【学園潜入&再奪還編】
電子版配信日:2024/01/12
電子版定価:880円(税込)
「はじめまして、ユフィーリットと申します」戦闘お姫様ユフィーと
ケモ耳ボクっ娘のニアが、潜入調査のため異世界学園へ体験入学!
そんななか、組長の娘・尾瀬未来が敵対勢力にまたまた拉致された!
ユフィーとのラブラブエッチ、メイド姿のニアが施すフェラご奉仕、
ジェットバス3Pを満喫する俺だったが、未来を救うため単独行動開始!
異世界で日本で危険でエッチな毎日が──話題のノクターントップファンタジー!
第一章 始動
第二章 拠点と狩りのお時間
第三章 貴族たちとの面会
第四章 未来と異世界娘たち
第五章 ユフィーの学園生活
第六章 愚かな襲撃者たち
本編の一部を立読み
第一章 始動
雲ひとつない快晴の空にはまだ低い位置に太陽がいる。
風が程よく頬を撫でて汗ばむ俺の体を冷やしていた。
日本から持ち込んだコンバットブーツがしっかりと地面を踏みしめる感触を確かめ、槍を握り直して対峙している相手へ穂先を向けた。
次の瞬間、そいつがこちらに向かって突っ込んでくる。
「はあぁぁっ!」
凛とした高い声と共に瞬く間もなくそいつの剣が俺に振り下ろされる。
俺との距離は十メートル以上もあったというのに、一秒にも満たない時間で超接近してきたその斬撃を俺は何とか槍の柄で受けた。
「たぁっ!」
攻撃を防ぐと今度は即座に頭部を狙った蹴りが飛んでくる。
それを腕を上げて防御すれば、そいつは蹴った反動を使って後方へ身軽に飛び退き、一回転して地面に足をつける。
そいつはふうと大きく息を一つ吐き出すと、ひまわりの花が咲いたような満面の笑みを浮かべた。
「やはり本気で打ち合えるのは、ダイキ様だけですねっ!」
「一方的に俺が攻撃されてるだけなんだよなぁ……」
「それでも、他の者では数度打ち合っただけで、大体が終わってしまいますからっ!」
「全く……。まあ、ユフィーが楽しいようで何よりだが……」
俺の姫様ユフィーリットちゃんは、今日も機嫌がよろしいようだ。
昨夜はたっぷりと可愛がったからそれもあるのだろうが、このロウレシウ国でアディキルトンの人たちと再会できてから精神が安定してきている気がする。
彼女はさほど負の感情を表に出す方ではなかったが、それでもどこか憂いを感じさせることが度々あった。
今はそれが大分和らいでいる気がするんだよね。
それにしても、周りの騎士さん達も慣れたものだな。
最初の頃は俺とユフィーの打ち合いに驚きすぎて、自分たちの訓練もままならない状態だったのに、今じゃ当たり前のように受け入れている。
俺は一応勇者として召喚されたという立場があるからそれを使えるが、ユフィーが明らかにスキルレベル三を超えたいかれた力を持っている事を受け入れてるんだ。
当初は混乱していた彼らだったが、一週間もすれば「流石は姫様っ! 姫様なのだから、何もおかしくないっ!」と、考える事を半分放棄した。
彼らも何かしらの外的要因がある事は分かっているはずだ。
そして、それは何時か姫様の口から語られるだろう的な感じになっているのだろう。
「んじゃ、そろそろ時間だし、訓練を切り上げるか」
「はいっ! 水を浴びに行きましょう。ご一緒しますっ!」
汗を拭ってくれていたユフィーが俺に背中を見せると、視線の先にいるケモミミ少女に声をかけた。
「ニア、終わりますよ!」
「うんっ! もうっ、すぐっ、終わるっ! はいっ! これでボクの勝ちだよっ!」
「くっ、くっそおぉっ! な、何で勝てないんだぁっ!」
足を払われて地面に倒れたクリスの首に、ニアの短い木剣が当てられた。
あちらで行われていた訓練もこれで決着のようだ。
ニアは悔しがるクリスの手を引いて起き上がらせると、こちらに向かって走り出し俺に抱きついてきた。
「ボク、対人戦闘上手くなってきた気がするっ!」
「そうか、そうか、ニアは偉いなあ」
「えへへっ! そうでしょ? ボク頑張ってるんだよ!」
ニアは出会った頃と比べると、比較にならないほど明るくなった。
最初の頃はあまり笑みを見せることはなかったし、男と間違うような態度をしていたからな。
今じゃ見た目は完全に女の子だし、デレデレに甘えてくるから可愛くて仕方がない。
そんなニアも俺らと同じく訓練をしている訳だが、正直な所心の中では彼女を人と戦わせるのはどうかと思っている。
旅の間は何度か野盗の襲撃があって対処してたけど、その時ニアは後方に下がらせていたからな。
ユフィーは俺と出会う前から教育を受けていたし既に殺しは経験済みだったが、ニアはそれに関してはまだ処女なのだ。
もしもの時の事を考えて訓練に参加させてるし、本人もやる気があるのでこの場にいるのだが、本当に考えちゃうよね。
ただ、この世界の一般的な考えをニアも持っているので、襲撃者などを殺害する事にさほど抵抗感はなさそうだ。
以前もダンジョン内で襲撃された時は俺とユフィーで殺しまくったけど、その事で俺らへの態度が変わる事は全くなかったからな。
まあ、その時が来たらって事なんだろう。
三人で浴室に入り軽く汗を流した後は、出かける為にさっさと着替えてしまう。
ユフィーはふわっとした白シャツとスカートを身に着けた。
コルセットが腹をキュッと締めてその細さを分からせてくれる。
ここを掴んでパンパンしてくださいと言っているようでエロい。
それと、胸元のデカいリボンが彼女の可憐さを引き立たせていた。
普段は短パンが多いニアも、今日はお出かけ用のスカートだ。
やたらとフリフリしたシャツに、肩紐の付いた紺のスカートを身に着けている。
余り着慣れない服に戸惑っている顔が愛らしい。
ちょっと制服に似ているから、あれを着させたままいたずらをしたくなる。
俺の正面でスカートを捲り上げさせ、仕方がないという困った笑顔をしながらおパンツを見せてほしい。
俺も二人と同じくアディキルトンのご婦人たちが用意してくれたシャツと、派手な刺繍が施された黒いベストを身に着ける。
手作りらしいけど、それを感じさせない出来の良さだ。
いや、既製品に慣れすぎてて俺にはその考えが余りなかったけど、考えてみれば日本でも背広とかのお高い物は基本オーダーメイドだよな。
なら、俺の体のサイズに合わせて作ってくれたこれは、かなり上等な物だと言える。
ちなみに、刺繍の一部はユフィーも手伝ったらしい。
「どうですか? 私がここをやりました!」と指を差して誇らしげだ。
普通にかっこいいな、この竜の刺繍。
ユフィーって結構男の子っぽい感性も持ってるんだよね。
三人で館を出ればそこには見慣れた馬車が一台停まっていた。
これから向かう場所は徒歩で一五分もあれば余裕でたどり着くのだが、一応体面ってものを考えて馬車に乗っていくのだ。
二人が乗り込んだ事を確認し、御者席に座る少年に話しかけた。
「クリス、頼んだぞ。目的地は分かってるよな?」
「……お任せください、コトリ様」
まだ素直になりきれていない所はあるのだが、彼の態度は大分軟化してきている。
言葉遣いに怪しい所があるのだが、呼び名は一応様付けだ。
あの手合わせ後、何度も挑んできたので、その度に尻を叩いていたらこうなった。
別に俺は少し生意気なぐらいでも可愛いから良いんだけど、本人の中で多少はケジメがついたのだろう。
俺の命令は言われた通りに実行してるよ。
馬車はロウレシウ国ブロウライト侯爵家の主城があるレクティの中を走る。
侯爵家の子飼い騎士家や従属する貴族家の所有する館が立ち並ぶ一帯を抜けると、周囲の様子は段々と街といった様相に変わってきた。
まだ城に近い位置にある為に石造りの立派な建物が多く、貴族街に近い印象を受ける場所だが、ここから少し外壁に近づいて行けばその印象も薄れてきて、まさにファンタジー世界と呼べる街の様子になってくる。
「あっ、ダイキ兄、あそこでしょ?」
俺の正面に座り足をパタパタとさせながら外を眺めていたニアが、窓から腕を外に出して指さした。
「よく分かったな。俺がいない間に行ったことがあるのか?」
「ないけど、大きいお店だからそうかなって。三階建てのお店って珍しいもん。凄い大きなおみ……せじゃないかぁ。あの世界のお店を見た後じゃ、小さく思えちゃうね」
ニアがそう言うと、隣に座るユフィーが微笑む。
「そうですね、ニア。私も向こうを知る前であれば、少々気後れしていたかもしれませんが、今では全く気にならない程度の小さな商店と思えますね」
「だよね~。向こうじゃこの程度の建物がいっぱいあるし、全然すごく感じなくなってきちゃったかも」
日本で連れ回した結果、二人の感覚に変化が起きているようだ。
それが良い事なのか悪い事なのかは分からないが、余裕が生まれるならば良かったのだろう。
特にユフィーの方は東京の色々な場所を連れ回したから、その感覚が大きいらしい。
さて、これから向かう場所なのだが、本来であれば今現在の住居としているあの館に住むような貴族や騎士ならば、商人の元に訪れることなどせずに呼び出すことが当たり前なのだろう。
だが、俺らはしがない没落貴族って感じだし、商談もこちらから話がしたいと申し出たから自ら足を運んでいる。
だからなのか、どうも先程から先方の態度がでかい。
「ふ~む、私のような熟練の商人でも初めて目にする物ばかりだ。何も持たずに国から逃れたと聞いていたが、このような物を持っているとは驚きだ」
机を挟んだその向こうで質の良いソファーに腰掛けてふんぞり返る彼は、この商会の長であるペロスタブという男だ。
年の頃は四十前後に見え、一目でお前の地毛じゃないだろうと突っ込みたくなる金髪ヅラを被った、見た目で楽しませてくれる人物である。
そんな彼は俺らが用意した商品に一通り目を通すと、今度は対面に座る俺ら三人に視線を送ってくる。
かなり値踏みをされているような印象だ。
つか、俺のユフィーとニアを舐めるように見るんじゃねえ。
目の前にいるってのにニヤヅラを隠す気がねえぞこいつ……
おまけに俺らの背後に立つクリスも丹念に見つめているが、それは好きにしろ。
「どうでしょう。これらの物はお目に叶いましたでしょうか?」
「あぁ、この見たことのない柄の布は良い。どうやってここまで精密に織ったのか知りたいぐらいだ。しかし、この程度の大きさでは使い勝手が悪い。何故、もっと大きな布で持ち込まない? それと、この紙の質もとても良い。だが、これもこんなに小さくては使い勝手が悪い。何を考えてこの大きさなのだ……。この皿は……小さいが、まあこれは及第点だな。認めよう。そして――」
机の上に置かれた持ち込んだ商品の感想を聞いてみれば、ペラペラと喋りだした。
誉めてるんだか貶してるんだかはっきりとしない反応だ。
良いと思ったのならケチをつけるなと言いたくなるんだが。
今回この商会に持ち込んだ物は、全て一〇〇円ショップで購入してきた物だ。
品数は十数点に上り、花やら動物やらをプリントされた手ぬぐいとか、小皿などの食器とか、和柄などもプリントされた折り紙とか、手芸用の布などがある。
機能的な物より見た目重視のラインナップにしている。
だから、何度も彼が言っている、小さいというのは仕方がないんだよね。
そういう物なんだし。
これらはユフィーと二人で日本へ行った時に買ってきた物で、主に彼女が良いと言った物だ。
俺的には文房具などはウケるのではないかと思ったのだが、あいにくとこちらの世界では識字率がそこまで高くないので、需要は多くないだろうという事で今回は見合わせた。
孤児のニアを参考にすれば、街の看板など身の回りにある文字は分かるが、手紙などを書くレベルになると難しいって感じだったからな。
そんなニアは旅の間にユフィーから文字を習っていたからもう読み書きは完璧だし、それどころか今じゃ白い猫のキャラクターがプリントされた文房具を片手にひらがなドリルを消化するぐらいになっている。
隣でちょこんと座っているニアの努力する姿を思い出してほっこりとしていると、やっとペロスタブが提出したすべての商品の品評を終えたようだ。
「アディキルトン家と言えば恐ろしい噂の絶えない武闘派気質の方々だと聞いていたが、この様な物を作り出せるとは知らなかった。戦う以外にも取り柄があったのだな」
こいつナチュラルに煽ってくるし、態度がマジでデカいな。
アディキルトンの事を知っていたら、喧嘩を売るようなマネをしないっていうのが俺の認識だったのだが、こんな奴でもこの領地を治めている侯爵の御用商人らしいので、手を出されないと思っているらしい。
まあ今の立場じゃ、ムカついたから無礼者め死ねっ、みたいな処罰を下す事は出来ないってのはあるんだけどさ……
俺はちょっと苛つきながらも返事をする。
「……えぇ。今後、これらの物を定期的にお持ちしますので、是非我々とお取引をして頂けないでしょうか?」
「はぁ、取引ねえ。それで、どれほどの数を降ろせるのだ?」
「買い上げて頂ける数によりますが、週に一品目五十ぐらいの数は問題ありません」
「ほう? それは相当な量だ」
プロスタブがニヤッと笑った。
どうやら儲けが出ると踏んだらしい。
「で、問題は卸値だが、幾らで卸すつもりだ?」
「卸値は全て均一として、一品で銅貨五枚は如何でしょうか?」
「銅貨五枚か……。それは少し高い。一枚でなら取り扱ってやろう」
「一枚ですか……? それは少々厳しい金額ですね」
銅貨一枚の値段を日本円に換算したら、約二〇〇〇円になる。
正確にはもう少し多い金額になるのだが、金貨一枚が二十万円前後になるので、その一〇〇分の一の価値だ。
銅貨一枚で卸した場合、利益率的に言えば約九五〇%というとんでもない数字になるのだが、それにしてもちょっと値切りすぎだ。
まあ、値段交渉の初めなんてこんなものかもしれないから、もう少し話をするか。
せめて銅貨三枚ぐらいにはしたい。
「それでは四枚では? お近づきの印にと実は初めから安く提示しましたので、一枚では余り利益が出ないのです」
「いや、一枚だ」
「……せめて三枚にしていただけないかと」
「一枚だと言っているだろ?」
……こいつマジか?
一切交渉に応じるつもりがないぞ。
こういうのって普通少しは乗ってくるもんだろ……
幾ら一枚でも利益率が高いとは言え、これはちょっとやる気が失せてくる。
「……一枚以上には応じて頂けないってことですね?」
「何度も言わせるな。我がプロスタブ家は侯爵様と唯一直接のお取引を許された名誉ある商家だ。貴方方に侯爵様との繋がりがなければ、商談の機会もなかったのだぞ? 元貴族家だとは言え、私と交渉をするなど考え違いも甚だしい」
ニヤニヤ笑いやがってこいつマジで感じ悪いな。
一瞬、今すぐ飛び蹴りを食らわせて、ぶっ倒れた所であのズラが偶然に外れてしまった事にして、衝撃で髪の毛が抜け落ちてしまったと驚きながら、絶対に死滅しているであろう毛根に生えろ生えろと煽りつつ回復魔法でもかけてやろうかと思ってしまった。
いかん、いかん……
心を落ち着かせるんだ……
そんな風に俺の心が乱れていたその時だった、俺の耳にギリッと何かを擦り合わせたような籠もった音が聞こえてきた。
その発生源である、拳を強く握って太ももの上で震わせてるユフィーの顔へと視線を向けてみれば、彼女の頬がピクピクと痙攣していた。
ヤバい、これ以上ユフィーさんを怒らせるなっ!
交渉事は自分には向かないって今回は口を出さないと言っていたが、これ以上は口ではなくて手が出てしまう。
よし、もう終わりにしよう。
てか、もうこいつと話し合いをしたくねえ。
止めだ、止め。
凄えムカつくからもういいわ。
「どうやら交渉の余地はないようですね。今回はご縁がなかったようなのでこの辺で失礼させて頂きます。お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした」
俺が軽く頭を下げてそう言うと、奴はニヤつき顔を急に険しくした。
「ふんっ、納得がいかないのであれば、他の商家に話を持っていけばいい。だが、本当に良いのか? 一度切りの売買ではなく長い間量を捌くとなると、我々の様に広い商圏が必要だ。この街にそれが出来る商家があるとは思えんが?」
「そう言われましても、これ以上の交渉が無理なのであれば仕方がありません。他の手段を考えようと思いますので失礼させて頂きます」