クールで無愛想、でも少しだけなついてきたダウナーギャル・佐原美玖は、
子作りするために毎週俺の家に通ってくれる可愛い許嫁。
予定外のお泊まりでますます惹かれ合い、休日デートで起こった思わぬ波乱も乗り越えて、
愛おしさが爆発して突入したラブホで、心も体も限界まで深く繋がる二人。
出会いから現在に至るまで、美玖が抱き続けていた本心も明らかに?
だからどんどん好きになる──大人気eブックスシリーズ、全編書き下ろし!
一話 ダウナーギャルを送り届けた
二話 イき果てる土曜日 ~七度目の種付けセックス
三話 穏やかな朝食と、デートの誘い
四話 偶然の遭遇
五話 【美玖視点】あの人の、いずれ許嫁になる話
六話 ダウナーギャルと一日デートした
七話 ダウナーギャルとラブホに行った
八話 【美玖視点】あの人の許嫁になった話
九話 心も体も溺れる夜 ~八度目の種付けセックス
十話 彼女のわがまま
本編の一部を立読み
一話 ダウナーギャルを送り届けた
1LDKのマンション。三十過ぎで独身の俺にはちょうどいい広さのマイホーム。
そのリビングで、俺は腕立て伏せをしていた。
「よんじゅう、きゅう……ごじゅうっ……!」
どさっとカーペットの上に寝そべる。
スクワットに腹筋、そして腕立て伏せ50回のノルマ達成だ。
ここ最近は、筋トレを日課にしている。朝はウォーキングに出かけて日光を浴び、食事も3食バランスのいいものを心がけていた。
それもこれも、美玖とのセックスを充実させるため。
彼女の隣にいて堂々としていられる男になるためだ。
──佐原美玖。
実家が決めた、俺の許嫁。
容姿端麗で、モデルのようなスタイルの良さとGカップのバストを両立させた、奇跡の美少女。
セミロングの茶髪が印象的で、いつも涼やかな目元、表情の乏しい顔に淡々とした口調のダウナーギャルだ。
だけど不意に見せる微笑みが心臓を鷲掴みにされるほど可愛くて、控えめに俺の服をつまんでくる仕草なんて、甘えたいのに甘え方がわからない猫みたいで……とにかく可愛い。
しかも美玖は幼い頃、俺に助けられ、それから俺のことを思い続けてくれていたのだという。
こんな都合のいい話が現実に、しかも三十路過ぎでうだつの上がらない俺の身に起きるなんて、思ってもみなかった。
そんな彼女は毎週金曜日、俺に種付けセックスをされにやってくる。
つまり今日だ。
「美玖、早くこないかなぁ」
側に置いてあるスマホを見れば、時刻は午後4時。
いつもならとっくに来ている時間だ。
少し不安になる。
『大丈夫?』的なメールを送ろうかと迷ったが、セックスしたいから早く来てと言っているような感じがして、躊躇してしまう。
いや、もう正式な許嫁なんだし、彼女の身を案じてメールを送るくらい普通だ。
(……あと15分待って来なかったら連絡してみよう)
もしや俺に嫌気が差して来たくなくなった?
──なんて少し前の俺なら思っていただろう。
今は、その点に関しては疑っていない。美玖は俺のことを悪く思っていない……どころか、好意のようなものを持ってくれている。
この前、一緒に田舎へ里帰りをしたとき、実家の俺の部屋で求め合うようなセックスをして、なんとなく確信を持てた。それを彼女が、不器用なりに伝えようとしてくれていることも。
「はぁ……」
高鳴りだした心臓を落ち着かせるようにため息をつく。
一人暮らしのリビングが、やけに静かだ。以前よりも広く感じる。美玖が来るようになり、そう感じるようになった。かすかに彼女の甘い香りが残っているせいだろう。
窓の外は曇り空で、雨がポツポツと降り始めていた。
今日は雨の予報が流れていたので、彼女もきっと傘を持って学校へ行ったはずだ。
(濡れてないといいけど)
風邪をひいてしまう心配しつつも、つい、ブラウスを濡らして玄関先にやってくる姿を想像してしまう。
美玖は体が濡れると感じやすくなる不思議な体質の持ち主だ。
さらに俺の匂いを嗅いだり、俺とセックスしたりすると余計にイきやすくなる。
あの雨の日、俺に助けられたときの強烈な記憶が原因なのだろう。
これは美玖から直接そうだと言われたわけではないが、これまでの彼女の不自然な反応と照らし合わせると、この仮説はほぼ間違いない。
(つくづく俺に都合がよすぎる……)
体を濡らした彼女が、熱い吐息を漏らして迫ってくる姿を想像してしまう。
気づけば股間が硬くなっていた。
うつ伏せで下腹部を床に押し付けているだけで気持ちいい。もぞもぞと下半身を動かすと勃起チ×ポがこすれてゾクっとした。
(やば……床オナしたい欲求が)
美玖がうちに来るようになってから俺はオナニーをしなくなった。
彼女の信じられないほど具合のいい名器に出し入れするほうが何倍も気持ちいいし、子種はすべて彼女の膣奥に放ちたいというオスの欲求からだ。
でもそれは同時に、美玖が来る直前のこの時間帯は、一週間分の精子が溜まりオナニー衝動も極限まで高まっているわけで──。
(──い、いかんいかんっ! 目先の誘惑に負けるな俺)
SE(システムエンジニア)としての発注仕事は昨日のうちに終わらせ、クライアントに納品済みだ。それもこれも今日一日、美玖と甘くてエロい時間を過ごすため。
リビングで無様に床オナをするためじゃない。
俺は股間の奥をきゅっと締めた。
ここはPC筋というらしい。鍛えると勃起力が高まり、硬さと持続時間を延ばすことができるのだとネットに書いてあった。尻穴をすぼめ、尿意を我慢する感じで強く締めると鍛えられる。いわゆるチントレだ。
この一週間は筋トレとともにチントレにも励んだ。
俺はもともと性欲と精力だけは風俗の女の子が呆れてしまうほど強く、美玖が相手だとさらに旺盛になる。それこそチントレなんて必要ないくらいに。
だけどもっと長い時間バテずに彼女とのセックスを味わいたいし、もっと彼女を俺のチ×ポでイかせて悦ばせて喘がせたいのだ。
……なんてしょうもないことを考えているうちに、オナニー欲求はおさまってきた。
スマホを手に取り起き上がる。
チャリ、とスマホのストラップが垂れた。
青い猫をかたどったデザインで、この前田舎からの帰りに寄ったカフェで、美玖がプレゼントしてくれたものだ。
──真一さん、青が好きって言ってたから。
淡々と、だけどちょっとだけ恥ずかしそうに目を伏せる彼女の姿に、心臓が止まるかと思った。今思い出しても胸の奥が熱くなる。
──真一さんのよさ、私、知ってるんで。
──だから、自信もっていいっす。
──私の、許嫁なんだし。
あのとき美玖が投げかけてくれた言葉に、俺は自己肯定感が引き上げられる心地がして、そして奮起したんだ。
美玖の許嫁としてふさわしい男になると。
「もっかいスクワットするか」
とりあえず筋力と体力が上がれば、もっと自分に自信がつくだろう。安直すぎる気がしなくもないが、案外一番の正解な気もする。
鼻息を荒げて腰を上げ下げしていると、インターフォンが鳴った。
「あ、来た!」
急いでエントランスの開錠ボタンを押し、玄関先で今か今かと待機する。
体感では三十分ほど──実際には一分ほどして玄関のチャイムが鳴った。
間髪入れずにドアを開ける。
「美玖さんいらっしゃい、っ……」
思わず息が止まる。
目の前に、美少女すぎるダウナーギャルが立っていた。
薄手のブレザーに丈の短めなスカート。そして白いブラウスを窮屈そうに押し上げている豊満なバスト。
もう何度も会っているというのに、毎回目が釘付けになってしまう。
今日は少し気温が低いからか、黒っぽいストッキングを穿いていた。
「あ、ごめんっ、さあ早く入って」
「お邪魔します」
美玖がポツリとつぶやく。
相変わらずテンション低めの声音で、なのに色っぽい響きがある。今日はいつもより甘ったるさが増している気がした。
玄関に入れると、彼女の肩が濡れているのに気づいた。ゆるくうねった髪先もほんの少し湿っている。
「雨で濡れちゃったんだねっ……ごめん、タクシーで迎えに行けばよかった」
「平気っす。折り畳み差してきたし」
美玖が手に持った青い折り畳み傘を、控えめに見せてくる。
「体冷えたでしょ。先にシャワー浴びる? あ、先にっていうのは変な意味じゃなくてっ、いやそのつもりではあるんだけど、あー……温かいココア沸かすよ!」
あたふたしていると、彼女がふっと息をつくように微笑んだ。
「……おじさん、なんかお父さんみたい」
「えっ……あ、ありがと?」
喜んでいいのか悪いのか分からない。お父さんっぽく思われるのは妙な嬉しさもあるが、許嫁としてはどうなのだろう。複雑だ。呼び方も「真一さん」から「おじさん」に戻ってるし。
「……ごめん。来るの遅れちゃって」
美玖が靴を脱ぎながらつぶやいた。前かがみになっているせいか、すごく申し訳なさそうに見える。
「いやっ、ぜんぜん気にしないで! むしろ来てくれるだけで俺は嬉しいっていうか」
「そっか」
玄関に上がった美玖の顔が、少しだけ俺の背丈に近づく。
相変わらず思考の読めない無表情で、じっと見つめてきた。
「えっと、シャワー浴びる?」
「……キス、してもいっすか」
「え!? も、もちろん」
彼女の腕が伸び、俺の首の後ろに回される。
甘い引力で引き寄せられるみたいに、さらに顔が近づいた。
いきなり美玖のほうからキスを誘われ動揺する。雨に濡れたせいで性感が高まっているのだろうか。それにしても積極的すぎる気が──。
(てか……何度見ても可愛い……)
モデルのような小顔に、アイドルのように均整の取れた顔立ち。
ほんのり気の強そうな目尻は安易に男を寄せ付けない雰囲気を醸し出しているのに、そんな彼女が今、俺とキスをするため顔を上向けている。
綺麗な鼻先が触れた瞬間、唇が重なった。
「んっ……ん、はぁ……」
始まりにしては濃厚に唇が押し付けられ、ぷあっと離れる。美玖は甘いため息を漏らすと、ここからが本番とばかりに舌を差し出してきた。
目元は涼やかなのに、それ以外で熱っぽくキスを求めてくる。
「ぇぁ……ぁ、はぁっ……んッ、ん……」
唇が触れ合う前に舌が絡まり、くちゅくちゅと音を立てる。ほのかに聞こえていた雨音が聴覚から消えた。
半開きの唇同士がくっつき、俺の口内で美玖の小さい舌が懸命に舐めてくる。
気持ちよさで頭が痺れ、股間がゾクゾクする。
若さの詰まったGカップがむにゅうと押し付けられ、彼女の熱を伝えてくる。柔らかいおっぱいの暴力に、理性がたやすく消えていく。
「おじさん……する?」
美玖の手が、俺の下腹部に触れる。ビクンと全身が跳ねてしまった。
したい。めちゃくちゃセックスしたい。オナ禁で焦らされた股間が痺れをきらしている。
彼女をこのまま押し倒して、玄関でむさぼりたい。
だけど……なにかおかしい。
なんとなく、焦っている気がする。
「美玖……何かあった?」
俺はなけなしの理性を総動員して、彼女の肩をつかんで引き離した。
「別に、ないっす」
「ううん、何かあったよね」
「……たいしたことじゃないんで」
「俺、こんなだけど美玖の許嫁だから、何か悩んでることとかあったらできれば言ってほしいんだ……なんて、力になれるか分かんないけど」
はは、と我ながら頼りない笑みを浮かべる。
しかし美玖は、少しびっくりしたように俺を見つめていた。
「わかるっすか……?」
「あ、うん……なんとなくだけど」
「……そっか」
彼女は甘え下手の子猫みたいに目を伏せると、鼻をすんすんと動かした。無意識に俺の匂いを嗅いでいるようだった。
「今日、お母さんが倒れちゃって、さっきお見舞い行ってきたんす」
「えっ!」
「あぁ、大丈夫っす。働きすぎの過労ってだけで、病院で一日休めば回復するって、お医者さんも言ってたし」
「いや、ちょっ……そんなことがあったのに、うちに来てくれたの!?」
「まあ……お母さんも平気だから行ってきなって、言ってくれたし。それに金曜に会うって約束なんだし」
「そんなの、そんなの金曜じゃなくたってっ、美玖がよければ俺は土曜だって日曜だって、なんなら平日だって美玖に会いたいっていうかっ!」
「え……?」
美玖が無表情ながらポカンとした顔をする。
どうやら彼女は本家の叔母──清江さんとの「金曜に会う」という約束事が絶対だと思っていたらしい。
そんなのはむしろ学生である美玖に配慮してというか、こんなおっさんと会うのは嫌だろうけど「せめて週一くらいで会ってやってほしい」みたいなニュアンスで叔母は提示したにすぎないはずだ。悲しいことに。
だからもし美玖が望んでくれさえすれば、下手をしたら毎日だって会える。望んでくれればだが。
まあそれはともかく。
「今から病院行こう」
「……は?」
「美玖だってお母さんのことが心配でしょ」
「それは、そうっすけど」
でなければあんなに濃厚なキスをしながら、どこか心ここにあらずみたいな感じになるはずがないし、何かを振り払うようにセックスを誘ってきたりもしない。
本家の屋敷で、美玖がたどたどしく告げた言葉を思い出す。
──このままだと、また会えないかもって恐くなって、だったら深い関係になればいいんだって、思って。
だから、俺との関係を繋ぎとめるために、週に一度の逢瀬は大事だと思ってくれているのだろうか。
だとしたら正直死ぬほど嬉しい。
だけど──それとこれとは別だ。
俺にはもう両親がいない。父は酒飲みがたたってガンで亡くなり、母も後を追うようにぽっくり逝ってしまった。せめて母にはもっと顔を見せたり、孝行をしたりしておけばよかったといまだに後悔している。
だからこれは、俺の勝手なエゴだ。
「美玖、今から病院行こう」
「……マジすか」
唖然とするような声を漏らす美玖を尻目に、俺はタクシー会社に電話した。
美玖のお母さんが入院しているのは、うちからタクシーで10分くらいの所にある市立病院だった。
降りしきる雨がタクシーの窓をポツポツと叩く。
車内で、俺と美玖は無言だった。
(ありがた迷惑っていうか、普通に迷惑だよなぁっ……!)
心の中で頭を抱える。
美玖いわくお母さんは軽い過労で一日寝れば回復するレベルだ。お見舞いも済ませてきたというし、お母さんも快く送り出してくれたみたいだし、だからこそ美玖も律儀に約束を守ろうとしてくれた。
なのに俺ときたら、勝手なお節介を発動して、せっかく来てくれた彼女をまた病院へ送り届けている。
いくら許嫁でも、美玖からしたらウザい行為ではないだろうか。
おそるおそる彼女の横顔をのぞく。
美玖は反対側の車窓から外を見つめていた。
いつもの無表情とあいまって、何を考えているのかさっぱり分からない。
一人気まずい沈黙に耐えていると、すぐに病院へ着いた。