未亡人・二十八歳

著者: 露樹満

本販売日:1996/05/23

電子版配信日:2010/04/23

本定価:535円(税込)

電子版定価:660円(税込)

ISBN:978-4-8296-0696-4

股間を拡げて婦人科の内診台に横たわる桐子。
陰毛の下に潜む果肉が羞恥と哀切に震え泣く。
洗浄液、若い医師の指……淫靡な接触が空閨の躯を狂わせ、
やがて、女の悦びに恥ずかしげもなく濡れゆく。
もっと撫でて欲しい、やさしく……。
蘇った愉悦に身も心も医師に投げだす、未亡人の性。

登場人物

きりこ(28歳)未亡人

みゆき(21歳)女子大生

本編の一部を立読み

見ているんだわ、この人、私のあそこを……見ながら触っているんだわ……。
羞恥と倒錯した感情が、桐子を揺さぶった。
多治見の指は、たたまり合った花芯の肉襞をこじ開けながら、次第に奥へと侵入してくる。そのたびに、多治見の指が最初に触れたときに生まれた感覚が、ますます確実なものとなってくすぶりはじめているようであった。
「力を抜いてください」
しつけの悪い子供に言い聞かせる口調で、また多治見が言った。
だが今度は、桐子が自分から力を入れているわけではなかった。花芯の肉襞が勝手にそよぎたち、桐子にもどうすることもできないひとつの生き物になって多治見の指を締めつけ、吸いこもうとしているのだ。無数の蠢く触覚となったひとつひとつの肉襞は、蜜にたかる蟻のように、貪欲に快楽の波紋を桐子の躯に送りこんでくる。
桐子はつとめて多治見の指を意識しまいとした。しかし、意識をそらせようとすればするほど、逆に意識はそこに集中し、躯の奥深くから清水が滴るように、熱い雫が滲みはじめていた。
こんなはずではなかった。もうどんなことがあっても、悦楽を味わえることはないと思っていた躯である。性的な感情など入りこむ余地のない医師の指先が巻き起こす、甘美な波紋に揺さぶられながら、肉情の海に漂いでようとする躯をつなぎとめようと、桐子は焦った。
多治見が、桐子の躯の変化を察したかどうかはわからない。多治見は桐子の花壺深くに指を差し入れて、ゆっくりとまさぐっている。その指先が、ざらついた天井の肉襞をかきたてた。
あぁ、だめ、そこ!……
桐子は胸の中で小さな叫びをあげながらのけぞった。そこは桐子の一番敏感な場所だったのだ。
細くくっきりと『く』の字型に整えられた桐子の眉がゆがみ、固く閉じた瞼の上で長い睫が震えた。やや上向いた可愛らしい鼻の鼻翼が小刻みに痙攣し、ふっくらとした厚みが男心をそそるようにほんの少し受け口に見える下唇を、白い歯並みがくいこむように噛み締めた。上気して桜色に染まった頬に、その歯並みは大粒の真珠のように光っている。
滲みつづけていた滴りは、熱い流れとなって溢れだした。高ぶってジンジンと鳴っている桐子の耳にも、花壺の中で動きまわる多治見の指が立てる湿った音が届くようになった。その音と競い合うように、桐子の口からせわしない息遣いがもれた。

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