「言いつけを破った罰だ、いいね」「はい、大司教さま…」
揺れる馬車の中、マイの媚肉に硬直を埋め込んでいく大司教の俺。
瞳を潤ませ幾度も絶頂を遂げる黒髪聖女の姿に、俺は思いを強くする。
マイを狙う者はすべて排除する。誰にも触れさせない。
相手が、聖女を手籠めにしようとする第一王子であったとしても──。
大好評溺愛ファンタジー、波乱の第三巻! 大容量書き下ろし収録!
【書き下ろし】マイという少女
第一話 聖女見習いの救出
第二話 馬車での仕置き
第三話 目隠し女との入浴
第四話 王族たちの計略
第五話 浄化の儀式
【書き下ろし】聖女見習いの迎え人
【書き下ろし】執務室での魔力検査
本編の一部を立読み
【書き下ろし】マイという少女
よく晴れた日の午後。
執務室のソファーに絶世ともいえる美少女が座っていた。
艶やかな黒髪は美しく、目鼻立ちの整った美貌を引き立てている。涼やかな微笑みは清廉で、静かにまぶたを閉じている姿は百人中百人が一目で聖女だと分かるほどに神秘的だ。
ほんのりと頬を染めている様子は、年相応の少女にも見える。
今日は暖かいから普段使いのローブが少し暑いのだろう。三日前に大雨が降ってから王都は快晴続きで、このぶんだと明日も晴れるはずだ。
「マイ、だいぶ落ち着いてきたね。修練を再開しようか」
「はい、大司教さま」
ふうと彼女が小さい吐息を漏らす。
頬を朱くしておでこにうっすら汗をかいているのは、午後の陽気のせいだけではない。
「軽く体に触れるが、集中を切らしてはいけないよ。魔力を一定に保つんだ」
「はい……んっ」
薄い唇をなぞるとマイが切ない声を漏らし、くすぐったいのかビクンと肩を震わせる。
俺は今、ソファーの後ろに立って彼女の魔力修練を行っていた。
何度か唇のラインをなぞっていると、みるみるマイの耳が朱くなっていく。相変わらず感じやすい体だ。もっといじって可愛らしい反応を楽しむことにしよう。
「魔力が少し不安定になった。集中しなさい」
「んッ……ごめんなさい」
「目を閉じたまま、自身の魔力にだけ意識を向けるんだ」
ローブ越しに肩を撫でて腕のほうへと下ろしていく。二の腕を指でつーっとなぞれば彼女がまたも震えた。
「ぁっ……ん」
慌てて口を引き結び、きゅっと眉間にシワを寄せる。そんな仕草も男の情欲をそそってしまうことを、無垢な彼女は知りもしないだろう。
これまでの度重なるセックスのせいでマイの感度はかなり上がっていた。その犯人が俺だという事実に股間が熱くなる。
もう一度ほっそりとした肩を撫で、今度は胸元へと滑らせていく。
「マイ、聖女とはいかなるときも民を安心させる存在でなくてはならない。心の内ではどんなに動揺していても、静謐(せいひつ)なたたずまいが求められる。これはその訓練でもあるんだよ」
「はい、んッ……大司教さま」
「よろしい」
ローブを押し上げるおっぱいの膨らみをなぞり、その先端で指を止める。布地の上から乳首のあるあたりに狙いを定めると、初めて指先に力を入れた。
「あッ、んんっ……ッ」
マイが耐えきれず甘い声を漏らす。服の下では乳首が布でこすれているだろう。
厚手のローブなので蕾の感触は分からなかったが、指先で触れるうちにそこがどんどん硬さを増していく気がした。
それでも彼女は集中を維持しようとしていた。はたから見れば淫らな悪戯にしか見えないが、マイはこれも修練だと信じて疑わないだろう。
本当に健気でまっすぐな子だ。だからこそ、この純真さにつけ入ろうとする者も多い。
「マイ、見事に魔力を安定させているね。上手だ」
「あ、はい、ありが……んぅッ――」
俺は指先に魔力をまとわせ胸の先端へ押し込んだ。彼女の両肩が縮みあがりブルリと震える。
厚手の布越しにクニとした乳頭の感触を捉える。それを回すように捏ねるとマイがわずかに前屈みになった。
「最後だ。頑張って耐えなさい」
「んっ……でも、あッ、あんっ……」
性感を与えるためにわざと耳元でささやく。
どうしても集中が途切れてしまうのだろう。彼女は止めてほしそうに俺の腕へ手を伸ばすが、寸前でためらった。自分から修練を中断したら俺に注意されると思ったのだろう。その葛藤が伝わってくる。
「処女はこうした刺激に敏感だからね。だからこそ慣れておかないといけない。分かるね」
「あっ、んぅッ……はい、わかりっ……ます」
「いい子だ」
「ひぁっ、あぁんっ……」
形のいい耳に吸い付き、発せられるマイの嬌声を愉しむ。布越しの乳首はさらに硬さを増しコリとした感触だ。それを執拗に捏ね回していると、彼女が汗ばんでいくのが分かった。
「あのっ、あッ、大司教さまっ、もう……」
「よく耐えたな、マイ」
柔らかい耳たぶを甘噛みし、布と一緒に乳首をつまむ。
「あぅッ、んうぅっ……!」
ビクビクと痙攣したマイが体を強張らせる。軽く絶頂してしまったようだ。
やがて力が抜けてきたのを見計らい、彼女の豊満な胸をぎゅうとつかむ。快感を塗り込むように揉みしだきながら、耳の内側に口づけをした。
「魔力制御がだいぶ上達したね」
「はい、んぅッ……ありがとう、ございます……ッ」
ぎゅうぎゅうと胸を鷲掴みにされながら、マイが途切れ途切れに返事をする。
俺は、股間がありえないほどいきり立つのを実感していた。服の上から彼女をイかせたことに仄暗い達成感を覚える。
このままローブの中に手を差し込み直接マイの柔肌を堪能したい。衣服を暴きソファーに押し倒し、欲望のままに犯したい。
だがここは執務室だ。聖女と大司教である以上、誰かに知られでもしたら俺は打ち首では済まされない。マイの聖女としての立場も危うくなる。
俺はいつものように理性を総動員させると、揉み込んでいる手の力をゆるめていった。
「今日の修練も終わりだ。よく頑張ったね、マイ」
「はい、ありがとうございます……大司教さま」
マイが落ち着いてきたので、その黒髪をポンポンと撫でて終了を告げる。
快感に潤んでいた瞳もだんだんと清廉な聖女の眼差しに戻っていく。その変化に寂しさを感じながらも、俺は大司教の顔で厳かにうなずいた。
「過度の集中で汗をかいただろう。別棟に戻ったら湯浴みをするといい」
彼女の下半身も愛液でぐっしょりと濡れていることだろう。
「はい、そうします。あの……また明日も、修練に付き合ってくれますか?」
マイが物欲しそうな表情で見つめてくる。
「ああ、もちろんだよ」
俺は煮えたぎる獣欲を抑えながら、朗らかな笑みを返してみせた。
「ありがとうございます。では、失礼します」
安心したような彼女の微笑みに胸の奥が熱くなる。執務室を去っていく後ろ姿を見送ると、俺はソファーにどっかりと腰を下ろした。
――遠視の術。
まぶたの裏に、廊下を進むマイの姿を映し出す。
斜め下に視線を下ろし、気品のある微笑みを浮かべ、音を立てずに歩く姿はまさしく女神に選ばれし聖女だ。
外廊下に差し掛かると、すれ違う司教が息をのむのが分かった。マイの美貌に見惚れ、魅惑的な体に視線を這わせる。この教会神殿で見慣れた光景だ。
「ちっ」
つい舌打ちをしてしまう。
尋常ではない色香を放つ彼女は、昔から司教連中の邪な視線にさらされていたし、その無垢な心根につけ入ろうとする者も後を絶たなかった。
マイが別棟に戻ったのを見届け、遠視の術を切る。ふと俺の脳裏に、神殿にやってきたときの彼女の姿がよみがえってきた――。
――あの頃のマイは、座学や修練が終わるとよく花壇のそばに立っていた。
当時の聖女ロレンティアから、マイはいつも明るく世話好きで、つい甘やかしてあげたくなるほどの頑張り屋だと聞いていた。
だが俺から見れば、可愛らしい彼女の笑顔には常に影が差していた。
「なにか悲しいことでもあったのか?」
声を掛けると、マイはびっくりしたように両眉を上げ取り繕うような笑みを浮かべた。
「あ、大司教様っ……いえあのっ、悲しいことなんて、全然ないです」
「そうか」
「はい、さっきも魔力制御がじょうずねって、ティア姉さ……じゃなかった、ロレンティア様にお褒めにいただいてっ」
この頃のマイはまだ言葉遣いが不自然だった。田舎の教会でのんびりと育てられたのだから無理もない。
「それはよかったね。だが、その割にはあまり嬉しそうに見えないな」
指摘すると、彼女は観念したように表情を曇らせた。
「本当に、嬉しいんです。悲しいことなんてこれっぽっちも……でも、自分が思ったようには、なかなか治癒魔法が上達しなくて」
聞いた話では、マイの治癒魔法は聖女見習いの中でも抜きんでている。それでも彼女は満足できないのだろう。その向上心には好感が持てる。
ひたむきな姿に庇護欲をそそられた俺は、彼女に近寄り一緒に花壇を眺めることにした。
頑張っていると褒めるのは簡単だ。だがマイは、それを心の底からは喜べないだろう。叶えたい夢ははるかに遠く、頑張れば頑張るほどその距離を思い知る。なりたい理想像と不出来な自分をどうしても比べてしまう。
大司教の座を目指していたころの俺もそうだったからよく分かる。そんなとき俺はどんな言葉を掛けてほしかっただろうか――。
「マイ」
「はい、大司教様」
こちらを向いた彼女を、見つめ返す。
「君はさらに上達する。やがて誰もが認める聖女になる」
だからこのまま励むだけでいい。そう思いを込めて俺はマイの黒髪に手を置いた。
昔まだ子どもだったころ、初めて自作の罠でネズミを捕まえたら父親に褒められたことがある。そのときの見よう見まねで、ポンポンと頭を優しく叩いてみた。
頭を撫でるというのはこれで合っているだろうか。
するとマイは一瞬驚いたように目を見開き、やがてふんわりと微笑んだ。
「ありがとうございます……大司教さま」
目端に涙をためて屈託なく笑うその顔を、俺は一生忘れないだろう。
それ以来、彼女はめきめきと魔力を上達させていった。座学で学んだ内容もすぐに覚え、聖女としての言葉遣いや立ち居振る舞いも身に着けた。
そのせいか、あどけなさの中に隠れていた元来の色気が引き立つようになった。年齢にそぐわない大人びた体つきも相まって、マイに下卑た視線を送る司教も増えていく。
一度、彼女は司教の部屋に連れ込まれそうになったことがある。
「――そこの聖女見習い、名前は確か」
「あ、はい、マイと申します」
「ああそうだった。私は聖女見習いの絵姿を描いていてね、君の姿も描かせてくれないか」
「絵姿、ですか?」
「そうだよ。聖女見習いは皆、絵姿を描くことになっているが君はまだだろう?」
偶然そのやり取りを目撃した俺は、慌てて彼女を引き止めたのを覚えている。
マイは何をされるのか分かっていない様子だったが、後で司教の部屋を調べると数枚の裸婦像が出てきた。どれも引退した聖女見習いのもので、全裸の彼女たちがベッドで仰向けになっていたり、両手を縄で縛られていたりするものもあった。
それから俺はロレンティアにマイを見守らせ、ロレンティアを通して様子を視(・)るのが日課となった。
「……ティア姉さま、あの」
「ん? どうしたのマイ」
ある夜、彼女は同室だったロレンティアにあらたまった様子で聞いた。言いづらそうに、向かいのベッドで寝ている聖女を見つめている。
ロレンティアが向き直って優しく微笑みかけると、マイはやっと安堵したように切り出した。
「あの、好きというのは、どういうものなのでしょう。草花を愛らしく思うのとは、違うのでしょうか」
「……そうね」
一瞬物思いにふけったロレンティアが、再び微笑む。
「言葉で言い表すのは難しいわね。実際に感じてみて、これがそうなんだって分かるものだから」
「あたし……じゃなかった、私にも、いつか分かるものですか?」
するとロレンティアがふふと意味深な笑みを浮かべた。
「あなたにも分かるときが来るかもしれないし、来ないかもしれない」
「そういう、ものなんですか」
「ええ、そういうものなの。でももし分かるときがきたら、それは恥ずべき感情ではないということだけは、覚えておいて。そう思えた自分を、うんと大事にしてあげてね」
「……はい、ティア姉さま」
マイは宝物をしまいこむように胸を押さえてうなずいた。
色恋を知らぬ無垢な少女。俺はこの手垢のついていない純心を汚らわしい俗世から守り、いずれ聖女に任命して護り続けようと心に決めた。
「ふぅ……」
マイの甘い残り香を吸い込んでから立ち上がる。執務机へ戻ると、明日に迫った視察の資料へもう一度目を通した。
――「俺は帝国との国境沿いにあるオレンダイ領へ視察にゆく。ついては聖女にも同行してもらう!」
一週間前の儀式で、そう大声で言い放った青年――第一王子アレクの顔を思い出す。長い赤髪を後ろで縛り、人懐っこそうな笑顔をマイに向けていた。何も考えていなさそうな色男という印象だが、底の見えない男でもあった。
「まあいい」
誰であろうと関係ない。もしマイを奪おうとするなら、王子だろうとたとえ女神であろうと容赦しない。
俺は握った拳に力を込めると、体内の魔力に意識を集中させた。
第一話 聖女見習いの救出
予想どおり、視察への出立日は快晴だった。朝もやの晴れた王都の空は雲一つなく、能天気に陽射しを浴びせてきている。
視察先はオレンダイ領。帝国に隣接し、ゴーゼ司教の出身でもある疑惑の場所だ。往復で三週間、視察の状況によってはもっと掛かる。
聖女マイにとってここまでの長旅は初めてだ。だからこそ俺は慎重に準備を進めてきた。
同行する聖騎士を厳選し、王子に付いてくる近衛騎士の素性も可能な限り調べあげ、旅のルートや停泊する村々についても吟味を重ねる。
道中に魔力枯れを起こさないよう十分な睡眠もとった。万端とまではいかないが、マイに危険が及ぶリスクはできるだけ排除できたはずだ。
残る不安要素はといえば――。
「ここが大司教様の執務室……! さすがは聖職者の鑑。平民の希望の星。高級な調度品など置かずとも、誠実さと品格にあふれたお部屋です」
執務机を挟んで、布で目隠しをした女が立っていた。ただの質素な部屋にずいぶんと大層な賛辞を送っている。
陰の女。
マイの護衛と剣術の稽古相手にと、第二王子から借り受けた手練れの戦士だ。
「聖騎士長から説明は受けていると思うが、君には聖女マイの護衛を頼もうと思っている」
「ええ、存じております。聖女様をお護りできるなんて、平民生まれにはもったいない誉れ」
第二王子直属の隠密部隊に所属していて、相当な腕を持つことは確認済みだ。何度かテストをしてみたが、その際も不穏な動きは見せなかった。
聖女に並々ならぬ思いを抱いていることに目をつむれば、役に立つ護衛といえる。
「ここでは新人の聖女見習いとして過ごしてもらう。神殿内での所作はロレンティアから教わってくれ」
「よろしくね、ええっと?」
俺の隣にたたずんでいた金髪の元聖女――ロレンティアが、陰の女に名乗るよう促す。
俺もこの女の名前を知らない。隠密部隊に所属しているからか、いくら調べても詳しい素性が分からなかった。
「紫と、そう呼ばれております」
「紫さん、ですね。私はロレンティアです。お部屋も同室ですから、分からないことがあったらいつでも聞いてね」
ロレンティアの包み込むような笑みに、陰の女がハァとため息を漏らす。
「元聖女様と同室だなんて……夢のようです」
頬を紅潮させ、口角を歪ませていた。
こちらまで興奮が伝わってくる。目が隠れているので表情はいまいち読み取れないが、きっと熱のこもった視線をロレンティアに送っているのだろう。
まだマイには会わせないほうがよさそうだ。ロレンティアには悪いが、聖女を前にしたときの立ち振る舞いもしっかり叩き込んでもらおう。
(それにしても、紫か)
おそらく彼女の髪色にちなんでいるのだろう。
王城で会ったときは給仕用のブリムを被っていたから気づかなかったが、彼女の髪は艶のある紫色だ。くせ毛なのか、肩のあたりで切り揃えられた毛先がわずかに外へ跳ねている。
聖女見習いの白いローブと、紫色の髪のコントラストはどことなく色香を感じさせた。赤みがかった唇は常に口角が上がっており妖艶な雰囲気を漂わせている。
マイに余計な知識、特に色恋に関するあれこれを植え付けないよう言い含んでおいたほうがよさそうだ。
「紫――いや、呼びにくいな。他に名前はないのか?」
「ありません。もしよろしければ、大司教様に名付け親になっていただければと」
「ふむ……」
彼女の紫の髪から連想されるものを、頭の中の知識庫から探す。
「ヌベリエはどうだ?」
「ヌベリエ……」
陰の女が見知らぬ呪文を唱えるように繰り返す。
「北方地帯に生えている夜にしか咲かない花だ。紫色の花弁は麻痺毒を治す薬の材料になる」
一方でこの花は麻痺毒の元にもなる。俺はまだ、彼女を信用していない。
「素晴らしい名です、大司教様」
ゴーンと、昼過ぎを告げる鐘が響き渡る。そろそろ出立の時間だ。
「では私は聖女とともに視察へ向かう。ロレンティア、留守を頼む」
「ええ、お任せください」
落ち着いた笑みを浮かべるロレンティアに安心しつつ、席を立つ。ヌベリエの横を通り過ぎたとき、彼女がこちらに向き直った。
「あの大司教様、私は視察には同行できないのでしょうか」
「君には、まず聖女見習いとしての所作を学んでほしいと言ったはずだが?」
「存じております。ですが私は聖女マイ様の護り人。道中、卑しき者が聖女様を狙うとも限りません。旅の危険から命を賭してお守りするのも私の役目かと」
抑揚のない声だ。声色だけを聞けば淡々と役目をこなす仕事人といった感じだが、やけにマイに同行したがるのが気にかかる。
「すまないな、ヌべリエ」
俺は彼女の肩に手を置くと、魔力を込めた。
「んぅッ……!?」
ヌベリエの体内に魔力を浸透させていく。
「ぁぁッ……ん、ぐっ……ッ」
ふむ、俺の魔力に抵抗するような反応はないな。
後ろ暗い企みを持つ者なら、呪いや罠を見破られる恐れのあるこの行為に対し、無意識に抵抗を見せるものだ。どうやら彼女はただ純粋に、マイに同行したいだけらしい。
俺は魔力を解くとヌベリエの震える肩をトントンと叩いた。
「魔力が乱れているようだ。少し休むといい」
「はぁ、はぁ、大司教様の身体検査は、やはり凄まじいですね」
先ほどよりも頬を紅潮させたヌベリエを置いて、扉へ向かう。
「では行こう、聖騎士長」
「はっ」
扉の前に立っていた聖騎士長をともない、俺は執務室を出た。
◇
神殿の廊下を歩き、正門へと向かう。
そこでマイとともに神殿の馬車へ乗り込み、神殿の外に待機している第一王子の隊と合流する手はずだ。
「聖騎士長、同行する聖騎士は何名だったか」
「はっ、十名です」
長旅に出る以上、教会神殿に脅威が迫るとも限らない。聖騎士のほとんどはそちらの守護に回しているので、視察に同行するのは少数だ。
だがこの十名はいずれも精鋭、そして信用に足る者たちだ。大勢の聖騎士に囲まれるよりむしろ安全といえる。
正門が見えてきた。
木造りの簡素な馬車の前に、外出用の白いローブを着たマイが立っていた。
「マイ、待たせた――」
声を掛けようとして、止める。
彼女は正面に立つ青年と、何やら話し込んでいた。茶色い平民の服を着ているがあれは紛れもなく第一王子だ。静かな笑みを浮かべるマイに爽やかな笑顔を向けている。
俺は歩調を速めると厳かな声で呼びかけた。
「王子殿下、ここは神殿内ですよ」
「おお大司教殿! 良い天気に恵まれたな!」
片手を上げて親しげに話してくる様子は、まるで本当に平民と錯覚する気安さだった。
彼らのもとへ歩み寄り、マイと王子の間に割って入る。
「殿下、王族であっても許可なく神殿内に立ち入るのはやめていただきたい。あまつさえ聖女に近づくなど」
「なるほどすまないな! いや、早く到着したから自ら聖女の迎えに上がろうかと思ってな。なに、無礼なことはしていない。今もこの天気について意見を交わしていたところだ」
「天気、ですか」
背中に隠していたマイを振り返り「そうなのか?」と視線で問う。すると彼女はふんわりとした聖女の笑みを浮かべた。
「はい、大司教さま。空模様も女神様のご意思によるものだと、興味深いお話を聞かせていただきました」
「そのとおり! この空を見れば分かる。聖女マイは女神に祝福されているな!」
大きなため息が出そうになるのを、ぐっと堪える。
第一王子は長い赤髪を後ろで縛り愉快そうに空を見上げていた。足の先から頭のてっぺんまで粗末な格好で統一されている。どこからどう見ても市井の、それも下町の貧民だ。
「王子殿下、その格好は?」
「ああこれか。身分を隠すにはこれが一番いいんだ! 放浪の旅をしていたときは、もっと酷い格好をしていたぞ!」
いろいろと型破りな王子だ。聖女に懸想するあの第二王子ですらここまで大胆な行動はとらなかった。
マイも突然王子に話しかけられ動揺しただろうに、微塵もそれを感じさせない。清らかな聖女の笑みを貼り付け静かに目を伏せている。
(いい子だ)
「そろそろ出立です。殿下もご自分の馬車へ戻ってください」
「もうそんな時間か! ではな聖女マイ、また後で話をしよう!」
そう言い残して赤髪の青年は走り去っていった。
「ふぅ……」
走り始めた馬車の中で、俺の口からため息が漏れた。
「あの、大司教さま」
正面に座ったマイが心配そうな顔で見つめてくる。さっきまでの落ち着いた雰囲気から一転、彼女は幼い少女のように金色の瞳を揺らしていた。
「どうした?」
「王子殿下とお話をしたのは、よくなかったでしょうか……」
「いいや、あれは誰も予想がつかない。今回は仕方のないことだ。だが聖女は、相手が王族であろうと無闇に会話を紡いではいけないよ」
「はい……気をつけます」
しゅんと肩を下ろす姿はまるで叱られた子どものようだ。悲しそうに眉尻を下げた顔を見ていると、無性に嗜虐心が刺激される。
「マイ、こちらへ来なさい」
俺は自分の隣の席をトンとたたく。
「はい……」
さらに叱られるとでも思ったのだろう。彼女は下唇を噛んで俺の隣に座った。ふわりと、俺の贈った入浴剤の匂いが香る。
「殿下に、妙なことはされなかったか?」
優しい口調で、心配しているという雰囲気を込めて聞く。
マイは一瞬息を吸い込むと、ほぅと安堵したように胸を撫で下ろした。
「大丈夫です、大司教さま」
無意識にだろう、彼女の二の腕が俺の腕に当たる。その部分が熱を帯び、股間にも血が巡ってくる。
「どこも触られなかったか?」
「え? いえ……どこも」
俺は安心しつつ、マイの太ももに手を伸ばした。ローブ越しに彼女の柔らかい肉感を撫でる。
「んっ……あの、大司教さま」
「この旅は村々を回り、時には野営をすることもあるだろう。先日の遠征のときのように、王子に呼ばれたからといって許可なくテントを抜け出してはいけないよ」
優しい声色はそのままに、マイの体をいやらしくまさぐっていく。
布地の上から太ももをぎゅっとつかんで揉み、徐々に腰のほうへと移動させる。お腹を撫で上げていくと手のひらが豊満な下乳に当たった。
「あっ、んッ、大司教さま、んっ……もう、抜け出したり、しません」
マイは体を震わせながらも、素直に愛撫を受け入れていた。触れられるたびに、握り込んだ手をきゅっと力ませる姿が情欲をそそる。
「ならいいが、王子が無理を言ってきたら聞いてしまうのではないか?」
手のひらに収まりきらない乳房を下からすくい上げる。ローブ越しでもはっきり見て取れるその巨乳が上向いた。
「大丈夫、ですっ……んッ、もう言いつけは、破りません」
「だが相手は王族だ。先ほども王子に話しかけられて内心動揺していただろう。魔力が乱れているのではないか?」
布越しに乳房を揉み上げながら、魔力を浸透させていく。すると彼女の体がビクンと跳ねた。
「んぅッ、ぁっ……はぁッ、大司教、さまっ……あぁんっ――」
性感に悶えながらも、マイは嫌がることも、どうしてと聞くこともしない。ただ俺の愛撫を従順に受け入れている。一週間前の処女検査で思いを告げたことで心境の変化があったのだろう。それが態度として表れている。
だいぶ、俺の色に染まってきたようだ。その実感に背中がゾクゾクする。
「大司教、さまっ……魔力が乱れたか、どうか」
乳房を揉んでいる俺の手に、マイが手を重ねてくる。彼女の揺れる瞳が俺を捉えた。
「確かめ、ますか?」
それはうかがうような上目遣いだった。何かを求めるように、唇を近づけてくる。
「んむっ、んんッ……」
俺のほうから唇を奪った。舌先に魔力を込めながら彼女の小さい舌を絡め取る。くちゅくちゅと唾液をかき混ぜ、温かい粘膜を舐める。
「んぁっ、ぇ……ぁ、あぁんっ、んッ……ふぁっ……」
いつしか俺はマイの後頭部をつかみ、覆いかぶさるように口づけをしていた。
彼女を背もたれに押し付けた衝撃で、馬車がガタンと揺れる。細い体を抱き寄せながらマイの熱い口内を舐め回す。
口づけの合間に彼女が甘い吐息を漏らした。それを塞ぐようにしてまた唇を重ねる。すると待ち焦がれていたように、マイも舌を健気に絡ませてきた。
数日ぶりの彼女とのキスが気持ちよすぎて、やめ時が見つからない。
「マイ、もし言いつけを破ったら酷い罰が待っている。分かっているね」
乳房をいじっていた手をするすると下腹部へ滑らせていく。
「んっ……はい、大司教さま」
「よろしい。最後にここを弄って魔力を確かめるから、大きな声を上げないように」
長いローブの裾をまくって白い美脚を露出させる。太ももの内側を手のひらでなぞりながら、肉感が増していく股のほうへと分け入っていく。
指先が、彼女の下着に触れた。
「んんッ……!」
マイが甲高い声を発する。さすがに抵抗されるかと思ったが、彼女は俺のローブをぎゅっとつかみ胸元に顔を埋めてきた。必死に目をつぶり、これからされることに耐えようとしているようだ。
(本当に、可愛い子だ)
俺は指先に魔力を込めると、パンツの布地をずらして膣穴へと差し入れた。
「ん゛うぅっ……うッ、くぅっ……んううぅぅぅっ――ッッ」
マイがくぐもった嬌声を上げ膣中がきゅっと締まる。さっそく達してしまったらしい。
この長旅で彼女をむさぼる機会は少ない。せいぜいが視察前に祝福を授ける、その前夜くらいだろう。
だったら今のうちにマイの体を堪能しておきたい。
「あっ、ん゛うッ……」
俺の身勝手な口づけに翻弄されながらも、彼女が必死にしがみついてくる。膣内がきゅうっと指を圧迫してきて気持ちがいい。切なそうに収縮する膣口に二本目の指を入れ、ゆっくり愛液をかき混ぜる。
「指先にさらに魔力を浸透させる。頑張って耐えるんだよ」
「えっ……アッ、あぁッ、ん゛んんんっ――ッッ」
すんでのところで口を押さえ悲鳴を上げずに済んだようだ。手の隙間から熱い吐息を漏らすマイを、俺は何度もイかせることにした。