痴指と通勤電車

沙絵子三十二歳

著者: 倉田稼頭鬼

本販売日:2003/10/23

電子版配信日:2007/10/05

本定価:576円(税込)

電子版定価:660円(税込)

ISBN:978-4-8296-1227-9

朝の満員電車、悪戯な指がスカートを捲りあげてくる。

むっちりした太腿、煽情的な曲線を描く尻を這い、

下着の奥へと忍びこみ、秘唇まで遠慮なく抉ってゆく。

激しい羞恥に晒されながらも、喘ぎ、浮かべる恍惚の表情。

誇り高き女として、沙絵子は、とても信じられなかった。

快感の魔味に濡れ、惑うもう一人の自分がいることを……。

登場人物

さえこ(32歳)講師

本編の一部を立読み

(我慢するのよ。今、声をあげたら、みんなに知られてしまう。あと十分、いや、もっと短いわ。駅は近い。扉が開いたら、逃げるのよ)

それでも、尻朶を撫でまわしていた笹岡の掌は内腿に潜りこんでくる。

(あーあー、もうやめてェェ)

卑猥な手がどこを狙っているのかは、想像できる。一番恥ずかしい箇所を目指して、内腿に滑りあがってくるのだ。

(どうしよう、無防備すぎる)

パンティストッキングどころか、パンティすら穿いていないのだ。

(ヒィィッ!)

飛びだそうとする悲鳴を、奥歯を噛みしめてこらえた。

必死になって両膝を閉じても、指は女陰まで伸びてきた。ソロリソロリと生地の感触を確かめるように、前後にゆっくりと撫でまわしてくる。

その途端、ジーンと陰部から背骨に弱電流が流れたかのように、緩い痺れが駆け昇った。

(いや、痴漢の指なのよ……なんで火照ってるの? 私の身体)

嫌悪感しか湧かないはずの指先が女陰を撫でると、いやなのに、身体は正直な反応を示してしまう。

(……身体が欲しがっている。嘘、そんなことありえない)

それは動物的な反応だ。女陰をまさぐられれば、反応して当然だ。しかし、自分自身を許せない。

(アウッ!)

うつ向いていた顎が小さく跳ねた。指先が女陰を押したのだ。我慢できず、腰を捻ると、指が逃げた。振りかえり、笹岡を睨みつける。

(ヒッ!)

噴きあげてくる悲鳴を、沙絵子は押し殺した。

ゆっくりと女陰の形状を確かめるように、ユルリユルリと指の腹が縦割れの周囲の柔肉の上を滑る。

女陰から背筋を駆け昇ってきた痺れは、ジンジンと全身にひろがっていく。

(いやっ、いやァァァ、やめてェェェ)

心のなかで繰りかえしても、女陰が蕩けていく酔いに呑みこまれていく。心で拒否しても、ジワリジワリと反応してしまう女の性を呪うのだ。

強引な愛撫ではない。いきなりは縦割れを刺激せず、女唇が花を咲かせるのを待つように、ゆっくりと執拗に撫でてくる。

(あーあー、いやァァァ。どうして、感じてしまうのよ)

膝の震えはとまらないが、それは怯えによる震えではなくなっていた。ジンジンと痺れを増す女陰がむず痒く、膝を擦り合わせ、腰をくねらせてしまう。

(だ、駄目ェェェ、それ以上は駄目ェェェ)

女唇の周囲を撫でていた指の腹が、ふっくらとしている女唇の一枚を捲りあげ、縦割れに触れた途端、下腹部の奥、蜜壺の奥がカーッと熱くなる。

同時にピンク色に染まっていた頬が、一気に紅潮した。まるで焚き火の前に顔を晒したように急激に体温が上昇し、頬や額に大粒の汗がいっせいに浮きあがった。

汗は顔だけではない。背中に浮いた汗がブラウスに染み、ピタリと貼りついてきた。腋の下から噴きだした汗の珠が流れ落ち、ヒンヤリとした感触が脇腹に伝わってくる。

(痒いィィィ)

勃起した乳首が、ブラジャーのレースで擦れて痒くてたまらない。

(……ぬ、濡れてる、私。嘘よ、私は痴漢に触られて濡れる女じゃない)

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