格付けされる世界で生きていく

第三部 承るのは、誰の声

著者: 樹の棒

電子版配信日:2023/07/28

電子版定価:880円(税込)

シチュエーション

ここは男女比率1:1万の新世界──上級学院一年生となったユウタ。
清楚な制服を着たアオイとマナミ達の可愛く凛々しい姿に魅了され、
クラス旅行ではヨシワラ大名家の開発した新たな水着に悩殺寸前!
感覚共有VRの配信や、奉仕活動で多忙の日々を送るも、
旧世界の記憶、そして新世界の現実が、暗雲となり立ちこめていく。
行き場のない声が錯綜する──風雲急を告げる波乱の第三部、開幕!

目次

1 上級学院の始まり

2 上級学院のクラス運営

3 ヨシワラ大名家

4 運動会

5 隠れ合って

閑話① ユウの配信

6 誕生日

7 ユウタのクラス旅行①

8 ユウタのクラス旅行②

9 ユウタのクラス旅行③

10 ユウタのクラス旅行④

11 ユウタのクラス旅行⑤

12 ユウタのクラス旅行⑥

13 ユウタのクラス旅行⑦

14 ユウタのクラス旅行⑧

ユウタ

ハヤカ

15 ユウタのクラス旅行⑨

ユウタ

閑話② タクヤの夏休み

16 キョウバのクラス①

17 キョウバのクラス②

ユキシロ

18 キョウバの合同クラス旅行①

19 キョウバの合同クラス旅行②

20 キョウバの合同クラス旅行③

21 キョウバの合同クラス旅行④

22 キョウバの合同クラス旅行⑤

23 キョウバの合同クラス旅行⑥

24 キョウバの合同クラス旅行⑦

25 キョウバの世界

閑話③ 赤の王

26 公表

27 ヨシワラグランドホテルの夏休み

28 内密に

29 夏休みの終わり①

30 夏休みの終わり②

閑話④ ヨウコとトミコ

閑話⑤ レイラ

登場人物

アオイ

マナミ

ユキシロ

トモカ

カナ

サオリ

ミオ

ハヤカ

レイラ

本編の一部を立読み

1 上級学院の始まり

 ユウタは四月から上級学院一年生になった。十八棟の建物に囲まれた中央に位置する校舎は変わらない。
 男性特区にあるこの校舎には、中級学院の頃と違って華やかな女子達の声が飛び交っている。男子の直属従属になれた女子達は、男子の教室に毎日通い学習しているのだ。
 中級学院での交流に使われた教室がそのまま上級学院の教室になるのだが、一人だけ教室の場所が変更されている。
 ユウタの教室のみ、みんなとは少し離れた位置の教室に変更となった。キョウバとのトラブルを回避するための措置である。
 上級学院から男子は自宅学習となり日中に教室に行くことはない。男子が教室に行くのは、放課後に直属従属女子達との交流のためである。
 明日の入学式は男子の全員が参加して、その後に教室で女子達とクラス運営について話し合う時間が設けられている。直属と事前に打ち合わせを済ませていれば、それほど時間がかからずに終わるだろう。
「ユウタ様、よくお似合いです!」
 ユウタの部屋では主担当官に復帰したトモカが、上級学院の制服を着たユウタを見て感動していた。女子の制服とは違って、男子の制服は統一されたデザインで用意されている。
 ヨシワラ大名家と関係の深い名家出身であるトモカが主担当官に復帰したのは、直属のアオイとの交流にもいいことであった。トモカはクラス運営のために決めておくべきことを適切に助言してくれるだけではなく、ヨシワラ大名家とアオイに関する情報も豊富で、ヨシワラ大名家との調整役としてこれほど適した主担当官はいないだろう。
 ハヤカも知識としては分かっているが、実際に男子の上級学院クラスに所属した経験はないため、知識だけでは足りないことも多く、トモカの存在はとても心強い。
 主担当官が不在だった間、ユウタの側を離れなかったハヤカは、トモカがいてくれるおかげで色々と外での活動も増えている。今はサキュバススーツを使ったVRゲームの開発会議に参加のため外出中だ。
「明日からいよいよ上級学院生ですね。僕、頑張ります!」
「ユウタ様! 素敵です!」
 トモカが初めて会った中級学院一年生の時のユウタは元気がなく、スズネとの奉仕活動を終えた後は部屋に引き籠ってしまったが、今はこうして元気に明るく生活している。
 母親の記憶を塞ぐことで。
 ヨウコから聞かされたユウタへの処置に、トモカは心臓を掴まれるほどの衝撃を覚えた。既に事は終わった後で、ユウタが元気に過ごしているからよかったものの、これが処置前に言われたとしたら……。トモカが王であるヨウコの決定に異議を唱えることはできないが、記憶を塞ぐ処置とユウタが目覚めるまでの間に、自分の精神がおかしくなってしまうのではないかと思えた。
 ヨウコから事実を聞かされた後に当時のことをハヤカから聞いたトモカは、ハヤカの心労を慮った。記憶を塞ぐ処置を施されたユウタを車に乗せて部屋に運ぶ間、ハヤカはずっとユウタの手を握り、涙を流していたそうだ。部屋に着いてからも、ユウタが目覚めるまでの十日間は碌に眠れなかったと思い出すハヤカを、トモカは抱きしめずにはいられなかった。
 トモカがホッカイドウで勤務している間に、様々なことが起きている。ユウタの中級学院の二年間を側で支えられなかった分、これからは全力でユウタを支えていくとトモカは心に強く誓っている。
「まずは、運動会ですね」
「はい。五月十五日にある運動会が一学期の大きな行事となります」
 五月の運動会は主に女子達の競技を行うが、男子の競技もある。参加の有無は男子次第で、参加せずに欠席でも構わない。男子が参加する場合は、そのクラス独自の競技を開催することもできる。
「運動会が終わったら、アオイさんの誕生日がありますね。誕生日の贈り物を渡したいです」
 アオイの誕生日は五月二十八日である。
「ユウタ様から誕生日の贈り物をいただければ、アオイ様は飛び跳ねてお喜びになるでしょう」
「アオイさんが飛び跳ねて喜んでくれる物を贈りたいですね。僕が調べた限りでは、扇子がいいかなと思うのですが、どうですか?」
「素晴らしいです! アオイ様は飛び跳ね過ぎて、マナミ様に窘められる御姿が思い浮かびます!」
 男子から女子への誕生日の贈り物で、誕生花の描かれたハンカチは好意を示すことになる。ユウタは昨年の聖夜祭に、アオイの誕生日ではなかったため、アオイに似合うと思った白百合の描かれたハンカチを贈っている。
 扇子にも誕生花が描かれているのは重要だ。誕生花の描かれた扇子を贈るのは、その女子に自分を守って欲しいとの意思を示したことになる。
 男性が女性に守ってもらうのは、ニホン王国では当たり前だ。数が少なく貴重な男性は、危険に身を晒すことはあってはならない。
「ハンカチには白百合を選びましたけど、扇子はアオイさんの誕生花がいいですよね?」
「本来は誕生花を選びますが……ユウタ様がアオイ様に贈られた白百合のハンカチは、市民の間でも大流行しております。アオイ様も白百合をお庭に植えられて、特別な花として扱っておられます。白百合の描かれた扇子でも、問題はないかと思います」
「そうですか……。扇子を二つ贈るのはおかしいですか?」
「白百合の描いた扇子と、誕生花の描いた扇子ということでしょうか?」
「はい。欲張ってどっちも贈るのは、失礼になります?」
「いえ、何も問題ございません。むしろ、アオイ様は天井を突き破るほどに飛び跳ねてお喜びになります!」
「天井を突き破るのは、さすがに止めないといけないですね」
 管理されているとはいえ、ユウタの財力は潤沢である。名家の女性に贈る扇子はそれなりに高額ではあるが、アオイに扇子を二つ贈るのに資金的な問題はない。
「アオイさんの誕生花だと……スズランとかどうですか?」
「素敵です。スズランの花言葉は『再び幸せが訪れる』、『純粋』、『純潔』で、アオイ様にぴったりと思います。ですが、私からのお薦めは、『ベロニカ』でございます」
「ベロニカを? 花言葉は何でしたっけ?」
「ベロニカの花言葉は『忠実』、『名誉』でございます。誕生花の描かれた扇子を贈っていただけるのは『名誉』であり、ユウタ様に『忠実』に仕えるという意味からもいいかと」
「な、なるほど」
 言葉の意味としては合っていると思えたが、ちょっと重い印象をユウタは受けた。
「そして、ベロニカはマナミ様の誕生花でもあります」
「え、そうでしたか……。マナミさんの誕生日は六月二十日でしたよね?」
「はい。マナミ様の誕生日は六月二十日です。ベロニカはアオイ様とマナミ様、お二人の誕生花でございます。マナミ様の誕生日にも扇子を贈られるおつもりでしたら、ベロニカをお選びになられるとお揃いで喜ばれるかと」
「マナミさんにも、白百合の扇子を贈った方がいいです?」
「いえ、白百合の扇子はアオイ様だけがよろしいでしょう。ベロニカの扇子はアオイ様とマナミ様で同じデザインでも問題ありません」
 アオイには白百合の扇子とベロニカの扇子を贈り、マナミにはベロニカの扇子だけ贈る。
 アオイには特別な白百合の扇子を贈っているから、ベロニカはアオイとマナミで同じデザインでも問題はないという訳だ。
(六月の誕生日は多いんだよね。ハヤカさんは六月十一日。トモカさんはハヤカさんより早い六月七日。モエさんは六月二十五日。みんなにも誕生日の贈り物を用意しよう)
 直属従属との交流も大事だが、ユウタには大切な女性達がたくさんいる。中級学院の間に縁を結んだ愛人の女性達とは、特別な関係を続けていきたいと思っている。
「七月十七日のユウタ様の御誕生日は、アオイ様達と盛大なパーティーを!」
「それは楽しみですね。ところでトモカさん」
「はい」
「僕の主担当官に戻ってくれたお祝いを、まだ渡していませんでした」
「え! お祝いですか!」
 トモカは驚きを表現する変なポーズを決めながら、顔には笑顔の花が咲いている。ユウタの言葉に期待している様子がありありと分かる。
 ユウタは棚に隠していた贈り物を取ると、トモカの前に差し出した。
「また僕の主担当官になってくれて、ありがとうございます。たくさん迷惑をかけちゃいましたけど、これから頑張るので、僕のことを支えてください」
「はい! ユウタ様大好き!」
「ごふっ」
 贈り物を受け取ったトモカは、ユウタを大きな胸の中に抱きしめる。ユウタの周りにいる女性達の中で、トモカの胸が一番大きい。
「開けてもよろしいでしょうか!」
「は、はい」
 大きな胸の中にユウタを抱きしめながら、トモカはラッピングを解いていった。
「ハンカチ! クチナシが描かれています!」
 白いクチナシの花がハンカチに描かれていた。
「トモカさんの誕生花で、クチナシを選びました」
「ユウタ様! 大好きです!」
「むぐっ」
 トモカの誕生花のクチナシには、『とても幸せです』、『喜びを運ぶ』、『洗練』、『優雅』の花言葉がある。
「ユウタ様、私とっても幸せです」
「よ、喜んでもらえてよかったです」
 ユウタもトモカの喜びように嬉しくなる。白いブラウスのボタンが今にも弾けそうな大きな胸の膨らみに顔は埋まっているが。
「うふふ。クチナシのハンカチは喜びを運んできてくれたようです」
「あっ、こ、これはその……」
 トモカの胸に正面から抱きしめられているユウタの股間は、むくむくと大きくなっていた。トモカの容姿は一目で美しいと思えるほど魅力的だ。ニホン王国の女性にはない金髪ロングの髪と美しい顔立ちに蒼い瞳、ユウタとほぼ変わらない高身長に、巨大な胸、腰はくびれてお尻はむっちりである。こんな素敵なトモカに抱きしめられて、反応しないわけがない。
「うふふ、ユウタ様に女性として見ていただけて……興奮していただけているなら、これ以上の幸せはありません」
 トモカは、むぎゅっとユウタを強く抱きしめると、耳元で甘く囁いた。
「私に、ユウタ様の御入浴のお手伝いをさせていただけませんでしょうか」
「にゅ、入浴の……それは、その……う、嬉しいです」
「ハヤカさんから筆おろしを受けていらっしゃいますが、改めて……私からも♡」
 中級学院生となった男子の初めての性の相手は主担当官が務める。精通した男子の性欲を主担当官は受け止めて上手く制御するのも役目である。
 ユウタの筆おろしは本来ならトモカが行うはずだったが、部屋に引き籠ってしまったユウタはトモカの筆おろしを受けなかった。そして、ユウタとトモカはまだ性行為に及んでいない。
「御入浴の準備は整っておりますので、参りましょう♡」
「は、はい」
 性行為を経験済みのユウタだが、ハヤカと初めてお風呂場でしたのを思い出し、トモカとの入浴に胸がドキドキと緊張してしまう。
 脱衣所でユウタの服を嬉しそうに脱がしていくトモカは、ユウタがパンツだけになると、すぐに脱がさないでバスタオルを腰に巻いてからパンツを脱がしていった。
 そしてユウタの目の前で、トモカは服を脱いでいく。
「ユウタ様に見られながら服を脱ぐと……すごくドキドキします」
「あ、先に入っていましょうか!」
「うふふ、よろしければ、ユウタ様には見ていただけると嬉しいです♡」
「は、はい……」
 ユウタは浴室に先に入ることなく、トモカの脱いでいく姿をまじまじと見ていく。
「こちらの水着でどうでしょうか?」
「い、いいと思います」
 男子の入浴の手伝いの際に着るマイクロビキニの中から白を選んだ。
「胸の大きさには自信がございます♡」
「トモカさんすごく大きいです。僕が見てきた中で一番大きいですよ」
「Jカップあります♡ ハヤカさんはHカップからIカップにサイズアップしていました。ユウタ様にたくさん揉んでもらえたからと言っていましたよ♡ 私もユウタ様に揉んでいただけたら、Kカップにサイズアップするかもしれません!」
「Jカップ……。女性の胸の大きさを表す記号の中でも特大サイズですね」
 ユウタの記憶にあるアルファベット文字はAからZまですべて残っているが、女性の胸の大きさを表す記号としてだけ使われている。
「では参りましょう♡」
 白いマイクロビキニを着たトモカは、バスタオルを腰に巻いたユウタにJカップの爆乳を押し当てて、共に浴室に入っていくのであった。

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