幼馴染の夜椰をオナホ扱いする罪悪感に耐えかね、病んだ俺。
休学し家にこもっていたが、夜椰は甲斐甲斐しく部屋に来てくれる。
その健気な姿を前に、彼女のことがやけに愛らしく情欲が湧き始めた。
ついに義妹・有理沙の身代わりでなく夜椰自身を求め、最高の一夜を迎え──
だが漏れ出た甘い喘ぎ声は、扉の先の有理沙に聞こえていて……
男女三人、再び崩れ始める。背徳学園ノベル、錯綜の第三巻。
1.俺の幼馴染が可愛らしい女の子すぎる
2.タマゴサンド
3.はじめて味わう女の子の味がした
4.お漏らし夜椰
5.俺は幼馴染を愛している
6.義妹の様子がなんだかおかしい
7.たったひとりの親友へ
8.ふたりのワガママ
9.幼馴染か義妹か
10.大好きな幼馴染とすり合わせ
書き下ろし番外編 幼馴染の気持ちいいところ
本編の一部を立読み
1.俺の幼馴染が可愛らしい女の子すぎる
十一月に入り、気温は日中でも二十度を下回ることがあたり前になった。
つい一ヶ月前まで残暑きびしい日が続いていたのに、いきなり秋がやってきて、冬を迎え入れる準備をし始めている。そんな気がした。
「やっほ♪ 元気してた? 一翔《かずと》♪」
今日も学園の授業が終わってすぐ、夜椰《やや》は真っ直ぐに俺の部屋に来てくれた。
時刻にして午後五時前。最近は夕方前のこの時間でも、窓の外では太陽が沈みかけている。
夜椰は冬用にシフトしつつある制服姿だった。俺が休んでいる間に衣替えが始まっているらしい。
白いシャツに青いチェックのスカート。そして学園指定の白いカーディガンを身に着けている。これからさらに寒くなるとブレザー、そしてブレザーの上から自前のコートを着ていいという決まりになっている。
「ん? どーしたの一翔?」
じろじろ見ていると夜椰が反応してきた。俺はなんでもないふりをして目を逸らす。
正直に言って、めちゃくちゃ似合っている。一瞬でも目を奪われてしまうくらいに。
金髪ギャルの白カーディガン制服姿。まるでそれがデフォルトだというように萌え袖《そで》までキメていて、見ていると心にグッとくるものがあった。
俺が広げた四脚テーブルの前に、荷物を置きながら自身も床の上に腰を下ろす。
正直、おしとやかさの欠片もないような、雑な座り方だったけれど、それでもむき出しの太ももやスカートの奥にチラつくものを見たいと、自然と目で追ってしまう。
どうにか目を逸らしても、カーディガンの胸元、第二ボタンまで開いているシャツからのぞく谷間に目線が吸い込まれてしまう。
今まで夜椰に対して、こんなことはなかったのに。
いかんいかん。俺がこんなんじゃダメだ。
親切で俺の面倒を見てくれている夜椰に対して失礼すぎる。
夜椰が座りきるのを待って、俺も対面に腰を下ろした。
「今日の分、これね!」
美郷《みさと》さんのノートの写しがテーブルに置かれる。今日板書があった全教科分だ。化学の実験資料までまとめてくれている。
俺はスマホのメモ帳に文字を打ち込んだ。
『ありがとう』
紙のメモ帳より、こっちの方が自分の気持ちを早く、正確に伝えられると気づいてからはスマホを使っている。
「なんか、あらためてお礼を伝えられると恥ずかしいじゃん」
恥ずかしそうにモジモジする夜椰。腕をギュッと寄せるから、Gカップの谷間が強調された。見ている俺まで恥ずかしくなってしまいそうだった。
「アタシ、飲み物取ってくるね!」
そう言って夜椰が四脚テーブルに手をつく。
「最近寒くなってきたからさ。飲み物あんま飲まないようにしてんだよね。だから喉かわいてて」
俺は首をひねる。
「だって飲みすぎたらおしっこ行きたくなっちゃうじゃん」
よくわからんけど、女の子はそういうものか。
たしかに男子と違って女子はトイレに行くのも面倒くさそうだよな。どこのトイレに行っても並ぶことがほとんどだって話も聞くし。
――おしっこ行きたくなっちゃうじゃん。
頭の中でさっきの台詞をリピートしてしまう。
おしっこ……夜椰はなんでも直球でものを言う。だから当然、その言葉も聞きなれているはずなのに。
ごくり。
なぜか妙に緊張している俺がいた。
本当にどうしてしまったんだ俺は。
「じゃあ、とってくるね!」
夜椰がうちの冷蔵庫を勝手に漁るのもいつものことだ。父さんが再婚してからは遠慮していたけれど、今は家に父さんも義母《かあ》さんも有理沙《ありさ》さんもいないし、気を抜いているのだろう。
「んしょ、っと♪」
俺の目の前で勢いをつけて立ち上がり、そのまま部屋のドアがある方へくるりと反転する。
短い制服スカートがふわりとひるがえった。
「――っ」
俺は息をのんだ。
全部見えた。
フロント部分は濃い紫色。黒いレースの刺繍《ししゅう》が施されていた。バック部分はレースのTバック。お尻の谷間がうっすら透けて見えるほどのスケスケ感がめちゃくちゃイヤらしい。
ドキッ! と聞こえてきそうなほど跳ねたのは俺の心臓か。
つい見蕩《みと》れてしまうエロさにチ×コが一瞬でギュンと反応した。
しかもそれだけならまだよかったものの、
「あ、ヤバっ! いまアタシ、めっちゃ……」
あの夜椰があわててスカートを押さえた。あの夜椰が、だ。
恥じらう表情まで見せている。やっちゃったと少しショックを受けているような、恥ずかしがっているようなそんな表情。
お前、今までそんな反応しなかったじゃないか。
俺に見せるだけ見せて、逆にそれをネタにからかってくるくらいの奴だったじゃないか。
それなのに、なんだよ?
どうしたんだよ?
なんでそんなに可愛らしい女の子みたいな反応するんだよ?
戸惑う心が、興奮へと変わる。
夜椰って、こんなに可愛くてエロい女の子だったのか……。
やがて夜椰が俺をふり返る。
「……見た?」
いつもなら汚いものを見せるな、くらいのことを言っていた気がする。
でもなぜか、今の俺はそれを言うのをためらってしまう。
内側から湧き上がる興奮と焦り。夜椰の羞恥の心がうつってしまったかのように、俺まで恥ずかしくなってくるこの感覚。
それらをなんとか抑えつけて、俺は平静を装った。
できるだけ冷めた顔で、首を横に振った。
こういう時、目を逸らしたり顔を背けたりしたら余計に疑われる。そう思って、直後はじっと夜椰のことを見上げていた。
夜椰は少し目を見開いている。見開いた瞳がわずかに揺れている。
けれどすぐにニカッといつもの笑顔で微笑んだ。
「そっか。ごめんね疑っちゃって。一翔っていつもアタシのスカートの中見てくるから勘違いしちゃった♪」
それはお前が見せてきているだけだろうがッ!
心の中のツッコミが聞こえたのか、夜椰は「あっはっはっ♪」とゲラゲラ笑いながら部屋を出ていく。
まったく、あの幼馴染は。
やれやれだとため息をつく。けれど、いまだに胸の中に興奮が残っているのもたしかだった。
夜椰が飲み物を取って戻ってきてからは真面目に勉強に取り組もうとした。
けれどふと集中が途切れた時に顔を上げると、対面に夜椰がいる。
ノートにシャーペンを走らせている。広げた教材を真剣に見つめる眼差し。明るい金髪がさらりと垂れてテーブルの上に流れている。
そうして前のめりに勉強に取り組む姿勢は、細身ながらたわわに実っている夜椰の谷間を強調していて目に毒だった。
いや、目の保養と言うべきなのか?
ていうか俺、この前まであのおっぱいを好き勝手に揉んだり、チ×コを挟んだりしていたんだよな。
その時のことを思い浮かべそうになって、ハッと我に返って頭を振る。
集中しろ、知花《ちばな》一翔。
今はノートを写すことに専念しなければ。
時計を見る。もう勉強し始めて二時間が経とうとしていた。窓の外は暗くなっている。もうそろそろ有理沙さんが帰ってくるだろう。
いつもならとっくにノートを写し終えて、センター試験対策の問題を解いているところなんだけれど……。
「珍しいね一翔。今日ぜんぜん集中できてないじゃん」
不意に声をかけられて対面に目を向ける。
夜椰は両手を上にあげて伸びをしていた。第二ボタンまで開けたシャツの隙間からブラジャーがチラリとのぞく。さっき見たパンツと同じだろう。カップ上部を装飾する黒いレース生地が見える。
見てはいけない。
俺は目線を手元に下げ、スマホのメモ帳に文字を打ち込んだ。
『ちょっと疲れてるかもしれない』
「無理してない? 大丈夫?」
『自分ではわからない』
まさか夜椰のことを気にしてしまっている、なんてことは言えなかった。
幼馴染相手に明確な隠し事なんてしたことなかったのに、つい嘘をついてしまっていた。
「ここ最近、ずっと部屋にこもってばっかだったし、たまには気分転換してみる?」
気分転換?
「明日はアタシの部屋で勉強会しよっか?」
「っ……」
胸が高鳴った。
気持ちが高揚したことをさとられないように、平静を装《よそお》うのが苦しかった。それでもなんとか表情には出さなかったと思う。
夜椰の部屋。
幼馴染の部屋。
女の子の、部屋。
ムクムクとチ×コが硬さを増していく。
落ち着け。変な誘いじゃない。心因性失声症になってしまった俺を気遣って、メンタルのケアを提案してくれているだけだ。
それでも心臓は痛いほど大きく鼓動を繰り返す。ドクン、ドクンという音がテーブルを挟んで対面にいる夜椰に聞こえてしまうんじゃないかと思うほど。
なにか動いていないと、気を紛らわせることをしていないと、本能に任せてどうにかしてしまいそうだった。
だから俺はスマホを手に取った。メモ帳に文字を打ち込む。
返事なんて、首を縦に振るだけで事足りるのに。
『たしかに最近、勉強する環境に飽きてきてる気がする。家から外に出ることもないし、閉鎖的になってて窮屈さを感じてるのかも。勉強する場所を変えてみるのはいいかもしれない。そういえば御河《みかわ》学園を受ける時もお互いの家を行ったり来たりして受験勉強してたっけ。あんな感じで勉強するのがリフレッシュになるかも』
無駄に長い文章を打ち込んでしまった。
夜椰がその文章を読むのに十数秒かかる。すべてを読み終えてから俺に視線を戻すと、ギャルらしくニコッと明るく微笑んできた。
「決まりだね♪ そんじゃ明日はアタシの部屋でやろ♪」
『よろしく』
「勉強の合間につまめるように、なんか軽く作ろっか? 一翔はなに食べたい?」
そこまでしてくれなくてもいいのに。
そう思って首を横にふる。けれど夜椰は納得してくれなかった。
「アタシが作りたいって言ってんの!」
『晩ご飯食べられなくなるぞ?』
「ちゃんと食べるもん! そんなにガッツリ作らないし!」
『太るぞ?』
「ちょっ!? そういうのノンデリって言うんですけど! 女の子に『太る』は禁句だから!」
禁句とか言われてもな。
そもそもお前、めちゃくちゃ細いじゃん。ウエストなんて二リットル入りのペットボトルをふたつ横並びにした、その周囲よりも細いんじゃないだろうか。
夜椰をバックで突いた時、両手でがっしりとウエストをつかんだことを思い出す。あの時、右手と左手の指同士がもう少しでくっつきそうだな、なんて思ったような。
思い返そうとして、淫らにアエぐ夜椰の姿やチ×コをオマ×コで締めつけられた快感まで蘇《よみがえ》りそうになって、あわてて首を横に振って邪《よこしま》な回想を追い出した。
「と・に・か・くっ! なに食べたい? それとも食べたくない?」
テーブルに身を乗り出して、食い気味に聞いてくる。よほど『太る』と言われたことに怒っているのか、頬が赤く染まっていた。
夜椰に『太る』や『体重』の話は禁句。おっけい、覚えた。
『タマゴサンド』
ふと頭に思い浮かんだものをスマホに打ち込んだ。ロールパンを半分に切り開いて、たっぷりとタマゴスプレッドを挟んだやつだ。
「おっけ♪ じゃあ準備しとくね♪」
夜椰が自分の席に座り直す。話はおしまい!とばかりにふたたびシャーペンを手に取っていた。
ロールパンを使ったタマゴサンドって伝えるの、忘れたな。まあいいか。べつに食パンで作ったタマゴサンドでもそれはそれで美味しいし。
一度心を落ち着けるために深呼吸をして、ノートに向き合う。
夜椰と話をしたからだろうか。それ以降は集中して勉強に取り組めた。
2.タマゴサンド
翌日目が覚めて一階へ降りると、父さんと有理沙さんはすでに家を出ていた。
久しぶりの休みをゆっくり過ごしている義母《かあ》さんが迎えてくれた。
「朝ご飯、温め直すわね」
わざわざ俺のために申し訳ない。
そんな思いから俺もキッチンへ向かおうとしたんだけれど、
「いいのよ一翔。ゆっくりしてて。疲れているんでしょう?」
絶対に手伝わせない。そんな気遣いのかたまりのような言葉を投げられて、苦笑しながらダイニングテーブルの席についた。
十分もしないうちに義母《かあ》さんが朝ご飯を運んできてくれる。
今日のメニューは王道和食だ。ご飯に味噌汁、酢の物にメインディッシュが魚の味噌煮。この味噌煮は……鯖《さば》だろうか?
「鰆《さわら》よ」
鰆っていちおう高級魚の仲間じゃなかったか?
鯖より身が厚くて脂《あぶら》も乗っているから旨味がすごいとかなんとか。
スマホに文字を打ち込む。
『スーパーで買ってきたんですか?』
「いただき物よ。旬の時期の前だからそんなに良いものじゃないけどって言われたんだけど、しっかりしてるわ」
『鰆の旬って冬なんですか?』
「冬と春ね。魚へんに『春』って書くから春の魚っていうイメージが強いけれど、冬も有名なのよ」
知らなかった。弁当屋さんで商品開発をしているとそういう旬の情報も頭に入れておかないといけないのだろう。
いろんな食材の、旬の時期。
魚だけじゃない。野菜や果物にいたるまですべてを……大変な仕事だなあ。
いただきます、と手を合わせてから箸を手に取る。鰆をまっさきに箸で切り分けてひと口頬張る。
「~っ!」
「ふふっ。美味しいかしら?」
声を出せないので大きくうなずく。義母《かあ》さんは満足そうに微笑んだ。
「鯖《さば》によく似てるけど、鰆の方が肉厚で脂が乗ってて美味しいでしょう?」
大きくうなずく。
「味噌煮にしちゃうと素材そのものの味がわからなくなっちゃうお魚も多いけれど、鰆はそんなことない。和でも洋でもなんでも使える良い食材だわ」
また大きくうなずく。
しばらく鰆の味噌煮とご飯のコンボを決め続ける。
「今日は一翔にしては珍しくお寝坊さんだったわね?」
責めるような口調ではない。母親が自分の子供をいとおしむような優しさを包んだ言葉に、思わず胸が熱くなった。
「昨日は眠れなかった?」
義母《かあ》さんに余計な心配をしてほしくなかったので、首を横に振った。
実際は深夜三時過ぎまでベッドの上でゴロゴロしていた。夜椰のことを思い出しながら、勃起しているチ×コをなんとか収めようと無心を心がけた。でもそうすればそうするほど雑念は増えてくるし、チ×コも収まらない。
抜くのはなにか、違う気がした。
「あんまり根《こん》を詰めないでね? 貴方にいま一番必要なのは休息なんだから。受験があるから、気が休まらないって気持ちはわかるけれど、それで心を壊してしまったら意味がない」
義母《かあ》さんの言葉が胸に染みる。
本当に俺のことを、母親としてすごく心配してくれているんだとわかる。
「一翔が嫌じゃなかったら、浪人してもいいのよ? 大学なんて浪人して入ってくる人もいっぱいいるんだから」
わかっている。
でも俺が心に抱えているものはそういうことじゃないんだ。
理解してくれないことにイラつく気持ちはない。むしろ理解されては困る。
父さんの連れ子で、血のつながっていない俺を、心の底から心配してくれる義母の奈緒美《なおみ》さん。
そんな彼女を見れば見る程、この家族を壊してはいけないと強く思う。
だから俺は笑みを浮かべてこう言うんだ。
『ありがとうございます。俺は大丈夫です』
スマホの画面を見せて、俺の意見を読んだ義母《かあ》さんは、ほんの少し寂しそうに眉根を寄せて見つめてきたのだった。
部屋に入った瞬間、夜椰のにおいがした。
ベッドシーツも布団もカーテンも壁紙も、白で統一された清潔感のある部屋。でも枕元や勉強机の隅に、いま女の子の間で流行っている可愛らしいぬいぐるみが置かれている。
女の子の部屋だ。
あたり前だけれどそれを初めて実感した。今まで俺がどれだけ夜椰に目を向けていなかったのかがわかる。
そして実感すると、自然と胸が高鳴ってしまう。
「なにしてんの一翔? さっさと座って♪」
四脚テーブルの前に腰を下ろしながら夜椰が言う。
今日も学園の制服姿。白いカーディガンを上から着ている。シャツの胸元からのぞく谷間と、ミニスカートゆえに際どいところまでのぞけてしまう生の太ももがエロい。
また夜椰のことをそういう目で見てしまっている。
ふぅ、と息を吐き出しながら、夜椰の対面に腰を下ろした。
「はいこれ♪ 今日のノート!」
受け取る。
今日は昨日より写しの数が少ないな……ああそうか、木曜日だから体育があったのか。
俺はさっそくノートを広げてシャーペンを走らせた。
しばらくして「う~ん……」と夜椰がうなり始めた。
顔をあげる。数学の大学入試共通テストの過去問を解いているようだ。
視線を感じたのか、夜椰がバッと顔を上げる。潤んだ目で俺をじっと見つめて、
「わかんないよ~ぅっ! 数学マジ無理ぃ! かずっち教えてぇ」
やれやれだ。
コクンとうなずいてやると、夜椰はぱあっと表情を明るくさせた。
過去問用紙を持って、あたり前のように俺のすぐそばに移動してくる。
「っ!?」
「いや、だって隣に来た方が見やすいじゃん」
そ、そうだよな。
それ以外に理由は無いよな。
でも……。
――ぷるん。
谷間が、ヤバい。
少し前かがみに、俺の手元をのぞき込む姿勢。
第二ボタンまで開けたシャツの隙間からのぞく、Gカップの深い谷間。
思わずそこに手を突っ込みたくなって、生唾を飲み込む。あのおっぱいの柔らかさを俺は知っている。
「かずっち?」
「っ……」
夜椰が俺を見て首をかしげた。その仕草がまた可愛い。
サイドにまとめた金髪がゆらりと肩口から垂れる。近い距離でガッツリ合ってしまうお互いの目。
本当に、冗談抜きに、マジで。
可愛いと思ってしまった。
「はは~ん? かずっちアタシに惚れたなさては?」
思わず肩をビクンとさせてしまう。
あわてて首を横に振った。
「え? ちょっ、マジな反応やめてよ。必死に首ふっちゃってさあ。いつもみたいに道に落ちてる煙草の吸殻見てるような目で否定してきてよ」
そんな目をしたことはねえよっ! さすがの俺でもっ!
いや、でも……そんな目をしてたのか? 少なくとも夜椰はそういう風に感じていたってことなのか?
「なんかちょっと変な空気なっちゃったじゃん。どうしてくれるのこの空気?」
夜椰が責めてくる。
マジでごめんなさい。
「まあいいや♪ ちょっと飲み物とってくるね! ついでに昨日の約束の品も持ってくる!」
約束の品?
「タマゴサンドって言ってたじゃん!」
ああ、そういえば!
「忘れてたの? マジひどいんだけど! 昨日の夜に具だけ作っておいて冷蔵庫入れてるから! すぐ作って持ってくる!」
スカートの裾《すそ》を気にしながら、夜椰は立ち上がる。
そんな些細な行為に、女の子らしさを感じてドキドキしてしまう。
すぐに夜椰は出ていった。階段を下りていく音を聞く。
夜椰の部屋にひとりきり。
「……っ」
いけない考えが脳裏に浮かんで、すぐに頭をふった。
ダメだ、知花一翔。それをやってはいけない。
夜椰がいない間に、タンスを漁ろうだなんて。
チラリと目を向ける。
部屋の隅に位置しているクローゼット。俺の家と造りが同じだから、あの中に夜椰も衣装をしまっているはず。
俺は床に手をついて立ち上がり、クローゼットの前までやってくる。
ゆっくりと取っ手に指をかける。その時、漁っているところを夜椰に見られたら最悪だと考えて、思いとどまろうとした。
でも。
夜椰はサンドイッチを作ってくると言っていた。きっとそれなりに時間がかかるはず。
まだ部屋を出ていって五分も経ってない。いくら作るのが簡単なサンドイッチとはいえ、そんな二、三分で作り終えて持って来れるわけがない。
それに部屋に戻ってくる時は階段を上ってくる音がするはず。だから大丈夫だ。
指先に力を入れた。
木製の扉が少し軋《きし》む音がした。けれどびびることなく開け放つ。
向かって右側に冬用のコートや学園の制服がかかっていて、左側には衣装ボックスが積まれていた。
積まれた衣装ボックスの一番下を見る。
引き出しタイプのそのボックスに指をかけ、グッと力を入れて引っ張った。
「――っ!?」
下着だ。
綺麗にたたまれた下着類がその段にギュッと詰められていた。
左側にはパンツ。右側にはブラジャー。
パンツはたたんだものをさらにくるくる丸めて収納している。
ブラジャーも、右と左両方のカップを合わせるようにしてたたまれていて、コンパクトになっていた。
引き出しの手前側にはパステルカラーの下着が敷き詰められている。全部で五セットくらいだろうか。夜椰が有理沙さんになりきるためにわざわざ買ったものだろう。
どれも見たことがある下着だった。
俺、本当に夜椰とセックスしまくってたんだな。今さらながらその事実に驚き、そして思い出して興奮してしまう。
でも。
この下着じゃない。
今の俺の心を痛いほど高鳴らせてくれるのは、こんな清楚で可愛らしい下着じゃない。
引き出しの奥に目を向ける。
「……はぁっ、はぁっ」
かすれた吐息が喉から出てきた。
奥のパンツに手を伸ばして、指でつまむようにしてひとつずつ取り出し、デザインを確認する。
丸められていてもわかるほどにセクシー。
黒や濃いブルー、この前見たような紫に、ヒョウ柄がチラ見えしている派手なものまで。
レースの生地がまたイヤらしい。このまま広げて、クロッチ部分に鼻先をつけてクンクンと匂いをかぎたい。
嗚呼、夜椰……夜椰のパンツ!
ふとひとつのパンツに目が留まった。一番奥に、隠すようにして詰められていたパンツだ。
それを引っ張り出す。
くるくると丸められていたそれを広げていく。
フロント部分が深海を思わせる濃い青色。フロントの布地の三分の一、正面から見ると左側のほとんどが透け感のあるレース生地でできていて、青いバラの花を模した刺繍がデカデカとついていて派手だ。
サイド部分は二本の細い紐が交差するようにデザインされていて、後ろはあたり前のようにTバック。
エロすぎる。
なんだこのパンツは。思わずパンティと呼びたくなるくらい興奮させられるイヤらしい下着だ。
次に中を見る。
両手で広げて、クロッチ部分までしっかり見えるように広げる。
「――っ!?」
表の色に合わせてか、クロッチ部分は水色の生地が使われていた。
でもその生地は、ひどく黄ばんでいた。
「はあっ! はあっ! はあっ! はあっ!」
かすれた吐息が荒さを増していく。
もう一度表を見る。表側からクロッチ部分を見る。するとほんの少しだけど、裏側の黄ばみが浸食しているような感じがした。
だから隠していたのか?
汚れたパンツをあまり穿きたくないから。
普通なら、こんなの汚いと思って目を背けてしまうだろう。
でも俺はその汚れから目を逸らせないでいた。
むしろ鼻をうずめたい。濃厚なメスのニオイをその汚れたクロッチから感じ取りたい。
――トン、トン、トン、トン。
ハッと我に返った。
階段を上ってくる足音だ。
俺はあわてて引き出しを押し戻し、クローゼットを閉じて四脚テーブルの前に座り込んだ。
手に持っていた夜椰のパンツは、咄嗟《とっさ》にズボンの右ポケットに突っ込んでしまった。
「お待たせ~♪ タマゴサンド持ってきたよ♪」
夜椰の明るい声を聞いた瞬間、罪悪感が押し寄せてきた。
なにやっているんだ俺は。このまま夜椰のパンツを盗んで持って帰るつもりか?
早く返すんだ。今なら必死に謝れば夜椰も許してくれるかもしれない。だから――
「っ!」
俺はテーブルの上に置かれた皿を見て目を見張った。
「え? なに? どしたのかずっち?」
夜椰とタマゴサンドの間を行ったり来たりしてしまう目。
皿の上にはタマゴサンドが四つ。
ロールパンを真ん中から切り開いて、タマゴスプレッドを挟んだものだった。
俺が昨日、無意識に思い浮かべていたタマゴサンド。
しかもタマゴだけじゃない。生ハムやレタスも一緒に挟んであり、お洒落にもパセリチップを散らしている。
「いつもサンドイッチ作る時さ、食パンばっか使ってたから。たまにはロールパンでお洒落にしてもいいかなって思って」
まるで驚く俺の心を読んだかのような言葉だった。
ドクン、と胸が大きく跳ねた。
どうして俺が思っていること、望んでいることをここまで拾ってくれるんだ?
やめてくれよ。
そんなことされたら俺、ますますお前のことを――
「とにかくまずは食べよ♪ ちょうどお腹空いてたし♪」
あたり前のように夜椰は俺の隣に腰を下ろす。しかも右側。ポケットに夜椰のパンツが入っている側に。
ヤバい状況のはずなのに。
俺のチ×コがズボンの中でどんどん硬さを増していく。頭が、理性が、チ×コに支配されていく。
パンツはまた今度来た時に返せばいいか。
一番奥に隠してたものなんだ。なくなってもしばらくは夜椰も気づかないはず。
そんな都合の良いことを考えて、俺は夜椰のパンツをポケットのさらに奥へと押し込んだ。
別視点 夜椰
夜の八時をまわる前に勉強会は終わった。
ママが仕事から帰ってきたタイミングだったから、たぶん一翔が気を遣ってくれたんだと思う。家族の食事の時間だから、と。
見送りで玄関の外までついてこようとするアタシを、一翔は「ここでいい」と玄関で靴を履きながら笑った。
出ていく一翔の右ポケットを目で追ってしまう。よく見なければわからないけれど、そこはぽっこりと膨らんでいた。
一翔を見送って、急いで自分の部屋に戻る。
途中、リビングを横切った時に「夕ご飯は?」とママに聞かれたけど、お風呂のあとって言っておいた。
どうしても先に確認したいことがあるから、階段を上ってそのまま自分の部屋へ。
ドアを開いた瞬間、ふんわりと感じる甘い匂い。
アタシが使っている香水と似ている匂いのアロマ剤。一翔にあーちゃんのことを思い出してほしくなかったから、アタシは自分がまとう匂いにめちゃくちゃ気を遣っていた。
アタシはそのままベッドそばのコンセントの前までやってきた。コンセント穴にさしっぱなしにしている黒い変換プラグ。
それはアタシが仕掛けていた隠しカメラだ。
元々はあーちゃんの部屋を盗撮する用として、試しに買ってみたもの。
あーちゃんが部屋でオナニーしたり、みっちーを連れ込んでセックスしているところを隠し撮りしたり、一翔のオナニーのネタを撮るためにネットで買ったものだった。
それを引き抜き、USBコードでスマホに繋いで録画映像をチェックする。
そこにはアタシのクローゼットを漁る一翔がはっきりと映っていた。
「……一翔っ」
それまでのアタシなら「ムラムラしてるならアタシを使えばいいのに」なんて不満げに言っていたと思う。
でも最近の一翔にはちょっと違和感があった。
アタシはクローゼットの前まで移動して、取っ手に指をかけた。
木製の戸が軋《きし》む。
その場でしゃがみ込んで、下着類を入れている衣装ケースを開ける。そしてひとつずつチェックしていって――
「なんで……?」
パンツが一枚、なくなってる。
いや、そんなことはわかってた。だって隠し撮りしてた映像にばっちり映っていたんだから。
問題はそこじゃない。
どのパンツを一翔が持っていったのか、だ。
「アタシのパンツ……っ」
一翔が持っていったのは、アタシがあーちゃんになりきるために買った、清楚さと可愛さをあわせもったガーリーなパンツじゃない。
正真正銘アタシ――月宮《つきみや》夜椰のパンツだ。
「しかも一番見られたくないやつ持ってかれてるっ」
パンツの内側の黄ばみがヤバくて、それを見られるのが恥ずかしくて奥にしまってたやつ。
いや、パンツの内側まで見せる相手なんて一翔くらいしかいないんだけど!
でも昔から、いつ一翔に押し倒されてもいいようにってガチで考えてたから、汚れた下着で初エッチしたくないなって思いがあってずっと前から奥にしまってて……。
「~~~~~~~~っ! なに考えてんのアタシ!?」
今はそんなこと思い出さなくていいから!
ああ、どうしよう。顔がめっちゃ熱い。心臓が破裂しそう。息が詰まる。
「なんでアタシのパンツ、選んだの?」
問いかけても答えは返ってこない。
一翔はアタシを見ている。
あーちゃんになりきってるアタシじゃなくて、ありのままのアタシを見てくれている。
最近、一翔の視線を感じると思ってた。
アタシが立ち上がったり座ったりする時にチラチラ見てくるし。
おっぱいもめっちゃ見てくるし。
ためしに前のめりになって谷間を見せつけるようにしたら、鼻の下を伸ばして見てきたし。
一翔がアタシを見る目、それが最近めちゃくちゃイヤらしい。
「どうして、今になってアタシを……?」
もう二度と、アタシを見てくれることなんてないんだと思ってた。
あーちゃんとひとつ屋根の下に暮らすようになってから、アタシじゃあーちゃんに勝てないってはっきりわかって、そういう望みを一切捨てて、一翔のモノになることだけをずっと考えてきた。
一翔がアタシのことを見てくれている。
それはすごく嬉しいことのはずなのに。
「ああもうっ! なんなんだよマジで!」
強い言葉を吐き散らしながら、心の奥がキュンとしてる。
忘れていた感覚。
一翔のことを好きだという女の子としての気持ち。
体が熱くなって、全身の毛穴がバァ~ッて開いて、それでも足りなくて頭からも湯気が出てしまいそう。
アタシ、いま乙女だ。乙女になってる。
好きな人と目が合って、見つめられて。
嬉しい気持ち以前に、なんでアタシなんかをそんなに見てくるのって、死ぬほど恥ずかしく思っちゃってる。
この感覚、思い出したくなかった。
思い出させてほしくなかった。
だって思い出してしまったら、今まで通りに冷静でいられなくなるから。
一翔のそばにいるだけで女の子として意識しちゃうから。
ああ、ヤダ。マジどうしよう?
「アタシもう一翔の顔、めっちゃハズくて見れないんだけどっ♡」