誰もが認める完璧超人な妹、黒崎紅愛とついに兄妹の一線を越えた俺。
恋人として初めて過ごす夏休み、リゾート地への小旅行で
お風呂でイチャイチャして、何度もイカせあって過ごした甘い時間。
しかし帰宅直後、姉・桂花から告げられた、平穏な日常を壊す非情な宣告。
抗えない力で離ればなれになる二人だが、紅愛はある「計画」を胸に秘めていた。
「私を信じて下さい、私は必ず兄様の元へ戻ります──」
妹いちゃらぶ大大傑作のeブックス受賞作、書き下ろし短編追加で感動の結末へ!
#24 始まる夏休み
#25 水着
#26 潮風に乗って
#27 湯船の中で
#28 愛か、快楽か
#29 それだけ
#30 青天の霹靂
#31 姉
#32 黒崎桂花は世話を焼く
#33 そして紅愛は
#34 黒崎綾人は語り出す
#35 決別
#36 兄妹愛に祝福を
#37 完璧超人はそこに立つ
#38 愛して
#39 何度も、何度でも
#40 幸せ
#書き下ろし 家族の時間
本編の一部を立読み
#24 始まる夏休み
夏休みが始まった。世間の学生は思い思いの夏休みを過ごすべく計画を立てていることだろう。
俺はと言えば何の予定も無かった。夏休み初日の今日、目が覚めて一時間経ってもベッドから起き上がれずにぼんやりと天井を眺めている。
俺はこういう長期休みがあまり好きではない。必然的に家に居る時間が増えるからだ。遊ぶにしたって四六時中という訳にもいかない。いっそ一人で遠出でもしようかと考えたりもするが、結局面倒臭くなってやめるのが常だった。
漫然と過ごすばかりの夏休みだが、今回はいつもと違う。この夏休みを共に過ごしたいと思える相手が出来た。
彼女が居る奴はこんな風に浮かれるものなのだろうか。初めての経験で戸惑うものの、浮つく気持ちは抑えられない。
「………………」
紅愛はいつもなら母と旅行に出掛ける。海外旅行で一週間、二週間不在にすることもザラだ。しかし今年は紅愛が何処かへ旅行へ行くことはない。
事前に聞いた話では、紅愛は母と交渉し家に留まることにしたのだと言う。大学受験に向け高校生のうちは勉学に力を入れる、そう言う名目で。
模試で一桁順位をとり続けるという目標がある手前、母を頷かせるのは容易かったようだ。母の方も不断の努力なくしては達成出来ない目標であるとの認識はあるらしい。
そんなこんなで紅愛と夏休みを過ごす時間はある程度保証されている。何をして過ごそうか考えているうちに一時間が経過したという訳だ。
勿論、遊ぶなら紅愛の勉強の邪魔にならない範囲でだ。遠出にしても行ける場所は限られる。母の動向にも気を配らなければならない。手放しで喜んでもいられないのが現実だった。
恋人として過ごしたい、というのが俺の本音だが地元でそんな振る舞いをする訳にはいかない。となると少し遠出する必要がある。二泊三日くらいなら大丈夫だろうか。判断するには紅愛の予定も聞いておかなければならない。
悶々としながら時間ばかりが過ぎていく。そろそろ昼前になろうかという頃、ふと部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「失礼します、にぃ様」
入ってきたのは紅愛だ。母が入ってくる訳はないので分かりきってはいたが、一体何の用事だろう。
首を傾げつつ身体を起こす。ゆったりとしたルームウェアに身を包む紅愛の髪に視線が吸い寄せられた。
長くて艶やかなその黒髪は後ろで一本に纏められている。ポニーテールの根本を飾る濃紺のバレッタが上品さを演出していた。
俺が贈った物を身につけてくれている。それが何よりも嬉しかった。
「どうした? 母さん居るだろ、平気なのか?」
「お母様は先ほど出掛けられましたよ。今日は帰って来るようですが、明日からは暫く旅行で不在みたいです」
そういう事らしい。考え事をしていた所為か出掛けた事に全く気が付かなかった。
ほっと胸を撫で下ろす俺の隣に紅愛が腰掛ける。息をするみたいに自然に、その唇が俺を目掛けてやってきた。
「ん……ちゅっ……ふ、むっ……ふふっ」
短いキスを交わして微笑みを溢す紅愛。あんまり可愛いので思わず抱き締めてしまった。
「あっ……にぃ様……どうされました?」
「急に可愛い事するな。襲いたくなるだろ」
「にぃ様がそのおつもりでしたら、歓迎しますよ?」
「……今日は母さん帰って来るんだろ。襲うにしても明日だ」
誘惑している自覚がないのか確信犯なのか判断がつき辛い紅愛の言動。俺はその肩を抱きながら何とか身体を離した。
「残念です。私はいつでもどこでも、にぃ様が求めるなら応じますのに」
俺の顔を覗き込みながら嬉しそうに笑う紅愛の様子を見るに、どうやら確信犯の方らしい。困った妹だ。
危うく反応しかけた下半身を何とか鎮めながら、丁度良い機会なので聞いてみる事にした。
「紅愛、夏休みは何か予定あるか?」
「予定……ですか?」
「ああ。その……今年の夏休みは一緒に過ごせるかなって思って」
言葉に迷った挙句、微妙に女々しい聞き方になってしまう。気恥ずかしさに思わず視線を紅愛から逸らすと、紅愛は突然俺に抱き着いてきた。
「ずっと一緒ですよ、にぃ様。旅行には行きませんし、他に予定はありません。いいえ、あってもにぃ様との時間を優先します。今決めました」
「い、いや……友達と遊ぶ予定があるならそっちを優先しても良いんだぞ?」
「……にぃ様は私と一緒に居たくないのですか……?」
悲しそうな瞳が俺を見つめている。無論冗談だと分かってはいるが、その言葉は俺の首を横に振らせる不思議な魔力を帯びていた。
「そんな訳ないだろ。何なら四六時中一緒に居たい」
「私もです。なのでにぃ様との予定を優先します。分かりましたか?」
「はい」
反論の余地なく論破された。瞬殺だ。多分俺は紅愛に口喧嘩では勝てないと悟ってしまった。
ともあれ紅愛も同じ気持ちで居てくれたようだ。約一ヶ月の夏休みを紅愛と過ごせるのはこれが初めて。そして俺にとっては最後の夏休みでもある。
忘れられないような夏休みにしたい。それが俺の素直な気持ちだった。
「何かやりたい事とか、行きたい所はあるか?」
「にぃ様とえっちしたいです」
「ぶっ」
恥じらいも躊躇いもなく言い切った紅愛。密着した胸板に感じる乳房の感触に意識が向いてしまう。性欲旺盛なのは結構な事だが俺の身が持つか心配だ。
「……まぁ俺もしたいけどさ。一旦そういうのは無しで考えてくれ」
「ふふっ、失礼しました。そうですね……行きたい場所と言えば──」
腕の中で紅愛が俺を見上げて微笑んだ。
「海に行きたいです」
「海……泳ぎたいのか?」
「いえ、ただ海を見に行きたいだけですが……にぃ様と一緒ならそれも楽しそうですね」
出てきた言葉は意外なものだった。紅愛が海に行きたいと言ったのもそうだが、海水浴に乗り気なのも驚きだ。どちらかというとインドア寄りだと思っていたが、必ずしもそうとは限らないらしい。
俺と一緒だから、なのだろうか。だとすればこれほど嬉しいこともない。
「じゃあ行くか、海。いつ行く?」
「泳ぐなら水着も可愛いのを買いたいです。明日、明後日で準備をして……三日後はどうでしょう?」
「分かった。日帰りにするか泊まりにするか。希望はあるか?」
「折角なのでお泊まりしましょう? 二泊三日くらいが丁度良いかも知れませんね」
とんとん拍子で予定が決まっていく。遊ぶ予定を立てるだけでこんなにも胸が躍るのは、やはり紅愛と一緒だからなのだろうか。
そうこうして相談した結果、どうせなら少し遠出をしようという話になった。なるべく地元から離れた場所の方が多少羽目を外しても見つかるリスクが低い。
加えて、海だけでは飽きるだろうという事で温泉も楽しめるような場所に行く事になった。探してみると意外にニーズを満たせる宿やホテルはそれなりにあった。
二人で身を寄せながらスマホで旅行サイトを調べていると、何だかカップルっぽいなんて思ったりもした。一応、カップルのつもりではあるのだが。
良さそうな旅館やホテルを見つける度に紅愛は楽しそうに目を輝かせていた。少し悩んだものの、目的地はすぐに決まったのだった。
「にぃ様と二人で旅行……それもお泊まりだなんて。夢みたいです」
「大袈裟だな。でも、そうか……紅愛と一緒に旅行するのはこれが初めてなんだよな」
俺は殆ど旅行なんて行かない。紅愛と一緒に旅行へ行く機会にも恵まれなかった。だから今こうして紅愛と旅行の予定を立てられるのが何よりも嬉しかった。
そんな感慨深さを感じていると、紅愛が俺に顔を寄せてくる。至近距離で物欲しそうに俺を見つめていた。それがキスをねだっている顔だと判断するのは容易だった。
「ちゅ……れる……っちゅ、んむ……んっ……」
少し長めに唇を吸った後、視界一杯に俺を映しながら紅愛はうっとりと呟く。
「素敵な思い出にしましょうね、にぃ様。恋人として過ごす初めての夏休みですから……」
返事を言葉にはせず、もう一度口付けをした。俺の気持ちが伝わるように、紅愛の可憐な唇からいつまでも離れなかった。
#25 水着
電車を乗り継ぐこと約三時間半。県を一つ跨いで辿り着いた目的地は海沿いに立つリゾートホテル。チェックインを済ませ、予約していた部屋に足を踏み入れた。
「わぁ、綺麗ですね……!」
紅愛が感嘆の声を上げる。視界に飛び込んで来たのは一面のオーシャンビュー。爽やかで眩しい空と海の青色が俺と紅愛を照らしていた。
部屋は広すぎず狭すぎずの丁度良い広さ。ベッドサイズはセミダブル。もう少し広い方が良いかとも思っていたが、実際に入ってみると何も不満は感じられない。
むしろ広すぎない方が紅愛との距離が近く感じられて良い。紅愛も満足そうに部屋を見渡していたものの、ふと気になって聞いてしまう。
「紅愛はスイートとかに慣れてるだろ? 狭く感じないか?」
「私、あまりグレードの高い部屋は苦手なんです。広過ぎたりサービスが充実し過ぎたりで、手に余る様な感じがして」
「へぇ、意外だな。感性が俺と似てるかも知れない」
「にぃ様の妹ですから」
得意げに胸を張る紅愛に思わず苦笑する。何も誇るような事ではないというのに、誇らしそうな紅愛の様子が何だか可笑しかった。
だが考えてみれば紅愛が金を掛けているものと言えば服くらいしか思い浮かばない。次点でアクセサリーとかだろうか。しかし両者とも世間一般よりかは多少金を掛けている、程度のものだ。
すると紅愛は俺よりも贅沢をしないタイプなのかも知れない。無論、母の贅沢に日頃から触れているので贅沢自体に慣れていない訳ではないだろうが。
何にせよ喜んでくれているようで安心した。俺自身は豪勢な部屋は嫌いではないが、地に足着いた贅沢が丁度良いとも思っている。
まあ、高校生がリゾートホテルに二泊三日するのを「地に足着いた」と表現して良いかは一考の余地があるかも知れないけれども。
「さて、どうするか。早速海行くか?」
「行きましょう。何だか泳ぎたくなってきてしまいました」
「じゃあ用意して早速行くか。なんか久々だな……って言っても修学旅行以来か」
海で泳いだのが遥か昔の事のように思えるが、昨年の修学旅行で沖縄に行ったばかりだ。一年ぶりと言えば長く聞こえるが海なんて年に一回か二回、行くか行かないかだろう。
「私は本当に久しぶりです。最後に海に行ったのは……三年前くらいでしょうか」
「海外旅行とかか? 母さんは海で泳ぐような性格してないしな」
「遠くから眺めるだけでしたね。その時は特に泳ぎたいとも思いませんでしたが、今は泳いでみたいです。とっても」
年相応に目を輝かせる紅愛が可愛らしくて見惚れてしまいそうになる。兄としては、色々なものに興味を持って触れてみたいと思ってくれるのは嬉しいことだ。
紅愛の年なら遊びたい盛りであって当然だろうに。同世代の者よりよほど大人びているのは長所と言えるだろうが、果たしてそれが健全かと言われると素直には頷きにくい。
今日は羽目を外して楽しもう。俺が楽しまなければ紅愛も楽しめないだろう。そんな事を考えながら荷物の準備をする。
「じゃあ俺はトイレで着替えてから外で待ってる──」
用意が終わり紅愛に声を掛けるべく後ろを振り返る。そして、俺の手から着替えやら何やらが入ったバッグがずり落ちた。
「……く、紅愛? 何で服脱いでるんだ?」
ブラウスのボタンを外し終わった紅愛は続いて躊躇いもなくスカートのホックを外す。すとんと地に落ちるスカート。桃色の可愛らしいブラとショーツに視線が吸い寄せられる。
紅愛はまるで見せつけるように俺の方を向いていた。そして悪戯っぽい笑みを浮かべて呟く。
「もちろん水着に着替える為ですよ? ああ、私の着替えを眺めたいならどうぞ。にぃ様になら見られても恥ずかしくありませんし」
「……そこは恥ずかしがってくれ。とりあえずあっち向いてるから」
綺麗な肢体を惜しげもなく晒している紅愛に背を向けた。からかっているのか誘惑しているのか、はたまたその両方なのか。
水着姿と下着姿は似たような姿とはいえ別物だ。あんまり眺めていると余計な気を起こしてしまいそうになるので、早々に目を逸らして正解だった。
とはいえ脳裏からすぐに紅愛の下着姿が消えてくれるはずもない。後ろから聞こえる衣擦れの音も相まって、非常に悶々とする。
修行僧のような心地で紅愛の着替えを待つ。声を掛けられたのは三分ほど経ってからだった。
「にぃ様、こっちを向いて下さい」
言われたとおり素直に振り向く。途端に俺の胸が高鳴った。
後ろで手を組みながらはにかむ紅愛。ホルターネックタイプの純白のビキニが紅愛の美しいスタイルをこれ以上なく引き立てている。艶やかな黒髪とのコントラストが目に眩しく、どこかのグラビアモデルに思えてしまうようなオーラさえ感じられた。
腰回りには薄いベールのような華やかなパレオが巻かれている。全てが奇跡的な程、紅愛に似合っていた。
「……………………」
「あの、にぃ様?」
「あ、悪い……見惚れてて……」
「……ふふ、嬉しいです。似合ってますか?」
「似合ってる。滅茶苦茶綺麗だし、可愛い。……あー、駄目だ、やばい。語彙力無くなった」
思わず天を仰ぐ。本当はその素晴らしさを余す事なく褒め称えたいのだが、言ったとおり語彙力が全て吹き飛んでしまった。
とにかく美しい。上手く言葉に出来ないのが悔しいくらいに。
「頑張って選んだ甲斐がありました。そんなに喜んで頂けると、妹冥利に尽きますね」
「気合入れて選んでくれたんだろ? この場合は兄冥利に尽きるって言うべきじゃないか」
言って、笑い合う。一つ確かなのは、俺も紅愛も互いの事を一番に考えているという事。世間ではこういうのをバカップルと呼んだりするのかも知れない。
先に紅愛の方が着替え終わってしまったので、俺も急いで水着に着替える事にした。今更気にすることもないかと思い、俺もその場で着替えた。流石に紅愛には後ろを向いてもらったが。
「にぃ様も良くお似合いですよ。格好良いです」
「そうか? 男の水着姿なんてつまらないだろ」
「いいえ。にぃ様は分かってません。水着姿はそれだけで特別なんです」
「そう……なのか?」
やけに熱の籠った紅愛の言葉に疑問を抱きつつも、否定は出来ない。俺を舐め回すような紅愛の視線が何だか恥ずかしかった。
ひとしきり俺を眺めた後、紅愛は満足そうに息を漏らす。そしてベッドに腰掛けた。
「さてにぃ様。お願いがあります」
「ん、急にどうした? 聞くけど」
いつの間に取り出したのか、紅愛の手には青い楕円形の容器が握られている。手のひらサイズのそれを俺に見せつけながら紅愛は告げた。
「日焼け止め、塗って下さいませんか?」
そろそろ俺にも紅愛の魂胆が見えてきた。カラカラと日焼け止めの容器を振りながら俺に視線を送る紅愛に向けて頷き返す。
「……分かった。どこに塗れば良い?」
「全身に」
「全身!?」
いや、流石に予想外だ。意識させようとしているのは理解していたつもりだったがまさか全身に塗れとは。精々腕やら背中やらかと思っていたのに。
何にせよ返事をした後だ。断るつもりもない。ただ俺の理性が試されるだけだ。
「まぁ……良いけどさ。日焼け止め貸してくれ」
「はい。今日は日差しが強いのでしっかりお願いしますね」
一旦パレオを外した紅愛がそのままベッドにうつ伏せになる。まずは身体の後ろ側からということらしい。紅愛から受け取った日焼け止めを手に取り、膝立ちのままその背中に跨った。
「じゃあ塗ってくぞ」
日焼け止めを背中に垂らし両手で伸ばしていく。白くて華奢な背筋を俺の手が滑っていくと、紅愛は時折くすぐったそうに息を漏らしていた。
「んっ……ふ……ぁ……」
「……声を出すな、声を。日焼け止め塗ってるだけだぞ」
「でも……にぃ様の手が気持ち、良くて……んっ……マッサージされてるみたいです……」
妙に色っぽい紅愛の声。別にやましいことはしていないはずなのに、空気がピンク色に染まりつつある気がした。
この妹、やはり俺を誘っている。「あわよくば」を狙っているとでも言おうか。まあ俺も下心が無い訳ではないのでお互い様なのだが。
背中を塗り終わり、腕、太もも、ふくらはぎと満遍なく塗っていく。紅愛の滑らかで柔らかい肌の感触は俺の性欲を刺激するには十分過ぎるほどの材料だった。
とはいえこれから泳ぎに行くと言うのにいちいち欲情なんてしていられない。ビーチに居る時に何かの間違いで勃起でもしようものなら一発で通報だ。
「ふぅ……終わったぞ」
「ありがとうございました。では前を」
「……前は自分でやらないか?」
「お願いしますね、にぃ様」
有無を言わさず仰向けになる紅愛。何となく俺が紅愛の尻に敷かれる未来が見えた。今物理的に尻に敷いているのは俺の方だが。
屹立する柔肌の双丘が目の前で揺れている様子から目を逸らせないまま、引き続き日焼け止めを塗っていく。呼吸をする度に上下するほっそりとした腹部に日焼け止めを垂らして塗り込んでいった。
「ふ、ぁ……にぃ様、胸元もお願い、しますね?」
「まだそこまで行ってないのに逃げ道塞ぐのやめてくれ。……やれって言うならやるけどさ」
胸に触ったら確実に勃起するので何とか回避しようと方策を考えていたのだが、思考を先回りされてしまった。ここまで来ては往生際が悪いと言うべきか。やるしかない。
流石に水着の内側にまでは手を伸ばさない。肌が見えている部分にだけ日焼け止めを垂らし、指先で丁寧に延ばしていく。
胸の谷間に流れ込む乳白色の日焼け止め液。指先でふるふると震える乳房の感触に、俺の下半身は否応無く反応してしまう。
水着を内側から押し上げ、テントのような有様の下半身を紅愛は熱っぽい瞳で見つめていた。
「あっ……ん、はぁ……にぃ様……」
無心で日焼け止めを塗り続ける。いつまでも胸を触っていたい気持ちを鋼の意志で抑えつけ、何とか先へ進んだ。
後は流れ作業だ。紅愛の綺麗な肌にシミが出来てはいけない。責任重大な作業に気を抜く訳にはいかなかった。
「……良し……終わったぞ……」
ようやく日焼け止めを塗り終えた時、疲労感が全身を包んでいた。紅愛の全身に触れて欲情するなと言うのは土台無理な話だ。忍耐を試され続けた所為で精神的に疲れた。
上から退くと、紅愛はゆっくりと身体を起こす。その目は何故か不満気だった。
「……紅愛?」
「なんですか?」
「いや、何か不満そうに見えるから」
「不満はありませんよ? にぃ様の意志の固さに驚いていただけです」
「あのな……これから泳ぎに行くんだぞ?」
「それとこれとは別です」
不満そうに頬を膨らませる様はただただ可愛いだけなのだが、笑ってしまっては怒らせかねない。取り敢えず頭を撫でながら宥めすかす。
「焦るなって。帰って来たら……な?」
「……はい。たくさん愛して下さいね?」
セックスの約束をしてから遊びにいくのもどうなのか。俺の忍耐はまだまだ試されるらしい。苦笑混じりの溜息を禁じ得なかった。