本販売日:2024/08/23
電子版配信日:2024/09/06
本定価:825円(税込)
電子版定価:880円(税込)
ISBN:978-4-8296-4750-9
「硬くなってる。悠斗くん、乳首が弱いのね」
乳輪を撫でるように爪先で掻きくすぐるギャル妻。
伯母が経営する家事代行サービスで働く青年。
依頼者は家事が苦手な人妻や忙しいキャリアウーマン。
家の掃除や片付け、料理の手伝いに訪れたところ、
痴女気質な美熟女たちに淫らな奉仕も求められ……
第一章 ハウスキーパーと下着の罠
第二章 共働き夫婦の性生活事情
第三章 在宅ワーカーの熟成された情欲
第四章 ニンフォマニア(性欲過多)の邸宅
第五章 業務時間外の淫らなご奉仕
エピローグ
本編の一部を立読み
第一章 ハウスキーパーと下着の罠
「本日はありがとうございました。またのご利用、お待ちしております」
声は大きすぎず、小さすぎず、はっきりと聞き取れるように滑舌よく。
新人のころは、同伴の先輩にそう指導されたものだが、ひとりで仕事を任されるようになったいまでは、もう慣れたものだ。
挨拶をしてお辞儀をし、帽子をかぶりなおし、アパートをあとにする。
真夏はとうに過ぎ、本格的な秋が近づきつつある頃合いだが、外の陽気には、まだ暑さが感じられた。
(空調のある部屋で仕事できるのは、やっぱり楽だなぁ)
そんなことを思いながら、道具をまとめたバッグをかつぎ、車に積み込む。
中身は基本的に掃除用具で、雑巾やブラシ、手袋はもちろん、小型の掃除機が入っていることもあった。
新規の顧客でない場合は、以前の利用で知った情報に合わせ、個別に用意しておく。
車内には、同じようなバッグが並んでおり、すでに二つは使用済みだ。
(今日の指名予約分は、これで終わりだったよね)
社用スマホのアプリで確認し、終了報告を済ませる。
(あとは……次の現場が入る前に、遅くなったけど、昼休憩でも──)
そんなことを考えていた矢先、アプリを通して連絡が入った。
『ああ悠斗、お疲れさま。あなたいま、駅裏のアパートにいるわよね?』
ねぎらいもそこそこに、そう問うてきたのは、伯母であり、直属の上司でもある、このアルバイト先の社長だ。
吉浦冴子。
地元では名の知れた家事代行サービス、吉浦ハウスキープの社長である。
悠斗──山崎悠斗は、昔から家事が得意だったため、大学に入る前から、伯母には目をつけられていたらしい。
入学して早々に声をかけられ、将来の就職先が決まったような状態で、現在は学生アルバイトとして雇われていた。
得意とはいえ、仕事にするとなれば勝手が違うだろうと、悠斗自身は心配していたのだが、それは杞憂となる。
先輩をつけての研修を終えたのち、ひとりで仕事をするようになってからは、すぐに指名予約が入れられるようになった。
ただ、あくまで本分は学業であるため、予約を入れる数は絞ってある。
現在は夏休み中のため、かなりのシフトを入れているが──予約を終えても時間があれば、新規案件を回されることも多い。
伯母──社長からの連絡は、急な新規案件ということだろう。
「そう、予約の現場が終わったところ。まだ車もだしてなくて、そろそろ昼休憩に行こうかなって」
『それなら休憩のあとになるわね、ちょうどいいわ。駅の表側にあるタワーマンションから、予約が入ったのよ』
めずらしいことに、と伯母は付け加える。
そのマンションは別の会社と定期契約を結んでおり、住人はそちらに連絡をすれば、回数制限はあるが、無料で利用できるからだ。
『うまくいけば、口コミで客層が広がるかもしれないからね。うちのエースを送ることにしたわけ。それじゃ、任せたわ』
一方的に告げ、すぐさま通話は切れた。
直後、アプリから詳細が届き、悠斗はため息交じりに確認する。
予約時間は伯母の言ったとおり、休憩の終わり際くらいになるようだった。
それから一時間と少し。
駅前でもひと際目立つタワーマンションは、その呼称に恥じない高さと威圧感で、悠斗を出迎えていた。
気圧されそうになりながらも、聞いていた部屋の番号に社名を伝えると、ややあってエントランスの自動ドアが開く。
部屋はちょうど、タワーのなかばくらいの階層だろうか。
出歩かずに生活する住人が多いのか、エレベーターを降りても、誰かとすれ違うこともなく、部屋の前にたどりついた。
「お待たせいたしました、桜木さま。吉浦ハウスキープです」
「はーい。あ、いま開けんねー」
インターフォンから声をかけると、こんなマンションの住人にしてはと感じるような、どこか軽い女性の声が応える。
「ごくろうさまー。あ、入ってはいって」
開いたドアから覗いたのは、髪を明るい茶色、ともすれば金髪に見えかねない色に染めた、二十代後半くらいの女性だった。
人懐っこそうな、タレ目のやわらかな笑みをたたえているが、メイクは濃い──というより派手で、いわゆるギャルママのような印象を受ける。
申し込みのデータによれば、三十は超えているらしく、実年齢よりも、かなり若く見えるようだ。
「どしたの? 入っていいよ?」
「……あっ、はい! 失礼いたします!」
思わず反応が遅れてしまったが、悠斗は慌ててそう応え、玄関に踏み込む。
といっても、相手の若さに戸惑ったわけではない。
(な、なんて格好で……)
女性は、キャミソールというのだろうか。
非常に薄い、下着のようなワンピースをまとっただけでドアを開き、そんな半裸の状態で、悠斗を招き入れたのである。
入室し、靴を脱ぎながらチラリとうかがったかぎりでは、かろうじて下着は着用しているようだが、それらも非常に扇情的だ。
どうやら紫が好みなのか、キャミソールは薄い紫で透けており、着用しているブラとショーツも、紫を基調としている。
ショーツは隙間の多いレース仕様で、しかしながら毛の処理は丁寧にしているのか、そうした色が覗くことはない。
ブラのほうは、紫と黒を半々に使っており、下乳を黒のカップが支えながら、乳首のラインからやや上あたりを、紫のレースで飾っているようだ。
上乳は半分以上が、まろび出んばかりに覗いており、褐色に焼けた健康的な肌は、三十代とは思えない瑞々しさを感じさせる。
もはや悠斗には、二十代後半の派手な人妻が、下着姿で出迎えてくれたようにしか思えなかった。
まるで風俗か、AVかという状況に、思わず股間がいきり立ちそうになる。
「あはは、ごめんごめーん。着替え中でさー」
「はっ、い、いえっ……お気になさらず……」
こちらの劣情を見透かしたような言葉だ。
ドキリとさせられながら、なんとか自前のスリッパを取りだし、上がらせてもらう──と。
「う、わ……これは、また……」
そこでようやく、室内の惨状に気がつく。
ゴミ袋がいくつも積み重なり、それ以外のゴミもあちこちに点在し、一方で、衣服と思われる布地も転がっていた。
室内は広いはずなのだが、それを感じさせないような散乱っぷりである。
リビング、ダイニング、プライベートルームはもちろん、この調子ではバスルームや脱衣所、下手をすればトイレすら怪しい。
「そーなんだよねー、いわゆる片づけられない女、みたいな感じでー」
みたいな、ではない。そのものだ。
とはいえ、顧客に対してもちろん、そんなことは言わない。
「大丈夫ですよ。そのために、当社がまいりましたので」
「わー、頼もしーい。ありがとねー、お兄さん」
空気を撫でるようにスッと伸ばされた手が、ポンポンと肩を叩く。
シャツ越しに触れた手はやわらかく、思った以上に温かかった。
思わず赤面しながら、悠斗はもごもごと返す。
「い、いえ……これが、仕事ですから」
入学してからというもの、思えば講義とアルバイトばかりで、まるで女性と関わることのない大学生活だった。
アルバイト先のお宅にしても、どちらかといえば老夫婦のような顧客が多く、こんな若い女性を相手にしたこともない。
部屋の惨状に忘れかけていた劣情は、再びムクムクとふくらみだしており、ズボンの股間をはっきりと張りつめさせていた。
もっとも、顧客の桜木さま──桜木妙は、悠斗の興奮にも気づいていない様子で、グルリと室内を見回す。
「んでさー、悪いんだけど? あたしこれから、人と会う用事あってさー。三時間くらいで、できるだけキレイにしといてもらっていい?」
「は……えっ、ちょっと……少々、お待ちください」
思わず耳を疑うような言葉に、言葉が乱れそうになる。
「えぇっと……は、初めてのお客さまですと、こう、ほとんどの方が……当社の仕事を信頼できるかどうか、見定めようとされるのですが」
ようは、信用できるかわからない相手を残して、家を離れる人はめったにいないということだ。
また業者側からしても、なにかがなくなったなどと、あとから騒がれるような事態は避けたいため、なるべく同席してもらっている。
そんな悠斗の訴えだったが、彼女は意に介した様子もなく、ケラケラと笑って部屋の奥へ向かう。
「まー、取られて困るもんとかないしさー、大丈夫だよ? それにこんだけゴチャついてたら、最初からどこになにがあるか、わかんないっていうかー」
「……仮に、なにかがなくなっていたとしても、それは最初からなかったものとして扱う、ということでよろしいでしょうか?」
「あははっ、そうそう、そんな感じでー」
なかばヤケになって返した言葉に、顧客は軽い反応を返すばかりだ。
話はそれで終わりということか、彼女はゴミ袋を足で押しのけつつ、ソファにかかっていた服を取り、鏡の前であてがい始めている。
「で、いま着替え中なんだよねー。そっち側から始めてもらっていい? あ、掃除と洗濯と料理で、合ってるよね?」
「は、はい……そう伺っております」
本気で出かけるつもりらしく、彼女は着ていく服を決め、キャミソールを脱ぎだそうとさえしていた。
それを見た悠斗は、慌てて背を向け、入ってきた玄関側を振り返る。
(まぁ、時間もかぎられてるし……できるとこから、やっておかないと)
ゴミのスペースが多く見えるが、圧縮して種類を固めれば、もう少し小さくまとめることはできそうだ。
衣服も、洗濯してから干せば、散らばっている状態ほどに、汚くは感じなくなるだろう。
浴室乾燥を使って畳むところまでいけば、さらに整理できるかもしれない。
(なら、浴室からかな。それから洗濯して、その間に掃除とゴミ整理──)
不潔なところで料理などできないため、それは最後だ。
(調理器具はあるのかな……それも洗うところから、かなぁ……)
そんなことを考えながら、脱衣所の惨状にも、ため息をついていると──。
「うわやば、遅れそうっ……んじゃ、あとよろしくねー」
「は……あっ、い、いってらっしゃいませ!」
着替えは済んだらしく、そう言い置いた彼女──桜木妙は、本当に部屋を出ていってしまった。
彼女の振った香水の残り香が、フワリと鼻腔をくすぐり、先ほどまで感じていた劣情が、またググッと股間を持ち上げようとする。
「と、とにかくっ……仕事を、しないとっ……」
それをなんとか理性で押しとどめ、悠斗は持ってきた荷物から、清掃用の手袋を取りだすのだった。