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【完全版】大いなる肛姦 2


 雅子が連れていかれたのは、港の古びた倉庫だった。
「雅子。なかなかのもんじゃねえか。いい体しているだけあって、燃え方もすげえぜ。フフフ……俺ぐらいの年になると、女子大生はこたえられねえ……」
 坂部が満腹しきった顔つきで、うなるように言った。
 水中での激しい営みの興奮が、まださめやらぬ様子である。まだ固さを残す雅子の肉体に、何度精を吐きだしたかわからなかった。さすがの坂部も、疲労の色は隠せない。
 雅子は、毛羽立った荒縄で後ろ手に縛られ、天井から吊られている。爪先立ちに吊りあげられているために、白い裸身は痛ましげにのびきっている。真っ白い双臀が、坂部の目の前で悩ましく揺れていた。
「もう諦めるんだな。フフフ」
 雅子の可憐な乳房をギューッとしぼりあげながら坂部は笑った。坂部のてのひらが、健康的な女子大生の肌をまさぐるたびに、白い裸身がクルッとまわった。
 だが、雅子はどのようにいたぶられようとも、猿轡を噛まされているため、声をあげることができず屈辱の涙を流すばかりだった。固く閉ざした瞼から流れる涙が猿轡を濡らしている。
「これからみっちり仕込んでやるぜ。雅子はもう俺の女なんだ」
 坂部は、雅子の泣き濡れた顔を見て、犯された女子大生の風情とはこのようなものか、と悦に入っている。
 真っ黒な荒縄が、白く柔らかな美肌にくいこみ、清純な百合の花に巻きつく蛇さながらで、なんとも無残である。背中にねじあげられた両手が、しっかりと握りしめられ、犯された女の悲哀がにじみでている。
「さてと、ぼちぼち雅子の新しいボーイフレンドたちが来るころだが……その前にひと仕事といくか」
 雅子の体を充分に楽しんでしまうと、坂部はさっそく計画の進行にとりかかった。雅子の姉、江美子を毒牙にかけ、女狂いの竜也に献上する。そうすれば、心臓病でもう先の長くない黒川社長の跡を竜也がついだ時は、自分は大幹部。やがては江美子に狂った竜也から実権を奪取する。さらに、組を偽装解散に追いこんだブン屋の上里にも復讐でき、一石二鳥だ。坂部にとってはまたとないチャンスだった。
 江美子を毒牙にかける手段として誘拐した妹の雅子が、ふるいつきたくなるような上玉ときている。若い女に目のない坂部にとって、雅子はタナからボタモチである。
「フフフ、雅子。お前の義兄の上里だが、黒川海運のことをどのへんまで調べているのか、教えてくれねえか」
 坂部は雅子の双臀をネチネチ撫でまわしながら言った。
 雅子はそのいまわしい触手から逃げることができない。吊りあげられた裸身をくねらすばかりだ。雅子の白い裸身が、ピクピク痙攣し、妖しい円運動を展開する。
「知らねえとは言わせねえ。雅子はもう俺と何度もつながった女だ、隠しごとは水臭いぜ」
 犯された事実をあらためて口にされ、雅子は激しく頭を振った。
「俺がどんなふうに女を責めるか、もうわかってるだろ。言わねえのなら、もっときついのを味わうことになるだけだ」
 はちきれんばかりの健康美に輝く白い乳房が、坂部の言葉に、おびえたようにフルフルと震えた。
「そうかい、言いたくねえんだな」
 坂部の指が、なめらかな雅子の双臀をすべって、谷間にもぐりこんだ。さんざん踏みにじった雅子の花園を、指先が荒々しくえぐりこんでいく。
「うう……う……」
 すさまじい羞辱に、雅子の体が狂ったようにうねりはじめる。
(言います。言うから手をどけてッ)
 雅子は夢中で叫んだ。だが、それは猿轡で声にはならない。坂部は、そんなことは承知のうえで、若い肉のおののきを楽しんでいる。坂部は、若い肉のおののきがこのうえもなく好きな男だった。
「まだ言わねえつもりか。よし、こうしてやるぜ」
 右手を雅子の花園にこじ入れたまま、もう一方の手でグミのような乳首をグリグリと乱暴に揉みこんだ。
 熟練した坂部の指である。雅子が白い裸身を微妙にゆらゆらと動かし、反応を示すのにそう時間はかからない。強烈な屈辱に、雅子は思わず恥ずかしい呻きをもらした。
「フフフ、こんなに感じやがって。どうやらしゃべる気になったようだな」
 指先を自分の顔の前へあげて、坂部は笑った。指先はネットリと妖しく糸を引いている。
「それじゃ聞かせてもらうとするか」
 猿轡を解きながら、坂部は言った。
「い、言います。言うからもうひどいことしないで」
 やっとの思いで言う雅子の乳房が、女の喘ぎを見せている。
「早く言いな。そうすりゃ、もう乱暴なことはしねえよ」
 坂部はニヤリとした。坂部の言うことは信じられない。坂部にとって、雅子の返事などどうでもいい。ただ雅子をネチネチいたぶって楽しんでいるのだ。しかし今の雅子は、恥ずかしい責めから逃れるために、ワラをもつかむ思いである。
「どうした、もっと恥ずかしい目にあいたいのかい、雅子」
「よ、よく知らないんです。本当に知らないんです。ただ……」
 雅子は、あわてて口走った。もうこれ以上の辱しめはいやだ。耐えられない。
「ただ何だ。何も知らなきゃ、恥ずかしい目にあうんだぜ」
「義兄は、二日前からバンコクに行っているんです。黒川海運が売春と麻薬を扱ってるんじゃないかって……」
 ニヤニヤしていた坂部の顔つきが、急に厳しくなった。
「バ、バンコクだと……チクショウ、まだ嗅ぎまわってやがるのか」
 坂部は思わず声をあげた。顔つきも真剣で、ヤクザ者のすごみがにじみでている。
 新聞で反暴力団キャンペーンをやっている上里が、バンコクにまで取材に行ったとなると、もうかなりのところまで嗅ぎつけていることになる。こいつはうかうかしてはいられない。麻薬と売春の密輸が暴露されれば、坂部の計画どころか、首すらもあぶなくなる。
「それ以外に何か言ってたか」
「それだけです……」
 雅子は、自分が何かとんでもないことを言ったのではないかという恐怖に身を固くした。
「上里はいつ帰ってくるんだ」
 坂部は、あせったように身を乗りだした。上里は、最近、一流商社をめぐる汚職に取り組んでいるものと安心していただけに、坂部の驚きは大きかった。
「一カ月後に……」
「一カ月か、それまでに計画をすすめなくては……。奴の口を封じるにはこれしかない……」
 坂部は、いまいましそうに口走った。
 上里が、一カ月もバンコクにいるというのは、せめてもの救いだった。上里は、これまでも確実な証拠をつかまない限り、警察にも決して他言しない固い男である。証拠をつかんだ上里が日本へ帰ってくれば、万事休すだ。
 雅子を嬲るつもりで何気なく聞いたことが、思わぬ事態を招いた。今では、江美子を竜也に献上する計画は、上里の口を封じるためにも、組全体の危機を救うためにも必要条件となった。
 計画がうまくいけば、俺は組の救世主だ。出世街道間違いなしか。こいつは思いがけねえ大仕事になったぜ……。
 坂部は、野望がムクムクとふくれあがっていくのを感じていた。
「フフフ、これで計画の第二段階は明日決行と決まった。準備不足だが、やむを得まい」
 坂部は、はやる心を抑えて、一人呟くのだった。
「雅子、いいことを聞かせてもらったぜ。お礼に今夜はたっぷりと、腰が抜けるまで可愛がってやるぜ」
「そ、そんな、もう乱暴しないって言ったのに」
 雅子は、激しく裸身を振って叫んだ。
「乱暴はしない。可愛がってやるぜ。ヒイヒイ喜ぶまでな。へへへ」
「だ、だましたのね、ひどい……」
 いくら泣き叫んでも無駄だった。爪先立ちに吊られている身では、どこをどうされてもされるがままである。
 その時、ギイッと倉庫の重い扉が開いて、若い男が二、三人入ってきた。
「おう、来たか。待ってたぜ」
「坂部の兄貴、この女ですか。仕込むってのは……」
 一糸まとわぬ雅子に卑猥な視線をそそいでチンピラの一人が言った。顔をのぞきこみながら、
「こいつはマブい女だぜ。いい体してやがる。へへへ」
 驚いたようにニヤニヤする。
「お嬢さん、新しいボーイフレンドのお出ましだぜ。たっぷりと可愛がってもらうんだな。ちょっと手荒いが、若い女を仕込むにはこれに限るからな」
 坂部の声に、雅子の顔がみるみる蒼ざめていく。雅子は、もう生きた心地がしなかった。チンピラたちはどれも坊主頭で、見るからに猛々しい風貌である。
「いやッ、助けて! 誰か……」
 雅子の裸身が恐怖に震える。
「助けてか……こいつはいいや。へへへ、俺たちがお嬢さんの性の悩みを助けてやるさ」
「それにしてもこれだけいい女も久しぶりだ。兄貴、女がいいと仕事もやりがいがありますぜ」
 若いチンピラたちは、坂部のほうを見て笑った。
「なるべく早く客をとれるように仕込むんだ。いいな、フィルムのほうも忘れるなよ」
 チンピラたちは拐わかした女を調教し、客をとらせるように仕込むのが仕事らしい。女の裸を見ても年に似合わず、妙に落ち着きはらっている。運びこんだカメラや照明器具も、馴れた手つきでセットしている。
 仕込む……客をとらせる……フィルム……おぞましい予感に白い裸身が震える。
「何を、何をするつもりなの!?」
 声が震えている。
「さっきも言っただろ。若い者に可愛がってもらうのさ。雅子が客をとる気になるまで、レッスンするわけよ。フフフ……雅子はもう組の女になったわけよ」
 坂部は、冷ややかな口調で言った。
「そ、そんな……いや、いやよッ」
 客をとらせる、この悲惨きわまりない言葉は若い女には強烈である。
「兄貴、この女子大生、評判になりますぜ。なにせこれだけのお面だ」
 雅子の髪の毛をわしづかみにして顔を上向かせながら、坂部の弟分である徳二が言った。
「そうだろう、徳二。まだあまり男を知らないお嬢さんだ。しっかり頼むぜ。へへへ」
「まかしといてください。俺もスケコマシの徳二と言われた男ですぜ。三日もありゃ、素直に客をとるようにしてみせますよ」
「フフフ、それじゃはじめるか」
 坂部の声が、黒い倉庫の中で非情に響きわたった。


「お嬢さん、まずは記念撮影といこうぜ」
 徳二の指図でチンピラたちが、カメラや十六ミリ撮影機などを雅子の正面に配置していく。
「いや、いや、ひどいことしないで」
 すさまじい恐怖と羞恥で、雅子の白い裸身が小刻みに震え、膝がガクガクしている。これまで男にちやほやされ、辱しめられたことなど生まれてこのかた一度もない雅子だった。何不自由なくスクスク育ってきたお嬢さんなのだ。
「こういう令嬢タイプだと、仕事するほうも燃えるぜ」
 チンピラの手の中でカメラのフラッシュが光った。十六ミリ撮影機もまわりはじめた。
「やめてッ、写真はいや! いや」
「顔をカメラのほうに向けろ! 美しい顔が写らなきゃ、写真の値が半減する」
 徳二が怒鳴った。令嬢タイプの女に写真は効果的である。最初に写真を撮ってしまえば、後はスムーズにことが運ぶ。
「いや! 許して、許してッ」
「そうれ、顔を向けな」
 必死に顔をそむける雅子の髪をつかんだ徳二は、強引に正面を向かせる。
「なぜ、なぜ写真なんか……」
 次々に光るフラッシュの中で、放心したように雅子は言った。もうろうとした意識の中で、愛する恋人・純一の顔が、つづいて誰よりも可愛がってくれた姉の顔が、脳裡をよぎった。
「純一さん、助けて……」
「純一だと? へへへ、恋人の名前か。助けを求めても無駄だ。今に俺の名を口にさせてやるぜ」
「あ、あ……」
 徳二の手が、雅子の乳房をまさぐる。カメラに向けて根元からしぼるように乳房を揉みこんでいく。だが、もはやはじめのような抗いはなかった。まだ固みを帯びた形のいい乳房が、徳二の指で、無残に形を変える。
「フフフ、まだ男にあまり揉みこまれていないようだな」
「いや、かんにんして……」
 カメラの前で、白い乳房が徳二の手の中で上下左右に喘ぎつづける。
「さて、次はここだ。パックリおっぴろげろよ、お嬢さん」
 恥ずかしいところを隠そうとして、くの字に屈曲させた下肢を撫でまわす。
「いや、やめて、やめてッ」
 泣き叫んで拒もうとした雅子だったが、爪先立ちに吊られている身では、どうにもならない。
「へへへ、派手に泣きやがるぜ。これじゃ十六ミリフィルムの録音を聞く客が大喜びだ。徳二、早いとこひろげろ」
 カメラの後ろに腰かけた坂部が、監督きどりで言う。若い娘を責め、言いなりにさせるのが大好きな坂部にとって、徳二たちが雅子を仕込んでいくのを見るのは、たまらない楽しみである。
「思いっきりおっぴろげてやるぜ」
「やめて……いや、いやッ」
 ふくらはぎからキュッと締まった雅子の足首を、左右からつかむと、ジワジワと左右へ引き裂いていく。
「み、見ないでッ」
「見ないでと言われても、見なきゃ俺たちの商売にはならねえんでな、お嬢さん。おおッ、見えてきたぞ」
 さらに左右へ割り裂いていきながら、チンピラたちはニヤニヤ笑った。
 処女のおののきを思わせるようにフルフルと震える草むら。弾けた雅子の花園からのぞく夢のような彩色に、チンピラたちの熱い視線が焼きつく。
「綺麗だ」
 坂部は年がいもなく呟いた。チンピラたちも、しばし撮影を忘れてのぞきこんでいる。
「た、たまんねえ。しっとり潤おってなんとも言えねえ……」
 誰とはなしに呟く。
「見ないで、見てはいやッ」
 雅子は、頭を振りながらうわ言みたいに繰りかえす。雅子の身悶えのたびに、サーモンピンクの肉襞がヒクヒクと痙攣する。妖しい肉のゆらめきだった。
 徳二は、ゴクリと生唾を呑む。これだけの美女の花園をのぞきこんで、我慢しきれなくなるのは当然だった。
「お前ら、のぞいてばかりいねえで、早いとこ写しちまいな」
 突然、坂部が言った。
「へ、へい。すいません、兄貴」
 徳二たちは、坂部の声に我れにかえったように、あわてて立ちあがった。無残に引き裂かれた雅子の太腿の間に焦点を合わせて、フラッシュが光った。
「だめッ、写真はいや、だめよッ」
 絶望感が雅子を襲った。凌辱の事実が一枚一枚と記録されていく。雅子は、シャッターの音を、まるで手足につながれていく鎖のように聞いた。
「おい、ちょっと指でひろげてみろ。中を剥きだしにするんだ」
 徳二が、ニヤリとして言った。
 雅子の両足首を割り裂いているチンピラが左右から、雅子の花園に指を這わせた。
「いや、いや……ヒ、ヒィッ」
「フフフ、すげえな」
 徳二が、眼を細めてのぞきこむ。サーモンピンクの肉襞が露わになり、羞恥の蕾まで剥きだしになっている。
「じゅ、純一さん、う、う……」
 全身を弓のように反りかえしながら、雅子の口から悲鳴が噴きあがった。
「よし、次は尻だ。後ろを向かせて尻たぶを思いっきり割るんだ。顔はこっちを向かせろ」
 徳二が言った。
「も、もう許して……い、いや、いやッ」
「いやでも尻の穴まで撮らせてもらうぜ、お嬢さん。フフフ」
 そう言いながら、徳二は汗がにじみでるのを感じていた。こんな時でない限り、まずは縁のない美人女子大生を目の前にして、全身が熱くなるのも無理はない。
「う、う……」
 形よくくびれた腰をブルッと震わせて、雅子は喘ぐように泣いた。
 形よく締まった尻肉に男の指がくいこみ、思いきって引き裂く。人目に触れたことのないアヌスが、弾けでる。
「は、恥ずかしいッ……」
 くびれた腰から白桃のような双臀にかけて激しくくねる。
「へへへ、可愛いもんだ。オチョボ口をすぼめてやがる」
 カメラをのぞきこみながら、チンピラは言った。
「尻をもう少し、こっちへ突きだすようにしてくれ」
 絶え間なくフラッシュがたかれていく。
「よし、それじゃ、次は本番の絡みといくか。お嬢さんが男を受け入れやすいように、少しいい気持ちにしてやんな」
 徳二は、吊りあげている雅子の縄を解きながら言った。
「助けて、いや、いや……」
 雅子は、犯されると知って喘ぐように泣き叫んだ。すでに坂部に凌辱されているとはいえ、二十歳の娘にはとても耐えられるものではない。
「う、う……やめて……」
 チンピラたちは、ニヤニヤしながら雅子を横たえていく。左右から揉みこんでくる指に、乳房がゆらめく。
「へへへ、そんなにいやがっても体は正直だぜ。好きなんだな、お嬢さんは」
 すでに坂部に狂わされている肉体の反応は早かった。汚らわしい玩弄に、強烈な刺激が襲いくる。揉みこまれる乳房の頂点が、コリコリとしこったように頭をもたげた。
「こっちのほうも、大したもんだぜ」
 サーモンピンクの肉襞をまさぐっていた徳二が、可憐に顔をのぞかせている雅子の蕾をグリグリ揉みこみながら笑った。雅子の意志に反して、驚くほどの果汁が徳二の指にまとわりついた。
「ああ……いや……いや」
 いまわしい凌辱の時が来たことを知って、雅子は全身をこわばらせた。が、その声も、全身の柔肉を襲う妖しい感触に弱々しい。
「いよいよだな、お嬢さん」
 これ以上は無理というところまで開かされた太腿の間に、裸になった徳二が割って入ると、太腿を強く抱きこんでいく。
「いや、許して……」
「明け方まで、ぶっつづけでヒイヒイ喜ばせてやるぜ。お嬢さんが客をとる気になるまでな」
 これからの雅子の運命を暗示するようにフラッシュが光った。やがて、深く重く徳二が押し入ってきた。


 雅子の姉の江美子は、眠れぬ一夜をすごした。
 先日はデパート帰りの電車の中で痴漢にさんざんいたずらされ、どうにも腹立たしかったところに、妹の雅子のことである。雅子は、とうとう帰ってこなかった。はじめは帰ってこない雅子に苛々していた江美子であったが、次第に不安になってきた。雅子は、これまで無断で外泊したことは一度もない。雅子の恋人・純一と一緒かと思い、純一に連絡したが雅子はいない。
 江美子はあせった。
「何かあったのでは……」
 不吉な予感が心をよぎる。女子大に合格した雅子を手元から離したがらない両親を、自分のところに同居させる条件で説得して上京させただけに、江美子は動揺した。
 警察に捜索願いを出すかどうか迷っていた時、玄関のチャイムが鳴った。
 雅子が帰ってきたのでは……。
 江美子はあわててドアを開けた。
「しばらくでしたね、奥さん」
 立っていたのは坂部だった。ヤクザ者であることを忘れさせるような柔和な笑顔は、二年前と変わらない。この柔和な笑顔がくせものなのだ。その裏には、どんな恐ろしさといやらしさが隠されていることやら。
 江美子は、キッと坂部を睨みつけた。坂部がなんでもない用事で来るわけはない。二年前にも得意のおだやかさで夫に取材をやめるよう買収に来た男である。買収できないとわかると、ガラリと態度を変えて、今度は脅しにかかったことは、まだ記憶に新しい。
「帰ってください。主人はいません」
 江美子は、素早くドアを閉めようとした。だが、それより早く坂部の足がドアの間につっかえ棒のように押しこまれた。
「奥さん、上里君のいないのはわかってますよ。今日は、奥さんに話があってね」
「私に?……」
 思いがけない言葉に江美子は坂部の顔を見た。夫でなくて自分に……いずれにせよ、ろくな話でないことはわかっている。
 坂部は、強引にドアを押して中へ入った。
「実は私の知人に奥さんをひどく気に入っている若者がいましてね。どうしても奥さんの体に思いのたけをぶちこみたいと言ってきかないのですよ。どうです、上里君も出張中のことだし、ひとつ浮気を楽しんでくれませんかね」
 坂部は、蛇のような薄笑いを浮かべて、しゃあしゃあと言ってのけた。
「そ、そんな非常識な話は聞きたくありません」
 カッとして江美子は、坂部を睨みつける。
「それだけの体をしてるんだ。上里君一人じゃ満足できんでしょう」
「バカなこと言わないで! 帰って、帰ってください」
 江美子は、怒るとその美しさがいっそう際立った。侮辱されてノースリーブからのびた両腕が震えている。坂部は、江美子のような気の強い美女を屈服させることに快楽を覚える竜也の気持ちがわかる気がした。
「フフフ、毎晩一人で慰めるより、若い男を咥えこんだほうが……」
 坂部がそこまで言った時、
「やめて! 帰って!……帰らないと人を呼びます。早く出ていって」
 プライドを傷つけられた江美子の手が、坂部の顔に向かって飛んだ。
 だが、江美子の手は坂部の頬を打たなかった。押さえつける坂部の手のほうが速かった。江美子の手を押さえつけながら、坂部は悪びれた様子もなく、
「いいんですか? このまま私を帰しても。雅子さんがどうなっても知りませんよ」
 勝ち誇ったように言った。
 雅子という言葉に、江美子の顔色が変わった。
「坂部さん、あ、あなた……」
「奥さんが色よい返事をしないだろうと思って、昨夜から雅子さんをあずかっていますよ。フフフ」
 坂部は、ポケットに手を突っこんだ。取りだした雅子の学生証を江美子の顔の前にかかげる。
「ど、どうして雅子を……卑怯だわッ」
 江美子の声が震えている。強がってみせても、狼狽が全身をおおっていくのがわかった。
「そ、そんなことして、タダですむと思っているの」
「奥さんが、素直に私の知人に抱かれる気にならないなら、代わりに雅子さんがヒイヒイ泣くことになるが……」
 江美子の唇が痙攣している。
「結婚前の娘にはちと酷だが、仕方がないですな。フフフ……これで恋人の純一君との仲も終わりですな」
 坂部は、余裕しゃくしゃくである。完全に坂部のペースだった。
 坂部は、あらためて江美子を見た。肌にぴったりフィットしたノースリーブ、胸のふくらみ具合からして、どうやらノーブラらしい。絹のようなブルーのスカートがよく似合う。そのスカートの中に、どのような媚肉が隠されているのか、想像するだけで坂部は胸が熱くなった。全身から人妻特有の色香が、匂うように発散している。
「さあ、奥さん。素直に抱かれる気になりましたかな」
「そ、そんな……私はそんな女じゃありません」
「それじゃ雅子さんはどうなってもいいんですね」
 江美子は何も答えなかった。激しく気が動転した。見も知らぬ若者に抱かれるなんて、考えるだけでも恐ろしい。かといってこのままでは雅子の身が……。仮に、坂部の言いなりになったとしても、雅子が無事だという保証はない。
「…………」
「どうなんだよ、奥さん」
 しびれを切らしたのか、坂部がドスのきいた声を張りあげた。
「私が、私が言うことをきけば、雅子を無事にかえすという保証は?……」
「保証ね……」
 坂部はにが笑いをした。ひと筋縄ではいかないとは思っていたが、思った通りしっかりした女だ。そう簡単には罠にかかってくれそうもない。
「保証を見せてくれないなら、すぐに警察に連絡します」
 江美子としても、これ以上は引きさがれないところである。雅子が無事という保証がない限り、江美子も雅子も毒牙に……ということになりかねない。
「そう言うと思っていたよ、奥さん。保証ねえ……奥さんの子供でどうかな」
 坂部の言葉に、江美子はハッとして、部屋の中を見まわした。そういえば子供のひろ子の姿が見えない。さっき隣りの子供と一緒に社宅アパートの中庭にある砂場に行くと言って出ていったきりだ。
 江美子の顔から、みるみるうちに血の気が引いていった。
「子供に、子供に何をしたの!?」
「フフフ、奥さんがダダをこねるからだぜ。砂場を窓から見てみなよ」
 坂部が笑いながら言い終わらないうちに、江美子はあわてて窓から中庭を見おろした。砂場では、サングラスをかけた、いかにもチンピラ風の男が、ひろ子を抱きあげ、遊んでいた。江美子が、窓から自分とひろ子の姿を認めたとわかると、男は江美子のほうを見てニヤリと笑った。そのままそばにとめてあった車に乗りこみ、エンジンをかける。
「あッ、待って」
 江美子が叫ぶ間もなく、車はひろ子を乗せたままアパートの外へと走り去っていった。
「フフフ、これでわかっただろ。ダダをこねても無駄というもんだぜ」
 勝ち誇ったように坂部は言った。とっておきの切り札である。
「ひ、ひろ子まで……どこに連れていったの!? ひろ子をかえして」
 江美子は必死で叫んだ。もう先ほどまでの強気は消えうせている。
「奥さん、それじゃ行こうか。私の知人が待ちかねている」
「…………」
 江美子は、今、自分が卑劣な罠にかかったことを感じていた。たった一人の妹を誘拐され、そのうえ、子供のひろ子まで……。
 恐ろしい毒牙が江美子を待ち受けているのはわかっている。だが、辱しめられるとわかっていても、坂部の言いなりになるしかない江美子であった。
「言われた通りにすれば子供と雅子は……」
「ああ、かえしてやるとも。奥さんがいい子だったらな」
 ドスのきいた坂部の返事だった。
「わ、わかったわ」
 江美子は、必死で感情を押し殺しながら、吐くように言った。
 子供のひろ子、そして雅子のことを思うと心配で気が狂いそうだった。全身にうっすらと冷たい汗が噴きだしている。


 アパートの階段をおりて外へ出ると、黒塗りの車がとめてあった。
「さあ、奥さん。さっさと乗るんだ」
 坂部が、ためらっている江美子を当然のようにうながした。
「子供を、子供を誘拐するなんて、卑劣よ」
 江美子は、動揺を押し隠して坂部を睨みつける。
「ガタガタ騒ぐもんじゃないぜ。さっさと乗れよ、奥さん」
 乱暴に腕をつかまれ、江美子はつんのめるように助手席に引きこまれた。
「こうやって近くで見ると一段と綺麗だ。胸のふくらみも相当なもんだね」
 坂部の熱い瞳が、江美子の胸のあたりを舐めるように這う。
「若い男が待っていると思うと、もう濡れてきたんじゃないのかい、奥さん」
「バ、バカなこと言わないでッ」
「フフフ、いずれにせよ、もうすぐたっぷりと濡れることになる」
 坂部は、笑いながらおもむろに車をスタートさせた。
「上里君にはどのくらい抱かれているのかな。フフフ、毎晩じゃないのかな」
「言わないでッ、そんな話したくありません」
「それだけの体をしているんだ。亭主が出張中とくれば、もう我慢できないんじゃないのかい。フフフ、昨夜は一人で指を使って慰めた」
 坂部は、そう言いながらスッと片手を江美子の胸にのばした。
「あッ、やめてッ、何をするの。声を、声をあげるわよ」
 ノースリーブの上から乳房をつかまれ、江美子は必死で身をよじった。カッとしたのか、江美子は自分が置かれている立場も忘れて、反射的に坂部の頬をひっぱたいていた。
 パシッ……。
 叩いてしまってからハッとした。坂部は、赤くなった頬を軽く手で押さえながら、横目でチラッと江美子を見ると、
「鼻っぱしらが強いね、奥さん。こいつは私の知人がどのように奥さんを責めるか楽しみだ。フフフ、彼はジャジャ馬を嬉し泣きさせるのが得意でね。きっと女に生まれたことを後悔しますよ」
 押し殺した声だった。
 江美子は、坂部の不気味な笑いにゾッとした。明らかに怒りを押し隠した笑いである。その裏に秘められた淫らな思いを考えると、背筋が寒くなる江美子だった。
 江美子を乗せた車は、港のはずれにある小さな倉庫の中へと入っていった。今は使われていないこの倉庫は、昨夜、妹の雅子が嬲りぬかれた場所であることを、江美子は知る由もない。
「さあ、入んな、奥さん。へへへ」
 坂部は、あたりを見わたしながら、乱暴に江美子の背中を小突く。
「押さないでッ、乱暴しなくても中に入るから」
 キッと坂部を睨みつけながら、江美子は倉庫へ足を踏み入れた。
「子供は?……子供はどこ!?」
「おとなしくしねえか。すぐに子供に会わせてやるから」
 坂部の声が合図ででもあったかのように、奥からサングラスの男が出てきた。
「坂部の兄貴、うまくいったようですね」
 男の腕の中には子供のひろ子が抱きあげられている。クロロフォルムでも嗅がされたのであろうか、グッタリとして意識はない。
「ひろ子、ひろ子ちゃん……」
 叫びながら夢中で駆け寄ろうとする江美子の腕を、坂部は非情につかんだ。
「おっとと、子供をかえすのはまだですよ。奥さんが私の知人に抱かれていい声をあげてからという約束でしょう」
 坂部の眼は、もう淫らな輝きをいっぱいに放っている。
「な、なんて卑劣な……子供を、子供をかえしてッ」
 江美子の全身は、恐怖と怒りでブルブルと震えている。
「子供には何もしやしねえよ。用がすめばかえしてやる。奥さんが約束を果たした時にな」
 サングラスの男は、とどめを刺すように言うと、ひろ子を抱いたまま倉庫の奥へと消えていく。
「ま、待って、ひろ子、ひろ子ッ」
 連れ去られていく子供の名を血の気の失せた唇で呼ぶ。だが、どんなに叫んでも無駄とわかったのであろう、江美子は口惜しそうに下唇を噛むと、ひと言、「けだものッ」と吐くように言った。
「けだものねえ、フフフ、そのけだものを迎える仕度をしましょうかね、奥さん」
 坂部は、江美子の腕をつかんだまま、壁にかけてある縄に手をのばした。何人の女を縛ったものであろう、汗と涙を吸って黒く光っている。縄を見たとたん江美子の顔が恐怖にひきつった。
「そ、そんなもので何をするつもりなの」
「奥さんのようなジャジャ馬には縄がぴったりだね」
「いやッ、やめて……絶対にいやッ」
 ただ犯されるのではなくて、嬲られると知って、江美子は狂ったように暴れはじめた。
 バシッ……バシッ……。
 坂部は、いきなり江美子の頬を張り飛ばした。
「な、何をするの!……乱暴は許さないわ」
「おとなしく縛られるんだ。子供と妹に痛い思いをさせたくねえだろ、奥さん」
「…………」
 それで決まりだった。江美子の体から急速に力が抜けていく。
「いくら強がったところで、こっちは奥さんの泣きどころをつかんでる。諦めるんですな。へへへ」
 手首をつかんだだけで坂部は胴震いがきた。体全体の柔らかさとしなり具合が伝わってくるようである。坂部は両手を重ねると縄を巻きつけた。
「縛られるのはいや! やめて、手を離してッ」
「奥さんはいやでも、私の知人は女を縛って責めるのが好きでね」
 手首に巻いた縄の先を天井のフックに引っかける。
「やめて!……こんな、いやよ」
 何をされるのかという恐怖に、江美子の声が一段と高くなった。しかし、坂部はゆっくり縄を引いた。それにつれて江美子の手首が天井に向かってあがっていく。
「やめてッ、こんなバカなことはやめて」
 次第に体がピーンとのびはじめると、江美子は悲鳴をあげながら、顔を激しく振る。まっすぐ上に向かってのびた両腕は、ノースリーブのために、剥きだしでなんともなめらかである。
 縄は、江美子が爪先立ちでやっと立っていられるところでとまった。
「フフフ、これで用意は整った。後は私の知人が来るのを待つだけですよ、奥さん」
 煙草に火をつけながら坂部は笑った。
「こんなことして、タダですむと思ってるの。今ならまだ遅くないわ、早く縄を解いて」
「ずいぶん強気ですね。こうしてもそんな口がきけますかね」
 江美子の後ろにまわった坂部は、両手を前にまわすと、ノースリーブの上から胸のふくらみをわしづかみにした。
「ヒィッ……やめて、手を、手をどけてッ」
「ほう、ノーブラですね。ボリュームたっぷりだ」
 坂部は、遠慮なく揉みしぼった。女の肌のぬくもりと、スポンジのような弾力が心地よく伝わってくる。間違いなく九十センチ近くはある。
「やめて……その汚らしい手をどけて」
 愛する夫にしか許したことのない行為である。すさまじい羞恥と屈辱に、喉が弓なりに反りかえった。
「や、やめてッ……そこはいや、いやですッ」
 江美子はあわてて腰をひねった。坂部の片手が腰にすべりおりた。そのまま双臀まで来ると、スカートの上から尻肉をまさぐりはじめる。
「そこはいや! バカなことはやめてッ」
 おぞましい玩弄とはいえ、女の官能をくすぐる刺激には変わりない。生まれて初めて男に嬲られるショックに、江美子の口から泣き声が出た。
「う、う……いや……」
「ジャジャ馬といってもやはり女だ。やっと女らしい声を出したね。フフフ……それにしても見事な体をしている」
 江美子が、むせび泣くように喘ぎはじめると、ようやく坂部は離れた。
「裸にするのが楽しみだ……奥さん」
 こんないい女を、竜也のような若僧にやるのは惜しい気もする。はじめは、江美子の体をたっぷりと楽しんでから竜也に献上する計画だった。だが、今ではあまり時間がないのだ。
「フフフ、雅子で充分だ。そう欲ばってもいられないしな」
 坂部は独り言を呟いた。
 車のとまる音がして、やがて扉がギイッと開いた。
「奥さん、来たようですよ。フフフ、いよいよ素っ裸になる時のようだね」
 ハッとしたように江美子の顔があがった。
 電灯を背に、真っ黒な影がコツコツと不気味な靴音を響かせながら江美子に近づいてくる。

【次回更新:2025年1月1日(水)】

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