わずかに残る女の証から、生々しい強烈な匂いが立ちのぼった。
(次回更新は8月29日です)