奴隷生誕 藤原家の異常な寝室

著者: 甲斐冬馬

本販売日:2023/10/10

電子版配信日:2023/10/20

本定価:979円(税込)

電子版定価:979円(税込)

ISBN:978-4-8296-7928-9

優等生の仮面を被った義弟の恐るべき計画。
夜ごと調教される小百合、茉莉、杏里。
三人の姉に続く青狼の標的は美母・奈都子へ!
ドアも窓も閉ざされた肉牢、悪夢の28日間。

目次

第一章 暴発

第二章 種付

第三章 姉妹

第四章 抵抗

第五章 肛辱

第六章 義母

第七章 崩壊

本編の一部を立読み

1
「わあ、美味しそうだな」
 対面式のキッチンカウンターに並んでいる四枚の皿を見て、藤原和真は多少誇張しつつも素直に感想を述べた。
 シンプルな白い皿には、スクランブルエッグにベーコン、キャベツの千切りとカットしたトマトが添えられている。ごく普通の朝食が華やかに見えるのは、和真の心境のせいだろうか。
「小百合義姉さん。これ、持っていっていいの?」
 カウンター越しに声をかけると、マグカップにコーヒーを注いでいた小百合がにっこりと微笑んだ。
「カズくん、ありがとう。お願いできるかしら」
 ふんわりと肩にかかる髪が、キッチンの小窓から差しこむ日の光に照らされて栗色に輝いている。エプロン姿も板について、すっかり人妻らしくなっていた。
「こうしてると、なんだか昔に戻ったみたいだわ」
 小百合は過ぎ去った日々を懐かしみ、実家での生活を楽しんでいるようだ。
 おっとりした雰囲気は昔から変わっていない。この調子でよく高校の教師が務まっていたと不思議に思う。
 二十九歳の小百合は一年前に結婚退職して、すでに実家を離れている。今は出産のために戻っており、一ヵ月前に無事元気な女児が誕生していた。元来のやさしさに母性が加わったことで、熟した色気が滲んでいるようだった。
(綺麗になったね。小百合義姉さん)
 和真は眩しいものでも見るように、思わず目を細めていた。
 十八歳の和真とはひとまわり近く離れているが、そんなことはまったく気にならない。血が繋がっていなくても、小百合は本当の姉弟のように接してくれる心根のやさしい女性だった。
 リビングに置いてあるベビーベッドでは、小百合の一人娘──姪の愛梨が眠っている。この幼い命の存在が、夏休みをより楽しく彩ってくれるだろう。
 今年の夏は異常気象としか思えない暑さだ。
 和真は毎日Tシャツに短パンで過ごしていた。よほどの用事がなければ出かける気にならず、受験生なのをいいことに一日中家に籠もっている。エアコンが効いている室内は快適だが、一歩外へ出ればまるで蒸し風呂だった。
「はい、茉莉義姉さん。できたよ」
 和真は両手に皿を持ち、テーブルへと運んだ。声をかけてみるが、聞こえていないかのように義姉は反応しなかった。
 次女の茉莉は椅子に腰かけて脚を組み、いつものように朝刊をひろげていた。
 メタルフレームの眼鏡越しに、切れ長の瞳で経済面の文字を追っている。大手IT企業、日本サイバー社の法務課に勤務する茉莉にとって、朝のひとときでさえ情報収集の貴重な時間らしい。
 二十六歳にしては落ち着き払っているが、ときおり黒髪のショートカットを掻きあげる仕草にはっとさせられる。〝クールビューティー〟という言葉が、これほど似合う女性はそうそういないだろう。
 糊のきいた白いシャツに紺色のタイトスカートは、いかにもキャリアウーマンといった雰囲気を漂わせている。ベージュのストッキングに包まれた脚を組み替えると、むっちりした太腿がなかほどまで露出した。
(インテリだけど、色っぽいところがたまらないよな……)
 皿をテーブルに置きながら、ちらりと横目で義姉の脚を見やる。と、その瞬間、茉莉は新聞を見つめたまま、抑揚のない声でつぶやいた。
「なに見てるのよ」
「えっ……」
 和真が動揺した振りをすると、追い打ちをかけるように冷たい瞳で見つめてくる。
「色づいてる場合じゃないでしょ。夏休みで勝負が決まるのよ」
 受験勉強の話題でプレッシャーをかけたつもりらしい。しかし、成績は中学校に入学してから高校三年の現在に至るまで、常に学年トップをキープしている。夏休みだからといって、慌てて夏期講習を受ける必要はなかった。
「夏休みの計画はできてるよ。いろいろやることがあるんだ。いろいろとね」
 和真がつぶやくと、タイミングよく三女の杏里がリビングに入ってきた。
 白いノースリーブのワンピースと、黒髪のセミロングが美しいコントラストを描いている。どこか儚げな雰囲気と黒目がちの大きな瞳が印象的だ。
「杏里、今起きたの? 夜更かしは美容の敵よ」
 茉莉が言い聞かせるように声をかけると、杏里は微かに頷いた。
「はい。茉莉姉さん」
 二十歳の女子大生だが、その横顔は少女のように幼く見える。目立つことが苦手な大人しい性格で、基本的に口数は少ない方だった。
「ひとりで夜中まで、なにをしてるのよ」
「え……それは……」
 杏里は口籠もると、助けを求めるような視線を和真に向ける。しかし、和真が涼しい顔で視線をそらしたため、慌てて取り繕うように言葉を紡いだ。
「映画を……DVDを観てました」
「ああ、また恋愛映画ね。ドラマや映画もいいけど、本物の恋愛をしなさいよ」
 茉莉はなかば呆れた様子で、奥手な杏里を煽りたてる。
 浮いた話がひとつもない妹のことを、それなりに心配しているらしい。杏里は曖昧な笑みを浮かべると、所在なげにうつむいた。
「杏里義姉さん、おはよう」
 和真は挨拶しながら、さりげなく杏里の瞳を覗きこむ。すると、見開かれた瞳が見るみる潤んでいくのがわかった。
「カ、カズちゃん……おはよう」
 杏里は視線を泳がせると、緊張したように掠れた声で囁いた。
(本当に童顔だよな。もっと自信を持てばいいのに……でも、もう関係ないか)
 胸底でつぶやき、思わず苦笑を漏らす。
 三人の義姉たちがなにを考えているのか、そんなことにはまったく興味がない。すでに賽は投げられている。もう後戻りはできないのだ。計画どおり、やるべきことを遂行するだけだった。
 三姉妹とは血が繋がっていない。和真は父親の子で、三姉妹は義母の連れ子だ。
 父親はセレブ相手の輸入洋服店〝モードフジワラ〟のオーナーをしている。和真が十歳のとき、闘病生活を送っていた実母が亡くなり、父親は当時パートで働いていた義母──奈都子とすぐに再婚した。
 以来、父親は和真に冷たく接するようになった。
 三姉妹を実の子のように可愛がり、前妻の子である和真のことは、血が繋がっているにもかかわらず邪魔者扱いした。和真は少しでも好かれようと勉学に勤しんだ。成績は見るみる伸びたが、しかし父親の態度は変わらなかった。
 あの頃はいつも泣いて過ごしていたような気がする。
 だが、淋しい思いをしている和真を、三人の義姉たちが気遣ってくれた。幼い和真が、彼女たちに好意を抱くのはごく自然なことだった。
「小百合姉さん、おはようございます」
 杏里が和真の視線を振り払い、キッチンカウンターに歩み寄っていく。
「あら、杏里ちゃん、おはよう。これ運んでもらえるかしら」
 小百合がコーヒーの入ったマグカップを杏里に渡した。和真はカウンターに置いてある残りの皿をテーブルに運んだ。
 茉莉は手伝おうともせず、再び朝刊に視線を落としている。仕事はできるらしいが、家事をしているところは見たことがなかった。
「さあ、茉莉ちゃん。新聞は朝食が済んでからにしてね」
 小百合が娘をたしなめるように声をかける。結婚して出産まで経験した長女にとっては、茉莉でさえ幼い子供と同じなのかもしれない。
「食事のときくらい、お仕事のことは忘れて、ゆっくりしたらいいじゃない」
「はいはい。姉さんには敵わないな」
 茉莉は渋々といった感じで新聞を畳み、おおげさに肩を竦めてみせる。クールな次女がこんな態度をとるのは珍しいことだった。
「しばらく居座るからよろしくね。茉莉ちゃんたちといっしょだと心強いわ」
 小百合はおどけているが、その横顔には一抹の淋しさが滲んでいる。それを感じているからこそ、茉莉はいつになく明るく振る舞っているのだろう。
 小百合の夫である修三は、社長の父親とともに海外出張中だ。出産予定日がわかっていたのに娘の夫を同行させるとは、いかにもワンマンなあの男らしい。
 ──日本に帰れば会えるから構わんだろう。
 そう言い放ったのを和真も聞いている。夫婦仲に亀裂が入ってもおかしくない言葉だが、婿養子に入った修三が意見することなどできるはずがない。
 義母は長女の出産を見届けると、父親の世話をするため出張先へ向かった。つまり現在の藤原家は、和真と三姉妹、それに生後一ヵ月の愛梨だけなのだ。
 長女が家事全般をこなし、姉弟が協力して愛梨の面倒を見ている。小百合にしても、夫のいないマンションで生まれたばかりの娘と付きっきりで過ごすより、姉弟たちといっしょのほうが気晴らしになるのだろう。
「茉莉ちゃん、今日も遅くなるの? 昨日も夜中に帰ってきたんでしょう」
「まあね。仕事だから」
「終電があるうちに帰れないの?」
 そんな小百合と茉莉のやりとりを見ていた和真は、トーストにバターを塗りながら、わざとからかうように口を挟んだ。
「そういえば、茉莉義姉さん。毎晩、送ってもらう車が違うよね。いったい誰が本命なの?」
 妙な空気が食卓に流れる。
 小百合は和真と茉莉の顔を交互に見やり、杏里は頬をひきつらせたままマグカップを見つめていた。話を振られた茉莉はチラリと鋭い視線を送ってきたが、声を荒らげる様子もなく受け流しにかかる。
「本命なら別にいるわ。あの男たちは、送りたいって言うから送らせてるだけ」
「前に強引にキスしようとした男の人を、思いっきりひっぱたいてたでしょ。すごい音がしたから窓から見ちゃったよ。あの人、可哀相に……」
「野良犬が噛みつこうとしたから水をかけてやっただけよ」
 茉莉は事もなげに言い放つ。
 どうやら、そのクールな美貌を武器に大勢の男たちを泣かせてきたらしい。自分に自信があるだけに、男を見る目も厳しいのだろう。
「もう、ちゃんと付き合いなさいよ。いつまでも遊んでないで」
 小百合が呆れたように苦笑を漏らす。
 長女の目から見ると、茉莉のやっていることは危なっかしく映るに違いない。結局のところ、早く身を固めてほしいと思っているようだ。
「わたしは仕事が好きなの。結婚しても仕事はつづけるつもり」
 茉莉は顎をツンとあげると、和真をにらみつけてきた。
 あんたが余計なことを言うから──。
 レンズの奥で光る切れ長の瞳がそう語っている。和真は知らぬ顔を決めこみ、視線に気づかない振りをしてトーストを囓った。
「姉さんみたいに家庭に入るなんて考えられないわ。せっかく教師の仕事があったのに、あっさり辞めちゃうなんてもったいない」
「わたしは今が幸せよ。フフッ」
 小百合はなにを言われても微笑を湛えたままだ。愛梨も無事生まれて、女の幸せを実感しているときだった。
「ふうん……。ところで、杏里、あなたはどうなの? 保母さんの資格、大学卒業したら取れるんでしょ?」
 なにを言っても無駄だと思ったのか、茉莉は矛先を自分から逸らそうと、いきなり杏里に話を振った。
「え? わたしは……今はまだわからない……かな……。でも、素敵な人がいたら、すぐに家に入るかも……」
 あやふやな口調だが、意外なことにしっかりと自己主張もこめられていた。保育士の資格を取得して、保育園で働くことが彼女の昔からの夢だった。
「そうね。杏里ちゃん、早くいい人が見つかるといいわね」
 小百合がおっとりした調子で杏里を応援する。ときおりリビングの一角に置かれたベビーベッドを見やる瞳には、やさしい母性が満ち溢れていた。
「わたしにはわからないな……」
 茉莉は納得できないといった様子でしきりに首を捻る。キャリアウーマンとしてバリバリ働いている茉莉には、理解できないことなのかもしれない。
「あっ……」
 そのとき、杏里がいきなり大きな声をあげた。
 何事かと全員の視線が集中する。杏里はなにやら背筋を伸ばし、半開きになった唇を小刻みに震わせていた。
「義姉さん、どうかしたの?」
 和真はフォークでスクランブルエッグを口に運びながら、左隣に座っている杏里を見やった。
「杏里ちゃん?」
「大丈夫? 寝不足なんじゃないの」
 小百合と茉莉も心配そうな視線を注いでいる。末っ子の杏里は、昔から姉たちに可愛がられ、大事に守られて育ってきた。そんなことだから、引っこみ思案の甘えん坊になってしまったに違いない。
(自分の身は自分で守らないとね……杏里義姉さん)
 和真は心配顔を装いつつ、心のなかでつぶやいた。
 恵まれた環境のなかでひ弱に育った杏里を見ていると、父親の冷たい仕打ちがよみがえってくる。
「杏里義姉さん? しっかりしてよ」
 和真は気遣う振りをして声をかけながら、テーブルの下で杏里のスカートをそっとたくしあげていた。
 張りのある若々しい太腿が、すでに付け根近くまで露出している。眉ひとつ動かさず、手のひらで大胆に撫でまわす。右手ではフォークを握ったまま、正面に座っている小百合と茉莉の目を盗んで悪戯をしていた。
(ほら、助けを求めなよ。それとも、もっと触ってほしいの?)
 杏里は身を硬くするだけで、まったく抵抗しない。その横顔はひきつり、瞳が怯えたように潤んでいる。そんな態度に苛立ちを覚えながら、柔肌をねちねちと触りまくり、跳ね返るような柔肉を握り締めた。
「ンっ……な、なんでも……ない……」
 杏里が掠れた声でつぶやき、誤魔化そうとしている。
「どこか具合でも悪いの?」
「黙ってたらわからないじゃない」
 小百合と茉莉が言葉をかけるが、まさか和真が悪戯しているとは疑いもしない。まったく気づかずに、的外れなことばかりを言っている。
「本当に……なんでもないから……」
 内腿を撫でられても、杏里は懸命に言葉を紡いでいた。
 悲痛な表情を見ていると溜飲がさがるが、それでも和真の心が完全に晴れることはない。怒りは鎮まるどころか、ひたすら増幅をつづけていた。
 ──どうして死んだ女が生んだガキの面倒を見なきゃならんのだ。
 それが父親の口癖だった。義母の耳に入らないように何回言われたことか。
 高校に入学する頃には、気に入られることは諦めていた。それどころか、嫌味を言われるたびに反発心を抱くようになった。その一方で義姉たちはより美しく成長し、和真の好意はいつしか歪んだ愛情へと変わっていった。
 そして一年前、長女の小百合が結婚した。
 婿養子に入った修三は、次期社長候補だという。実子である和真を差し置き、赤の他人が社長になろうとしている。しかも、和真を社員として働かせる気もないと、はっきり言われたのだ。
 どうやら、ひと欠片の財産も継がせたくないらしい。実の母親が亡くなり、とことんまで足蹴にされている。あまりにも酷い仕打ちだった。
 ──父親が溺愛する三姉妹を、性の奴隷に貶める。
 いつからそんなことを考えるようになったのかは定かでない。
 とにかく、復讐心は確実に成長をつづけて、ついに和真の妄想は実現すべき命題へと変化していた。
 三人の義姉たちを、肉体だけではなく精神まで蹂躙する。己の歪んだ欲望を満たし、奴隷のように一生仕えさせるのだ。
 半年前に壮大な計画をスタートさせた。最初のターゲットは杏里だった。
(逃げられないのはわかってるだろ? 杏里義姉さん)
 唇の端に薄い笑みを浮かべると、内腿に滑りこませていた左手を股間に向かってじりじりと移動させる。
「ン……ン……」
 杏里は血の気の引いた顔で、微かに首を振っていた。
 もう少しで指がパンティの船底に触れる。そのとき、杏里はいきなり椅子から立ちあがった。
「コ、コーヒー……淹れるね」
 唐突に告げると、逃げるようにキッチンへと向かう。それはあまりにも不自然な行動だった。
 小百合と茉莉が反応するよりも先に、和真が素早く立ちあがる。そして、不思議そうにしている義姉たちに「僕が様子を見てくる」と耳打ちした。
 いざというとき頼りになる義弟を装えたと思う。実際、小百合は小さく頷いて「お願いね」と囁いてきた。
「僕も手伝うよ、杏里義姉さん」
 和真は義姉思いのやさしい弟を演出しながら、杏里の後を追いかけた。憎い父親に復讐して、同時に己の歪んだ欲望を満たすために……。

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