異世界召喚されたけど、俺はいらないらしいので、美少女ちゃんたち引き連れて、異世界と日本で楽しく過ごします。【公爵令嬢婚約破棄編】

著者: 灰色こうり

電子版配信日:2025/01/10

電子版定価:880円(税込)

異世界に召喚された俺がお世話になっている公爵家の令嬢、
銀髪エルフのシュリカちゃんが突然、婚約を破棄された!?
理由を究明するため、現代日本と異世界を転移する日々が始まった!
金髪碧眼の美少女ユフィー&ケモ耳ボクっ娘のニアとエッチなスキンシップを交わし、
組長の娘の未来ちゃんとイチャラブしながらも見えてきた解決策が──
シュリカの純潔を奪ってスキルの譲渡を行うこと、って本当ですか?
WEB小説最高峰の異世界ファンタジー! 波乱の令嬢婚約破棄編!

目次

第一章 婚約破棄

第二章 彼女面

第三章 明かされる事情

第四章 第一王子ホレス

第五章 日本で色々と

第六章 婚約破棄の幕引き

第七章 時は来た

本編の一部を立読み

第一章 婚約破棄



 俺こと、古都里大輝【ことりだいき】が両手で握るタブレットの画面には、可愛いユフィーとその隣に公爵令嬢であるシュリカちゃんが並んで立つ姿が映っている。
 彼女たちの対面には、俺たちが今滞在しているロウレシウ国にて、王家として扱われているシスグラン家の次男である第二王子のレスターと、金髪縦巻きロールのグラマラスなお嬢様エルフであるカチェアちゃんが扇子を片手に立っていた。
 双方の間には、なんとも言えぬ緊張感が漂っている。
『殿下、お話とは……?』
 動画が始まってから長く沈黙が続いていたが、痺れを切らしたのかシュリカちゃんが声を上げた。
 すると、呼ばれた第二王子が不満げな顔をしながら口を開く。
『カーリッツ公爵令嬢シュリカよっ! 今日呼び出したのは他でもないっ! 本日を持ってお前との婚約を破棄するっ! お前との関係もこれまでだっ!』
「…………ええぇぇぇっ!? な、何が起きてんだよっ!?」
 動画は始まったばかりだったが、第二王子の発言に俺は思わず叫んでしまった。
 一度動画を停止してユフィーとメイド服姿のニアへ視線を送ってみると、本人たちが悪いわけではないのに申し訳なさそうな顔を向けてくる。
 動画にはまだ続きがあるので再生させると、眉間に少しだけ皺を寄せたシュリカちゃんにカメラが向けられる。
 ニアが胸元に付けているカメラワークの技術が地味に上がっているな。
『婚約の破棄……ですか? この婚約は陛下がお決めになったことです。いくら殿下とは言え、独断でお決めになられても許可がおりないのでは』
 シュリカちゃんの反応は当然だろう。
 親が決めた婚約なんだから、子供が勝手にそれを破ることは貴族としてはありえないよな。
 全く動じることのない彼女の様子に第二王子は若干狼狽えた様子を見せたが、すぐに嘲るような笑みを浮かべる。
『あぁ、そうだな。お前との婚約は陛下がお決めになったことだ。俺の一存でそれを覆すことなどはできない。しかし、状況は変わった。何と、カチェアが光魔法を手に入れたのだっ!」
『おーほほほっ! そうなのですわっ! 私は光魔法を手に入れてしまったのですわ!』
『おぉぉ……素晴らしい光だカチェアッ!』
 凄い……
 扇を口元で隠しながらおほほと笑う縦巻きロールが画面に収められている……
 しかも、片手にはヒールの魔法を使った光を灯してやがる。
 妙なゴージャス感があるぞ!
 第二王子は光魔法を使っているカチェアを見て軽く唸ると、それを自分のことのように誇った顔をした。
『愚鈍なお前でもこれで理解できただろ。次の王となる者の伴侶には、光魔法の使い手が相応しい。これは俺の考えだけではなく、既に周りの者たちも考えを改めているのだっ! 陛下も承知している。新たな婚約者としてカチェアを迎えることは決定しているのだ!』
『シュリカさん、悲しいことですが、これは陛下の決定なのですわ。私が光魔法を手に入れていなければ、このような悲劇は起きなかったのでしょうけど……ほら? 使えるようになってしまったのですわっ! おーほほほっ!』
 おいおい、手を光らせながら仰け反って笑ってんぞ。
 どんだけ勝利宣言をしたいんだよ。
 ここまで動画を見て、笑うカチェアちゃんの隣でイケメン面を歪めて笑う第二王子を見て、俺はこいつを本当の馬鹿だと思っていた。
 だって、確かにカチェアちゃんは派手目な顔が可愛い上に、魅惑的なボディーも持っている。
 俺の中でのランキングは結構高い美少女エルフちゃんの一人だよ。
 だが、シュリカちゃんはユフィーと同レベルの美少女なんだぞ?
 もし俺が、自分を次の王だと考えている第二王子の立場だったら、絶対に両方を選ぶね!
 片方を捨てちゃうなんて、考えが激浅の大馬鹿野郎だろ、あいつは!
 何処から湧き出る怒りなのか自分でもよく分からないが、そんな憤りを感じる間にも動画は続き、勝ち誇る二人に対してシュリカちゃんは黙って涼しい顔をしている絵が続く。
 第二王子はその表情を見て思っていた反応がなかったことに戸惑ったのか、不機嫌な顔をして鼻息を吐き出した。
『ふんっ、驚きに言葉もないようだな。後に正式な通達がなされるだろう。その時に改めて悲しむが良いっ!』
 捨て台詞のように言葉を吐き出すと第二王子は背中を見せる。
 その際、一瞬チラリとカメラを仕込んでるニアへ視線を向けてきたが、流石にこの場で彼女にまでちょっかいを出す余裕はなかったようだ。
 そのまま歩き始めると、緩んだ口元を扇で隠しているカチェアちゃんも第二王子に続き、動画はそこで終わった。
「……ユフィーさんや。これって、もう無理っぽいの?」
「そのように思えます……」
「そうなんだ……。どうすりゃ良いのよ、これ」
「どうしましょうか……」
 いつも歯切れのよい返事をしてくれるユフィーもお手上げ状態のようだ。
 唇をくっと噛んで形の良い眉毛をハの字にしている。
 そのことで事態をより深刻に感じてしまい、額を抑えて天を仰ぐと溜め息が漏れてしまった。
「まずは現状の調査って話だったのに、婚約破棄をされちゃうとかさ……」
「第二王子の言葉が真実なのであれば、もはやこれはもう取り返しがつかない状況です。我々の任務は終わりということで良いのでしょうか……」
「う~む……判断に困るなあ。このことを公爵はもう知ってるの?」
「いえ、シュリカ様が自分で話されると言っていました。ですが、彼女はまだ館には来ていません」
「そうか、まだか……。公爵がこんな話を聞いたら、頭に血が上ってぶっ倒れそうだ」
 動画内ではまだ正式に決定はしていないようなことを言っていたけど、王が首を縦に振っているって言うならば、通達が来るのは時間の問題だろう。
 はぁ……
 あの人がこれを知ったら本当にどんな反応をするんだと気が重いぜ。
「シュリカちゃんはどんな様子? ショックを受けてた感じ?」
「いえ、彼女の様子に変化はありませんでした。むしろ、彼らが立ち去った後は、清々しい顔をしていたぐらいですから……」
「……あの王子を好いてるようには見えなかったからなあ。いや~、でも、どうすんだ、これ。俺らが悩んでも仕方ねえんだろうけどさあ」
 体力的にはさほど疲れはないが、妙に心が重くなりソファに腰をかける。
 背もたれに首を預けて天井を見つめていると、メイド服姿のニアが近くに来た。
「ねえ、ダイキ兄。あのクルクル髪の人って、もしかして売っちゃった光魔法のスキルオーブを使ったのかな……?」
「……その可能性は大だな」
 俺も頭に過ぎっていたことだが、突然光魔法を手に入れたようなあの様子だと、高確率でオーブによるスキルの取得をしたのだろう。
 それが何処からもたらされたのかと問われたら、心当たりがありすぎて困る。
 ユフィーも俺と同じ感情なのか、やってしまったという顔をしていた。
 ニアは俺らの様子を見て眉尻を下げた心配そうな表情だ。
 しばらくの間、三人とも何も言わずにいると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
 ……もの凄く嫌な予感がするぜ。
 ニアがすすっとドアに近づき開けてくれると、そこにはこの館の管理者兼執事の役職に就いている高齢エルフが立っていた。
「コトリ様、旦那様がお呼びです……」
 彼の申し訳なさそうな声色と暗い表情から、厄介ごとの匂いがプンプンする……
 正直、今は忙しいと断りたいところだが、それをすると館内の生活で俺等三人がかなりお世話になっているこの人を困らせてしまうので、行く以外の選択肢はない。
 重い腰を上げて公爵の部屋へ向かい、執事に開けられたドアの向こうを見てみれば、そこにはソファに腰を掛けて深く項垂れている公爵の姿があった。
 入室すると小声で座れと促されたのだが、対面に腰を下ろしても彼はうつむいたまま動かない。
 俺から話しかける雰囲気でもないので言葉を待っていると、テーブルの上に一枚の書状が放られていることに気がついた。
 横目でそれを見てみれば、予想していた通りの内容が目に入る。
 呼び出された理由はやはりあの一件に関してのようだ。
 公爵の沈黙は数分間続いたが、ややあってようやく彼が呟くように喋りだした。
「コトリよ……。話はもう聞いているか……?」
「え~……シュリカ様の件でしょうか……」
「知っているのだな……。ユフィーリット嬢もその場にいたのだから当然か……」
 公爵はそう言うとまた黙ってしまった。
 く、空気が重い……
 身動きをすることも憚られるような緊張感の中でどれぐらいの時間が経っただろう。
 噴火直前のような空気を纏って黙り込む公爵の前で、テーブルに視線を落としたまま静かにしていると、やっと彼に動きがあった。
 太ももに肘をつけて指を組んでいた姿勢を崩すと、目線を下げたまま頬を引きつらせて口を開く。
「こ、婚約、破棄……だと……? な、舐めよって……」
 彼と交流がなければちょっと嫌味に感じる普段の喋り方とは違うドスの利いた重たい声だ。
 俺に向けられたものでなくとも怒りの感情にはどうしても反応してしまう。
 軽く緊張しながら顔を上げて彼の姿を見ていると視線が合った。
「コトリよ……何故、我がカーリッツ家がこのような侮辱を受けねばならぬのだ……」
 戦国ドラマとかだったら、ここで開戦の宣言でも言い出しそうな怒りに満ちた瞳だ。
 今の俺でも生唾を飲み込んでしまうほどに迫力がある。
「王家……シスグラン家から、正式に婚約破棄を伝えられたのですね」
「……そうだ。こちらと一度たりとも協議をせず、一方的に破棄するなど……。いくらシスグラン家だからといって、このような横暴……」
 震える拳を額に当てる彼の目頭には光るものが見えている。
 相当な屈辱を感じているのだろう。
 何か慰めの言葉をかけたいが、何を言えば良いのか全く思いつかない。
 俺の中途半端な言葉なんて火に油を注ぐようなものだろう。
 黙って公爵と目を合わせていると、眼力を少し弱めた彼が視線をゆっくりと下げた。
「……私とて分かっている。我がカーリッツ家が古くから残された領地と血脈だけの、名ばかりな貴族へ落ちぶれていることぐらいは……。だが、だからこそ軽んじられてはならぬのだ……。この侮辱は一時のものではなく次の世代にも影響を及ぼす。一度、見くびられれば、それに続く者が現れるのだ……」
 まるで自分に言い聞かせているような言葉だ。
 そこには屈辱を受けたという個人の感情も多く乗っているのだろうが、権威主義の世界で舐められたら終わりってことを改めて確認しているのだろう。
 でも、だからといって意趣返しができるのかと考えても、力の差があって無理だと理解しているから、こうして怒りに震えることしかできないんだ。
 本当になんて言葉をかければ良いのか判断がつかない。
 でも、一つだけちゃんと言っておかないといけないことがある。
 これにはあまり触れたくはないんだが、何度も酒を酌み交わして親しくしている彼には誠実でいたいと思っているので言うべきだろう。
「公爵様……そこに書かれているかは分かりませんが、第二王子が新たに婚約者とする令嬢は光魔法を手に入れています。状況的に高い確率で私が売却したスキルオーブを使ったのでしょう。事情を知らなかったとは言え、私にも責任の一端があります……」
「…………言うな、コトリ。お前を責める気はない。シュリカと第二王子の関係を考えれば、光魔法がなくともいずれはこの結果になったのだろう。……だが、大きな建前にはなってしまったな。全く忌々しい魔法だ……」
 今回のことがあったからか、公爵は光魔法をよく思っていないようだ。
 いや、そういえば公爵の曽祖父だかにスキルレベル四へ到達した人がいたな。
 確かその人を黒き刃とかいうヤバげな二つ名で呼んでいた。
 イメージ的には闇属性っぽいし、もしかして元からカーリッツ家は光より闇を好む感じなんだろうか。
 話が終わると公爵がまた黙ってしまった。
 ちょっとこの空気にはこれ以上耐えられないので、今度はこちらから話してみよう。
「今回の一件、シュリカ様が辛い思いをしているかと思いましたが、幸いなことに気落ちをしていないと聞いています。それだけは良い点と言えるでしょう」
「……ロイク殿には黙っていたが、あれは次期当主とみなされている第二王子と婚約ができたというのに、初めからそれを喜んでいるようではなかったからな……」
 ロイクってブロウライト侯爵のことだっけ。
 ユフィーを学園に送って様子を探るっていう依頼を受けた時、そんなことは何一つ言っていなかったから、公爵は意図的に隠してたんだな。
 そこを突っつくのはやぶ蛇な気がするから触れるのは止めておこう。
「あの王子様は、性格に難があるみたいですからねえ……」
「自分に次期当主の座が転がり込んでくれば、あの年頃ならば増長ぐらいはするだろう。その程度のことを受け入れられぬとは、我が娘は……。貴族家に生まれその恩恵を享受してきたのだから、家のために身を削るぐらいのことはして欲しいのだがな」
 う~ん、この人はシュリカちゃんに厳しいな。
 でも、強要までしていないのは、この人の優しさなのかもしれない。
 力が抜けたように大きな溜め息を吐き出した公爵は、今まで強張らせていた表情を少し和らげると、力なく笑う。
「コトリと話せて気が紛れた。情けないところを見せてしまい、すまなかったな……」
「いえ、少しでも力になれたならば良かったです。何かありましたら、いつでもお呼びください」
「あぁ、コトリには遠慮なくそうさせてもらおう」
 彼は一つ頷いてそう言うと、立ち上がってテーブルに置かれている書状を手にした。
「私はこれからブロウライト侯爵へ連絡をせねばならん。今日はもう休んでくれ」
「承知しました。それでは失礼します」
 とりあえずはブロウライト侯爵に連絡をするのか。
 婚約の一件は公爵というよりも彼が深く関わっているっぽいから当然か。
 さて、今日は色々あって疲れた。
 俺がやれることは今のところないはずだ。
 事の進展は手紙の返事があってからだろうから、早く部屋に戻ってベッドに入ろう。
 次の日、シュリカちゃんが学園寮から館へ移動してきた。
 館のエントランスでは公爵が彼女を出迎えている。
「当分の間は学園に通わないで良い。追って指示を出す。それまでこの屋敷で過ごすのだ」
「分かりました。お父様……」
 うむ、相変わらず親子の仲がよく分からない二人だ。
 最初こそ淡々としたそのやり取りに驚いたが、よく見れば別に公爵が彼女を無下に扱っている雰囲気はないし、そんな態度を取られているシュリカちゃんも公爵を嫌っているわけでもない。
 これも貴族の親子関係の一つってやつか。
 二人の会話通り、シュリカちゃんは学園を休んでこの館で過ごすことになった。
 あんなことがあれば学園に通っても針のむしろになるだけなので、それならば休学させてしまえというのが公爵の考えらしく、昨日のうちに指示を出していたんだとか。
 それと、これには一方的に婚約破棄をしたことに対する抗議の意味もありそうだ。
 第二王子連中にはむしろ逆効果な気がするが、周りの同情は買えるか。
 学園に関してはユフィーも体調の問題として体験入学を休ませることにした。
 シュリカちゃんがいないんだから行く意味はない。
 まあ、あの後の学園内がどんなことになっているかは気になるが、縦巻きロールちゃんのおほほ声が大きくなっているぐらいで、有益な情報を得られるとは思えないので良いだろう。
 本来ならば、公爵はシュリカちゃんとともにとっとと自分の領地に引き上げたいってのが気持ちなんだと思う。
 でも、それをしないのは昨夜連絡を取ると言っていたブロウライト侯爵からの返事をここで待つからだ。
 彼らで話がまとまるまで、俺らも当分待機ってところかな。

 そんなこんなで数日が経った。
 公爵家のテラスではラフなドレスを身に着けてハーブティーを楽しむお嬢様が二人。
 片方は体の隅々まで俺の手が触れていない場所はないだろうというほどに関係の深い、金髪碧眼の美少女ユフィー。
 優しく微笑む彼女は焼き菓子を一つ手にすると、おしとやかにそれを口にする。
 地球からこの異世界にやってきた俺からしても、日頃から行儀は良いと思っているが、今日はいつもより丁寧な所作が多い。
 彼女の対面には、この館の所有者カーリッツ公爵の娘であるシュリカちゃんが、頬を撫でる風に長い銀髪をなびかせ、若干硬いが笑みを浮かべて喉を潤している。
 うむ、やはり映像より生の方が美少女に見えるな。
 直接見ると細くてはかない雰囲気がより強く感じられるんだ。
 それと、周りには常に使用人がいるからか、お澄まし顔のお嬢様状態が続いている。
 学園内じゃ終始やる気のなさそうな空気を出していたのとは大違いだ。
 そして、そんな二人に給仕しているのは天性の愛くるしさを持つメイド姿のニアだ。
 今日も小さな頭のサイズからしたら、少々大きく感じるケモミミと先端が濃い色をした太い尻尾を揺らしながら、慣れた手付きで仕事をしている。
 でも、たまに習っていない作業が来ると、ちょっとあたふたしてしまう。
 そんなところがとても可愛い。
 あの新人メイドちゃんとまたご主人様プレイをしたくなってくるぜ。
 そんな彼女らに視線を送る俺は、使用人の服を着て遠巻きに見守っている。
 別に俺一人何もしないでサボっているわけではない。
 離れているのにはちゃんと理由があるんだ。
 俺があれこれするとユフィーが明らかに申し訳なさそうな顔をするんだよね。
 普段から俺のことを主扱いしてるんだから、そんな相手が自分のためにせっせと下々の仕事をしていたら、彼女の性格的にそうもなるだろう。
 俺としてはバイト時代を思い出して楽しくやれているから苦じゃないどころか、美少女のお世話ができるんだから、むしろ金を払っても良いぐらいだよ。
 ということで、俺はユフィーお嬢様の護衛任務をしている体で、少し離れた場所で三人の美少女を視姦している。
 シュリカちゃんがこちらの館に居を移してから数日が経っている。
 当初はこの後に何が起こるのかと身構えていたんだけど、事を起こすにもブロウライト侯爵の連絡を待ってからになるから、まだ何も起こっていない。
 双方の距離は馬車の移動にして四日前後かかるから、日数的にまだ返信がないのだ。
 だから、あんなことがあったのに、こんなまったりとした時間を過ごしている。
 しかし、公爵はただ黙って待機するつもりはないらしく、連日夕方頃まで親交のある貴族と会って話をしているらしい。
 ただ、それで何かが好転することもないのか、帰ってきてからは速攻で酒に手を出して寝るまで飲んだくれる日々を送るようになってしまった。
 そんなことになってるから、この館の使用人における俺の印象はかなり良いよ。
 何故ならば、あの人って使用人に結構強く当たるんだ。
 特に酔っ払うと使用人たちに苛立ちをぶつけることが多い。
 一度、酒瓶を投げつけてるところを見たしね。
 当てる気はないんだろうけど、あれにはビビったわ。
 でも、俺は気に入られているみたいで、俺が相手をしていれば大人しくしていてくれて被害者が生まれないので、執事さんを筆頭に公爵の近くにいる使用人からは感謝の嵐で、その結果ユフィーやニアへの対応も良くなっている。
 でも、その所為で酒臭いからと二人が一緒に寝てくれないし、エッチもお断りされるという、俺にとっては死亡宣告に近いことを言われたりしている。
 まあ、その分は日中にしてるから良いんだけどさ。
 今日もこの後に、ドレス姿のお嬢様ユフィーと身分差プレイでもするかと考えていると、何やら視線を感じた。
 ん?
 三人全員が俺を見てるんだが。
 ユフィーが手招きをしてるぞ?
 あえて距離を取っていたんだが、お嬢様に呼ばれたならば行くしかない。
 ユフィーの近くに立つと、彼女はこちらを見ないで話しだす。
「シュリカ様が、あ、貴方に言いたいことがあるとのことです」
 とんでもなく申し訳なさそうな顔をしてるんだけど、言いにくそうにするにもほどがあるだろ。
 普段とあまり変わらない言葉遣いに感じるけど、彼女の中では違うんだろうな。
 というか、ユフィーじゃなくてシュリカちゃんが俺に用があるのか?
 彼女に体を向けると、短い眉毛を逆ハの字にして、何を考えているか分からないジトーとした瞳と視線が合った。
「いかがされたのでしょうか?」
「コトリ。お父様の話し相手をしてくれて、ありがとう」
 なるほど、飲んだくれてる親父さんのことで礼をしてくれるのか。
「私のような者が公爵様とお話をさせていただけることは、大変光栄なことですので、礼など不要です」
「貴方が相手をしてくれているから、使用人たちが助かっていると聞いています。お父様は多忙故に、今は気がついていないようですので、私から恩賞を与えようと思うのですが、何か欲しい物などはありますか?」
「恩賞、ですか?」
 彼女には謙遜の姿勢を見せたが、お礼なんて言われれば言われるだけ嬉しい。
 でも、何かをもらうってのはちょっと違うんだよな。
 俺自身、公爵の酒に付き合うことが嫌じゃないし、この世界の良い酒をただで飲みまくれるんだから、良い経験になってるんだ。
 でも、ここで断るのも彼女の面子を潰すことになるだろう。
 貴族ってそういうものだろうし。
 しかし、困った。
 今この場で思いつく欲しい物が全くない。
 したいことならいくらでもあるんだけどな。
 例えば、華奢な体の一部分を盛り上げているそこにタッチしてみても? とかね。
 まあ、そんなことはもちろん言えないんだが、どうしよう。
 頭の中でシュリカちゃんの胸を揉みながら返答に困っていると、ジト目をこちらに向け続けている彼女が口を開いた。
「今、願いがないのであれば、後日でも良いです。欲しい物ができたら申してください」
「ありがとうございます。では、そうさせていただきます」
 まじで今は何も浮かばないから助かるわ。
 これで話は終わりみたいだけど、数少ない会話の機会なので、せっかくだし少しぐらいは話をしておこう。
「それにしても、シュリカ様がお元気なようで何よりです。とても辛い経験をされたと聞き、ユフィーリットお嬢様はもちろんのこと、我々も大変心を痛めていました。それに、あのような行いをした相手をお許しになられているご様子なのは、公爵様も誇らしいのではないでしょうか。普通ならば、怨む気持ちを表に出してもおかしくはないですからね」
 あくまで使用人としての発言を心がけてヨイショの気持ちで話してみると、シュリカちゃんの口角が微妙に上がった。
 これはグッドコミュニケーション達成かと思ったのもつかの間、口元だけは笑みを浮かべているが、目が笑っていないことに気がついた。
「ふっ、ふふ……。私があの方を怨む? ふっ、ふふふふっ……そのようなことは全くありませんよ? あの程度のことで私が腹を立てるなんて……ありえるわけが……」
 やべっ……
 もしかして、地雷を踏み抜いたか?
 ジト目をしているのは変わらないのに、瞳の中では静かな炎が浮かび上がってるのが見えるよ。
 婚約を解消されて喜んでいるんだと思っていたけれど、結構頭にきてたんだな。
 まあ、そうか。
 婚約破棄自体は無効になって喜ぶべきことだけど、だからといって一方的に自分を捨てた第二王子にムカつかないわけがねえ。
 時間が経って段々と怒りがこみ上げてきてるパターンだったか!
「さ、流石は、シュリカ様です。広い心をお持ちのようで……。それでは私は戻らせていただきます」
 う~む、ちょっと失敗したな。
 これは一時撤退した方が良いだろう。
 俺はユフィーとニアに目で謝罪をし、悪くなった空気から逃げるようにその場を離れ、再び護衛の仕事に戻ったのだった。

第二章 彼女面



 今日は最近毎日のように身に着けている使用人服ではなく、シャツにパンツと日本向けの服に着替え、近くで背筋を伸ばしてこちらを見つめる彼女と視線を合わせた。
「ダイキ様、行ってらっしゃいませ。皆には私たちに変わりないと伝えていただければ」
「あぁ、任せてくれ。ちゃんとギルベルトさんに伝えるよ」
 今日も可愛いユフィーが笑顔で見送ってくれる。
 彼女の金色の髪を一撫ですると、メイド服が板に付いてきたニアが抱きついてきた。
「ダイキ兄、ボクのシャウシャウ忘れないでね?」
「忘れないから安心しろ。ちゃんと大量購入してきてやるから」
「うんうん、絶対だよ! 忘れたら、ボク泣いちゃうんだからね!」
「泣くほどかよ。まだ残ってるだろ?」
「あと数日分しかないの! だから、絶対だよっ!」
「必死過ぎるだろ……」
 絶対に、と何度も口にして俺に抱きつくニアの力が強い。
 食い物一つでここまで熱心になるとは、どんだけシャ◯エッ◯ンが好きなんだ……
 いくら自分の稼いだ金で買うとは言え執着しすぎだろ。
 俺はそんなニアを呆れつつも可愛く思いながら、予定を頭の中で確認する。
 今日はユフィーに伝言をお願いされた通り、まずはブロウライト領へ向かう。
 三週間近く離れているので、一度向こうの様子を見に行くことにしたんだ。
 ユフィーとニアも連れて行ってやりたいが、転移スキルには使用制限時間があるから、どうしても俺一人の方が動きやすい。
 それに、二人にはシュリカちゃんの相手をしてあげていて欲しいからね。
 しかし、その前に一度日本へ行かなくてはならない。
 その理由は以前購入した百円ショップの商品が届く日だからだ。
 日本で商品を購入した際には、リョウに荷物の受け取りを頼もうと思っていたんだが、セカンドハウスであるアジトに行ったら尾瀬未来【おぜみらい】が拐われていたということがあって、それどころじゃなくなったので頼むことを失念していたんだ。
 だから、俺が買い物を兼ねて直接受け取ることにした。
 こちらの世界にいても、スマホで日本時間を確認できるのは地味にでかいね。
 それじゃあ、早速転移を発動させよう。
 このスキルも使うことが大分慣れてきたからか、世界間の移動だってのに頭の中にある転移可能範囲をピンポイントで選択できるようになっている。
 俺の視界は二人の美少女に見送られている光景から、一瞬にして薄暗く高い天井を持つ倉庫内へ移り変わった。
「えっと、まずはスマホと」
 魔法のカバンからスマホを取り出して少しすると、電波が繋がったのか溜まっていたメールやらメッセージアプリなどの通知が一気に流れてくる。
 メールでチェックするのは商品に関してだけなので、正常に発送されていることを確認したら、次は居住空間に移動しながらメッセージアプリを開く。
 ソファにどっしりと腰をかけて数十件のメッセージを確認していると、友達から数件の連絡が来ていたのでまずはそれに返信だ。
 主に飯の誘いだったが、当分暇がないと返事をしておこう。
 長い付き合いなので少し疎遠になったぐらいじゃ問題ない奴らだからな。
 次に確認したのは俺の育ての親である叔母さんからのメッセージだ。
 異世界に召喚されてから三ヶ月近く行方不明状態だったので、また安否を尋ねる連絡が来ていた。
「あぁ~、近いうちに一度顔を見せとかないとだな。また連絡が付かないからって心配させちまったよ……」
 召喚をされる前は連絡が来たその日のうちに返事をしていたので、三日ほど放置をしてしまった結果、何度もメッセージが送られていた。
 かなり心配している様子なので、安心をさせるために今度直接会いに行こう。
 せっかくだし、どうせならユフィーたちも連れて行くかな。
 でも、流石に会わせることはまだ難しいか。
 いくら何でも俺だって、あの二人との関係を聞かれたら返答に困る。
 紹介するとしても早くて数年後の話だろう。
 でも、そんな後にすると、もう子供がいますって可能性があるんだよな……
 ユフィーが想定している未来のことを考えればいてもおかしくない。
 ま、まあ、今後のことなんだから、また考えればいいかっ!
「えっと、今度帰りますっと」
 気を取り直してメッセージを送ると即既読がついて返事が来た。
 相変わらず絵文字が多いな……
 でも、俺に問題がないと分かって嬉しそうだ。
 その他にも辞めた会社の人間から来たメッセージなどは適当に返信をして、最後に最もメッセージを送ってきている人物への言葉を考える。
 んと……
 よう、日本に来たぞ。
 今日、時間があるなら飯でも――
 心の中で言葉を考えながら書き込んでいると、その途中で急にその相手から通話要求の通知が来た。
「おう、今返事を――」
『古都里さん、帰って来てるならすぐに連絡してよ!』
 耳に当てたスマホから彼女の親父さんに負けず劣らずの大声が轟いた。
「今返信を書いてたところだったんだけど……」
『既読になってから三十分以上経ってるでしょ!? 私、気づいてからずっと待ってたんだけど!』
「しょうがないだろ。返信しなきゃならない相手が多かったんだ」
『それでも、早く連絡して欲しかったの!』
「ごめんて。未来はゆっくり相手をしたいから、後にしたんだよ。蔑ろにしたんじゃないぞ。むしろ、特別な相手だから最後にしたんだ」
『…………そう。なら良いけど』
 未来を特別視していると言葉にすれば、急に彼女の勢いが収まった。
 ちょっと怒りすぎな気がするが、まあこの程度の我儘は可愛いぐらいだろう。
 逆に思いっきり彼女面をしてきているのが愛らしい。
『古都里さん、今日はユフィーちゃんとニアちゃんは一緒なの?』
「二人はいないよ。俺一人だけだ」
『そうなんだ。二人に会えないのは残念だけど、それなら遠慮しないでいいよね? 今日は何か予定があるの?』
「午前中に買い物をして、午後は宅配待ちだな。受け取ったら向こうに戻る予定だ」
『えぇ~~、すぐ戻っちゃうの? なら、今行くわ。あっ、買い物をするなら外に出るんでしょ? 古都里さんが迎えに来てよ。私、用意するね』
「するねって、決定事項かよ……。まあ、良いけどさ」
 未来に予定を強引に決められてしまったが、元々午前中に買い物を済ます予定だったから良いか。
 一人で買い物するよりは可愛い女の子と一緒の方が楽しいし。
 通話を切って居住空間へ行き、車のキーだけ取ってきてSUVに乗り込む。
 このメーカーの車に乗る奴は変人が多いって聞くけど、良い乗り心地だよな。
 車を走らせ十数分で、高い壁を持つ三階建ての一軒家と言うには大き過ぎる建物の前に着いた。
 うむ~、やはり一目で普通じゃないと感じるな。
 これが高級住宅地にあるなら、堅牢な警備にそこまで違和感はないんだろうけど、下町の住宅地の中にどかんと現れるとえらく目立つ。
 こんな重そうな鉄門なんて普通じゃまずねえからな。
 その建物の前に横付けして未来に連絡を入れると鉄門が開き始めた。
 どうやら入れということらしい。
 正直、出てきて車に乗り込んでくれと思ったが、未来のことを考えればこの場で乗り降りさせるのはちょっとまずいのか。
 敷地内に車を入れると、ブランド物の白いTシャツにデニムのショートスカートと年齢相応の格好なのだが、妙にエロい空気を感じてしまう未来が助手席に乗り込んできた。
「最初は何処に行くの?」
「一応聞いておくけど、親父さんから許可は出てるんだよな?」
「お父さん、また九州に行っちゃったからいないわ。だから、何も言ってない。でも、古都里さんと一緒なら安全なんだし、怒られないわよ」
「……無断かよ。俺が怒られそうなんだけど」
 数人のおっかない人たちが見守ってるけど、誰も止めていないので大丈夫か。
 その中に混ざっているリョウなんて、膝に手を置いて頭を下げるその手の人間モロ出しの見送りスタイルをしてるからな。
 まあ、怒られたらその時か。
 未来を乗せて車を走らせると、彼女がニコッと笑みを浮かべて顔を向けてきた。
「買い物って、何を買いに行くの?」
「スーパーに行くだけだぞ」
「そうなの? 向こうで売る物を買いに行くのかと思ってたわ」
「そういうのはまた今度だな。今日は食材を買い込むだけだ」
「ふ~ん。それなら川向こうの駅近くに、大きなスーパーマーケットがあるでしょ? そこに行きましょ」
「あぁ、あそこか。そうだな」
 今は組事務所に居る未来だが、元はお互い住んでる場所が近いので、短い言葉で大体のことは通じる。
 少し車を走らせれば、俺らの住まいがある駅からいくらか離れた場所にある、鳥のマークの大型スーパーに到着だ。
 カートにカゴを二つ乗せて必要な物を放り込んでいく。
 主に買う物は、ニアから絶対に忘れないでと念を押されたシ◯ウエッ◯ンと、こちらも忘れたらユフィーが悲しむ魚の干物なんだが、その前に飲み物や菓子類を大量購入する。
 あっ、公爵向けに酒のつまみも忘れちゃ駄目だな。
 俺が食材を買い漁っている隣では、サングラスをかけた未来が棚に手を伸ばして何も言わずにどんどん商品をカゴに突っ込んでくる。
 特に菓子のコーナーに来てからは手当たり次第なんだが。
「お前は遠慮ってものを知らないのか」
「そんな、何でもかんでも入れてないし、高い物は選んでないわよ? これ、勉強をしながら食べようかなと思ってたんだけど、駄目?」
「それなら、いくらでも買い込みなさい。ラムネとか頭を使う時には良いらしいぞ。箱で買っていくか?」
「ふふっ。ねっ? 古都里さんならそう言ってくれると思ってた」
 何だその俺のことは分かってます、みたいな顔は。
 ちょっと調子に乗って生意気な感じがするが、そこが可愛いんだが?
 買い物も終盤となり、生鮮食品が並ぶコーナーでユフィーとニア向けの物を買い漁り終わると、少し離れた場所で未来が精肉のパックを眺めていた。
 それに近づくと、彼女は肉に視線を落としたまま話しかけてくる。
「古都里さん、お昼は何が食べたい? お肉? お魚? それとも軽いもので済ます?」
「……まさか、未来が作る気か? 大丈夫なのか!?」
「ちょっと、失礼なんですけど!? 私、それなりに料理できるわ。お母さんの帰りが遅い時は自分で作るし、お母さんの分も作るから、一通りのことは教わってるの」
 そういや、未来は異世界に召喚されるまで母親と暮らしてたんだっけ。
 組長さんとの関係を見れば、定期的に会ってるとしても基本は二人暮らしだよな。
「それは悪かったな。未来は意外と家庭的な子だったのか。う~ん、ならここは定番のオムライスでも頼むか」
「意外とって……まあ良いわ。オムライスね。任せて」
 女の子が作ってくれるオムライス。
 しかも、相手は超可愛いときたもんだ。
 どんなに不味くとも俺は完食する自信がある。
 でも、食材を選ぶ彼女の迷いがない動きを見れば、その心配は必要なさそうだ。
 本当に普段からやっているんだろうな。
 そんな未来の新たな一面を知れた買い物を終えてアジトに戻ってきた。
 パンパンになった大きなビニール袋三つを机の上に載せ、まずは生鮮食品を魔法のカバンから取り出した温冷蔵庫に入れていく。
 ついでにポータブル電源を充電していると、隣でかがんだ未来が話しかけてきた。
「へ~、その中でも機械が動くの? 不思議ね。良いなぁ。このカバン、私も欲しい」
「手に入れることは難しくないが、こっちの世界で使われるのは怖いぞ。未来のことは信じてるけど、それとこれとは話が別だからな」
「まあ、そうよね。なら良いわ」
「……あっさり引き下がるな」
「古都里さんのことを困らせたくないし」
 言いたいことは割りとはっきり言葉にする彼女だが、引き際も心得ているようだ。
「ねえ、それはもう終わるんでしょ? 早くこっち来て話をしましょ?」
 未来は楽しそうに笑みを浮かべて俺の腕に抱きつくとソファに座れと誘ってくる。
 されるがままに腰を下ろすと彼女は密着したまま隣に座った。
 ユフィーやニアにはまだ少ない女の柔らかさを十二分に感じるぞ。
 頭をこちらに預けて体を擦り付けるようにしてくるから、甘くて良い匂いが鼻腔をくすぐってたまらないんだが。
 そんな態度を見せる未来からあの日別れた後の話などを聞いたりしていると、一度会話が途切れた。
 すると、話をするために離していた体をまた擦り寄せてくる。
「未来って甘えたがりだったのか」
「だって、初めての彼……氏? そう言っていいの? とにかく、私には初めての人なんだから、甘えてみたいわよ」
「なるほど。それで、気分はどうだ?」
「……凄く、良いっ!」
 こんな幸せに満ちていますみたいな顔をされると、俺は少し微妙な気持ちになる。
 彼女の気持ちは純粋に嬉しいのだが、相手が日本人だからかやはり複数人と同時に関係性を持っていることに、何処か後ろめたい気持ちがあるからだろう。
 俺の中にある固定観念はまだまだ日本寄りってことだね。
 でもまあ、それは今更ではあるし、彼女もそのことを飲み込んでこの関係になったのだから、俺も楽しむべきだよな。
「未来、こっちの方が良くないか?」
 俺は掴まれていた腕を引き抜いて、彼女の肩へと回した。
 あの体勢のままでも良いのだが、ちょっと問題があるんだよね。
 例えば、こっちの方がこういうことをしやすい。
 抱き寄せると嬉しそうに彼女がこちらを向いたので、顔を近づけて唇を合わせる。
「んっ!?」
 突然キスをされて少し驚いたようだが、舌で唇を舐めると口を開いて受け入れた。
 未来とキスをした回数はそれほど多くない。
 だから、彼女のキスはまだ遠慮しがちな動きが多くて、それが可愛い。
 俺を真似るように舌を絡ませる彼女から口を離すと、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
「はぁ……はぁ……。もう……終わり……?」
「もっとか? 話をしたいんじゃなかったのか?」
 軽いキスではなくガッツリディープキスをしてしまったからか、未来はスイッチが入ってしまったみたいだ。
 目がとろ~んとしていて色っぽい。
「話は後回し……。もう一度して……」
 未来はそう言うと俺の首に抱きつくようにして唇を合わせてきた。
 覚えたての性に貪欲って感じがして生々しい。
 こういう風に恋人みたいな扱いをしたのは初めてだからかハマったようだ。
 惚けた顔で目を閉じて濃厚なキスに夢中になっている。
 こんな可愛い反応をされたら、当然これ以上のことをしたくなる。
 最初は服の上から未来の体を触り始め、むき出しの腕や足を撫でてから、一枚しか身に着けていないTシャツの中に手を入れる。
「むっ!? んっ……」
 服の中に侵入してきた俺の手に彼女は、一瞬驚いたがそれだけだ。
 体を弄られて溶けるような声を出すが、抵抗する様子は一切ない。
 受け入れてくれるならもっとしてやろう。
 片手を彼女の背中に回して胸を隠す邪魔な物を取り外せば、今まで形を整えられていた膨らみが重力で沈みながら解放される。
 ブラジャーの隙間から手を入れると、柔らかい乳房の先端に乳首の感触を覚えた。
「んんっ!?」
 キスで興奮しまくったのか、先端はもう硬くなっている。
 人差し指と親指で摘んで擦ってみると、彼女は胸を引いて唇を離し溜め息のような息を吐き出した。
 ちょっと触っただけなのに、かなり気持ちが良いらしい。
「んぁっ……。はぁ……はぁ……んっ!? うぅ……ぁんっ……」
 感じているならばもっとしてやれと、肩を掴んで抱き寄せ片手で胸を弄る。
 この体勢、美少女を好き放題している感じがあって最高だ。
 目でも楽しみたいと思いTシャツとブラジャーを捲りあげれば、形の良い乳房がぽろんとモロ出しになった。
 うぉぉぉ、おっぱいだっ!
 普段は微乳ちゃんを相手してるから、このサイズの胸を見ると何というか驚くね。
 触った時点で張りがあることは分かっていたが、ブラジャーを外しても形が崩れず上を向いている立派な乳房だ。
 ピコンと両方とも立ってしまっている赤みがかった桜色の乳首が、俺の目を釘付けにする。
 乳房が晒されると未来は恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。
 しかし、隠そうとはしていないので好きにしていいらしい。
 遠慮なく触り始めれば、彼女はその感覚に耐えている。
 反応的には快感を得ているはずだが、羞恥心がそれを表に出すことを躊躇しているようだ。
「ふぁ……あっ……こ、古都里さん……摘ま……んっ! はぁ……はぁ……」
 それでも、揉んだり摘んだり震わせたりしていると、段々と未来も恥ずかしさに慣れてきたのか声を出し始める。
 日本人にしたら平均以上に膨らんでいるプルプルと震える乳房を弄りまくれるのは楽しいし、可愛い声を漏らしてくれるのも下半身に響き過ぎる。
 脳内麻薬が出まくって俺も鼻息が荒くなってるよ。
 この行為、このまま日が暮れるまで無限にやっていられるが、俺の欲望と探究心は次なる場所を求めている。
 俺は肩を掴んでいる力を強め、今まで胸を弄っていた手をデニムのスカートの中に突っ込んだ。

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