何も知らない黒髪聖女は悪徳司教に抱き潰される4

著者: 月見ハク

電子版配信日:2025/04/11

電子版定価:880円(税込)

最後にして最強の刺客から聖女マイを守り抜いた大司教リンゼ。
酷い怪我を負ってしまうリンゼを、マイは三日三晩癒し続ける。
それは清らかな柔肌を密着させる秘密の儀式だった。
目覚めた大司教は、熱情のままにマイの唇を奪い、秘唇へ腰を埋めていく。
あらゆる敵からこの黒髪聖女を守り抜くと強く誓いながら……
WEBで超人気の溺愛ファンタジーを全編改稿!

目次

第一話 大司教の粛清

第二話 最後の背信者

第三話 切り札

第四話 聖女たちとの朝

第五話 二人だけの密室で

第六話 聖女見習いの夢

第七話 最高の手駒

第八話 愛欲の日々の始まり

本編の一部を立読み



第一話 大司教の粛清



 昼の陽光が執務室を温かく満たしていた。
 窓から外を見ると、昨夜の大雨が嘘のように晴れ渡っている。中庭にできた水たまりが木漏れ日を反射してまぶしい。
 俺は隣に立つ黒髪の美少女に声を掛けた。
「マイ、まだ印は消さないのか?」
 彼女の着ている煌びやかな謁見用のローブ。その襟元から覗く白肌に、赤い吸引の痕が無数に刻まれている。服の下はさらにひどい有り様だ。つい夢中になって付けすぎてしまった。
「はい、リンゼさまが残してくれたものなので、もう少しだけ……だめでしょうか?」
 初めてわがままを言う少女のような顔でマイが懇願してきた。
 上目遣いの金色の瞳が、先ほどまでの情事の余韻で潤んでいる。頬を上気させ、おでこにほんのり汗をかいているのが色っぽい。乱れた黒髪も一生懸命手ぐしで直したようだが毛先が少し跳ねていた。
 そのすべてがすさまじい色気を放っている。甘い花蜜のような彼女の香りも相まって、油断するとつい押し倒したい衝動にかられてしまう。
 昨日は第一王子に媚薬を盛られたマイを救い出し、この執務室で媚薬を抜くために浄化の儀式(・・・・・)などと称して、欲望のままにマイを抱き潰した。
 今朝も起きてから、彼女の魅力に抗えず三度抱いた。朝食もとらずに。
「もうすぐロレンティアが来る。それまでには印を消しておきなさい」
「ありがとうございます、リンゼさま」
 マイは、俺と二人きりのときは名前で呼ぶことに決めたらしい。大司教さまと呼ぶときよりも声色が弾んでいる。
 嬉しそうに俺の名を口にする彼女を見ていると、どんどん股間に血が集まってきてしまう。以前よりも絶倫ぶりに拍車が掛かっている自分に苦笑する。
 だが仕方のないことだ。マイは抱けば抱くほど魅力と色香が増していく。触れるだけで敏感に反応し、肌のきめ細かさや柔らかさも増し、絶世の名器である膣内の具合もどんどんよくなっていくのだ。
 まさに最高の体。極上の触り心地。そして健気で可愛らしい気質。どれをとっても男を虜にするには十分すぎる。むしろこうして彼女の隣で平静を装える自分を褒めてやりたいくらいだ。
 当のマイは中庭の花壇を楽しそうに眺めていた。
「君は本当に花が好きなのだな」
「はい……恵みの雨のおかげで花が喜んでいるように見えるんです」
「喜んでいる、か」
 彼女に言われると本当にそう見えてくるから不思議だ。今までになかった感性で俺も花壇を眺めていると、マイがふっと頬をゆるめた。
「私、リンゼさまと花を見るの、好きです」
「そうか」
「はい」
「……俺もこの時間は好きだ」
「よかったです」
 彼女が嬉しそうに目を細める。木漏れ日のせいか金色の瞳がきらきらと輝いているように見えた。
(まずいな)
 再びソファーへ押し倒してしまいそうだ。
 そのときコンコンと執務室の扉が叩かれた。
「誰だ」
「大司教様、ロレンティアです」
 遠視の術を発動すると、執務室の前に金髪の元聖女が一人で立っている。付近に人影はない。
 彼女には先ほど伝書鳥を送り、マイの普段使いのローブを持ってきてほしいと頼んでおいた。
「いま行く」
 扉に近づこうとすると、くいとローブの袖が伸びた。
 見ればマイが控えめに袖を引っ張っている。金色の瞳が所在なさげに揺れ「ぁっ」と何かを言い出そうとしていた。
 また、この表情だ。ためらいがちに、わがままでも言おうとしているような顔。
「リンゼさま、もう一度……魔力を確かめてもらえないでしょうか?」
「……ああ、もちろんだ」
 彼女の頬に手を添え、唇を重ねる。
「んっ……ちゅ……」
 しっとりとした唇の感触が広がる。ふんわりとしていて温かいのは、まだマイの体が火照っているせいだろう。
 迎え入れるように開いた唇の隙間に舌を挿れる。微弱な魔力を流し込めば彼女の肩がビクンと震えた。
「魔力に異常はないな」
 唇を離し優しく微笑みかける。
「はい、ありがとうございます。……大司教さま」
 マイは先ほどよりも顔を赤くして、はにかんだ。

「待たせたな、ロレンティア」
 扉を開け、金髪の元聖女を執務室へ招き入れる。
「いいえ、構いません」
 口元に涼やかな微笑を浮かべ目を伏せている様子は、まさに元聖女というべき佇まいだ。
 部屋の真ん中に立っているマイを見やると、その瞳が安堵したように細められた。これも、いつものロレンティアだ。
「聖女マイ、おはよう。昨晩は別棟へ戻ってこないから心配したのよ」
「ロレンティアさま、ご心配おかけしました……あの」
「マイが毒を盛られた。酒だ」
 俺が言葉を引き継ぐ。
「お酒、ですか」
 ロレンティアの顔に緊張が走る。目を見開き、今にもマイのもとへ駆け寄りたそうだ。
「ああ。だが彼女の身に問題はない。毒も私が一晩かけて抜いた」
 最小限の説明だが、それだけでロレンティアは胸を撫で下ろしてため息をついた。切れ長の瞳がさらに細められ目端には涙が浮かんでいる。
「大司教様、聖女を守っていただきありがとうございます」
「大司教として当然のことをしたまでだ。だが今後は酒の危険について聖女見習いたちにより徹底する必要があるな。教義に抵触するので控えていたが、薄めた酒で耐性を得る修練も行ったほうがいいだろう。ロレンティア、協力してくれ」
「もちろんです」
 ロレンティアがまっすぐ見つめてくる。大司教としての俺を信頼し、覚悟を宿した目だ。
 その視線が、ふっとマイのほうへ向く。
「マイ、着替えましょうか」
「あ、はい、ティア姉さま」
 ロレンティアがマイに近づき普段使いのローブを広げた。
「私は壁を向いていよう」
「あら、必要ですか?」
 ロレンティアの口元が悪戯っぽく微笑んでいる。
「当然だ」
 背中を向ける一瞬。謁見用のローブを脱いだマイの白肌からは吸引の印が綺麗に消えていた。

「では大司教さま、失礼します」
 扉の前で、マイがふんわりと微笑む。
「マイ、今日は分かっているね」
「はい。大司教さまの言いつけどおりに」
「ロレンティアも、聖女を頼んだぞ」
「お任せください。あの場所は、聖女にとって一番安全ですから」
 執務室の扉が閉まると同時、俺は魔力を練った。
 ――遠視の術。
 廊下を歩く彼女たちの姿を、まぶたの裏に映し出す。
「——マイ、本当に体に異常はない?」
「はい。大司教さまが……すべて取り除いてくれたので」
「ふふ、よかったわね」
 ロレンティアが、まだ少し跳ねているマイの黒髪にそっと触れる。ほんのりからかうような口調だが、マイは素直に「はい」と微笑む。
「本当に、マイは可愛い子」
「えっと……ティア姉さま?」
「なんでもないわ」
 その顔は妹の幸せを心から祝福する姉のものに見えた。
「では、行きましょうか」
「……はい」

 二人が別棟に入っていくのを確認して、俺は遠視の術を解く。
「――さて、ここからは時間との勝負か」
 甘い、午前のひとときは終わった。
 今のところ、聖騎士長から誰かが神殿にやってきたという報告はない。
 大司教が第一王子に魔法を放ち聖女を連れ帰った——そんな前代未聞の出来事に、王城もどう対応したものかと動揺していることだろう。
 その波紋はマイを奪おうとする背信者たちにも広がっているはずだ。
 あらゆる者が混乱し、揺れている。こういうときは誰よりも先に手を打った者が勝つ。そのための策も事前に仕込んではある。
 カタをつけるなら今しかない。今日、背信者どもを一網打尽にする。
 俺は念話の術を発動した。
『聖騎士長、ネズミをあぶり出すぞ。準備を頼む』
 事前に何度も話し合ってきた作戦の開始を告げる。
『はっ、承知しました。すぐに』
『ああ、だがその前に地下牢獄へ行く。ヌベリエを連れて来てくれ』
『……承知しました』

 ◇

 教会神殿の地下に広がる迷宮。
 そこは古の民たちが、王族の軍から聖女を守るために構築した地下砦だ。この場所の存在を知っているのは教会でも一握り。
 その迷宮深くに、地下牢獄はあった。
 数代前の大司教が改築したそこは、背信者を監禁したり、司教との姦通を疑われた聖女見習いを捕らえて性的な拷問を行っていたりした場所らしい。
 おそらくは後者のほうが本来の目的だったのだろう。
 まさに教会の暗部中の暗部だ。虫唾が走る。
「教会の地下に、このような場所があったのですね」
 陰惨な場所に似つかわしくない浮かれた声が牢獄内に響きわたる。俺は今、ヌベリエとともに鉄格子の前に立っていた。
「他にもこのような牢獄があるのです?」
「いや、ここだけだ」
 さりげなく振り向くと、聖騎士長が苦々しい顔でヌベリエを睨んでいる。念話の術を通して聖騎士長がつぶやく。
『大司教様、本当にこの者を連れてきてよかったのですか』
『……ああ、問題ない』
 俺は牢の鍵を開けると、その奥で鎖に繋がれた一人の男を指差した。
 目を布で覆われ、猿ぐつわをはめられている。第一王子との視察の道中に遭遇した、あの聖女狩りのリーダーだ。
 全裸にし、手足を拘束し、日に一度だけ生命維持に必要なだけの水と塩だけを与えている。
 これも一種の拷問と言えるだろう。マイやロレンティアが見たら目を回して倒れそうな光景だ。
「ヌベリエ、君は陰の者だったな。あの男から情報を引き出せるか?」
 そっと耳打ちをする。たとえ大きな声を発したとしても、男の耳には布が詰め込まれているので聞こえはしない。
「ええ、できますとも。あの男は背信者なのです?」
 不謹慎にもヌベリエの声には喜色が浮かんでいる。その様子は新しい玩具を目の前にした少年のようでもあり、巡ってきた好機に応えようとする少女のようでもあった。
「ああ。聖女見習いを攫おうとした賊の頭目だ。まったく口を割らなくてな。裏で糸を引いていた者がいるかを知りたい」
「まあ、なんて下劣なのでしょう! 清らかな聖女見習いを汚い手で穢そうとするなんて、ああ、万死に値する男」
「……殺すなよ」
「うふふ、もちろんです。せっかく大司教様が与えてくれた機会。女神様にあだなす者たちをすべて吐かせてみせましょう」
 言いながらヌベリエはローブから何本かの針を取り出した。
「毒針か」
「ええ、預かっていてください」
 俺の代わりに聖騎士長がそれを受け取る。するとヌベリエがその腕をつかんだ。
「一つお願いが。私のローブをびりびりに破いていただけますか?」
「なっ……!」
 聖騎士長が咄嗟に腕を離す。朴訥で生真面目なこの男には難しい注文だ。
「私がやろう」
 俺はヌベリエの肩をつかむとローブを左右に引き裂いた。露出した白肌から聖騎士長が慌てて目を逸らす。
「下着もお願いします」
 簡素なブラジャーを破き、シミ一つない乳房を外気にさらす。服を暴かれているというのにヌベリエは楽しげだった。
「では行ってまいります。大司教様と聖騎士長様はそこでお待ちくださいませ」
 彼女はサンダルを脱ぐと、ひたひたと冷たい石床を歩き出す。鎖で繋がれた男に近寄りその頬に優しく手を添えた。
 ガシャと音がして、男が怯えたのが分かる。
 ヌベリエは男の耳から布を引き抜くと、耳元にそっとささやく。俺の地獄耳がそれを拾った。
「あの……大丈夫ですか?」
 心底心配しているという口調で、声色に甘ったるい響きを含ませている。男であれば誰もが魅せられてしまうような声だ。
 ヌベリエがいたわるように男の猿ぐつわを外す。
「……」
「す、すみません、突然話しかけてしまって……」
 無反応だと見るや、ヌベリエは声色から甘みを消し、今度は透き通った響きで男にささやいた。まるで聖女見習いのような清らかな声だ。
「……誰だ」
 男が初めて口を開く。
(見事だな)
 相手が最も油断する声を探り、瞬時に切り替える。さすが第二王子直属の隠密部隊。そして彼女は、やはりそういう仕事(・・・・・・)が専門なのだと分かる。
 俺はヌベリエの仕事ぶりをじっと観察することにした。
「あ、あの私……聖女見習いの、ヌベリエと申します」
「……刺客か?」
「シカク? え、えと、あの……よくわかりません」
「俺を殺しに来たんだろう」
「あのっ、私……司教様と、い、いかがわしい仲だと疑われてしまって……それで、ここに」
 喉が震え、涙のにじんだ声。誰もが同情を誘われる響きだ。
「……」
「そうしたら、あの……あなたがいたので、その、とてもお辛そうだったので……すみません」
「はッ、聖女見習いというのは本当にお人よしだ」
「本当はあなたと口をきいてはいけないと、きつく言われたのですが」
「……いいのか?」
「ほうって、おけません。それに、今は誰もいないので」
「……お前、治癒魔法は使えるか」
「ごめんなさい、私……」
「そうか」
 男の声にわずかな憐れみがにじむ。
 あらぬ嫌疑をかけられ酷い罰を与えられ、治癒の力を失ってしまった哀れな少女。そんなふうに思っているのだろう。
 平時ならもっとヌベリエに疑いを持ったのだろうが、男はまともな食事を与えられず疲弊している。判断力が減衰した今、彼女の清純な雰囲気に心を持っていかれるのも無理はない。
 というか。
(マイを真似ているのか)
 ヌベリエの口調や声の早さ、抑揚などがマイにそっくりだ。それが少し苛立つ。
「あの、お腹減っていませんか。少ないですが、私の食事があります」
「いらない」
 男の回答を無視し、ヌベリエがこちらへ戻ってくる。
 俺は手に持っていたお盆の布をめくった。煮詰めた芋に塩をふりかけ湯に浸しただけの芋粥だ。それを彼女に渡す。
 ちなみに俺のお手製だ。
「……どうぞ、食べてください」
「いらん、お前が食べろ」
「このままだと、死んでしまいます」
「それが本望だ。とはいえ奥歯に仕込んだ毒も抜かれ、今じゃ舌を噛み切る力もないがな」
「……生きて、ください」
「……」
「お願い、生きて」
 ヌベリエが涙で言葉をつまらせる。
「聖女見習いには、酷な言葉だったか。だがすまんな。俺は死にゆく運命だ」
「だめです……あなたを、死なせません」
 彼女は芋粥を口に含むと不意に男へ口づけをした。
「ぐっ……ん、ぉ……お前、なにを」
「お願いです、食べてください」
 ヌベリエが紫色の髪をかき上げ、またも口移しをする。もし男の目隠しが取れていたら、その健気で妖艶な姿に見惚れていただろう。
 次第に男の喉がコクコクと動き出すのが見えた。
「……ちゃんと、飲み込めましたね。よかった……」
「お前、どうしてここまで……いや、聖女見習いには愚問か」
「味、感じられましたか?」
「ああ、薄味だが、こんなにうまい粥は初めて食べた」
 味覚が弱っている者ですら薄く感じるとは……もしマイに振る舞うときがあったらもっと塩を足すことにしよう。
 すると、グウとお腹の鳴る音が牢獄に響いた。
「……お前も、空腹なんじゃないか」
「私も、二日食事を与えられなかったので……でもあなたに比べたら、へっちゃらです」
 ヌベリエは自在に腹を鳴かせることもできるらしい。その芸の細かさに驚く。
「……すまないな」
「いえ、私も……生きてほしいだなんて、白々しいですよね。大司教様、おっしゃっていました。あなたも私も、近いうちに処刑されると」
「そうか……お前もなのか」
「はい」
 しばらく沈黙が流れる。
「ぅっ……」
「どうした?」
「ううん、少し……寒くて」
「そうか」
「……あの、体を……くっつけてもいいですか?」
「やめておけ。もう何日も洗ってない」
「そう、ですか」
「……だがまあ、お互い明日死ぬ身だ。気にしても仕方ないか」
「ありがとう、ございます」
 ヌベリエがあぐらをかいた男の膝の上におっかなびっくりといった感じで乗る。そして露出した上半身をぴたりと男の胸にくっつけた。
「っ……お前、服が」
「はい、大司教様に、破かれてしまいました」
「穢されたのか」
「……司教様の手籠めになったのかどうか、調べてやると言われて」
「はは、腐っているのは大司教も一緒か」
「でも、不思議です……あなたに触れていても、嫌な感じがしない」
「買いかぶり過ぎだ。死の恐怖で感覚が麻痺しているのだろう」
「そう、かもしれません。私……死ぬのがこわい、です……」
 まるで泣くのを必死に堪えるような声で、ヌベリエは男の胸に顔を埋めた。乳房をむにゅりと押し付け、太ももがちょうど男の股間に当たるようにしながら。
「ちっ……すまん」
「……男の人は、みなさん、こうなるものなのですか?」
 ヌベリエがそっと男の肉棒に触れる。
 驚いたことに男は反り返るほどに勃起していた。食事をとったからだろうか。つい先ほどまで半死半生だったとは思えない回復だ。
「触れるな。穢れるぞ」
「つらそう、です……こうしたら、楽になれますか?」
「ぐっ、待て……うッ……!」
 ビュっと男の先端から汁がほとばしった。
「温かい、です……大司教様のものと、同じ」

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