俺の先輩の悪役令嬢が、エッチな呪いをかけられていたのだが

著者: さささのよし

電子版配信日:2023/12/22

電子版定価:770円(税込)

「部屋に着いたらセックスしよ?」「え、先輩……」
学生時代に俺を奴隷扱いにしていた悪役令嬢のミレイシア。
夜会の最中に呼び出され、密着されて迫られて、一夜をともに……
押しかけ居候生活で始まる、令嬢に体を求められる甘く淫らな日々。
でもセックスしたがる理由が呪いのせいだと知った俺は……
全編書き下ろし! さささのよしの大好評「悪役令嬢」シリーズ!

目次

一章 悪役令嬢は俺の先輩。

二章 悪役令嬢は居候になった。

三章 悪役令嬢はシスターのコスプレをする。

四章 悪役令嬢は呪われている。

五章 悪役令嬢はまた呪われる。

六章 悪役令嬢は解呪される。

登場人物

ミレイシア 令嬢

本編の一部を立読み

 噴水は屋敷の中庭の中央にあった。
 トッドは近づくと、赤いドレスの黒髪の女性を見つけ、
「先輩」
 と声をかけた。
「トッド、遅いわ」
 振り返ったのは、やはりミレイシアだった。
「呼び出しが突然だったので」
 どうやら少し待たせてしまったみたいで、ミレイシアは不満そうな様子で近づいてくる。トッドもミレイシアのそばに歩いていった。
 はっきりその姿が見えるようになると、五年前との違いに驚いた。
 もともと、国王に手を付けられたと聞いても、納得するくらいには美人だったが、年齢が二十三歳になった今は、上品さと、色気が足されて、ますます美しくなっていた。
 体つきも、もとから凹凸のある体だったのが、メリハリが増し、胸と尻の目立つ、エロい体つきになっている。ドレスも大胆で、白く柔らかそうな巨乳の谷間を惜しげもなく晒している。
 まさに、男を知っている女の体だった。
 そんなつもりはなかったのに、トッドはそばによっただけで、股間が痺れるような感じがした。
 華やかな体臭までが脳を痺れさせて、平気な顔をするのが大変なほどだ。
「久しぶりねトッド」
「卒業ぶりですかね?」
「そうよ。四年ぶりじゃない? 全然会えないんだもの」
「あんまり、夜会に出ないもので」
「そうらしいわね。アレックスが言っていたわ」
 とクスクス笑う。トッドは元々あまり人付き合いの得意な方ではなかった。
「ああ……第二王子が。相変わらず仲良いですね」
「そうよ? 幼馴染だもの」
 と笑う。
 ミレイシアは、国王と愛人関係となっているが、現在も王家の面々とは仲が良いらしい。変わらず家族のように可愛がられている。第三王子以外だが。「トッドは変わらないわね」
 ミレイシアがそばに来てトッドの腕に手を絡ませる。
 柔らかい手が腕に触れ、匂いをすぐ近くで感じて、トッドは体の一部がダイレクトに反応した。半勃ちだが、必死で平静を装う。
 この際、さっさと呼び出された理由を訊いて、ミレイシアから離れた方がいい気がして、トッドはあさってを向いて、質問した。
「……それで、手紙で呼び出したのは……何の用ですか?」
「ああ、それはね」
 ミレイシアが答えたのと同時に、パキッと小枝が折れる音がした。振り返ると、見覚えのない若い三人の令嬢がいた。
「あーら、そちらにいらっしゃるのはミレイシア様じゃないですかー?」
 三人はこちらに近づきながら、クスクスと笑い、視線を交わしあう。
「ほらー、やっぱり悪役令嬢よ。国王様の愛人なのに、こんなところで男連れなんて、新聞の通りよねー?」
 と先頭の女が言い、後ろの二人がクスクスと笑う。
 えらいものに話しかけられた、とトッドは頭が痛くなった。
 令嬢たちは見るからに若く、集団で調子に乗った者特有の雰囲気を感じる。
 先頭の令嬢の手には赤ワインの入ったグラスがあり、飲み過ぎているのは確実だった。
「酔っ払いかしら? 仕方ないわね」
 とミレイシアが困ったように言う。
「うふふ、もちろんあなたは、私たちのことなんて知らないわよねー? だって、あなたは王家主催の夜会以外には出られないんだもの」
「そうね。あなた達は今日が初めての王家主催の夜会? おめでとう。それで浮かれて、お酒を飲みすぎてしまったのかしら? 誰彼かまわず喧嘩を売って回るのは恥ずかしいから、早く帰った方がいいわよ」
 ミレイシアの嫌味に、若い令嬢は口をぽかんと開けて、すぐに真っ赤になって言い返す。
「なー……なんであなたに、そんな事言われないといけないのよ! ふざけないで。恥ずかしいのはあなたでしょー! 男漁りするアバズレのくせに!」
 ミレイシアはにこりと微笑む。
「あら、ふざけてないわ。本気でそう思うもの。誰が世間知らずの子達を夜会に連れてきたのかしら?」
「私は伯爵令息と婚約が決まったからエスコートしてもらったの! あなたみたいな国王様の上で腰を振って、ここに出させてもらっている人とは違うの。どうこう言われる筋合いはないわ!」
 そう言って胸を張る。
 言っていることが最低だという自覚はなさそうで、トッドは呆れて目を細めた。
「あなた、すごく酔っているみたいね。後ろのあなたたちも、クスクス笑っていないで連れて帰ってあげたらどう?」
 ミレイシアに話しかれられた取り巻きたちは、嫌そうに目をそらした。どうやら全員が同じ思考なのだろう。ミレイシアがため息を吐く。
 令嬢たちは、誰ひとり、自分たちが喧嘩を売っている相手が公爵令嬢だということにピンと来てないようだった。それでなくとも国王陛下の愛人なのに、堂々と顔をさらして暴言を吐くのは、自分の首を絞めているだけなのだが、新聞の『悪役令嬢』という文字に踊らされ、相手が自分よりも格段に権力を持った人間だという意識が完全に抜け落ちている。
 トッドは、ため息を吐いて、ミレイシアに確認した。
「先輩、追い払いますか?」
 トッドが訊くと、ミレイシアは頬に指を触れて、少し考えた。
「この子達、言うことを聞くかしら」
「……俺は第二王子の後ろ盾がありますから、まあ、なんとか」
 二人だけで喋っていると、それに腹を立てたのか、若い令嬢は、ますます声を高くした。
「無視してるんじゃないわよ! あなたなんて、ふしだらで、誰にも相手にされない存在でしょ! 誰もあなたになんて従わないわ。だって悪役令嬢ですもの。それにあなたの横にいる、誰だかわからない男もね! 悪役令嬢と仲良くするような、誰も知らない男が私達のことで何か言ったって、誰も信じないわよ!」
 トッドが「誰も知らない男」と言われ、ミレイシアがクスクス笑う。それから、
「そう、じゃあ仕方ないわね」
 と言うと、トッドの腕からするりと手を離して、令嬢たちの方に向かった。
「そうよ。ふふふー、数日以内には、またあなたの醜聞が新聞の一面に載るようにしてあげるわ。国王以外の男と、夜の庭で怪しい事していたってね!」
「そうかしら?」
 多分そうはならないだろう。トッドはそう思いながら、ミレイシアの動きを見守った。
 ミレイシアは、令嬢の持った赤ワインのグラスに手を伸ばし、スッと取り上げると、
「あら、手が滑ったみたい」
 と、勢いよくワイングラスを振り、中身を令嬢に浴びせかけた。
 バシャリ
「キャーッ」
 令嬢がワインを浴び、目を瞑って悲鳴をあげる。
 若い令嬢がこぞって着る淡い色のドレスは、胸から下が赤紫にべったり染まり、台無しになっていた。
「な……な……なん、なんて事するのよ! 婚約者にプレゼントしてもらったドレスなのに!」
「あら、じゃあすぐ帰って、使用人に染み抜きさせた方がいいわよ」
 そう言って、ミレイシアが彼女にグラスを返すが、パンと弾かれ、グラスが飛んで床で弾ける。
 トッドは、ガラス片が当たらないように、慌ててミレイシアの体を引き寄せた。
 令嬢はギッとミレイシアを睨みつける。
「せっかく王家の夜会に来たのに! ドレスを弁償しなさいよ!」
「いいわよ? いくらかしら。でも今は手持ちがないから、国王様に言っておいてくださる? きっと払ってくださるから」
「な……っ!」
 令嬢は口をパクパクして、一気に赤くなった。
 国王に何処かの若い令嬢が気軽に話しかけ、この状況を説明できるわけがない。それは酔っていても流石にわかったらしい。
「そんなこと……出来るわけ……」
「あら、私には言えるのに、国王陛下には言えないの? 情けないのね」
 ミレイシアが笑うと、令嬢はカッとなってミレイシアの頬を打とうと、手を振り上げた。
「キィーッ、あんたなんか!」
 トッドが手首を掴んで止めると、真っ赤になって、悔し紛れに足をバタバタと振り回す。
「このアバズレ! 第三王子が王都にいないからって図に乗って! 私の婚約者は第三王子と仲がいいのよ! 国王様だって、第三王子には甘いのよ! 第三王子が頼めばあんたの事だって、何とかしてくださるわ! こんな事して、タダで済むと思わないで! 悪役令嬢の味方なんて誰もいないんだから!」
 警備の騎士が飛んできそうなほど大声で怒鳴り散らし、最後には「行くわよ!」と取り巻きにも怒鳴り、令嬢は去っていった。
 静寂が戻り、噴水の水音だけになると、トッドはミレイシアに視線を戻した。
「……嵐みたいでしたね」
「たまにいるのよ、ああいう子」
 とミレイシアは肩を竦め、疲れたように、トッドの腕に手を絡めた。
「……先輩がワインをかけるから、逆上したんだと思うんですが」
「あら、そうした方が『悪役令嬢』っぽいでしょ? 期待に応えただけだけなのに」
「はあ……そうですか」
 トッドは多少呆れ、割れたガラスのあたりを避けて、少し移動した。
 それから思い出し、もとの質問をする。
「それで、何の用で呼び出したんですか?」
「ああ、それはアレックスが、今日はあなたを連れてくるっていうから、久しぶりに会いたいと思ったの。私の世話をするのはあなたの役目でしょ?」
「久しぶりに名前を聞いて、世話をさせようって思うって、何なんですか」
「だって私の奴隷だもの」
「まあ、昔はそうでしたけど……」
 と呟き、視線を逸らす。
 少し気まずくなって、半歩離れると、突然ミレイシアがふらついた。
「あ……」
 驚いたような声が漏れ、トッドの腕にしがみつく力が増し、肩に頭を押し付けてバランスを取る。
 トッドは驚いてミレイシアを見た。
「え……先輩、なんですか?」
 ミレイシアが、さっきとは違う、ふらついた状態になってトッドの腕にしがみついていた。
「ん……あ……もう、さっきは良くなったのに……やっぱりダメかしら」
 とつぶやく。
「あの、具合が悪いんですか?」
「そうなの……どうしようかしら」
「どうしようって……何なんですか?」
 何故か腕に胸が押しつけられた。グニッと胸の谷間で腕が挟まれ、ミレイシアの吐息が首筋にかかり、見上げてくるミレイシアの顔が赤い。唇がぷるんとして、やけに色っぽい。
 薄く開いている口の中に覗く舌が唾液で潤っているのを見て、トッドは妙に心引かれた。
 流石にまずいと、トッドは体を引いたが、そのせいで、またぐらりとミレイシアの体が傾く。
「え、ちょっと先輩……!」
 トッドは慌ててミレイシアを抱き止めた。
 熱をはかろうと、額に触れると、ミレイシアの体がふるりと震える。
「あ、ん……だめ……」
 やけに色っぽい吐息が混じり、ぎょっとする。
「……どこかに座りますか?」
 ミレイシアは、首を振った。
「……ねえ、トッド、お願いがあるんだけど……」
「何ですか?」
「連れて帰って……」
「家に帰りますか? じゃあ、公爵家の馬車を呼びますから、玄関に……」
「トッドの馬車がいいの……」
「は?」

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