淫獄道場 美人空手家の陥穽

著者: 御堂乱

本販売日:2023/09/22

電子版配信日:2023/10/06

本定価:1,012円(税込)

電子版定価:1,100円(税込)

ISBN:978-4-8296-4686-1

「意気がったところで女はしょせん女なのさ」
バック姦で抜き差しされながら平手打ちされる尻丘。
全日本三連覇、美貌の空手クイーン・早坂久美子。
ライバル道場の陰湿ないやがらせに怒りを滾らせるが、
果たし合いの結果は、みじめな敗北と強制交尾!
神聖な道場で口を、膣を、アナルを奪われる悪夢。

目次

第一話 淫獄道場 美人空手家の陥穽


第二話 奴隷襲名 女侠客が堕ちた肉罠

本編の一部を立読み


1
「次っ、正拳中段突き、百本。始めっ!」
 久美子の凜とした指示が飛ぶと、もうすでに荒い息に肩を上下させている男女合わせて五十人ほどの白い空手着姿の生徒らは、
「押忍っ!」
 拳を固めた両手を腰に当て、気合の声を発した。
「いちっ! にいっ! さんっ!──」
 彼ら彼女らの間をゆっくりと歩きながら発する久美子の声に合わせ、生徒らは左右交互に拳を前に突き出す。
「じゅういちっ! じゅうにっ! じゅうさんっ!──」
 この時間の指導は初級者の部。三段の段位を持ち、かつて全日本大会女子の部で三連覇を成し遂げた早坂久美子にとっては、ダイエット目的で通っている若い女性や、いかにも運動不足といった感じでお腹の出たサラリーマン男性らを指導するのは、正直、彼女の力量とキャリアに相応しいものとは言えなかった。
 それでも気を抜くことはしない。華々しかった現役生活を終え、企業に勤めつつ区のカルチャーセンターでの指導を受け持ったりしながら貯蓄をし、三十四歳になった今年、ようやくこの郊外に念願の空手道場「誠心館」を開くことができたのだ。彼女の夢は、道場を大きくし、オリンピックに出るような空手家(とくに女性の空手家)を育成すること。そのためには経済基盤も大切であり、武道のエキスパートとは程遠い生徒をも受け入れざるを得ない。そして受け入れた以上は責任を持って指導していかなくてはならなかった。
 さいわい、新道場の滑り出しは順調だ。
 その要因の一つは(彼女自身はあまりそのことを意識していないが)、久美子の魅力にあると言わざるを得なかった。現役選手時代、武道女子には珍しい美貌と鍛え抜かれてスラリと美しいプロポーションの持ち主である彼女の、凜として鋭い気合のみなぎる演武に、まず女性たちが魅了された。トレードマークであるポニーテールが似合う清楚な美貌をマスコミがもてはやすようになると、やがて男性ファンも増えてきた。時が経ち、さすがにその頃の「早坂久美子ブーム」は過ぎ去ったが、結婚もせぬまま三十代半ばを迎えた彼女には、以前には無かった大人の女の色香も加わり、実のところ男性の生徒には、そちらが目当てで通っている者も少なくはないようである。
 それだけなら特に問題はないのだが……。
「きゅうじゅうきゅう! ひゃーく! そこまで。深呼吸!」
 正拳突き百本を終え、大きく肩で息をする生徒たちの間を歩きつつ、久美子の目は「その男」の目とかち合った。
 身長百九十センチ、体重は百キロ超え。男性生徒の中でも一番体格のいいその男の名は豪田竜二。つい先月まで、隣町にある大きな空手道場「金竜館」の道場生だった男だ。
 久美子が誠心館を開いた時、金竜館からはいろいろと嫌がらせをされた。夜間に道場の窓ガラスを割られたり、建物の外壁にペンキで卑猥な言葉を落書きされたりした。
 相手方からすると、現役を退いてからも人気のある、美しい女性空手家が、そう遠くない場所に新道場を開いたのだから心穏やかではない。しかも最初のひと月の間に十数人の生徒が辞め、誠心館に入門したのだから、道場主である金丸権蔵は久美子を商売敵として憎むようになった。
 その後も金竜館からは月に数人ずつのペースで生徒が誠心館に移ってきていたが、豪田竜二はそんな中の一人だった。ただ彼が移ってきた目的は、他の者たちと違っているようだ。
 嫌でも久美子がそう感じずにいられなかったのは、豪田が稽古に不熱心なこともあるが、何よりもその目つきのせいだった。彼の目は常に久美子の道着姿から離れなかった。稽古中も不敵な面構えでじっと彼女を見据え、稽古以外の時にも、久美子がふと誰かの視線を感じて振り向くと、そこには薄ら笑いを浮かべた豪田のふてぶてしい顔があった。
 態度や雰囲気から見て、豪田が金竜館側から送り込まれてきた「スパイ」もしくは「刺客」のようなものであるのは、ほぼ間違いないことに思われた。だが今のところ何か問題行動を起こしているわけではないので、理由なく辞めさせるわけにもいかない。こんなことで悩まされることになろうとは、武道一筋で世間知らずなところのある久美子は夢にも思わなかった。
 だがその日、ついに豪田が行動に出た。
 突きや蹴りの稽古をひと通り終え、久美子は簡単な護身術──特に女性向けの──を教授していた。
「こんなふうに後ろからしがみついてこられたとします」
 そう語る久美子の腰には、若い二十代の男性生徒が後ろから遠慮がちに腕をまわし、中途半端なへっぴり腰でしがみついている。久美子に指名されてシミュレーションプレイのアシスタントを務めているこのイケメンのサラリーマンを、(役得だ)と、他の男性生徒らが羨ましそうに眺めていた。道着の上からでもかまわない。女空手家・早坂久美子の身体に触れることができるなら、顔面に一発正拳突きを食らってもいい。そう思っている男性生徒も少なくなかった。稽古終了後の更衣室で、「今朝、俺、先生の素足で踏みつけられる夢を見たよ」と嬉しそうな顔で報告し、皆の失笑を買う変態チックな者もいるほどなのだ。
「もっと力を入れて。本気で襲うつもりでやってください」
 おっかなびっくりでしがみつくイケメンサラリーマンに、首をねじって久美子が声をかける。
「は、はい……こうですか?」
「そう、それでいいわ」
 久美子は言い、
「この場合、まずこうやって──」
 久美子は暴漢役のサラリーマンの手首をとると、
「重心を落としながら──」
 説明しつつ、難無く体を入れ替えると同時に、相手の手首を軽くひねりあげた。
「うわっち!」
 素早い足払いを食らい、驚きの声をあげたサラリーマンはまるで手品のようにドスーンと道場の床に背中を打ちつけた。
 何が起きたのか分からず目を丸くしている彼の顔面に、
「えいっ!」
 久美子の鋭い正拳突きが、ピタリと寸止めで突きつけられる。
 さすがは全日本大会三連覇の偉業達成者。見事な早業に、ワアッと拍手喝采が起こった。特に女性生徒らの反応が大きい。惜しみなく拍手を送る彼女らの讃嘆の笑顔は、自分たち非力な女性でも男をなぎ倒すことができる事実をまのあたりにした喜びだ。日頃、家庭や会社で男たちに虐げられ、嫌な思いをしているだけに、胸がスーッとする。
「ごめんね、桜井くん」
 まだ目をパチクリさせているイケメンサラリーマンに手を貸して立ち上がらせた久美子が、
「今度は、ゆっくり一つ一つの動作を確認しながらやってみます。じゃあ、桜井くん、もう一度──」
 そこまで言った時、
「ふん、茶番だな」
 と、後ろのほうから声が聞こえた。
 皆が一斉に振り向いた先に、豪田竜二の百キロを超える巨躯があった。
「そう教科書どおりにいくもんじゃないですよ。リアルなレイプってのはね、おままごと護身術ごときでどうにかなるもんじゃない」
 豪田はさも偉そうに腕組みして言った。だらしなくはだけた道着の胸元に濃い胸毛がのぞいている。体格といい、ふてぶてしい面構えといい、なるほど見るからに腕っぷしが強そうだ。
「生兵法は怪我のもと。付け焼刃の護身術とやらで下手に抵抗しようもんなら、相手の男を怒らせて大怪我をしかねないし、殺されちまうことだってある。女は人気のない場所には行かないのがなにより。もし襲われちまったら、事が終わるまでひたすら我慢、無抵抗でいるほうが賢い」
 身も蓋もない話だが、豪田の言うことにも一理あった。
 だが発言の動機は嫌がらせだし、なにより、教える側の久美子の面目を潰してしまった形だ。挑発に乗るのは大人げないが、「道場破り」に等しいことをされて黙っているわけにもいかない。久美子は人一倍プライドが高いのだ。
「あら、ずいぶん自信たっぷりに断言なさってるけど、もしかして豪田さんは、実際に女性を襲ったことがおありなのかしら?」
 皮肉まじりに返すと、五十人ほどいる生徒たちは、男も女も緊迫した面持ちで、豪田の巨躯と、それとは対照的にスラリと美しい久美子の道着姿とを交互に見つめた。
「ふん」
 豪田は鼻でせせら笑い、
「さあね、それに近いことはあったかもしれない」
 と答えたので、女性の生徒たちがどよめいた。
 冗談で言ったのかもしれないが、豪田のヤクザっぽい風貌からすると、本当らしさのほうが大きかった。
「いいわ。『おままごと』だって言うんなら、今度は豪田さんに手伝ってもらってやってみましょう。いいわよね、豪田さん?」
 少し痛い目をみせてやろうと思った。
 豪田はなるほど体格はプロレスラー並みである。がしかし、稽古の様子から見るかぎり、空手の技術は初心者の域を出ていない。「金竜館」に通っていたのも二年間ほどだというし、その間も真面目に修練してはいなかったのだろう。典型的な筋肉バカで、段位すら持っていない彼は、全日本大会三連覇達成の自分の敵ではない。久美子はそう思った。
「へえ・」
 腕組みしたまま、豪田がまた不敵に笑った。
「いいんですかァ、早坂先生? みんなの前で恥をかきますよ」
 この不遜な言葉に、久美子はカチンときた。
 それでも平静を装い、
「そう思うんだったら、やってごらんなさい。さあ──」
 先ほどと同じことをしてみせようと、豪田に背中を見せた。この図体だけデカい勘違い男に、思い知らせてやらなくてはなるまい。
「違うんだよ、先生」
 豪田が首を横に振った。
「そもそもそこからして教科書的だって言うんだ。後ろから腰にしがみつく間抜けな痴漢なんていやしねえ。もしも俺が先生をレイプしようとするんなら、正面から行って、まずこうオッパイを鷲づかみにするね」
 そう言ってニンマリ笑い、両手で乳房を揉むジェスチャーをしてみせた。
 また生徒たちがどよめいた。「先生をレイプ」という言葉がどぎつすぎた。目の前にいる久美子が美人であり、豪田が巨漢であることから、その言葉にも卑猥なジェスチャーにも、妙にリアリティーがあって生々しかった。皆、ドキドキハラハラしながら、固唾を呑んで成り行きを見守っている。
「そう。いいわ。なら、あなたの好きな形でやってごらんなさい。どういうシチュエーションがいいの?」
「正々堂々、向き合ってフルコンタクトでやってみようじゃないですか。顔面への攻撃は無し。ただし寝技はあり。女を犯す時は押し倒しますからね」
「…………」
「どちらかが意識を失うか、負けを認めてギブアップするまでやるんです。あれ、どうしました先生? 顔色が良くありませんよ」
「そう見える?」
 久美子は微笑みを絶やさなかったが、内心煮えくりかえっていた。
「だとしたら、あなたが大怪我をしやしないか、それが心配なのよ。もちろん手加減はしますけど、技の加減は難しいですからね」
 負けじと言い返すと、
「それがリアルじゃないってんだよ。言ったろう。手加減無し。本気でやるんだ。俺は先生をレイプする気でやるぜ。先生もその気でいてもらわないと」
「そう──だったら、運悪く怪我をしても、後で『訴える』なんて言わないでね。ここにいる全員が証人ですよ」
「そうこなくっちゃね」
 豪田が肩や首を回しはじめた。よほど自信があるらしく、薄笑いを浮かべたまま、指の関節を一本ずつポキポキと鳴らす。
 久美子も脚の屈伸運動を始めた。男性との自由組手は何度も経験がある。有段者が相手でも決してひけはとらなかった。豪田ほどの巨漢を相手にしたことはさすがにないが、空手の技量に関しては素人と言ってもいい筋肉バカ、何ほどのことがあろうか。生徒らが見守る中、得意の回し蹴り一閃で道場の板床に膝をつかせてみせる。そう信じて疑わなかった。
「じゃあ始めましょうか。皆さん、危ないのでスペースをあけてください」
 久美子の言葉で、生徒らが壁際に移動した。
 彼らに囲まれた形で、美女と野獣──白い道着姿も凜々しいポニーテールの美人空手家と、見るからにワルといった感じのスキンヘッド巨漢男は対峙した。
「さあ、いつでもかかってらっしゃい」
「ヘヘヘ、いくぜェ先生」
 言うなり、豪田は両手をあげて猛然と襲いかかってきた。
 無防備すぎるその突進に、
(もらったっ!)
 右に体をかわした久美子の左の足裏が、バネのように強く床を蹴った。
 予想以上のド素人。ガラ空きの胴部は、まるでどこでも蹴ってくれと言わんばかり。この一撃で終わりだと信じて、久美子はバランスを崩した豪田のみぞおちめがけて必殺の蹴りを放った。
 ゴツッという鈍い音。確かな手応えがあり、豪田はそのまま前へと崩れ落ちる──はずだった。
 だが違った。
(えっ?)
 顔をゆがめはしたものの、踏みとどまった豪田に、久美子はうろたえた。予想以上の頑丈さ。あの蹴りをモロに食らって倒れないのは信じられない。
 さらに久美子を狼狽させたのは、踏みとどまった豪田が憤怒の表情を浮かべて左手で彼女の道着の袖をむんずとつかんできたことだ。
(しまった!)
 いかに武術の達人とはいえ、久美子は女性。筋力でまともに男性と伍するのは難しい。まして豪田のような巨漢と取っ組み合いになっては、圧倒的にこちらの不利である。
 焦った久美子は、つかんできた相手の手を振り払おうと、
「やあっ!」
 高い気合いの声もろとも、豪田の胸に突きを入れた。
 だが一撃必殺のはずのその拳は、男の厚い胸板の筋肉に弾き返されてしまい、彼女の袖をつかんでいる巨漢の手は離れない。

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