本販売日:2025/05/23
電子版配信日:2025/06/06
本定価:957円(税込)
電子版定価:957円(税込)
ISBN:978-4-8296-4806-3
「締まりも最高だ。さすがは伝説の捜査官だな」
背後から美臀を貫かれ、怜悧な美貌を歪める由里子。
引退して家族と幸せな日々を送る元捜査官を、
夫の出張中、過去に逮捕された狂犬が逆恨みで強襲。
自宅に居合わせた元上司とその孫娘まで巻き込み、
プライドと理性を奪われる残酷な性宴が幕を開ける!
第一章 自宅急襲 淫らなお礼まいり
第二章 無様な敗北 騎乗位の元捜査官
第三章 美臀並べ 熟肉と蒼い蕾の味比べ
第四章 貫通儀式 号泣のアナル破瓜
本編の一部を立読み
第一章 自宅急襲 淫らなお礼まいり
「いや、もちろん──もちろんそれは分かっている」
若林はそう言うと、腕組みをし、大きくうなずいてみせた。
その仕草は由里子には馴染みのものだ。彼女が現役の捜査官だった頃、部下の要望を聞く時の彼がよくやる仕草だった。切れ者というよりは、部下たちの悩みや訴えにしっかりと耳を傾ける人情家。そんな彼だったからこそ、世間には秘匿された潜入捜査機関ICS(Infiltration Crime Squad)の長として、一癖も二癖もある配下の捜査官たちを今日まで大過なくとりまとめてこれたのだ。
そんな彼も還暦を過ぎ、いよいよ後進に道を譲って来年で引退するのだという。その引退間近の彼が、すでに引退している部下、竹田由里子の自宅へやって来た理由というのは──。
「家庭を大事にしたいという君の気持ちは、七年前にしっかり聞かせてもらったからね。けど──」
そう言って今度はテーブルに手をつき、椅子から尻を浮かせながら、真向かいに座る由里子のほうへ身を乗り出すようにした。これも懐かしい仕草だ。生命の危険を伴う重大任務を女性の部下に依頼する際、彼はいつもこういう体勢をとり、「よろしく頼む!」と言って、額をテーブルにこすりつけたものだった。
今日はさすがにそこまではやらなかったが、
「そこを曲げて何とか──二年でいい。いや何なら一年でも。現場に出る必要はないから、事務のほうだけ。事務処理の仕事だけ、一年間だけでも復帰してもらえないだろうか」
と、白髪頭で口髭も白くなった初老の所長が、頼み込まれる由里子の側がやるせなくなるような表情で懇願し続けるのだ。
それでも、
「所長、申し訳ないのですが──」
由里子の気持ちは変わらない。
警察庁から推薦された、まだ経験の浅い所長候補に来年から業務を任せなくてはならない若林の不安は理解できる。頼りない新所長が取り返しのつかぬミスを犯してICSの名を辱しめたりすることがないように、あの「伝説の女捜査官」竹田由里子をアドバイザー兼お目付け役として彼の傍らに置いておきたいということなのだ。
そうと分かっていても、由里子には引き受けることができない。任務のために命を粗末にできたあの当時とは違い、今の彼女には守るべきものがある。愛する夫、そして彼との愛の結晶である一人息子の大輝だ。たとえ現場に出ない事務職であるにせよ、ICSに関わることは大切な家族を危険にさらすことなのだ。
「このお話、私、お引き受けすることは──」
「できません」と続けようとした時、テーブルの上に置いていたスマートフォンから着メロが流れだした。
「あ、ちょっと、ごめんなさい」
由里子はスマホを手にして立ち上がると、若林に背を向けて部屋の隅へ行った。
そんな由里子の花柄ワンピースの尻まわりに、ついつい若林の視線は吸い寄せられてしまう。
もともと抜群にプロポーションの良かった彼女だが、人妻になり子供を持ったことで、ますますムチッと肉感味を増したナイスボディは、彼のような還暦過ぎの生真面目男性でさえムラムラさせられてしまう色っぽさなのだ。
(いかんいかん……私みたいな「男やもめ」には、目の毒だ)
五年前に愛妻を病気で亡くした元上司が胸の内でそうつぶやきながら、彼女のワンピースの臀部のふくらみに粘りついてしまった視線を懸命に引き剥がそうと悪戦苦闘していることなど知る由もなく、由里子は彼に背を向けたままスマホのディスプレーを指タップして電話に出た。
「もしもし」
と呼びかけた声に、
『私です。弥生です』
電話の向こうから聞き馴染みのある愛らしい声が返ってきた。
「あ、弥生ちゃん」
由里子が言い、スマホを耳に当てたまま若林のほうを振り返ると、若林はあわてて目を横へそらした後、気まずそうな笑みを浮かべてうなずいた。自分の孫娘の名を耳にしたことで、ズボンの中で勃起していたイチモツもさすがに萎えてしまった。
弥生は幼い頃から祖父の探偵事務所内で遊んでいたので、由里子とも顔馴染みで、今でも日曜には由里子の一人息子・大輝の遊び相手になってくれたり、水泳教室に通うのを送り迎えしてくれたりと、祖父以上に由里子の一家と親密な関係を築いている。祖父の探偵事務所が実は警察庁から委託されて囮捜査を行う秘密機関であることはもちろん知らないが、事務所内で皆に敬愛されている由里子が並みはずれた能力の持ち主であることは子供の頃から感じていて、ずっと憧れの念を抱いていた。そんな若い弥生は今、「保母」になるか「警察官」の道を歩むかで迷っているらしい。
「そう。ええ、分かったわ。四時ごろね。いつもありがとう」
これから息子の大輝を送ってこちらへ来るという弥生に、由里子は礼を述べ、
「あ、いま義一さんもいらしてるわよ。話す? じゃ、ちょっと待ってて」
と言って、スマホを若林に手渡した。
「あー、弥生か──うん、そうなんだ」
目の中に入れても痛くないほど可愛がっている孫娘と話す若林は、
「いや、とくに用事でというわけではないんだが、竹田くんといろいろ昔話がしたくなってね」
由里子の家を訪問している理由を適当にごまかした。由里子が結婚して高畑姓になった今でも、若林は彼女を旧姓で呼んでいる。なんといっても潜入女捜査官竹田由里子の名は、この業界ではレジェンドなのだ。
「そうか──いや、お前が来る頃にはおいとましようと思ってる。うん──うん──じゃあ竹田くんに代わるよ」
若林からスマホを受け取った由里子は、
「じゃあよろしくね。お菓子を用意して待ってるわ」
と弥生に告げてから電話を切り、あらためて、
「先ほどのお話ですけど──」
と切り出した。
きっぱりと断られても、若林はなかなか諦めなかった。かつての上司と部下はテーブル越しに向かい合って長く話し合った。その対話を打ち切ったのは、またもや電話の着信音だった。今度のは固定電話のほうだ。
受話器をとって、
「はい」
と応答した由里子はしばらく無言だったが、
「えっ」
と声を発し、顔をこわばらせた。
その異常な雰囲気は若林にも伝わった。
電話の向こうの相手に対し、
「一体何が望みなのっ!?」
いつもはクールな由里子の声が激しているのは、よほどのことに違いない。
また由里子が無言になり、しばらくして静かに受話器を置いた。
「どうしたんだ、竹田くん?」
こちらへ背を向けたままワナワナと肩を震わせている由里子に若林が訊くと、由里子は彼のほうを振り向き、
「大輝が……大輝と弥生ちゃんが……さらわれました」
喉を絞って言った。
「なんだって!?」
若林は思わず椅子から立ち上がった。
「さらわれたって……いったい誰に!?」
「あいつです。鮫島……鮫島竜二」
「鮫島っ!?」
若林が息を呑んだ。
「あいつ、出所してたのかっ!?」
そうだ。鮫島の刑期はたしか七年のはず。迂闊だったが、出所していてもおかしくない時期だ。その鮫島が、自分の罪を暴きたてた潜入捜査官・竹田由里子の一人息子とICS所長の孫娘をさらったのだから、これは「報復」であるに違いない。だがなぜ──なぜこちらの身元が割れたのか?
潜入捜査官らの身の安全のため、彼女たちのプライバシーは秘匿されている。それにICSという組織の存在自体が公表されてはいない。だが裏社会の情報を集めて精査すれば、決して「百パーセント知り得ない」ものではなかった。そしてあの男──鮫島竜二には、本気になれば必要な情報を集めるだけの「力」がたしかにあった。
「すぐに手を回そう。そうだ、以前に奴が世話になっていた『黒壮会』の会長に──」
あわててポケットからスマホを取り出そうとする若林の手を由里子が制した。
「いけません、所長!」
「どうして!?」
「『他所に連絡したら二人を殺す』と言ってます」
「うっ……だ、だからって、手をこまねいているわけには──」
「相手は鮫島ですよっ」
「…………」
由里子の言葉に、若林の顔が苦しげにゆがんだ。
そうだ、彼女の言うとおりだ。
身代金目当ての誘拐なら交渉や駆け引きの余地はある。裏社会のコネを使って事態を収拾させる手立てもある。だが鮫島の目的は「報復」だ。ICSの捜査で潜入捜査官の竹田由里子にまんまと証拠をつかまれ、自らは塀の中に閉じ込められて組織を弱体化させられた。その恨みを晴らすための今回の犯行なのだ。鮫島からすれば、由里子の息子と若林の孫娘を即座に殺すことによってもその目的は達せられる。ためらう理由がない。それに鮫島は人の命を奪うことなどなんとも思わない男だった。
何もできないのは歯がゆいが、今は奴の言いなりになるしかない。
「で、あいつは何と?」
「これからここに来るそうです。待っていろと」
「ここに来るだって!?」
なんという大胆不敵な奴なのだ、と若林は驚いた。
「一人でか? 手下を連れてくるのか?」
「分かりません。所長がここに来ておられることも知っていました」
「ううむ……くそおっ」
そんなことまで掴まれていたのなら、入念に練られた誘拐計画だ。
「とにかく待ちましょう」
由里子が言い、椅子に腰かけた。
仕方なく若林も座った。
テーブルを挟んで向かい合う二人は無言だ。無言だが心の中はパニックである。かつての上司と部下。二人の額に冷たい汗がにじんでいる。
二十分ほどして玄関の呼び鈴が鳴った。