少年と黒い下着の叔母

著者: 露樹満

本販売日:1989/07/23

電子版配信日:2012/03/16

本定価:535円(税込)

電子版定価:660円(税込)

ISBN:978-4-8296-0262-1

紅いレースのネグリジェからのぞく白い肌。

柔らかな雪白の恥部に食いこむ黒いスキャンティ。

薄布にはいつか叔母の肉溝が浮かび上がっている。

奈津子が裸同然の肢体で少年を誘うとき、

叔母と甥、許されない相姦儀式がはじまる。

密室に匂う甘い香りは禁断の女体から立ちのぼる。

登場人物

なつこ 叔母・伯母

本編の一部を立読み

「晃司も飲む? コーヒー」

奈津子は振り向かずに聞いた。自分の後ろ姿にそそがれる晃司の視線や、大きく息を吸いこみ唾を呑みこむ気配を、奈津子は背中で感じとっていた。それ以上の行動に出ようかどうしようか、晃司は迷っているに違いない。

もっと苦しめばいい……。

ふいに奈津子は嗜虐的な疼きを感じた。

二人分のコーヒーを入れて奈津子は振り向いた。その瞬間、晃司が素早く視線を伏せるのを目に入れながら、奈津子はコーヒーテーブルにカップを置き、晃司の前の肘掛け椅子に浅く腰をおろし、背もたれに寄りかかった。じっと固くなって伏せている晃司の目に、テーブルごしに薄く赤い布地の下で、白い円錐をふたつ並べたような太腿が妖しくはずみ、その付け根の薄布からはみだしている繁みの形まで飛びこんできた。

「本当はあなたにも帰ってもらいたいのよ」

視線のやり場に困っている晃司を突き放すように、奈津子はそっけなく言うと、脚を組んだ。肌に密着した赤いレースの下で、太腿の白さがいっそうはっきりと浮かび、代わりに組まれた太腿の間に黒い色と繁みの翳りが消えた。

「ここには来ないでと言ってあるはずでしょ。もう二度とここには来ないで。いいわね」

晃司はなにか言いかけたが、気押されたように口をつぐんだ。冷たく追いかえされたのは今夜が初めてではない。奈津子がなぜそうするのか、晃司は晃司なりにわかっているのだ。叔母と甥の相姦--それが許されないことだとわかっていても、晃司には簡単に諦めることはできないのだ。奈津子のそばにいるだけでもいい……最後にたどりついた晃司の気持はそこだった。その気持をどう伝えたらいいのか。下手をすれば、昨夜のようにまた奈津子を怒らせてしまいそうだし、なにか言えば、耐えていた気持がはじけて、激情に溺れてしまいそうな気がした。

「どこをやるの。一時間だけ見てあげる」

奈津子は組んでいた脚をほどくと、ぐっと身を乗りだした。前かがみになった胸の深い切りこみの間から、白く重たげに垂れた乳房の谷間が、まるで飢えた獣の前に差しだされた餌のように、晃司の目の前に突きだされた。しかし、晃司はその餌を前にして、なにもできないのだ。むしろ、自分で縛りつけたように、晃司は身じろぎひとつせずにいた。英語構文の説明をする奈津子の声も、晃司の耳には入らない。

奈津子は、晃司の沈黙に苛立った。獲物を誘うように餌をちらつかせ、もし晃司がその罠にかかったら、手ひどくはねつけてやろうと計算していたのだ。自信があったわけではない。ただ、晃司を憎むことが、その気持の支えとなっていた。

ところが、晃司は依然としてなんの行動にも出ようとはしない。奈津子の計算は狂った。

なぜ、なにもしないの。どうして襲いかかってこないの……。

奈津子は晃司が動くのを待っていられなくなった。

奈津子はふいに立ちあがると、薄いベールをまとった裸身を見せびらかすように、晃司の前を行ったり来たりしはじめた。黒い蛇のようなスキャンティの紐が絡みついている真っ白な尻の双丘が、赤いレースの下でうねり、太腿の付け根には小さな黒い三角がはりついていた。そのすべてを、いやでも晃司の目に入れるようにゆっくりと歩いた。ネグリジェを押しあげている乳房がはずみ、レースの布目に愛撫された乳首が硬くそそり立つ。

「どうして黙ってるの。わかってるの、わかってないの……予備校でなにをやってるのよ……こんな調子じゃ、来年も浪人ね」

奈津子は歩きながら、手荒い言葉を次々と晃司に投げつけた。それでもなお、奈津子の質問に対してあまり意味のない言葉を小さく呟きながら、晃司はじっと身を固くしている。

奈津子はいきなり晃司の隣りに腰をおろすと、脚をぐいと伸ばし、コーヒーテーブルに乗せた。ネグリジェがまくれあがり、瑞々しい脚が膝まで剥きだしになった。しわの寄った赤いレースと白い肌が溶け合って、ピンクの縞模様が描かれたような裸身を無防備に投げだしたその姿態は、そのまま男を待つ姿勢だった。

だが、晃司はビクッとしたように体をずらして、奈津子から遠去かろうとした。じっとりと額に浮きだした汗を、拭うことも忘れたように、晃司はうつ向いたままだった。

「どうなのよ。なんとか言いなさいよ」

もっと苦しめばいい……もっと……。

嗜虐的な昂りに衝き動かされ、奈津子は晃司の頭を小突いた。それでもじっとしている晃司の手から参考書をもぎ取って、体に叩きつける。不思議なことに晃司をいたぶればいたぶるほど、肉塔が熱く胎内をえぐる感覚が奈津子の躯を生々しくゆすぶった。さざなみのような疼きが躯の深奥から波紋をひろげ、淫裂を震わせた。

「やめてくれよ」

晃司ははじめて呻くような声をもらし、立ちあがった。その瞬間、奈津子は手ひどくはねつけようと考えていたことを忘れた。

早く……早く来て……。

喉の奥がひりつくような欲情に駆られ、奈津子はコーヒーテーブルから脚をおろして晃司を見あげた。

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