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翠桜皇国の仙術使い

【学園魔獣編】3 波乱の術士対抗戦、ご褒美が淫らな夜って本当ですか?

電子版配信日:2024/01/12

電子版定価:880円(税込)

術士対抗戦に由良坂学園代表として挑む、九条院しずくと伊智倉めぐみ。
部下の活躍を祈るのは五人のお嬢様部隊を率いるEランク術士の俺の務め。
でも大会に備えてエッチは控えめにすると言われて欲求不満の日々が……
ついに開幕した対抗戦、皇国の転覆を狙う魔獣テロが勃発!
魔族の強大な力に苦戦する俺の前に、突如「仙導師」への扉が開かれて……
皇女・生良宮みつばとのケダモノエッチを書き下ろし収録。
大人気ノクターンファンタジー、風雲急を告げる激動の魔獣テロ編!

目次

1 迫る術士対抗戦! 強いられる試練

2 副都紅麗京! 立導院代表の二人

3 修練の日々! 我慢する男

4 車内えっち! 獣欲をぶつける昂劫、受け止めるかぐや

5 大会当日! 休む者と裏で動く者

6 危険な更衣室! ジークリットとデルバスター

7 渦巻く欲望! 会場に集うものたち

8 対抗戦開幕! 機根本の野望

9 蒼月会の始動! 魔獣テロの起こる日

10 大混乱! 期待を寄せられる者

11 昂劫の到着! 嵐の大武館

12 揺れる大武館! 魔族の脅威

13 仙導師に至る者! 翠桜皇国の仙術使い 昂劫和重

14 収束に向かう混乱! 運命の再会

15 騒動を経て! 緩やかに戻る日常

16 高まる期待! はじまる夜の予感

17 ホテルでナイトタイム! とろけるご奉仕

18 風呂上がり! 四つん這いの二人

19 三人で過ごす熱い夜! 濃厚なひととき

本編の一部を立読み


1 迫る術士対抗戦! 強いられる試練


 俺のチームが活動再開し、数日経った。
 魔獣もたまに発生していたが、全員慣れた上に高い魔力もあるので、難なく処理していく。
 五人は学園でも順調な日々を送れているとのことだった。
「いろいろありましたが……。なんとかこうして、また元の状態に戻れてよかったです」
「そうね。術士対抗戦も予定通り行うみたいだし……」
 めぐみの言葉を聞いて思い出す。
 そうか、もうそんな時期か。かぐやもああ、と口を開く。
「術士対抗戦ってあれでしょ! 全国の術士科所属の高等部生が、個人で互いの術を競うっていう……」
「年に一度のイベントですわね。……旦那さまも出られたことがあるのですか?」
「いや、俺は予選落ちだったよ。対抗戦に出られるのは、各校上位二名までだからな」
 翠桜皇国において、術士科のある高等部学園は全部で十二校ある。
 その中で有名なのは、東の由良坂《ゆらさか》と西の立導院《りつどういん》だ。
 あくまで世間的なイメージだが、由良坂は名門学園でお嬢様やお坊ちゃんが多いのに対し、立導院はまだ歴史の浅い術士家系が多いという印象だ。
 ちなみに皇都琴桜京《きんおうきょう》には二つの学園があり、俺は由良坂ではない方の学園で術士科課程を修了している。
「由良坂からは誰が出るか、もう決まっているのか?」
「はい。わたしとめぐみちゃんです」
「ん。妥当」
「お姉ちゃんたちは由良坂最強コンビと言われているからねー」
 まぁそうだろうな! これも日々俺とセックスしているおかげだな……!
 と言いたいところだが、この二人は皇国四大術士家系であり、元々優れた素養を持っている。
 俺とセックスする前の時点で、並程度の術士以上の実力者だったのだ。
 多分魔力が上がっていなくても、普通に由良坂学園の代表になっていただろう。
「そういや由良坂にはもう一人、四大術士家系の生徒会長がいただろ? そっちはどうなったんだ?」
 俺の問いかけに対し、しずくは微妙な表情を作る。代わりに答えたのはかぐやだった。
「生徒会長ならこの間の魔獣騒ぎで、ずっと入院してるよー。意識も戻らないみたい」
「……そうか」
 一応、千一の異母弟だしな。生きているのなら良かった。
「旦那さま。しずくさん達の晴れ舞台です。応援に行かれるのですか?」
「……そりゃ見に行けるなら行きたいが。場所は大武館だろ? ここからは距離もあるし、そもそも対抗戦は関係者以外立ち入り禁止だ。俺はテレビ越しで応援するよ」
 本選は二ブロックに分けられ、各校代表二人が分かれてトーナメントを勝ち上がっていく。
 もしかしたらしずくとめぐみの決勝戦……なんて場面も見られるかもしれないな。
 この対抗戦は毎年視聴率も高い。次代の翠桜皇国を支える術士の全国デビューが見られる……というのもあるだろうが、個人的には修練着のエロさも関係していると思っている。
 多分しずくが画面に映ると、その時間は視聴率さらに上がるんじゃないかな……。
「しかしそうか。そういうことなら、しばらく二人は魔獣課に勤める間、地下鍛錬場で修行していてもいいぞ」
「え……」
「対抗戦ってあれだろ。今も障害物ハード徒競走みたいな感じなんだろ? 少しでも体力は上げておいた方がいい」
 対抗戦は一対一だが、何も互いの術を用いて戦うという訳ではない。
 相手がトラックを駆け抜ける間、自分は指定位置から術を使って妨害する。そんな感じの競技だ。
 一応、攻撃系統の術には規制もあり、殺傷能力の高すぎる攻撃術式は使えない。
 また妨害する側も魔力を温存しないと、自分が走る時に相手の術を防げないし、勝ち上がっても次の戦いが厳しくなる。
 魔力効率のいい妨害術式、防御術式、そして豊富な魔力量や体力なんかが重要になってくる訳だ。
 当然、俺如きの魔力では、そもそも対抗戦の土俵にすら上がれない。
 ちなみに海外では、ガチの一対一バトル形式の試合があるらしい。
 あっちと翠桜皇国では、術に対する捉え方というか、発展のさせ方に違いがあるからな……。
「あとはぁ。やっぱりお兄ちゃんとのエッチも重要だよね!」
「か、かぐや!?」
「あ、でもぉ。あんまりエッチしすぎて、当日に必要な体力まで消耗したらダメだよぉ?」
「も、もぅ……」
 二人とも少し顔を赤くしている。かわいい。
 俺とのセックスで得られる魔力はズルのような気もするが。
 まぁそれ含め、二人の実力とも言えなくもない……か?
 なにせ術士にとって己の魔力を向上させるというのは、何においても重要なことだ。
 二人が自分の魔力を上げるために俺とのセックスが必要不可欠、常に最大のパフォーマンスを発揮するための判断だ……と言えば、周りもそうか、となるだろう。
 実際、愛する人との継続的なセックスにより、術の精度向上や魔力の上昇に相関があるというデータも出てはいるのだ。
 それが術士としての成長に繋がるというのなら、積極的に励む者もいるだろう。
 それに一部犯罪術士が持っているような、違法ドラッグによる魔力ドーピングでもなければ、別に禁止されている訳でもない。
 そんな訳で、俺とのセックスは問題ない。
 はい、証明完了。何も気にせず、二人とセックスするぜ……! と決意を新たにしていると、めぐみがやや沈痛そうな表情で口を開いた。
「わ、わたし……。しばらく、かずさんとのえ……エッチ。控えようと思うの……」
「え……」
「へ……」
 俺の絶望の表情を見たしずくが、少し慌てた表情に変わる。
「あ……その、別にかずさんとしたくないとか、そういうのじゃないから……! でも。なんだかそうして得た魔力で対抗戦に出るのも、相手に悪い気がして……。きっと他校の術士候補生たちは、今も対抗戦に向けて、必死で努力していると思うの……」
 ……なるほどな。まぁこれに関しては、個人の考え方それぞれだろう。
 セックスで魔力が上がるのなら、それで割り切って実力を高めていく者もいれば、公式の大会くらい己の今の実力だけで戦いたい。それが相手への礼儀にもなる……と考える者もいる。
 どちらが良い悪いとか、間違っている正しいという話ではない。どう考えているかというだけの話だ。
 そして俺はめぐみの意見を尊重したい。
 めぐみの意見を聞いたしずくも、ゆっくりと頷く。
「そ……そう、ですね……。か、かずしげさんとできないのは、私も寂しくはあるのですが……。ここ最近、実技の時間もかずしげさんからいただいた魔力に頼っていたのも確かですし……。初心に帰るという意味でも、私も大会が終わるまで、かずしげさんとのセ……え、エッチを、控えようと思います……」
 どうしてセックスからエッチに言い換えたのかはわからないが、まぁしずくもそう言うのなら仕方がないな。
 一度しかない学園生生活だし、自分の力で他校の生徒とぶつかり、今の自分の立ち位置を純粋に見直したい……というのも、たしかに大事だろう。
 本人がそのことに必要性を感じているのなら、なおさらだ。
 だが俺は目に見えて落胆していたらしく、みつばが慰めの言葉をかけてきた。
「まぁまぁ旦那さま。そう残念そうなお顔をなさらなくとも、少しの間だけですわ。大会が終われば、頑張ったご褒美にお二人にたくさん愛情を注げばよろしいではありませんか」
「みつば……」
 え、俺、そんな残念そうな顔してた!?
 椅子に座る俺に、かぐやも抱きついてくる。
「そうですよぅ。それにぃ、お兄ちゃんの呪いの処理は、かぐやたちもいますしぃ。お姉ちゃんたちがしばらくエッチできない分、かぐやのおま×こでたぁくさん気持ちよくお射精させてあげますからねぇ」
「ん。ボクのおま×こもある。隊長は何も心配しなくていい」
「お……おう……」
 なんだかめちゃくちゃ慰められてる!? てかこんな時間から堂々とおま×ことか言うなよ! ちょっと興奮してきたじゃねぇか!
「あら。私たちがせっかく我慢するというのに、かずさんは何も我慢しないの?」
「え……!?」
「一度中出しすれば、五日は大丈夫でしょう? 当然、かずさんもエッチなことは必要最小限に抑えてくれるよね?」
 何が当然なのかわからないんですけど……! めぐみとセックスしない期間、俺もセックスは最低限にするって何で……!?
 そう考えていたところに、しずくもやや強めの語気で口を開く。
「そう……ですよね。我慢しているのはかずしげさんも同じ。そう思うと、わたしも頑張れる気がします……!」
 その視線は俺とかぐやに向いていた。
 これは……あれか。かぐやが俺を必要以上に誘わないように、牽制しているのか……!?
「ええぇ~? でもぉ。呪いとか関係なく、お兄ちゃんは純粋にかぐやとエッチしたいよねぇ?」
「お……おう……」
「そんなの私としずくも同じよ。それを踏まえた上で我慢することに意味があるのよ。ね、かずさん?」
「お……おう……」
「ん。でも最優先は隊長の呪い管理。常に呪いの許容量に余裕を持たせるのは大事。隊長の都合と判断で、セックスは必要。……だよね?」
「お……おう……」
「でも。今や五人もパートナーがいるかずしげさんです。現実問題、五日に一度の頻度でも何も問題はないですよね?」
「お……おう……」
 なにこれ。どういう状況……?
 なんとなく俺とのセックスを抑制させたい高等部組と、関係なくセックスしたい中等部組で分かれているのはわかるんだが。
 間に挟まれている俺は幸せ者だな!
 そしてここで主導権を握るように口を開いたのは、銀髪皇女みつばちゃんだった。
「わたくし達、旅行以来旦那さまとの睦事に関しては、少し頻度が増えていたのは事実ですわ。それが悪いこととは申しませんが、せっかくの機会です。一度旦那さまにも我慢いただけますと、また違った刺激があるかもしれませんわ」
「み、みつばさん!?」
「例えば。久しぶりの睦事になれば、より濃厚な時間が過ごせたり。旦那さまも普段よりも興奮が高まり、気もちよさも倍増するかもしれません」
 みつばは笑顔で俺に我慢することを提案してきた。
 ま、まぁ確かに。二日我慢するだけで、俺はかなり興奮できる身体だからな。つまり。
(みつばの提案する、新たなプレイか……!)
 みつばのとりなしもあり、とりあえず俺も対抗戦が終わるまでは、セックスは最低限にするということになった。


2 副都紅麗京! 立導院代表の二人


 翠桜皇国の首都は皇都琴桜京である。
 だが翠桜皇国西部には、副首都として紅麗京《こうれいきょう》があった。
 古くは皇族もこの地に住んでいたのだが、時代の流れと共に琴桜京へと住まいを移し、今は一つの皇族家系が居を構えている。
 紅麗京もその人口は皇都に次ぎ、翠桜皇国第二の都市である。
 そんな大都市にある立導院学園。そこの修練場では、二人の学園生が薄着の修練着を身に纏い、互いに術を競っていた。
「そこ……!」
「…………っ!」
 女性が相手に向かって、指から黄色い閃光を放つ。
 だが術を放たれた女性は、素早く対抗術式を組むとそれを展開。
 黄色い閃光はそのまま反射し、術者の元へと返される。
「やるわね……! でもっ!」
 しかし自分の術が反射されることは織り込み済み。今の術は時間を稼ぐために放ったもの。
 ここで女性は、相手に別の術式を発動させようとして。
「……え?」
 いつの間にか目の前には、相手が木剣を持って迫ってきていた。
 急に接近戦に変わり、戸惑いながら後退する。だが決着はすぐについた。
 女性は足払いをかけられ、簡単に転がされる。咄嗟に起き上がろうとしたその顔先には、木剣が突き付けられていた。
「…………参りました。んもうっ、なんなの!? 急に格闘戦に持ち込むなんて、卑怯! です! わ!」
「…………」
「なにか言いなさいよ!?」
「……ルール違反じゃない」
「くぅ……!」
 負けた女性の名は香汰鳴《かたなり》ういせ。皇国四大術士家系の一つ、香汰鳴家の令嬢である。
 目つきの鋭さが本人の気の強さをよく表しているものの、亜麻色の髪にボブカットがよく似合っている。
 そして勝った女性の名はジークリット・フロンブルク。
 常に眠そうな半眼で、薄紫色の髪をポニーテールでまとめている。
 ジークリットは他国の留学生だった。
 この二人こそ立導院学園を代表して、術士対抗戦に出場する術士候補生である。
 ジークリットに関しては「他国籍の者を翠桜皇国の大会に出すのはどうなんだ」という意見もあったが、今回は特例ということで出場が認められた。
 他国の学園生が対抗戦に出場するのは、これが初めてとなる。
 もっともこのことは方々で様々な意見を呼び、来年からは他国籍の者は参加できないルールが設けられる予定だ。
「ふん……まぁいいです。とにかく。去年も優勝した由良坂学園からは、四大術士家系の二人が代表として出てくるのです。ジークリット。あなたも大会まで毎日鍛錬を……て、どこ行きますのっ!?」
 ジークリットはういせの話はそこそこに、既に帰ろうとしていた。
 呼び止められたジークリットは半眼のまま、ジッとういせを見つめる。
「な、なんですの……?」
「…………鍛錬。めんどぅ」
「な……っ!? あ、あなたねぇ! 私たちはこの立導院を背負って、皇族もご覧になられる大会に出るというのに……!」
「……優勝候補は由良坂。そして由良坂から出る代表は、二人とも四大術士家系。……ういせと同じ」
「…………! ジークリット、あなた……! 私に勝ったからと言って、由良坂の二人にも余裕で勝てると……! そう言いたいわけ……?」
「………………」
 ういせは四大術士家系の生まれだけあり、自身も強い魔力の素養を持っていた。
 これまで術の鍛錬にも一生懸命に取り組んできたし、自分の努力量は決して他者にも劣らないという自負がある。
 だがこの世に天才と呼べる者がいるのなら、それはジークリットのような者を指すのだろうと思っていた。
 実際、ジークリットは立導院学園術士科で、ほぼ最上位の位置にいる。
 対抗戦に出場が認められたのも、何とか今年こそは優勝したいという立導院学園の思惑もあった。
 しかしジークリット本人は特に修練の時間も人一倍頑張っているとか、そういう訳ではない。
 いつも頑張っているういせからすると、腹立たしい思いもある。しかしその実力は認めざるをえなかった。
「皇都は最近、いろいろ物騒なのも知っているでしょう……!? 自分の身を守るためにも! 大会で優勝するためにも! あなたも代表に選ばれたからには……!」
「…………また今度。ういせに付き合う」
「ジークリット……!!」
 ジークリットは薄紫の髪を揺らしながら、その場を後にする。修練場にはういせだけが残った。
「く……!」
 ういせとしても、今回のジークリットの参加は納得がいっている訳ではなかった。
 そもそも対抗戦は皇族の御前試合でもある。参加できるのは翠桜皇国でも、選ばれた一部の生徒のみ。
 代表に選ばれるというのは、皇国民として大変名誉なことでもあるのだ。
 その名誉を他国の留学生に与える。若いういせには感情で納得するのが難しかった。
 一方で、術士の世界は実力主義。資格を取った後も、生涯ランク付けをされ、得たランク次第で年収も仕事の選択肢も変動する。
 ジークリットが他国籍ながら対抗戦に参加できるのは、ひとえに本人の実力によるものなのだ。
 そこに議論の余地はあれど、今年の対抗戦への出場はもう決まったこと。
 ういせが不満だからと言って、今さら選手が代えられるわけでもない。
「……はぁ。仕方ありません。一人で続けましょう……」
 由良坂学園代表の名を思い出す。九条院《くじょういん》しずくと伊智倉《いちくら》めぐみ。
 二人とも会ったことはないが、同じ皇国四大術士家系に数えられている。
 そして先日、父から二人の情報について、気になる話を聞いていた。
「二人は今、試験的に魔獣課で働いている。既に魔獣相手に実戦経験も持っている……」
 この事実はういせの精神を大いに刺激した。皇都に住んでいると、そんな恩恵まで受けられるのかとも思った。
 だが皇都には皇都の事情があるのもわかる。
 もともと紅麗京よりも魔獣の出現頻度が高く、魔獣課の数自体も多い。そして皇都のすぐ北には魔王領もあるのだ。
 先日も由良坂学園に災害級の魔獣が出たというニュースが流れたし、何かと物騒な地なのは間違いない。
「学園生を魔獣課に組み込むくらい、人手が足りない……ということかしら」
 幸いなことに災害級の魔獣が出た割には、被害はそこまで大規模ではなかったと聞いている。
 そして当時の由良坂の地では、外部協力者と学園生が力を合わせて魔獣を討ったとも。
「その学園生の中に、九条院と伊智倉がいるのは疑いようが有りませんわ……! 今でさえ、私とは大きく差をつけられている可能性もあるのに……!」
 父が調べたところによると、魔獣課の隊長は昂劫《こうごう》家の次期当主が務めているとのことだった。
 昂劫の名は知っているが、今いちパッとしない。
 実際、その次期当主も職位でEランクに上がっただけの、大したことのない術士とのことだった。
「ふん……。九条院も伊智倉も、格下術士に顎で使われていると思うと、多少の同情はしますが……。対抗戦では決して手を抜きません……!」
 魔力を集中させ、いくつもの閃光を放つ。そして流れるように結界を張り、対象の足を重くする術式を発動させる。
 長年の鍛錬の成果もあり、これらの動作には淀みがなかった。
「はぁ、はぁ……!」
 鍛錬をしながら思うのは、やはりジークリットだ。彼女はこと戦闘においてはかなり強い。
 習得している術式も、いずれも戦闘能力が高いものが多いのだ。
 だが対抗戦は一対一の対人戦とは違い、妨害有りの障害物競走。そのあたりをジークリットがちゃんと理解できているのか。ういせはその点が心配だった。
「ふぅ……」
 ふと人の気配を感じ、後ろを振り向く。そこには制服に着替えたジークリットが立っていた。
「……どうしたのかしら? もう着替えているし、やっぱり鍛錬しに来た……という訳ではさなそうだけど」
「…………差し入れ。じゃ」
 そう言うとジークリットは修練場の入り口に、パックのジュースを置いていった。
 ういせの大好きなリンゴジュースだ。
「…………。はぁ。あの子のこと、やっぱりわからないわ……」
 ういせはそう言うと、パックジュースを手に取り。そしてグイッと飲んでいった。

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